最終更新日:2023-01-28
エッジAIとは?活用事例9選!カメラ分析・エッジコンピューティングでの活用【2023年最新】

エッジAIが近年関心を集めており、様々な業種で活用されつつあります。エッジAIとは、カメラや車、機械デバイスなどの現場近くの端末に直接AIを搭載することで推論処理を行うことができる技術です。
特徴としては、セキュリティ・高速性・コスト削減です。でも、具体的なメリット、活用方法については分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、実際にこれらの特徴を持つエッジAIを導入し、活用している事例・応用例やユースケースを紹介します。
以下の記事では、AI MarketがオススメするエッジAI開発会社も紹介しておりますので、ぜひこちらもご参考ください。
目次
- 1 エッジAIとは?
- 2 エッジAIのメリット
- 3 実際のエッジAI導入事例
- 3.1 画像解析技術を活用した人物行動分析サービス
- 3.2 振り込め詐欺を未然に防ぐソリューションの実証実験を北洋銀行で実施
- 3.3 Yahoo!知恵袋アプリの不適切投稿を削減
- 3.4 自律走行・遠隔制御向けの「映像認識AI」「アプリケーション」開発
- 3.5 施設内の正確な状況把握と、介護業務の効率化を実現
- 3.6 農機の完全無人化を目指すクボタの新たな一歩
- 3.7 ソニーグループら、エッジAIとLPWA技術による放牧牛管理と金融機関のABL管理の省力化の実験を開始
- 3.8 東芝、エッジデバイス上で高速に動作する音声キーワード検出機能付き話者認識AIを開発
- 3.9 ミサワホームの未来コンセプト住宅にドローンによる個別配送システムを実装完了
- 4 まとめ
エッジAIとは?
エッジAIとは、エッジ(端)、つまり各ネットワークの端末デバイスに搭載されたAI(人工知能)のことです。端末デバイスはカメラや車、機械デバイスなどの現場近くの端末のことを指し、直接AIを搭載することで推論処理を行うことができるようになります。
エッジAIには2種類
エッジ端末のタイプには以下2種類があります。
- エッジAIで推論のみを行って、クラウドと接続して学習データやモデルを更新する
- エッジAIのみで推論と学習を行い、クラウドとの接続が必要ない
エッジAIのメリット
エッジAIの特徴としては、セキュリティ・高速性・コスト削減が挙げられます。
セキュリティ面
セキュリティ面では、外部にデータを送信せず解析が可能であるためプライバシー保護や取得したデータの漏えいのリスクを極力減らせます。
高速性
高速性は、リアルタイム処理が可能で、高解像度の画像や映像もデータ処理が可能です。データの送受信の手間や時間がかからないためパフォーマンスも向上します。
低コスト
コスト面では、ネットワークを使用しないので通信費用を削減できます。
実際のエッジAI導入事例
エッジAIを実際に導入している事例・応用例を9例ご紹介します。
画像解析技術を活用した人物行動分析サービス

電機メーカーの日本電気株式会社(NEC)は、エッジコンピューティングソリューションを多数手がけ、その内の一つに「画像解析技術を活用した人物行動分析サービス」があります。
これまでの店舗マーケティング担当者の課題として、来店者の購買に至るまでの行動、または何も買わずに帰った非購買者行動の分析ができないことがありました。小売店舗での来店者の購買行動の取得には、POSデータによる購入実績や目視での情報収集しかなかったためです。
そこで、カメラの映像から、人物検出、追跡による動線抽出可能な画像解析技術を活用し、これまで取得できていなかった行動を可視化することで、データを集め分析できるようにしました。
店舗に設定したカメラ映像をエッジコンピュータに取り込み、搭載された解析エンジンにより人物検出を行い、人物の動きを予測して追跡します。このとき個人を特定するデータは破棄して残らないようにします。
人物の座標データはクラウド上に集約し、あらゆるデータとして分析結果を提示し、マーケティング担当者は場所を選ばずウェブ経由で店舗の来店者の行動把握が可能となります。
振り込め詐欺を未然に防ぐソリューションの実証実験を北洋銀行で実施

電機メーカーの株式会社JVCケンウッドは、オープン系システム開発を手掛ける株式会社ビズライト・テクノロジーと共同開発したエッジAIカメラを活用して、地方銀行の株式会社北洋銀行の実店舗で、振り込め詐欺やその他詐欺を未然に防ぐソリューションを導入しました。
金融機関の店舗内で電話をかけながらATM操作をしている、順番を待っているなどの行動をしている来店客をエッジAIカメラで検出して行内の職員へ通知します。状況に応じて職員が声がけをすることで、振り込め詐欺や特殊詐欺などを未然に防ぐというものです。
プライバシー保護の仕組みを整備し、特に取り扱いには注意を払わなくてはなりません。このエッジAIカメラは、映像を録画せずカメラ内でAIによるディープラーニング処理を行い、サーバーへ映像を送信せずにカメラで独自分析可能なので、プライバシー情報の漏えいの危険性が極めて少ないことが特徴です。
AIを搭載した防犯・監視カメラの活用例についてはこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
Yahoo!知恵袋アプリの不適切投稿を削減

eコマースを手掛けるヤフー株式会社のサービス「Yahoo!知恵袋」では、日々様々な内容の質問とそれに対しての回答が投稿されています。このやりとりの中には、他ユーザーが不快に感じるような内容のものもあり、そのような投稿が目に付きにくくなるよう対策を進めていました。
そこで、投稿内容が適切であるかを機械学習を用いた判定をモバイルデバイス上で行うことで、投稿前にリアルタイムでユーザーへ通知する取り組みを行いました。
入力内容が不適切な可能性がある場合には、警告文を表示して投稿をとりやめるなどの行動をとってもらうことで、不適切な内容の投稿を減らすことを可能としました。
スマートフォンなどのモバイルデバイス上で推論の実行が可能なので、サーバーへの入力データの送信と推論結果の受信のネットワークを介したやり取りが必要なくなり、リアルタイムに近いパフォーマンスで推論結果を得られます。
また、通信の必要がないので通信コスト削減や、セキュリティリスクの軽減にもつながり、通信環境のない状況であっても推論の実行が可能です。
自律走行・遠隔制御向けの「映像認識AI」「アプリケーション」開発

携帯通信事業のNTTドコモ九州支社は、久留米工業大学と共同で自動運転車いすを遠隔から操縦する実証実験を開始しました。
この「リモート手助け」は、高速通信規格の「5G」の環境下で、高精細な映像伝送によって遠隔地のスタッフが遠隔操縦で手助けすることによって、介助者なしでも自由に移動可能とする技術です。
通常は自動走行ですが、走行不能となった場合にカメラ映像をセンターへ送り、遠隔地から安全な場所へ移動させることを可能としました。
この自動運転車いす「パートナーモビリティ」は、複数種のカメラとエッジAI対応5Gデバイスを搭載しています。このデバイスのAI処理機能で自動運転の補助が可能で、通路の障害物の認識や通行人までの距離測定をする異常・障害物検知機能や、遠隔地への映像の送信の際に映り込んだ人の顔にぼかしを加えるプライバシー保護機能を備えています。
これら機能はアクセルが開発した「ailia SDK」を用いてAI実装しています。ailia SDKは、プラットフォームに対して個別最適化を行い、エッジAI対応5Gデバイスにおいて高速演算処理を行うことで、高精度で高速な推論推論を実現しており、ステレオカメラからの映像や深度情報の取り込みなどとAI処理の同時実行を可能にしています。
AIカメラの仕組み、メリット・デメリット、他の活用事例についてこちらの記事で特集しています。
施設内の正確な状況把握と、介護業務の効率化を実現

写真関連、複写機事業を手掛けるコニカミノルタ株式会社のIPネットワークカメラシステム「MOBOTIX」を、医療法人社団愛友会介護老人保健施設三郷ケアセンターが施設内の見守りの活用に導入しました。
MOBOTIXはエッジAIカメラであり、デバイス側においての異常や物体検知をはじめとした様々なAI実装技術を独自で開発し、スタンドアロンでの監視カメラの各種検知機能を備えています。これまでもこの介護施設内ではモニタリングカメラが設置されていましたが、介護事業には役立ってはいない状況でした。
なぜなら、利用者に向けて設置されておらず解像度もよくなかったため、利用者の動向を正確に確認できず、結果として活用できる状態ではなかったためです。
MOBOTIXのモニタリングは、動体検知機能を活用して、施設内に19カ所設置され、地下1階から4階までの共有スペースを死角なくモニタリング可能です。
動作があったときにだけ、映像を記録するようにして、動きがなければ録画されないので無駄な記録は省くことができ、アクシデントが何かあっても即時対応可能で、不要な確認時間の削減ができたということです。
利用者の動向を正確に把握、状況確認と迅速な対応ができ、介護業務の効率化によって、職員の業務負担やストレス軽減にも貢献しています。
農機の完全無人化を目指すクボタの新たな一歩

産業機械製造を手掛ける株式会社クボタは、アメリカ半導体メーカーのエヌビディア・コーポレーションと提携しAIでの自動運転技術を磨き、スマート農業の実現に向けて農機の自動化や無人化に取り組んでおり、完全無人化達成を目指しています。
クボタでは、無人運転可能なトラクターを開発し、ビッグデータを駆使したデジタル農業の実現を目指しています。
エヌビディアでは、「エンドツーエンドAIプラットフォーム」を手掛け、これは解析や推論をワンストップで行うAIを活用した機械学習モデルが組み込まれたプラットフォームです。
クボタはこのプラットフォームを活用して、農機に搭載した高性能GPUでのAI推論を可能としたエッジAIシステムの研究開発をスピーディーに行っています。
農機の自動運転技術はメーカーなどの間でレベルが1から3に区分されており、一番難易度の高いレベル3の「完全無人化」達成できるよう取り組んでいます。トラクターには高精細カメラを付けて、高速通信規格「5G」も駆使することで、10年後には、さらにレベルの高い無人自動運転を実現をしていくということです。
ソニーグループら、エッジAIとLPWA技術による放牧牛管理と金融機関のABL管理の省力化の実験を開始

東京工業大学、ソニーグループ株式会社などの共同プロジェクトチームは、牛の島として知られる沖縄県竹富町の牧場にて、共同のプロジェクトチームによって開発したエッジAI技術とLPWA(低消費電力で長距離の通信)技術から成る放牧牛AIモニタリングシステム「PETER」の動産・債権担保融資(ABL:Asset Based Lending)への適用に関しての実証実験を開始しました。
畜産物を担保とするABLは、畜産経営の貢献に期待されていますが、放牧を取り入れた畜産の場合は、融資に必要な個体数の確認・個体ごとの状況把握に時間やコストが大幅にかかる課題がありました。
そこで、このチームでは、管理作業を低コストで実現できるような仕組みを構築しました。放牧牛に取り付ける首輪型デバイスとクラウドアプリケーションで構成されたPETERです。
首輪型デバイスはエッジAIで、放牧牛の飲水・摂食、立位、伏臥位など複雑な姿勢情報をAI処理によって推定可能です。
個体を遠隔からモニタリングできるPETERを活用することで、より適切なABLの実行に繋がり、持続可能な畜産経営への貢献が期待されています。
東芝、エッジデバイス上で高速に動作する音声キーワード検出機能付き話者認識AIを開発

電機メーカーの株式会社東芝は、処理能力に制約のあるエッジデバイス上においても、高速での動作が可能な音声キーワード検出機能がついた話者認識AIの開発をしました。この技術では、家電がネットワークへの接続の必要がなく、3回の発話での話者登録に加えて、音声での操作や、話者に合わせた機器の動きを変更することまでもできるようになります。
家庭でユーザーが話しかけることで自動的にキーワード検出し、家電などのエッジデバイスの操作を行う機器が増加しています。音声での機器の操作は、キーワードを検出するだけでなく、話者を認識して話者に合わせて機器の動きを変える機能も登場し、今後も需要が拡大するとみられています。
このようなキーワード検出と話者認識機能の両立は膨大な計算が必要であり、身近な機器で手軽に使用するためには、処理能力に制約のあるデバイス上でも高速に動作するAIが必要となります。
そこで、ネットワーク接続の必要なくエッジデバイス上でキーワード検出と話者認識を両立して同時に行うAI技術を開発しました。
ミサワホームの未来コンセプト住宅にドローンによる個別配送システムを実装完了

ドローンやAIなどの先端技術活用を手掛ける株式会社A.L.I. Technologiesは、ハウスメーカー、不動産事業を手掛けるミサワホーム株式会社が建設した持続可能な未来につながるコンセプト住宅に、移動式ドローンポートと対応したドローン配送システムの実装を完了しました。
ドローンポートは移動式で、居住者は専用アプリケーションを使って屋根下の待機場所から荷物の到着場所に自動で移動するよう設定します。AI搭載型のドローンはドローン運行管理システムC.O.S.M.O.Sによる飛行管理のもとで、ポートへの離発着や荷降ろし、配送拠点への帰還を行います。エッジAIと管理システムを組み合わせることで、アプリケーションの連携から自律飛行、ワイヤレス給電までを可能としています。
ドローンによる荷物配送に対応した設備は、高齢者や体の不自由な方の外出回数低減、介護中や育児中などで外出が困難な人に向けて日用品や医薬品の注文配送ニーズに応える生活様式を見据えた機能も備えています。
まとめ
この記事ではエッジAIの活用事例やユースケースを9例紹介しました。
この記事の事例を見て分かるように、多種多様な企業でエッジAIは活用されています。アイデア次第で、様々な応用が可能で、できることが更に増えていくことが予想されます。
セキュリティ面のリスク低減、高速稼働、コスト削減といった、エッジAIを活用するメリットは非常に魅力的です。
ぜひここで取り上げた事例を参考にエッジAIを活用してみてはいかがでしょうか。
◆AIの活用についてお悩みなら
なお、AI Marketでは、経理業務で活用できる、適切なAIサービスやAI開発会社の紹介を行っています。自社の業務にAIを活用したいけど誰に頼んでよいかわからない、どんなことができるのかわからない、といったお悩みがございましたら、いつでもご相談ください。
AI Marketの専門のコンサルタントが最適なエッジAI開発会社の選定をサポートします。
いつでもお気軽にご相談ください。
