観光型MaaSとは?仕組み・メリット・課題と国内の活用事例7選
最終更新日:2026年09月27日
記事監修者:森下 佳宏|BizTech株式会社 代表取締役

MaaSの活用は、都市部の移動手段の連携にとどまらず、観光分野にも広がっています。鉄道やバスなどの交通手段に、観光施設の情報やデジタルチケットを組み合わせ、旅行者が地域を巡りやすくする取り組みが進んでいます。
本記事では、観光型MaaSの仕組みやメリット、導入上の課題、国内の活用・実証事例を紹介します。AIを活用した経路提案やオンデマンド交通についても解説します。
関連記事:「MaaSでAIがなぜ重要?不動産・医療・観光・物流でのモビリティ戦略・導入事例を解説!」
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観光型MaaSとは?

MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、鉄道やバス、タクシーなど複数の移動手段を組み合わせ、経路検索や予約、決済などを利用しやすくするサービスです。
観光型MaaSとは、鉄道やバスなど複数の交通サービスを連携させ、旅行者の観光地への移動と現地での周遊を支援する仕組みです。交通手段の検索・予約・決済に、観光施設や飲食店の情報、デジタルチケットなどを組み合わせることで、移動から観光までを利用しやすくします。
地域の「観光の足」を確保し、観光地へのアクセスや周遊の改善につなげることも目的です。
また、取得・利用できるデータに応じて、旅行者に合った観光情報の提案や移動ルートの案内にAIを活用することもできます。観光庁も、その時・場所・旅行者に適した情報のレコメンドを観光DXの取り組みの一つに挙げています。
参照:国土交通省|MaaSの支援について
参照:観光庁|観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
観光型MaaS4つのメリット

観光型MaaSには以下のメリットがあります。
1. レコメンド機能を活用した最適行動の決定
2. ビッグデータ分析を活かした新商品・サービスの提供
3. 最適ルートの選択による移動ストレスの軽減
4. マッピング機能によるオーバーツーリズムの解消
それぞれのメリットについて説明します。
レコメンド機能を活用した最適行動の決定
観光型MaaSを活用すれば、たとえ初めて訪れる観光地であっても、往復の交通手段、現地のレンタカーやタクシー、その他交通機関を統合した最適な経路をAIのルート検索機能で指し示すことができます。しかも、利用者側はただ一つのアプリですべてのプロセスを行えます。
そして、即時予約、即時決済まで可能となるため、それぞれの交通機関での手続きは不要です。また、アプリに搭載されたAIは、観光当日の交通事情、天候事情も判断材料に含めて、観光地を回る経路の選択を行います。そのため、時間コスト、金銭コストを最適化した上で最高の観光体験を提供します。
AIによるレコメンド機能の活用方法、仕組みについてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
AIの膨大なデータベースを利用することで、ホテルや旅館などの宿泊施設でも観光型MaaSを組み込んだより高度なコンシェルジュサービスを提供することが可能です。AIコンシェルジュに地元の観光情報やおすすめスポットなどの情報をプログラムすれば、宿泊客が興味を持つ観光スポットやイベントを自動的に把握し、最適な旅行プランを提案できるでしょう。
関連記事:「AIはホテルでどう活きる?代替可能な業務や導入事例を徹底解説!」
ビッグデータ分析を活かした新商品・サービスの提供
観光型MaaSが導入されると、観光客の膨大な移動データ(ビッグデータ)が集まります。これらデータが集まれば、観光地ごとの混雑予測やレンタカーやタクシーなどの二次交通の混雑状況の傾向を把握できます。ビッグデータの集約により、単なる混雑予想や最適経路の提案だけでなく、観光客そのものの衣食住の傾向が把握分析できます。例えば、以下のような詳細な傾向を把握できるでしょう。
- ホテルは洋風ホテルが好きなのか?和風旅館が好きなのか?
- ランチは時間をかけたいか?手早く済ませたいか?
- 拠点間の移動は時間をかけたいか?できるだけ速く移動したいのか?
観光客の無意識下の思考や行動パターンに基づいた情報提供が可能となります。
ビッグデータの活用方法、活用事例についてはこちらの記事で分厚く説明していますので関心ある方はごらんください。
最適ルートの選択による移動ストレスの軽減
観光型MaaSの発達によって、交通機関、特に目的地到達後の二次交通手段の渋滞や混雑の緩和が期待されます。観光型MaaSの活用によって飛行機や列車などの公共交通機関だけでなく、レンタカーやタクシーといった二次側の移動手段も統合して検索、予約、決済が行えます。そのため、乗り換え時間の最小化が進みます。
実は、観光で列車・バスなど公共交通機関の利用が伸びない理由として、公共交通機関の利便性の悪さと混雑を嫌忌することが挙げられます。公共交通機関の渋滞の緩和により、移動時のストレスが減ることにより、マイカーから列車、バス利用への回帰が発生します。
特に、地方における公共交通機関の減少は危機的状態にあるため、観光型MaaSの推進は地方公共交通の起爆剤となります。
関連記事:「バス業界はAIでどう変わる?解決課題・活用メリット・企業事例を徹底解説!」
マッピング機能によるオーバーツーリズムの解消
オーバーツーリズムとは、特定の観光地において観光客の著しい増加が地元の住民の生活や自然環境や景観に過度な負担を与えてしまうことです。オーバーツーリズムによって、景観の毀損、地域住民の生活の利便性低下、観光客の満足度が著しく低下してしまう現象を指しています。世界中の観光地において、観光客のゴミや騒音問題などで観光地の閉鎖などの状況が発生しています。
オーバーツーリズム発生の大きな要因は、特定の観光地へ許容範囲を超えた観光客の流入です。AIを用いた観光客のマッピングを行う事で、観光地の訪問分散を行い、過度な集中を防ぎ、観光資本を持続的に確保していく効果が期待されます。
観光型MaaSが乗り越える4つの課題

いま観光型MaaSが抱えている課題には以下があります。
- 法律による業態の制限
- 交通事業者間の情報連携が不足
- 決済手段の連携
- 地方の移動手段が不足
それぞれの課題について説明します。
法律による業態の制限がある
観光型MaaSを実現するには、鉄道やバスなど多くの公共交通機関やタクシーやレンタカー業者を一つのアプリで一括管理しなければ意味がありません。
しかし、そのためにはバスや列車、タクシーを管理する道路運送法の整理、また、レンタカーにおいても自動車運送事業経営類似行為にあたり個別に申請が必要になるのが現状です。シームレスな運用のためには関連法案の一元化や簡略化が必要となります。
関連記事:「鉄道業界でのAI活用事例は?【最新】AI Marketでの実際の相談事例、電車の運行管理・保守での導入徹底解説!」
交通事業者間の情報連携が不足している
観光型MaaSでは、鉄道やバスなどの運行情報に加え、予約・決済情報を事業者間で連携させる必要があります。しかし、日本バス情報協会によると、GTFS形式の運行情報を公開している国内のバス事業者・自治体は約4割にとどまり、リアルタイム情報の公開はさらに限定的です。
各地でMaaSの導入は進んでいるものの、事業者ごとにシステムやデータが分かれていることも課題です。旅行者が複数の交通手段をまとめて検索・予約できるよう、データの整備と事業者間の連携が求められます。
参照:国土交通省 COMmmmONS|シェアサイクルやデマンド交通も。進化したGTFS-JPが広げるデータの使い道
参照:国土交通省|地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」2025年度の取組成果を公開します!
決済手段の連携が課題となっている
観光型MaaSでは、複数の交通機関の検索・予約に加え、支払いも円滑に行えることが重要です。国土交通省の調査では、2022年3月末時点で、主要なバス事業者のキャッシュレス導入割合は92.3%、決済比率は88.4%でした。
キャッシュレス決済の導入は進んでいますが、交通機関ごとに利用できる決済手段や乗車券の購入方法が異なる場合があります。観光客の利便性を高めるには、複数の交通機関や観光施設をまたいで予約・決済できる仕組みが求められます。
交通と宿泊・観光施設を組み合わせたプランを提供する際には、旅行時期や混雑状況などに応じて料金を変えるダイナミックプライシングも、料金設計の選択肢となります。
関連記事:「ダイナミックプライシングとは?AIを用いるメリット・仕組み・事例・需要予測における効果を解説!」
参照:国土交通省|完全キャッシュレスバスの実証運行の進め方について
地方の移動手段が不足している
地方では、人口減少や運転者不足などを背景に、バス路線の減便・廃止が課題となっています。国土交通省は2026年3月、公共交通を利用しにくい「交通空白」が全国に約2,500あると示しました。
観光型MaaSで交通手段の検索や予約を便利にしても、目的地までのバスやタクシーなどが不足していれば、旅行者の移動は十分に支えられません。
地域にある移動手段をつなぐだけでなく、交通事業者や自治体が連携して移動手段を確保することが重要です。
参照:国土交通省|「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定
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観光型MaaSの活用事例7選
観光型MaaSのサービス提供や実証実験に取り組んだ7つの事例を紹介します。
空港から市内観光までをつなぐ周遊パス(旭川/みずほリサーチ&テクノロジーズ/ジョルダン)

みずほリサーチ&テクノロジーズとジョルダンは、2025年10月から、旭川空港を起点とする観光MaaSの実証実験を行いました。
ジョルダンの「乗換案内」アプリに旭川専用の画面を設け、観光施設や飲食店などの情報と、バスを利用した経路検索を組み合わせています。アプリ内では、空港連絡バスと市内路線バスを利用できるデジタル周遊パス「あさくるパスPlus」も購入・利用できます。
パスには観光施設や飲食店などでの優待も付け、空港から市内への移動と、到着後の観光・買い物を一つのアプリで支援しました。
参照:みずほリサーチ&テクノロジーズ|旭川空港を起点に旭川市内を周遊する観光MaaSの実証実験を開始
AIオンデマンドバスと電子チケットで広域観光を支援(オホーツク/網走バス・JAL・JR北海道・斜里バス)

網走バス、JAL、JR北海道、斜里バスは、2025年7月から9月にかけて「オホーツク観光MaaSプロジェクト」の実証を行いました。
複数の交通機関を利用できる電子チケット「網走&小清水&知床ぐる旅パスポート」を販売し、網走・小清水から知床半島までを含む広域の移動を支援しました。2025年の実証では、AIオンデマンドバス「どこバス+plus」の運行範囲を女満別空港まで拡大しています。
あわせて、女満別空港から網走市内の対象ホテルへの手荷物当日配送や、観光施設・飲食店のチケットも用意しました。空港から観光地への二次交通と現地での体験を組み合わせた事例です。
参照:JR北海道ほか|網走バス、JAL、JR北海道、斜里バスが連携し、2025年度「オホーツク観光MaaSプロジェクト」を実施します
電子チケットでキャッシュレス観光(JR東日本/東北6県)

JR東日本は、東北6県で地域・観光型MaaS「TOHOKU MaaS」を2021年4月に開始しました。スマートフォン上で旅行プランを立てたり、交通チケットや観光チケットを購入したりできます。
2022年4月からは、期間を定めずにサービスを展開するとともに、レストラン、お土産店、観光施設などで使える電子チケット「エキトマチケット」の販売を開始しました。
地域ごとの交通サービスや観光施設をデジタルチケットでつなぎ、現地での周遊を支援する取り組みです。
参照:JR東日本|「東北デスティネーションキャンペーン」にあわせて観光型MaaS「TOHOKU MaaS」がスタートします!
参照:JR東日本|「TOHOKU MaaS」を社会実装し東北の観光のさらなる活性化を目指します
電子チケットとオンデマンド交通の活用(会津若松市)

福島県会津若松市を含む会津地域では、「会津Samurai MaaS」を通じて、鉄道やバスで使えるデジタル交通チケットを提供しています。観光客はスマートフォンでチケットを購入し、乗車時に画面を提示して利用できます。
また、会津Samurai MaaSプロジェクトの一環として、会津若松市などはVia Mobility Japanのシステムを用いたオンデマンド交通「MyRideさわやか号」の実証運行を2021年に開始しました。
利用者の予約に応じて運行経路を組み立て、アプリには乗車場所、車両の現在位置、到着予想時刻などを表示します。
参照:会津若松観光ナビ|スマホで買えるデジタル交通チケット 絶賛発売中 ― 会津Samurai MaaSプロジェクト ―
参照:みちのりホールディングス|Samurai MaaS:ダイナミックルーティングバス「MyRideさわやか号」の実証運行開始
宮崎・由布院での観光型MaaSの取り組み(ANA/トヨタ/小田急)

ANAは、交通事業者や自治体などと連携し、宮崎県と大分県の由布院エリアで観光型MaaSに取り組みました。航空機で訪れる旅行者と、現地の鉄道やバス、タクシーなどの移動手段をつなぎ、観光地への移動を便利にすることが狙いです。
宮崎市・日南市とその近郊では、トヨタ自動車が開発したMaaSアプリ「my route」を活用した実証実験を、2020年11月から2021年3月まで実施しました。複数の交通手段を組み合わせた経路検索のほか、デジタル交通チケットや地域の観光情報を提供しました。
由布院とその周辺では、小田急電鉄が開発した「EMot」を活用する実証が計画されました。鉄道、バス、タクシーなどを組み合わせた経路検索や、交通・観光施設のデジタルチケットなどを通じて、旅行者の周遊を支援する構想です。
参照:ANA|1次交通、2次交通、観光施設の検索・予約・決済を統合したサービス「観光型MaaS」の取り組みを開始
参照:宮崎交通|11月6日(金)からMaaS(マース)実証実験を開始します
観光モデルコースの提案に向けた実証(射水市/高岡市/氷見市)
富山県の射水市、高岡市、氷見市の各観光協会と駅探は、観光客の興味や移動予定に合わせて観光モデルコースを提案する実証実験で合意しました。
駅探の「旅程検索システム」に、JTBパブリッシングの観光情報データベース「るるぶDATA」や各観光協会の施設情報を組み合わせます。観光客が選んだ日付や興味に加え、コミュニティバスなどの時刻表を踏まえ、観光スポットを巡る行動予定と移動ルートを提案する構想です。
参照:駅探|富山県射水市、高岡市、氷見市との観光型MaaSに向けた実証実験の開始について
スマホアプリ不要でチケットレス(愛媛県/KDDI)
愛媛県南予地域では、KDDIや交通事業者などが連携し、2022年4月から「えひめいやしの南予デジタルフリーパス」を販売しました。対象となる鉄道やバスを利用できるほか、地域の体験プログラムの割引なども受けられる観光型MaaSの取り組みです。
専用アプリのダウンロードや会員登録をせずに購入できる点が特徴です。利用者は駅や車内などに設置されたNFCタグにスマートフォンをかざすか、QRコードを読み取り、表示されたデジタルフリーパスを提示して交通機関を利用しました。
参照:KDDI|えひめ南予きずな博 観光型MaaS事業「えひめいやしの南予デジタルフリーパス」のサービス開始
観光型MaaSについてよくある質問まとめ
- 観光型MaaSと一般的なMaaSの違いは何ですか?
MaaSは複数の移動手段を連携させ、経路検索や予約、決済などを利用しやすくするサービスです。
観光型MaaSでは、さらに観光施設や飲食店の情報、デジタルチケットなどを組み合わせ、観光地への移動と現地での周遊を支援します。
- 観光型MaaSにAIは必須ですか?
AIは必須ではありません。デジタルチケットや交通情報の連携を中心とする取り組みもあります。
AIは、利用者に合った観光情報の提案や、予約に応じて運行するオンデマンド交通など、目的に応じて活用できます。
- 観光型MaaSを導入すれば、地方の交通不足を解消できますか?
検索や予約を便利にするだけでは、移動手段そのものの不足は解消できません。
地域にある交通サービスを連携させるとともに、交通事業者や自治体が協力して必要な移動手段を確保することが重要です。
まとめ
観光型MaaSでは、交通手段の検索やデジタルチケットに観光情報を組み合わせ、旅行者の移動と現地での周遊を支援します。2025年にも旭川やオホーツクで実証が行われるなど、地域の交通事情に合わせた取り組みが続いています。
AIは、オンデマンド交通の運行や観光ルートの提案など、目的に応じて活用できます。一方、サービスを使いやすくするには、交通事業者間の情報・決済の連携と、現地の移動手段の確保も重要です。
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