最終更新日:2023-07-13
介護業界のAI活用サービス事例6選!ロボット・コミュニケーション介助徹底解説【2023年最新】

さまざまな職種で人手不足が叫ばれる中で、介護業界は最も人出が不足している業界の1つであるといえます。少子高齢化はこれからも進み、人手不足問題は放っておいたのでは解決しそうにありません。
そこで、AI(人工知能)を介護に使おうという動きが出てきています。人手不足解消だけにとどまらず、AIは介護の現場をさらに質の高い物へと進化させることができるかもしれません。この記事ではAIを介護に活用した場合のメリットやデメリット、そして具体的な介護サービスについて解説します。
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目次
介護業界が抱えている問題!
まずは現在の介護業界が抱えている問題について整理してみましょう。
人手不足
冒頭でも述べた通り、人手不足は深刻な問題です。すでに人手不足により一人当たりの仕事量が多く、休憩すら取れない職場もあるそうです。
今後も日本の人口は減少の一途をたどると考えられ、人手不足は引き続き介護の現場の大きな問題として残り続けることでしょう。
体への負担
介護の現場では体力が求められます。介護サービス利用者の体を抱きかかえるなど、介護をする側にかかる負担はかなりのものです。
継続的に負荷が大きい状況が続くと、腰痛などを抱え、通院や服薬が必要になるかもしれません。
利用者との人間関係
介護の現場では人と人が強く触れ合います。時には介護サービス利用者からの心無い言葉に傷ついたり、利用者の家族から無理な要望を聞かされたりすることもあるでしょう。
生活に密着するサービスであるために、ほかのサービス業に比べても利用者やその家族とより深いつながりが求められ、それが負担になることもあります。
送迎業務への負担
直接的な介護にばかり目が行きがちですが、送迎も大きな負担となっています。2016年に経済産業省が行った調査によると、デイサービス業務のなかで送迎に費やされる負担は大きく、全体の約3割を占めているそうです。
そのなかでも、一番時間が割かれるのが、どのように各家を回るかの送迎計画を立てる業務。送迎計画を立てるには熟練したスタッフが必要であり、特定のスタッフに負担が集中しがちだといいます。
介護xAIで実現する5ポイント
さまざまな問題を抱える介護業界ですが、それらの問題をAIによって解決する動きがみられます。介護業界にAIを導入することで以下のメリットを期待できます。
- 体調の変化を早期予測
- 介護施設の最適化
- 心理的負担の軽減
- 緊急時への素早い対応
- 送迎業務の最適化
それぞれのメリットについて見ていきます。
体調の変化を早期予測
介護の現場では、症状がひどくなる前に体調の変化を早期に予測することが求められます。予測といえばAIの得意分野です。
たとえば、大植病院の中村洪一医師は、皮膚病変の画像を送るとAIで分析し、医師への相談などの措置をうながすスマホアプリを開発しました。
これにより、重篤化する前に診察を受けることができ、治療までの時間を短縮することができます。
介護施設の最適化
介護を行うには、インフラとなる施設や家の造りも重要です。しかしながら、介護向けリフォームを請け負える会社は数が限られており、工事に1ヶ月以上かかることもあります。
そこで、AIを利用して現場の写真と寸法計測だけでかんたんに見積もりを出すAIシステムが開発されました。これにより、1ヶ月以上かかっていた工事期間を2週間に短縮できるそうです。
心理的負担の軽減
介護ロボットは不足する介護従事者を補うことができるといわれていますが、効果はそれだけではありません。
介護を受ける側にとっても、人に介護されるのは「申し訳ない」とか「恥ずかしい」といった心理的な負担が存在します。ロボットが相手であれば、そのような心理的負担を感じずに気軽に介護を受けることができるでしょう。
ロボットにAIを搭載するメリット、これからの課題点、導入事例についてこちらで特集しています。
緊急時への素早い対応
人間にはどうしても休んだり寝たりといった、仕事を行わない時間が必要です。これに対して、AIは24時間365日いつでも稼働することが可能。不測の事態が起こったとしても、いつでも素早く対応することができます。
送迎業務の最適化
上でも紹介したとおり、送迎業務は介護の現場における大きな負担の1つです。そのなかでも大きなウェイトを占めている送迎計画はAIによって提案できます。安全運転や安全な場所での乗降介助をナビゲートする機能もあり、送迎業務にかかる負担が大きく緩和されることでしょう。
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介護業界のAI活用サービス6選
介護業界向けのAIサービスは各企業によりすでに導入および活用がなされています。実際にAIを活用しているサービスと、その具体的な導入事例を見てみましょう。
A.I.Viewlife(エイ アイ ビューライフ 株式会社)
A.I.Viewlifeは介護現場の「見える化」を実現する介護見守りロボットです。転倒などの危険動作や、起き上がりなどの危険予兆動作を広角IRセンサーとAIによって検出し、重大な事故の防止につなげることができます。
実際に導入した結果、ヒヤリハットや介護事故件数が0になったり、介護施設の入居者に対する訪室回数が減少したり、介護する側の夜勤ストレスが減少したりといった効果があったそうです。
Palro高齢者施設向けモデルlll(富士ソフト株式会社)
Parloはユーザーと会話でコミュニケーションをとることができるロボット。日ごろのおしゃべりに付き合ってくれたり、踊ったりうたったりといったレクリエーションに活躍したりします。また、高齢者に対する見守り機能も現在準備中とのことです。
離れて暮らす家族にとっても、「PARLO つながリンク」というアプリで、Parloを通して見た日々の暮らしを垣間見ることが可能。安心感を得ることができます。
DRIVEBOSS
介護の現場のなかでも負担の大きい、送迎業務を支援してくれるAIがDRIVEBOSSです。
送迎計画作成には、車両台数、時間指定、同乗者同士の相性など、さまざまな要素を考慮する必要があります。これまでは熟練のスタッフでないと計画作成は難しかったのですが、そのような制約条件をAIにインプットすることで、DRIVEBOSSはボタン1つでかんたんに効率的な送迎計画を自動作成可能です。
また、送迎者のカーナビに送迎計画を自動転送することで、安心して運行できるルートの案内や安全運転支援もできます。
アイオロス・ロボット(Aeolus Robotics Corporation)
アイオロス・ロボットは、AIを搭載した介護支援ロボット。人工知能、自律走行機能、2本のアーム、3Dビジョンといった、人間の脳、脚、手、目に相当する機能を持っており、さまざまな活用が可能です。
たとえば、人物を認識しその姿勢から倒れていることを認知したり、洗濯物やおむつ、ごみなどを運搬したり、各居室の見回りをしたりといったことができます。
また、人物認識機能を用いて、特定の人物が一人で歩いていたり、外に出ようとしたりした場合にスタッフに通知することも可能。UV-Cライトを用いて、人の手が触れる箇所を除菌することも可能で、感染症対策にも役立つことでしょう。
日本では、丸文株式会社が販売しています。
介護における次世代の見守りシステム(マクニカ/オムロンヘルスケア)
AIやIoTのトータルサービスを手掛ける株式会社マクニカは、さまざまな医療ヘルスケア機器メーカーの生体活動データを測定するIoTセンサーとの連携によって見守りシステムや介護サービスの利用者管理を実現しています。ヘルスケアアプリケーション向けのクラウドサービスである「AttentiveConnect」によって介護サービスの利用者管理や、生体活動データの表示管理などをクラウド上で行えますし、日々の記録業務の自動化も実現可能です。IoTセンサーでできること、他の業界での活用事例についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
例えば、オムロンヘルスケア株式会社の通信機能を備えた上腕式血圧計と連携して、測定した血圧データをBluetooth経由で自動取得できます。
対話型AIの介護モニタリング(KDDI、NICT)
KDDI株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、NECソリューションイノベータ株式会社は、高齢者向けの対話システムAIを活用した介護モニタリングの実証実験をおこなっています。
介護モニタリングとは、ケアマネージャーが高齢者の自宅などを訪問して、健康状態や生活状況の変化を確認する業務です。ケアマネージャーの業務全体の4分の1を介護モニタリングが占めています。
介護モニタリング支援のマルチモーダルAIシステムの「MICSUS」の実証実験を成功させました。この実証実験で用いられた対話AIシステムはマルチモーダルAIを実装し、ぬいぐるみ型の専用端末とスマートフォンを活用して、高齢者の健康状態や生活状況の変化を確認しました。結果として、面談と記録業務に要する時間を7割削減できたということです。
こちらでマルチモーダルAIとは何か詳しく説明しています。
今後の介護業界とAIサービスはどうなる?
すでに導入されているAI技術がある一方で、将来に向けた介護の現場向けのAIサービスも日々開発されています。その例をご紹介しましょう。
AIサービス導入の加速化
AIサービスの介護の現場への導入はさらに進むと考えられます。たとえば、送迎は無人の自動車やドローンで行われ、排せつや入浴、服薬もロボットによって支援されるのではないでしょうか。また、VRやARを利用した、居室やリビングでの世界旅行などのリクリエーションも体験できることでしょう。
これにより、ただ単に介護の人材不足を補うだけでなく、現在よりも高い質の介護サービスが提供可能になると考えられます。
生体チップの埋め込み
人体に対する生体チップの埋め込みも一般的に行われることでしょう。これは、血液中のブドウ糖によって発電するバイオ電池により、充電不要で一度埋め込んだら使い続けられるものです。
生体チップから送られてくる情報はAIが一元的に処理し、ロボットや介護スタッフに指示が送られます。
既に期待されているAIサービスも!
未来の介護の現場で活用されるAIサービスを垣間見られる例が、東京大大学院情報システム工学研究室が開発中の「ムサシ」です。
ムサシは等身大のロボットであり、AIによって運転技術を学習。カメラとセンサーで周囲を認識し、ハンドルやペダルを操作して車を運転可能します。
将来はムサシを発展させ、高齢者などの介助や支援ができるロボットの開発を目指しているとのことです。
介護業界にAIを導入する際のデメリット
介護の現場へのAIの導入はいいことばかりではありません。デメリットについて解説します。
- 高額な導入費用
- 操作性の難易度
それぞれのデメリットについて見ていきます。
高額な導入費用
一番のデメリットは高額なコストです。介護向けのAIはまだまだ普及率が低く、価格が高いのが現状です。
たとえば、厚生労働省が実施した調査によれば、介護ロボットを導入しない理由として最も多かったのが予算の問題とのことで、全体の59.3%に上ったそうです。
操作性の難易度
AIは最新テクノロジーを使った技術だけに、その活用にはIT機器に対する一定の知見が求められます。各社とも使いやすいものを目指して開発をしていますが、まだまだ使用に対する障壁があるのが実情です。
AIは利用者のサポートにも欠かせない!
この記事で紹介したように、AIは単に介護に従事する人間の人材不足を補うだけでなく、介護を受ける側の「申し訳ない」という気持ちを軽減するというメリットもあります。また、将来的には、人間だけでは提供できないような質の高いサービスを提供することもできるようになるでしょう。
介護業界向けAIサービスの発展には、今後とも要注目です。
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