最終更新日:2024-09-23
スマート漁業とは?水産業でのAI活用事例5選!導入時の課題は?【2024年最新】
海に囲まれている日本は世界においても認められる水産大国です。しかし国内での魚の需要の減少や漁業に携わる人口の減少が問題になってきています。このように様々な課題がある中で、漁業業界においてAIの活用が注目されています。
今回はAIの導入を検討している方向けに、漁業におけるAIの活用方法から実際の活用事例までをご紹介します。
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目次
漁業業界における深刻な問題
漁業業界は様々な問題に直面しており、大きな解決が求められています。そこで注目されているのがAIを活用したスマート漁業です。ここでは、いま漁業業界が直面している様々な問題をご紹介します。
人員不足・高齢化
漁業などの水産業界は、漁場の探索や餌やりのタイミング、魚の選別など様々な仕事が漁師の勘や経験、人海戦術で行われている部分がありました。さらに、漁業自体に従事する人が減ってきたり、経験や勘がある漁師などの高齢化が進んできたりなど、人員不足が大きな課題になっています。
技術の属人化
上記でもご紹介したように、漁業は漁師の勘や経験に依存している部分があります。漁師や仲買人などはどこに魚がいるのか、どのような魚の質が高いのかなどの技術が属人化してしまっている場合が多いです。
また、漁業業界は若手の参加が減ってきたことにより多くの漁師に後継者がおらず、その方が亡くなってしまったときには技術が継承されないという事態がおきます。その結果、またゼロから技術の研鑽をしなければならず、業務の質が担保されず、効率が悪くなってしまう場合もあるでしょう。
今後、テクノロジーを活用して技術を継承しやすくしたり、一般化したりしてより多くの人が活用できることが求められます。
世界的水産資源の枯渇
日本国内は食事の多様化などの影響により魚離れも叫ばれていますが、世界的に見ると健康意識や生活水準の向上などに伴い魚の消費量が増えてきています。その結果、世界的に水産資源の枯渇が叫ばれており、養殖の需要が増えてきているのが現状です。しかし、人材不足や技術が一般化されていない中で、どのように養殖の生産性を向上できるのかというのも漁業業界における大きな課題となります。
スマート漁業とは
ご紹介してきたように漁業業界は様々な課題に直面しておりますが、その解決策として今注目されているのがスマート漁業です。スマート漁業とはAI・IoTを活用することで漁業の様々な業務や技術をデジタル化し、労働の効率化や生産性の向上を目指す漁業スタイルのことを言います。
例えば、従来漁師や職人の勘を頼りにしていた技術をデータ化することや、収集データをもとにした業務の一部を自動化することなどが進められています。このように、スマート漁業ではIoTデバイスなどによるデータ収集はもちろん、AIの活用が大きく注目されているのです。
参考:農林水産省
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漁業におけるAIの活用法・活用事例5選
それでは具体的に、スマート漁業においてどのようにAIが活用されているのか、実際の活用事例と一緒にご紹介します。
自動餌やり
魚の養殖では早いスパンでの育成が求められております。そのため、常に魚の状況を把握し、適切な量の餌を無駄のないタイミングで与えることが必要です。しかし、人力で行うためには毎回養殖現場に立ち会わなければいけないなど労働条件の過酷さという課題にも繋がり、人員不足にもつながっていました。そこでウミトロン株式会社は、AIを活用したスマート給餌機「UMITRON CELL」を開発しました。
UMITRON CELLの特徴は、従来人が行っていた餌やりの量・タイミング・頻度などをAIで判断し、自動で餌やりを行うことです。餌やりの判断のためには、遠隔からの生簀内の魚の様子、給餌量データや魚の餌食いの様子などを自動評価するアルゴリズムを活用して適切なタイミング・量を判断します。それにより無駄な餌やりを避けられ、労働の効率化につながることが期待されています。
魚種判別の自動化
従来マグロの判別は、マグロの尻尾の切り口を見て熟練した仲買人が長年の経験と直感を元にした暗黙知をベースに行われていました。しかし、現在仲買人は後継者問題に悩まされており、目利きができる仲買人が減ってきています。その結果、質が高いマグロの判断ができなくなり、乱獲にもつながる可能性がありました。そこで開発されたのが、仲買人の暗黙知をAIに学ばせたシステム「TUNASCOPE」です。
TUNASCOPEは4,000体以上のマグロの尻尾の画像を学習させ、職人の判断と照合で開発されたサービスです。それにより通常職人が学ぶのに10年以上かかると言われている仲買人の技術を1ヶ月で学べました。現在85%以上の精度で目利きができるようになっており、従来仲買人が行っていた判別を写真を撮影するだけで行え、技術の一般化を可能にしています。
なお、TUNASCOPEで活用されているのは画像認識という技術です。AI画像認識とは?仕組みや導入活用事例を徹底解説の記事では、画像認識についてより詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
漁業領域の絞り込み
漁獲においてもAIの活用が増えてきています。従来漁場の絞り込みは、衛星や観測ブイ、観測船等の測定される海水温度のデータから一定の広さの領域に絞り込み、そこから魚群探知機や漁師の経験や勘をもとに絞り込みを行っていました。しかし、漁師の高年齢化などにより漁場予測が難しく、生産性が低下していました。そこで注目されているのがAIの活用です。
宮城県東松島では漁業領域の絞り込みにAIが活用されています。JAXAの水循環変動観測衛星の情報より、海面水温・降水量・水蒸気発生量などのビッグデータを抽出し、さらに衛星の写真から漁場の手がかりとなる河川プルーム、潮目などを合わせてAIで解析することで水温分布図を作成しています。
それらのデータや分布図を活用し、漁業領域の絞り込みを行った結果、漁船利用燃料を15%削減することに成功。また、常に漁獲量をフィードバックすることで精度の向上も行っています。
水揚げデータの予測
漁業における生産性向上の一つとして、無駄をなくすことは重要です。例えば、せっかく船を出したのにまだ定置網に魚がほとんど入っていないというようなことがあると、船の燃料代や、引き取るためにスタンバイしていた流通側の工数が無駄になってしまう可能性があります。
このような無駄をなくすために始まっているのが水揚げデータの予測です。天気や過去の漁獲量などのデータをAIで分析することにより、1週間後の漁獲量などを予測が可能になります。漁港における人材配置などの効率化や出港するタイミングの調整に役立つでしょう。
また、それ以外にも漁船に画像解析技術で漁獲量を瞬時に測定するシステムなどを搭載することで、流通側は漁船が帰港する前に入荷予定情報などを把握でき、効率のいい仕入れが可能になります。
乱獲防止
水産資源枯渇が問題になっている中で、乱獲防止も重要な課題の一つです。乱獲防止においてもAIの活用が注目されています。
例えば、はこだて未来大学がAIを活用したなまこの乱獲防止の取り組みをしています。なまこの高価格化に伴い、なまこの乱獲・密猟が増えていました。そこではこだて未来大学は、地元漁師にipadを配布してなまこの捕獲場所や捕獲量等のデータを収集しました。AIで分析することで生態を守りながら漁獲することを可能にしています。
また青森県では、漁場に監視カメラやセンサーを配置しセキュリティ強化に努めています。カメラで撮影された様子などを機械学習で分析することで不審船や不審人物などを素早く把握し、密猟を通報する仕組みにも取り組んでいます。このようにAIを活用することで、乱獲や密猟防止にもつながるでしょう。
漁業でのAI活用における大きな課題
漁業でAIが活用されている事例をご紹介してきましたが、実際に漁業でAIを活用するためには大きな課題があります。ここではその代表的な課題2つをご紹介します。
属人化した情報のデータ化
漁業は長年の経験や勘に依存している部分がまだまだ多いのが現状です。このように属人化している技術や情報をどう収集し、AIで分析できるような形にどのようにデータ化するのかというのが1つ目の課題です。
技術の発展に伴い、スマートブイや水中カメラなど様々なIoTデバイスが発明されています。どのようなデータが勘や経験につながっているのかを分析、IoTデバイスなどを用いてデータに分解することを検討しましょう。
デジタルリテラシーが高い人材不足
従来の漁業はIT機材やテクノロジーに触れる機会が少なかったため、デジタルリテラシーが高い人材がまだまだ少ないという問題があります。AI導入にはソフトウェアやデバイスなどを活用しなければなりません。そのため、AI開発や導入にあたり、漁業業界全体においてデジタルリテラシーの高い人材の確保が必須になるでしょう。人材がいない場合などは、開発導入支援業者の活用がおすすめです。
プロ厳選!AI開発に強い開発会社の記事では、AIの開発におすすめの会社を紹介しております。人材不足でAI開発・導入に困っている方は、ぜひご検討ください。
スマート漁業についてよくある質問まとめ
- スマート漁業とは何ですか?
スマート漁業とは以下の通りです。
- AI・IoTを活用して漁業の業務や技術をデジタル化する漁業スタイル
- 労働の効率化や生産性の向上を目指す
- 漁業におけるAIの具体的な活用事例を教えてください。
漁業でのAI活用事例は以下の通りです。
- 自動餌やり:AIが適切な量とタイミングを判断
- 魚種判別の自動化:マグロの品質判別など
- 漁業領域の絞り込み:衛星データとAI解析による効率的な漁場特定
- 水揚げデータの予測:1週間後の漁獲量予測など
- 乱獲防止:データ収集とAI分析による生態系保護
- 漁業でのAI活用における主な課題は何ですか?
漁業でのAI活用における主な課題は以下の通りです。
- 属人化した情報のデータ化
- デジタルリテラシーが高い人材の不足
AI導入の相談はAI Marketへ
人材不足や水産資源の枯渇など大きな課題に直面している漁業業界ですが、その解決にAIの活用は大きな鍵となりそうです。AIは漁獲はもちろん、流通、養殖など幅広い領域で利用が期待されています。
しかし、デジタルリテラシー人材不足などでAIを導入したくてもできないという方も多いかもしれません。
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