最終更新日:2022-12-05
予知保全とは?予防保全・事後保全・予兆保全との違い、メリット・デメリットを解説

「予知保全って何?従来の保全手法と違う?」
「予知保全の導入で気をつけるべき注意点は?」
製造業やエネルギー業において今導入が増えているのがAIを活用した予知保全です。経年劣化の起こりやすいモーターなどの機械や設備の異常をAIで予知することで業務の効果、効率の向上を目指します。
無駄なコストもカットできると人気ですが、メリットやデメリットをきっちり把握して対策をたてていないと初期費用だけかさんでしまい、期待していた効果は得られません。今回の記事では予知保全とはなにか、従来の予防保全や事後保全との違い、間違えない導入方法の注意点をご紹介します。
読んでいただければ、自社での予知保全導入のベネフィット、導入までのステップが見えてきます。
実際に予知保全を導入した事例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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目次
予知保全とは?
予知保全とは、工場における設備などを継続的に監視し、劣化や故障が起きる前にメンテンナンスを行う手法です。監視にはIoTセンサーやPLC等を使い、電流値、温度、振動数や稼働音など、計測したデータを分析して、劣化や異常のタイミングを事前に予知します。
このデータ分析にAIを使うことが昨今増えてきています。
予兆保全と同義語で、より専門的な資料では「状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)」または「状態監視保全」と呼ばれることもあります。
AIとしては、データ分析や画像認識・分析、異常検知の技術が多く用いられます。加えて、統計手法を用いた予測システムも駆使します。AIによる未来予測システムの基本的な仕組みについてはこちらの記事で分かりやすく説明しています。
センサーデータやログデータの解析では、従来の機械学習が用いられることが多いようです。一方画像認識では、深層学習(ディープラーニング)の活用例が多くみられます。(ディープラーニングの用語解説)
異常検知の技術に強いシステム開発会社はこちらの記事で特集しています。
予知保全・予防保全・事後保全の違い
予知保全と混同される設備の保全手法に、予防保全・事後保全があります。
予知保全・予防保全・事後保全は以下のように異なります。
保全手法 | 方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
予知保全 | 稼働状況のリアルタイムなデータを元に機械の劣化や異常を予知 | ・点検時間が抑えられる ・交換時間を的確に判断できる ・ダウンタイムを短縮 |
導入コストが掛かる |
予防保全 | 耐用年数や使用回数など一定のルールを決めて、タイミングが来たら定期メンテナンスを行う | リアルタイム計測が必要ないためメンテナンス期以外のランニングコストが抑えられる | メンテナンスが無駄になってしまう可能性がある |
事後保全 | 設備に異常がでた後や故障してしまった後にメンテナンスを行う | メンテナンスのためのランニングコストが生じない | 異常や故障が重い場合は修復に長いダウンタイムが必要になる可能性 |
予知保全4つのメリット
予知保全の代表的なメリットを以下に紹介します。
交換時間を的確に判断できる
予知保全では、異常や設備の交換のタイミングを適切に把握できます。リアルタイムで常に設備の状況を把握できるからです。従来の予防保全では、決めたタイミングでメンテナンスを行うため、結果的には異常がなくてもメンテナンスを行ってしまう可能性があります。
しかし、予知保全では常に設備の状況を把握できるため、異常をリアルタイムで把握できます。その結果、無駄なメンテナンス作業も発生することなく、まだ使える部品を交換することもなくなります。
ダウンタイムを短縮
予知保全は故障や異常が起きる前に把握できるため、設備を使用できないダウンタイムの発生を防止できます。事後保全の場合、設備の異常や故障が発生してしまった後に交換やメンテナンスを行います。もし軽微の故障であれば重篤な問題にはならないでしょう。しかし、異常や故障が重かった場合は修理に余計な時間がかかってしまい、ダウンタイムが長引く可能性があります。
予知保全であれば故障や異常が起きる前から状況や故障の原因を事前に把握できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。ダウンタイムが短縮できれば、生産性が向上し機会損失を抑えられます。
点検時間が抑えられる
AIを活用した予知保全では、従来人力で行うしかなかった点検作業時間を大幅に抑えることができます。設備や機械のリアルタイム状況をIoTセンサーで取得し、AIを活用して分析できるからです。
点検作業をIoTやAIで行って、いつ故障しそうなのか、いつ異常なのかを把握します。点検時間を別の作業に回すことで効率性アップにもつなげたり、全体コストも抑えることができます。
教育・運用コストを抑えられる
予知保全では、担当者の教育や運用のコストを抑えることができます。経験を積んできたベテランの担当者であれば、経験と勘からどこの部分が故障しそうか、どこを修理すればいいのか対応できる場合があり、従来の予防保全だけでも対応が可能でした。しかし、すべての担当者が同レベルの判断を行うためには、ノウハウや知識の教育に時間やコストがかかります。
予知保全であれば、データを元に判断を行うため、ノウハウや知識がない経験が浅い担当者でもベテランと同程度の精度で対応できます。そのため、いままでかかっていた教育のコストやノウハウの伝承にかかっていた運用のコストを大幅に抑えることができます。
予知保全のデメリットは初期コスト
予知保全を導入するためには以下の初期コストが必要となります。
- IoTセンサー設置
- センサーからデータを送付するネットワーク構築
- データの管理や保存、分析するためのシステムやAIモデルの構築
センサーの設置やシステムの構築には、導入費用だけではなく、一定の作業時間も確保しなければなりません。場合によっては設備のレイアウトも変える必要があるかもしれません。導入してすぐに運用ができないことを認識しておきましょう。
その際、メンテナンスにかかるランニングコスト、ダウンタイムが生じた場合の機会損失など、全体の費用対効果を加味したうえで導入を検討しましょう。
AIを使う予知保全の導入方法4ステップ
ここでは、AIを活用した予知保全を導入するために必要なステップを以下で説明します。
1.予知保全を導入する目的を整理
なぜ予知保全の導入を検討しているのか整理しましょう。予知保全を導入することでどのような結果を求めているのか、どれくらいのコスト削減、精度アップを求めているのかなど具体的な導入目標を整理しましょう。費用対効果なども含めて検証します。なおこの際、AIの精度が100%でないことを前提に、現実的に業務で活用するためにどうしたら良いのかを事前に考えておくことで、最適な運用が可能になります。
2.外注か内製か決定
予知保全を導入するための体制を検討しましょう。大きく分けて以下の3つの方法があります。
- 自社内の人材で担当する
- AIシステム開発会社に外注する
- 必要な部分のみAI人材をスポット活用する
全体のコスト、自社内でAIスキルをどの程度蓄積していきたいか、どれくらいの予知精度のレベルを求めているかなどを軸に検討してみましょう
3.AIによる予想モデルの構築・最適化
すでに存在しているデータの洗い出しなどをもとに、AIによる予測モデルを構築してみます。その際、入手できる過去のデータだけでなく、設備や機械などにセンサーを取り付けて、将来的に継続してデータが取れるのかも確認しておきましょう。また、AIモデルから予測されたデータが業務で利用できるレベルかも確認します。自社だけでは対応が難しい場合は、自社の事業種類やニーズにマッチしたAIシステム開発会社に相談することがおすすめです。
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4.本番実装・PDCA
AIによる予測モデルを業務に利用できるレベルまで構築できたら、本番モデルの構築を行います。大事なのは、ただシステムを導入することではありません。システムを現場で実際に利用するスタッフに向けての説明を丁寧に行うことも重要です。いくらシステムを導入しても使ってもらわなければ意味がありません。
また、導入した後も定期的にPDCAを回し、最初に設定していた目的を達成しているのかを継続的に確認しましょう。
予知保全でAIを活用する際の注意点
AIを活用した予知保全を導入する際の注意点を紹介します。
最初からAIだけに判断を任せない
AIで異常発生タイミングを判断したからと言って、その精度は完璧ではありません。例えば、良質な教師データ(AIが学習のために用いるデータ)が揃っていなければ、AIでも的確な判断ができません。もし、AIのみに頼ったワークフローを設置してしまうと、AIがうまく機能しない場合にすべての生産ラインが止まってしまうかもしれません。
一定の精度が見込まれるまでは、AIによる予測システムと人の判断を並行して利用する方法を検討しましょう。
システムを理解する
AIによるシステムの特徴をしっかり理解しておくことをおすすめします。例えば、AIシステムが予測する異常発生タイミングと実際の発生タイミングの間にタイムラグが生じることもあります。タイムラグの原因は、ネットワークかもしれませんし、AIによる解析に時間がかかっているからかもしれません。システムの特徴を理解しておくことで、タイムラグやトラブルにも適切に対処できます。また、AIシステムもメンテナンスが必要となることも理解しておきましょう。
まとめ:予知保全の導入に外注を活用しよう
予知保全(予兆保全)は機器が持つデータを分析することで、設備や機械に劣化や異常が発生しそうなタイミングを予測してメンテナンスを実施する手法です。従来の予防保全と比べても無駄がなくなりますし、事後保全のように長期のダウンタイムを防止できるメリットがあり、導入している企業も増えています。
AIを活用した予知保全を実際に現場に導入する為には、AIによる適切な予測モデルを構築するための事前検証が重要です。AIシステムの構築で分かりにくい部分は、自社の事業種類にマッチしたAIシステム開発会社に相談してみてもよいかもしれません。
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