最終更新日:2024-08-18
飲食業界でAIを生かす方法は?活用事例6選・メリット・デメリットを徹底解説!
国内ファミレス最大手すかいらーくグループ各系列店ですっかりおなじみのネコ型配膳ロボット「BellaBot」も、実は飲食業界で進むAI導入の一例なのをご存じですか?
飲食店へのAI導入は、人手不足や労力削減など多くのメリットをもたらしてくれます。さらに「継続的な労力が欲しい」「即戦力が欲しい」といった願いまで実現することもできます。
本記事では、AIを飲食店に導入するメリットやデメリットから、実際に導入している店舗の事例まで解説しています。最後までお読みいただければ、飲食店にAIを導入すると、どんな課題を解決できるようになるかを知ることができます。
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AIを飲食店に導入する7つのメリット
飲食店にAIを導入することで得られるメリットは以下です。
- 従業員の労力削減
- 人手不足を解消
- スタッフ教育を任せられる
- 来客数を予測
- 多言語に対応
- 顧客満足度向上
- 予約受付の自動化
- 発注業務の自動化
それぞれのメリットについて解説します。
従業員の負担削減
これまで人間が行っていた業務をAIに任せることで、従業員の負担を削減することが可能です。飲食店では、主に以下の業務をAIに任せることができます。
- 配膳
- バッシング
- 予約受付
- 外国語の対応
- 事務作業
有効に活用すれば、飲食店の3Kである「汚い・危険・キツイ」の「キツイ」を大浜に解消できます。
人手不足を解消
飲食店では、慢性的な人手不足が深刻化しています。より少ない人員で店が回せるようになるのは、AI導入の非常に大きなメリットです。
AIを活用することで、人間が行うべき作業工数が減るため、人手が少なくても店舗が回るようになります。人的リソースが不足するために閉店せざるを得なかった年末年始や深夜帯も開店することで売り上げアップにつながるかもしれません。
スタッフ教育を任せられる
新人スタッフの教育にAIシステムを活用する企業が増えています。
飲食業界は正規社員スタッフが少なく、入れ替わりが多いアルバイトやパートタイムが多い傾向があります。スタッフの入れ替わりは新人教育コストの上昇につながります。また、既存従業員の業務負荷も上昇する悪循環を生み出しかねません。
AIをスタッフの教育に活用できれば、新人が入るたびにお店全体の作業効率をむやみに下げる必要はありません。教わる側にとっても、手順を見失ってしまったときに、忙しそうな先輩従業員ではなくAIに問い合わせることで解決できるのはメリットでしょう。
来客数を予測
AIの予測能力を利用することで、曜日や時間ごとの来客数を予測することができます。来客数予測を活用することで、適切な従業員数を配置できるようになるため、結果的に従業員の負担も減り、働きやすい環境の構築にも繋がります。
また、AIカメラを活用すると、自動で正確な来客数や来客時間を記録できるため、労力を大幅に削減することも可能です。
こちらの記事では、AIカメラの活用事例、メリット・デメリットについて解説しています。
多言語に対応
AIの同時翻訳システムを利用すれば、外国語を話すお客様と簡単にコミュニケーションをとることが可能です。
AIの導入というと、機械的な対応となり冷たい印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし、人間による対応とAIを組み合わせることで、より良い接客ができるでしょう。
顧客満足度向上
AIを活用し、素早くて的確な接客や外国語のお客様とのスムーズなコミュニケーションが実現すれば、顧客満足度を向上できます。
また、AI機器でもできる作業をAIに任せることで、従業員が”おもてなし”や接客といった人にしかできない業務に集中できる環境を構築可能です。そのようにして顧客満足度が向上した事例も多数あります。
予約受付の自動化
従来人が行っていた電話対応を、チャットボットやボイスボットに任せることで予約受付業務を自動化できます。
まだ、IVR(電話自動応答)を導入している飲食店も多いでしょう。しかし、ボイスボットやチャットボットはAIが対応するため、かなり複雑な質問にも答えることができます。顧客は不安点を解消してから来店できるため、顧客満足度の向上にも繋がります。
こちらの記事で飲食店を含むチャットボットの導入事例を解説しています。
ボイスボットについてはこちらの記事で導入事例を解説しておりますので、参考にしてみてください。
発注業務の自動化
来客数の予測システムや他のAIシステムを組み合わせることにより、発注業務を自動化することができます。
発注業務の自動化は、発注業務の省力化を実現することはもちろん、AIの予測に応じて適切な量の仕入れをすることができるため、食品ロスを減らすことも可能です。
AIを飲食店に導入する3つのデメリット
AIを飲食店に導入するデメリットは、主に以下があります。
- イレギュラーに弱い
- おもてなしの機会減少
- 初期費用・運用費用が必要
それぞれのデメリットを解説します。
イレギュラーに弱い
AIは学習した内容を基に業務をこなすため、まったく学習していないイレギュラーな対応には向きません。
そのため、AIに任せっきりにするのではなく、AIがしっかり機能しているかをチェックしていく必要があります。また、従業員によるサポートが必要な場合には、事前にそのことをスタッフに周知しておく必要もあります。
おもてなしの機会減少
店舗の第一印象である受付をすべてAIに任せたり、接客機会である配膳をすべてAIに任せてしまうとおもてなしの機会が減少してしまいます。
しかし、この問題はAIと人の業務棲み分けを明確にすることで解決可能です。発注やバッシングなどの顧客満足度と直接繋がらない業務をAIに任せることで、その分従業員の手が空き、おもてなしの機会を逆に増やすことができます。
「冷たい」印象を持たれるAIですが、適切な場面でAIと人を使い分けることにより、おもてなしの機会を増やすことが可能です。
初期費用・運用費用が必要
AIを導入するには、初期費用や運用費用がかかります。そのため、初期段階では数十万円~数百万円の予算が必要になることもあります。
しかし、AIを活用することで、人件費を削減や、顧客満足度の向上による収益アップを実現できるため、活用次第では金銭的に得をすることが可能です。
別記事で、AIシステムを導入する際の費用相場を解説していますので併せてご覧ください。
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飲食店のAI導入事例6選
ここでは、飲食店にAIを導入した例を紹介します。実際の事例を知ることで導入メリットがわかりやすくなり、導入後のイメージが付きやすくなります。
AI導入を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
AIカメラによる人流の可視化で人件費削減(ライズウィル/EBILAB)
居酒屋を経営するライズウィルは、来客を予測する株式会社EBILABのシステムを導入して適切な人員配置を行うことで人件費率を5%以上削減しました。AIカメラにより、お店の前の通行人数や入店数を可視化して販促施策の前後を比較できるようにしています。
これまで、26%以下であればよい方だった人件費率が、AI導入後は20%を切る数値にまで改善することができているようです。
また、人流の把握を食品の仕入れにも反映することで、食品ロスを減らすことにも繋がっています。このように同社は、AIを導入することで人件費と材料費を削減でき、無駄な出費を抑えることに成功しています。
AIの自動発注で棚卸業務の負担軽減(福しん/Goals)
ラーメン・定食チェーン店を経営する福しんは、株式会社GoalsのAI自動発注サービス『HANZO』を導入することで発注を自動化し、棚卸業務の負担を軽減することに成功しています。
これまでは、必要な材料を人が考えて注文票に打ち込んだり、在庫管理を徹底するために注文のない日にも「在庫:1」と入力しなければいけなかったりと、発注に大きな時間を取られていました。
そこにAI自動発注システムを導入することで、AI売上予測や自動発注システムを利用できるようになり、来客数予測に基づく適切な発注や在庫数の自動打ち込みが可能となりました。同社は、AIの機械学習によるさらに正確な発注業務を実現し、将来的には人間による発注業務をなくすことを目標にしています。
AI搭載ロボットに任せることで全体接客品質が向上(焼肉きんぐ/アイリスオーヤマ)
物語コーポレーションが運営する「焼肉きんぐ」は、アイリスオーヤマが提供するAIを活用した配膳ロボットで料理の提供と下膳(バッシング)を行うことにより接客品質の向上を実現しました。
同社は、AIに任せられることをAIに任せ、従業員がその分、肉の焼き方のアドバイス、商品説明、タブレットの操作方法など「人でなければ生み出せない価値」を生み出すことに集中しています。その結果、AI導入で空いた時間を丁寧な接客に充てたり、より良い空間を生み出すことに成功しています。
このように、AIに任せられることをAIに任せ、人でなければ生み出せない価値を最大化することで、顧客満足度を向上させることもできます。
別記事で、AIxロボットの可能性、相乗メリットについて解説していますので併せてご覧ください。
ドライブスルーの効率をAIカメラで監視(Plainsight)
米企業Plainsightでは、AIカメラを活用した画像認識によってドライブスルーの運用効率を監視するサービスを提供しています。特に新型コロナの流行以降、ドライブスルーの需要が急増しました。疫病の流行が落ち着いたこれからも、この購買習慣は継続すると予想されています。
ドライブスルーを利用する顧客が急増したことで、ドライブスルーの待ち時間は1分近く増加したとの調査結果もあります。誤注文も増加し、全注文の15%を占めたと同じ調査で説明されています。そのため、多くの顧客が列の途中で離脱している状況が観察されていました。
Plainsightのシステムでは、AIカメラを用いて行列に並んでいる自動車の待ち時間を分析して、得られた結果に基づいて途中離脱を防ぐための手順もキッチンに伝えることができます。企業は顧客が列に並んでいる時間データを収集できるだけでなく、リピーターに関する洞察を収集して、パーソナライズされた注文や追加の特典も提供できます。
こちらで、AIによる画像認識の仕組みについて解説しています。
全自動でパンを識別するレジ(アンデルセン/ブレイン)
ベーカリー大手アンデルセンでは、AIによる画像認識を使った株式会社ブレインの全自動レジBakeryScanを導入しています。トレイ上のパンの種類・値段をAIカメラで一括識別するシステムです。
包み紙やビニールで放送されていない状態でパンを販売するベーカリーでは、商品にバーコードを印字できません。それで、店員はすべての商品の価格を記憶するか、一つ一つリストと照合していかなければなりませんでした。BakeryScanはディープラーニングを使って、トレイ上のパンの画像を認識し、どのパンがいくつ購入されているかを識別して自動計算します。
このシステムの導入により、新人スタッフも勤務初日で即戦力として活用できます。また、入力時間を半分近くに短縮できたのでお客様を店内で待たせることも少なくなりました。
AI翻訳機の活用で外国人客が増加(築地すし好)
築地すし好ではAI自動翻訳機「ポケトーク」を導入することにより、外国人とのコミュニケーションがより取れるようになりました。
これまで、海外観光客の多く訪れる築地すし好では、外国人への対応を言語が堪能な従業員に頼る状況であり、一部の従業員への負担に繋がっていました。そこで、AIによる自動翻訳が可能な「ポケトーク」を導入することにより、従業員全員が外国人への対応ができるようになり、一部の従業員への負担を解消できました。
また、外国人への要望にきめ細かく対応できるようになったため顧客満足度が向上し、良い口コミによる外国人の来店やリピーターが増加しました。外国人で満席になることもあるようです。
このように、AIを導入することによって言語の壁を乗り越え、より良いサービスを提供することが可能になっています。
まとめ|飲食店へのAI導入は人手不足・労力削減に役立つ
本記事では、飲食店へのAI導入メリットとデメリット、導入事例を解説してきました。飲食店へのAI導入は、経済的に有利になるだけでなく、お客さんへのより良いサービス提供にも繋がります。
ただし、抱えている問題によって必要なAIは異なります。AIのメリットを最大限引き出すためにも、まずは自社のニーズを検討し、ニーズ解決のための最適なAIを選定するようにしましょう。
AI Marketでは、
高専、理系国立大学にて工学・農学を専攻後、AIを中心にテクノロジー調査や記事執筆を実施中。
AI開発会社やDXコンサルファームにて、AIのビジネス活用やテクノロジーの技術調査記事などを多数寄稿している。