MaaSでAIがなぜ重要?不動産・医療・観光・物流でのモビリティ戦略・導入事例を解説!
最終更新日:2026年08月08日
記事監修者:森下 佳宏|BizTech株式会社 代表取締役

- MaaSは複数の移動手段に関する検索・予約・決済などを統合し、都市の渋滞緩和や地方の交通課題、物流の効率化といった社会課題の解決に寄与する
- オンデマンド交通や観光サービスとの連携により、地域住民や観光客の移動利便性を高め、地域の活性化にもつなげられる
- 交通事業者間でのリアルタイムなデータ開示やAIによる需要予測の精度向上が不可欠
デジタル技術の進展により、鉄道、バス、タクシー、カーシェアリングなど複数の移動手段をつなぎ、経路検索から予約・決済までを一体的に提供する「MaaS(Mobility as a Service)」の導入が進んでいます。
本記事では、MaaSの定義や歴史、CASEとの関連性といった基礎知識から、MaaSの導入によって期待されるメリット、国内外における具体的な活用事例までを詳しく解説します。
MaaSとは?

MaaSは、人々や物資の移動を単なる交通手段から考えるのではなく、決済やルート選択まで含めた最適化を目指す次世代の交通サービスです。自動運転やAIなどのさまざまなテクノロジーを掛け合わせて実現されます。
当初のMaaSの考え方は、一つのアプリで飛行機、列車、バスなどあらゆる交通手段の検索、予約、決済まで行えることをめざしていました。一方、最新のMaaSは交通手段のみならず、観光、物流、医療など生活全般を一つのアプリで完結することをめざしています。
MaaSを今後さらに進める中、AIの進化は重要であり、AIのレコメンド機能、AIオンデマンドによる自動走行などMaaSにおけるAI活用は他分野に渡ります。
MaaSの歴史
MaaSという概念は2010年代に欧州を中心に広がり、2014年にフィンランドで開催されたITS関連の国際会議などを通じて注目されるようになりました。
代表的な先駆事例が、フィンランドのMaaS Global社によるMaaSアプリ「Whim(ウィム)」です。2016年にヘルシンキで提供が始まり、鉄道、バス、タクシー、カーシェアリングなどの経路検索・予約・決済を一つのアプリに統合しました。
ただし、MaaS Global社は2024年に破産し、Whimのサービスも停止しています。現在利用できるサービスではありませんが、その後のMaaSの普及に影響を与えた先駆的事例として知られています。
MaaSの統合レベル
MaaSは以下のレベルが設定されています。
| レベル | 定義 | ユーザーの状況 |
|---|---|---|
| レベル0 | 情報の統合が全くなされていない状態 | 利用の都度、各交通機関のダイヤ料金を調べなければならない |
| レベル1 | 情報の統合がなされている状態 | 複数の交通機関を用いて、目的地まで最適なルート検索ができる |
| レベル2 | 予約、決済の統合がなされている状態 | 複数の交通機関の検索から予約、決済までを一つのサービス、アプリで完結できる |
| レベル3 | サービス提供の統合がなされている状態 | 一つのアプリで、交通機関だけでなくタクシーやレンタカーなども含めたあらゆる輸送手段の検索・予約・決済ができる |
| レベル4 | 政策の統合がなされている状態 | 交通のみならず、一つのアプリで観光、物流、医療が完結する |
レベル1は、世界各国でさまざまな企業がウェブサイトやアプリなどを使って実現させ始めています。レベル2については、ハブアプリから各交通手段提供機関の決済ページに飛ぶ形で一部実現しつつあると言えるでしょう。
日本のMaaSの現状
日本のMaaSの現状は、レベル1の経過状態と言われています。一部の地域では、さまざまな交通機関や観光施設を横断して、検索・予約・決済が行えるアプリがあります。全国的に交通機関を横断した情報の一元化はまだ行えておらず、検索の情報は統合の途中、予約、決済は各交通機関での取り扱いとなっています。
MaaSの統合レベルを引き上げる上で最大の障壁となるのが、複数の事業者にまたがるデータの機密保持とシステムのセキュリティ管理です。特に、自社の顧客データや運行情報を外部連携させる際、不透明なセキュリティ体制を持つ開発業者への依頼は経営上の致命的なリスクを招きかねません。
こうした懸念に対し、AI Market(エーアイマーケット)では、厳格な審査を通過した企業・サービスのみを掲載・紹介しています。累計1,000件以上の相談実績を持つコンサルタントが、技術要件だけでなくセキュリティ基準や法規制への適合性までを事前に整理するため、自社の資産を安全に保ちつつ、高度なデータ連携を実現できるパートナー選びを強力に支援します。
MaaSとCASEの関連性
自動車業界では、2016年以降「CASE」が注目されてきました。「CASE」とは、以下の頭文字をとったものとなります。
- Connected(コネクテッド化)
- Autonomous(自動化)
- Shared & Services(シェア・サービス)
- Electric(電動化)
Connected(コネクテッド化)は、IoTの発達によりネットワークで自動車と他の車や道路が接続されることを意味します。事故発生時の緊急通報システム、運行中のデータを自動的に測定し、保険料の算定を行うテレマティクス保険、盗難車両追跡システムなどが挙げられます。
Autonomous(自動化)は、衝突被害軽減ブレーキやオートクルーズコントロールの実用化が進められ、今後、さらに法整備とAIの進化に従い自動運転へ繋がります。
自動運転に用いられるAIの種類、将来性についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
Shared & Services(シェア・サービス)は、カーシェアリングやライドシェアリングなど自動車を共有するサービスとなります。カーシェアリングは日本でも2020年現在約300億円の市場規模にまで成長しています。
Electric(電動化)は化石燃料から電気へ自動車の動力源を移行することとなります。
MaaSはCASEの「Shared & Services(シェア・サービス)」の分野をより進化させた考え方と言えるでしょう。しかし、コネクテッド化、自動化もMaaSの上位レベルを実現するには欠かせない技術です。
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MaaSを導入するメリット5選

MaaSを導入することで実現するメリットは以下です。
- 予測機能による都心の交通混雑緩和
- 自動運転による公共交通活性化
- エネルギーマネジメントで環境汚染対策
- AIレコメンド機能による観光への波及効果
- 物流効率化
それぞれのメリットについて説明します。
予測機能による都心の交通混雑緩和
MaaSの進展により以下の状況が実現し、公共交通機関の利用促進に伴い交通渋滞の緩和が期待されます。
- 複数の公共交通機関のシームレスな利用
- カーシェアリング・ライドシェアリングの浸透
- タクシーやレンタカーのサブスクリプション化
- AIを活用した需要予測や配車・運行ルートの最適化
実際、フィンランドではMaaSの進展により、都心部の公共交通機関の利用は増加し、自家用車の利用は低下しました。
シームレスな利用を進めるには、公共交通機関の運行データを連携させるとともに、需要予測や配車・運行ルートの最適化などにAIを活用することが有効です。
特にバス領域では、需要に応じた運行ルートの最適化や予約制バス、車内安全管理などでAI活用が進んでいます。
自動運転による公共交通活性化
MaaSとAIによるオンデマンド交通の発達により、効率的な公共交通の運用やオンデマンド車両の運行、自動運転による移送が可能となるでしょう。日本における都会と地方の公共交通網の格差は拡大しています。地方公共交通の運行本数はここ30年で鉄道は約80%、バスは約54%まで減少しています。地方は、今後、さらに過疎化、高齢化が進展するでしょう。
交通情報が統合され、加えてAIによるオンデマンド交通の運用により、乗合バスやタクシーの効率活用が可能となります。結果として、地方でも免許返納者など交通弱者に対する対策、移動の活性化につながります。
関連記事:「タクシー業界でのAI活用法!導入メリット・注意点・企業実例を徹底解説」
エネルギーマネジメントで環境汚染対策
MaaSが浸透することで、公共交通機関やカーシェアリングの利用がより広く普及します。普及に伴い、自家用車の利用が減少し、自動車排出ガスの削減につながるでしょう。
また、AIの運行データの収集分析により、車両の効率的な運行、省エネルギー化が進められることも期待されています。
AIレコメンド機能による観光への波及効果
MaaSは、公共交通機関の検索、予約、決済のワンストップにとどまりません。人々の移動の目的には、観光も含まれます。観光型MaaSについてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
MaaSアプリにAIのレコメンド機能を搭載することで、以下のような情報を加味したパーソナライズされた最適観光ルート、ランチや観光スポットの提案も可能となるでしょう。
- 個人の当日の体調の変化
- リアルタイムの好み
- 天候
- 混雑状況
観光地間をつなぐバス、タクシー、レンタカーを、AIが個々の好みに合わせて最適な配車を決定したり、AIによる自動運転車の運行も期待されます。
物流効率化
物流の分野でもMaaSは、変化をもたらします。AIを用いたビッグデータの総合的な分析を通じて、リアルタイムに天候、渋滞状況などを管理できます。また、最適な車両ルートの提案、配送状況の一元管理を通じて、最適な混載など効率的な物流をAIが実現可能です。
最適な物流が実現することで、日本全体の6.2%を占める貨物自動車のCO2排出量の削減効果も期待できます。また、国土交通省による調査によると、2019年、日本の約70%の企業がトラックドライバーの不足と回答しています。
生産労働人口が今後下がり続ける中、MaaSによる物流効率化、AIによる自動運転車両の実現により、ドライバーの労働者不足の解消など社会問題の解決にも繋がります。
参照:「物流MaaSの推進|経済産業省」
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MaaS活用事例6選

都市交通を変えると期待されている、いわゆる通常型のMaaSの活用事例は以下です。
- MaaSの先駆的事例「Whim」(フィンランド)
- 複数の交通サービスを統合した「Moovel」(ドイツ)
- サブスクリプション型タクシー導入(芽室町)
- 複数の移動手段を一つのアプリで管理(トヨタ自動車)
- 交通・観光サービスを連携する「tabiwa by WESTER」(JR西日本)
- 障害者向けの移動サポートサービスを一元手配(羽田空港)
それぞれの事例について説明します。
MaaSの先駆的事例「Whim」(フィンランド)
「Whim」は、MaaSの代表的な先駆事例として知られるアプリです。フィンランドのMaaS Global社が2016年にヘルシンキで提供を開始し、鉄道、バス、タクシー、カーシェアリングなどの検索・予約・決済を一つのアプリに統合しました。
ただし、MaaS Global社は2024年に破産し、Whimのサービスも停止しています。そのため、現在利用できるサービスではなく、MaaSの普及に影響を与えた過去の事例として位置づけるのが適切です。
複数の交通サービスを統合した「Moovel」(ドイツ)
「Moovel」は、ダイムラー傘下のMoovel Groupが提供していたMaaSプラットフォームです。公共交通機関に加え、カーシェアリング、タクシー、レンタサイクルなど複数の移動手段を一つのプラットフォームにまとめ、経路検索から予約・決済までを行える仕組みを提供していました。
2019年には、BMW Groupとダイムラーがモビリティサービスを統合したことに伴い、Moovelを基盤とするマルチモーダルサービスは「REACH NOW」へ再編されました。さらに2020年には、自治体や交通事業者向けのプラットフォーム事業がドイツ鉄道傘下のMobimeoへ移管されています。そのため、Moovelは現在提供されている独立したMaaSアプリではなく、複数の交通サービスを統合した先駆的事例として位置づけられます。
参照:BMW Group and Daimler AG invest more than €1 billion in joint mobility services provider|BMW Group
サブスクリプション型タクシー導入(芽室町)

北海道芽室町では、AIを活用した経路最適化により、農村地域から市街地への買い物などの移動を支援する乗合型オンデマンド交通の取り組みが行われました。
農村地域の過疎化や公共交通空白地域への対応を目的とし、利用者からの予約に応じて、効率的な乗り合わせや運行ルートを決定する仕組みです。
複数の移動手段を一つのアプリで管理(トヨタ自動車)

トヨタ自動車と西日本鉄道が福岡県福岡市で実証実験を開始したアプリサービスです。アプリ「my route(マイルート)」は、対象エリアの移動手段をすべて組み合わせて検索できる「マルチモーダルルート検索」が実装されています。
検索対象には地下鉄・バスといった公共交通を始め、タクシー、レンタカー、自家用車、徒歩などすべての移動ルートの選択を提示します。そして、AIによる最適経路選択にて掲示されたルートは、同アプリ内で予約、決済まで可能です。
実証実験の後、2019年に福岡市と北九州市で本格導入されました。その際には、トヨタのレンタカーやカーシェア、京王電鉄バス、第一交通産業などが連携したほか、トヨタのキャッシュレス決済アプリ「TOYOTA Wallet」も導入されて決済手段が拡充しました。現在は、新幹線の予約や高速バスの予約決済まで検索、予約できます。
参照:トヨタと西鉄、マルチモーダルモビリティサービス「my route」を福岡市・北九州市で本格実施
交通・観光サービスを連携する「tabiwa by WESTER」(JR西日本)

JR西日本は、MaaSアプリ「tabiwa by WESTER」(旧setowa)を通じて、北陸、せとうち、山陰、九州などの各エリアを対象に、経路検索や周遊パス、観光・体験チケットなどを提供しています。
アプリでは目的地までの経路を検索できるほか、鉄道、タクシー、レンタカー、レンタサイクル、カーシェア、シェアサイクルなどの予約サービスとも連携しています。サービスによっては、外部の予約サイトやアプリへ移動して手続きを行います。
参照:tabiwaトラベル|tabiwa by WESTER
障害者向けの移動サポートサービスを一元手配(羽田空港)
2022年に、羽田空港を起点として、下肢障害や視覚障害をお持ちの方を対象に出発地から目的地までの移動における介護手配をオンライン一括で行うサービス実験が行われました。山手線沿線から航空移動を含めた大阪/京都/神戸エリアを移動するユーザーが対象です。障害者の方の事前情報を列車やバスや空港などの関係部署で事前に共有することで、ユーザーの移動がシームレスに行えるようになります。
また、実証実験で得られた移動データを分析し、移動経路全体のアクセシビリティや利用者の利便性を向上させる取り組みも行われました。「誰もが移動をあきらめない世界」の実現を目指した実証事例です。
MaaSについてよくある質問まとめ
- MaaS(Mobility as a Service)とはどのような次世代交通サービスを指しますか?
移動を単なる手段ではなく、検索・予約・決済までを統合した一つのサービスとして捉える考え方です。
飛行機、列車、バスなどの交通機関に加え、観光や物流、医療などの生活全般を一元的に管理することを目指します。
AIによるレコメンドや自動運転技術を掛け合わせることで、移動の最適化を実現します。
- MaaSを導入することで、企業や社会にはどのようなメリットがありますか?
主なメリットとして以下の5点が挙げられます。
- AIの予測機能による都市部の交通渋滞緩和。
- 自動運転やオンデマンド交通による地方公共交通の活性化。
- 車両の効率運行と電動化による環境負荷(CO2)の低減。
- パーソナライズされた観光ルート提案による地域経済への波及効果。
- ビッグデータ分析を用いた物流ルートの最適化と人手不足の解消。
- 観光型MaaSの主な特徴と利点は何ですか?
観光型MaaSの特徴と利点は以下の通りです。
- 複数の交通手段を一元的に検索・予約・決済可能
- デジタルチケットによる周遊パスの提供
- リアルタイムの混雑状況や観光情報の提供
- AIによる個人の嗜好に合わせた観光スポット推薦
- 地域の交通機関と観光施設の連携強化
- インバウンド観光客の利便性向上
- 観光地の回遊性向上と地域経済活性化
- 既存の交通データや顧客情報をAIで解析し、MaaSに応用することは可能ですか?
はい、可能です。AIを用いたビッグデータ分析により、需要予測や最適ルートの算出ができます。ただし、適切なアルゴリズムの選定やデータクレンジングが必要です。AI Marketなら、分析に特化した企業やMaaSの実装経験を持つ開発会社をピンポイントで紹介できるため、技術的なミスマッチを最小限に抑えられます。
まとめ
MaaSの進展は、交通インフラの利便性を高めるだけでなく、観光や物流など、移動と関わる幅広い分野に新たな価値をもたらします。
一方で、複数のステークホルダーが関わる複雑なシステム構築には、確かな技術力と実績を備えたパートナーの存在が欠かせません。MaaSを軸とした新規事業の立ち上げや既存サービスの改善を検討される際は、専門家の知見を借りることがプロジェクトを成功に導くための最短経路となります。

AI Market 運営、BizTech株式会社 代表取締役|2021年にサービス提供を開始したAI Marketのコンサルタントとしても、お客様に寄り添いながら、現場のお客様の課題ヒアリングや企業のご紹介を5年以上実施しています。これまでにLLM・RAGを始め、画像認識、データ分析等、1,000件を超える様々なAI導入相談に対応し、参加累計8,000人を超えるAIイベントを主催。AIシステム開発PM歴8年以上。AI Marketの記事では、AIに関する情報をわかりやすくお伝えしています。(JDLA GENERAL 資格保有)
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