最終更新日:2024-09-24
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは?3層の仕組み・ディープラーニング他手法との関係を徹底解説!
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、AI(人工知能)による画像認識の分野でよく使われる技術で、画像から様々な情報を抽出できます。
AIの中でも画像認識は、顔認証システムや自動運転などさまざまな分野で取り入れられ、産業の発展に大きく貢献しています。その画像認識の中核の技術がCNN(畳み込みニューラルネットワーク)です。
自社でも画像認識を取り入れて、業務効率化や生産性向上に役立てたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
本記事ではCNNを初心者でも理解できるよう、概要や仕組みなどをまとめました。CNNで画像の特徴をどのように抽出しているのか、他のディープラーニング手法との違いを中心に解説します。
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AIの基本的な定義と仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
目次
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは?
CNNは、人間の脳神経系の仕組みを模倣したニューラルネットワークに「Convolution(畳み込み)層」を追加したアルゴリズムです。「Convolutional Neural Network」の頭文字を取った用語で「畳み込みニューラルネットワーク」と日本語で訳されます。
CNNは人間の脳の神経細胞「ニューロン」を模したモデルで「層」と呼ばれる内部構造を持ちます。主に「畳み込み層」「プーリング層」「全結合層」の3つの層から構成されます。
一般的には、畳み込み層とプーリング層を交互に積み重ねたあとに全結合層をいくつか重ねた構造をしています。畳み込み層とプーリング層の部分で、画像の特徴を抽出することを繰り返し、何層にもすることで複雑な特徴が表現可能です。全結合層では抽出された複雑な特徴を特徴量として扱って、組み合わせで予測や分類ができる仕組みです。
ニューラルネットワークで、処理する層を複数用意して判断の精度を向上させた機械学習を一般的にはディープラーニングと呼びます。CNNは、ディープラーニングの1つの手法です。
CNNは画像認識に強み
CNNが画像認識で特に強みを持っています。従来のニューラルネットワークでも画像認識は可能でしたが、複雑な画像への対応が難しいという課題がありました。
CNNは畳み込み層とプーリング層を交互に配置して、画像の特徴を効果的に抽出することができます。これにより、画像内の局所的なパターンや形状を捉え、空間的な関係を考慮した特徴表現を獲得できます。
また、CNNは重みの共有という機能を持ちます。つまり、畳み込み層で使用されるフィルターは、画像内の複数の位置で共通して使用されるため、学習すべきパラメーター数が他の手法に比べて削減され、学習効率が向上します。
こちらの記事で、画像認識の詳しい仕組みと種類についてわかりやすく説明しています。
CNNと他のディープラーニングの手法との違い
ディープラーニングにはCNN以外にも手法がいくつかあります。どのように使い分ければ良いのかを簡単に説明します。
DNN(ディープニューラルネットワーク)との違い
DNN(ディープニューラルネットワーク)とCNNは、以下のように用途や構造などが異なります。
項目 | DNN | CNN |
---|---|---|
構造 | 複数の全結合層(fully connected layers) | 畳み込み層(convolutional layers)とプーリング層を含む |
用途 |
汎用的な構造を持ち様々な種類のデータ処理 |
画像処理などの特定のタスクで高い性能 |
計算負荷 | 全結合層のため計算負荷が高い | 畳み込み層を使い計算効率が高い |
特徴抽出 | 基本的に手動で特徴量を設定する必要がある | 畳み込み層により自動的に画像内の特徴を抽出 |
CNNは主に画像認識に特化しています。畳み込み層で画像の特徴を抽出し、プーリング層で情報を圧縮します。これにより、画像の階層的な特徴を学習し、高度なパターン認識を実現します。DNNは汎用的なタスクに使用され、音声認識や自然言語処理などに適しています。
関連記事:「DNN(ディープニューラルネットワーク)とは?仕組み・活用メリット・活用分野・注意点を徹底紹介!」
RNN、LSTMとの違いと使い分け
CNN以外のディープラーニングの代表的な手法に、RNNとLSTMがあります。
RNNは主に時系列データを扱いのに使われます。「Recurrent Neural Network(再帰型ニューラルネットワーク)」を意味します。株価や気温の解析等、また音声データのような時系列データの学習、自然言語処理分野で使われます。
一方向のネットワークではなくフィードバックループを持ち、前後関係を考慮した認識が可能です。ただし、長い時系列データをうまく学習できない問題点があります。
LSTM(Long Short Term Memory)は、RNNのデメリットを解消したモデルです。長期の時系列データを学習できるようにしたモデルがLSTMです。
それぞれの手法で強みとなる分野が異なるため、目的となるタスクに応じて使い分けましょう。
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CNNの3層の仕組み
CNNは「畳み込み層」「プーリング層」「全結合層」の3つの層を組み合わせて構成されたニューラルネットワークです。それぞれの層の仕組みを詳しく解説します。
畳み込み層
ニューラルネットワークの畳み込み層では、直前の層の出力に対して「畳み込み処理」をおこないます。畳み込み処理とは、畳み込みフィルタと呼ばれる画像中の特定の形状に反応するフィルタを画像に掛け合わせることです。
フィルタは学習によりラベルの判別に有効な形状となっています。新しく入力した画像に対して畳み込みフィルタが1ピクセル単位ごとにずらして掛け合わせ一致量を計算し、フィルタとの一致度合いが高い部分は強調されて写されます。
1ピクセル単位ごとにずらして特徴的な部分が強調された画像を特徴マップと呼び、畳み込みフィルタの数だけ複数作成可能です。
プーリング層
プーリングとは、入力画像のある範囲のウィンドウの数値から一つの数値を取り出し、画像データを小さくまとめる処理です。プーリング層では、直前の層の出力に対して「プーリング処理」をおこないます。
畳み込み層のあとに配置されると、畳み込み層の出力に対してウィンドウ内の最大値や平均値などを計算します。数字の組が多少異なっても、プーリングによって同じ結果が出力されます。つまり、画像の平行移動などがあっても影響を受けることがないように、あまり重要ではない位置に関する情報を上手に削ぎ落とす役割を果たします。
全結合層
全結合層では、畳み込み層やプーリング層での演算で抽出した特徴量から、全情報を取りまとめることで画像の認識ができるようになる仕組みです。最終的に出力層に予測や分類の結果を出力します。
何層も積み重ねることにより複雑で有効な特徴量を利用した処理が可能となります。
CNNのビジネスへの活用事例
CNNは人間がルールを決める手法に比べ、精度が非常に高いため多くの分野で実用化が期待されています。CNNをビジネスへ活用した事例を見ていきましょう。
顔認証
画像認識の応用事例の代表が顔認証です。画像や動画などから個人の顔を読み取り、目や鼻、口など特徴的な位置や顔の大きさなどをもとに、あらかじめ登録しておいた情報と本人とを照合します。
大量の「人の顔の教師データ」を読み込ませ、学んだ特徴で未知のデータが入力されたときに人の顔を判別する仕組みです。顔認証システムは高いセキュリティレベルを持つ技術として、多くの企業で活用されています。
関連記事:「顔認証システムとは?どんな仕組み?導入手順・注意点・ディープフェイク対策を徹底解説!」
自動運転
自動運転では、車載カメラから得られる画像を使う物体認識や位置特定などでCNNが使われています。
自動運転では、周囲の状況を瞬時に把握する技術が求められます。周辺情報の画像などのデータをセンサー類が取り入れ続けて、正確な判別や適切な判断を迅速に決定しなければなりません。CNNの高度な画像認識の技術を応用して、解析や処理の能力を高めたAIシステムにより、障害物などを把握し安全な運転へとつなげます。
こちらで、画像認識以外でも自動運転で活用されるAI技術を特集しています。
医用画像の解析
医用画像からの診断の精度は向上が著しく、人間の精度を超えるAIも登場しています。今後医師の負担を軽減するためにもAIによる画像診断の導入は進むでしょう。人間では発見が難しい疾患や、初期での見落としを防ぐ意味でも効果が期待できるでしょう。
CNNは医用画像の診断や解析にも大きく寄与しています。
こちらで、医療分野で活用されるAI技術を特集しています。
画像分類
画像分類とは画像データから特徴を自動的に抽出し、あらかじめ定義されたカテゴリーに分類する画像認識の一手法です。入力された画像やその中の被写体が何かを特定しカテゴライズするために利用され、人間のように見たものを瞬時に何であるか答えられるようにすることを目指しています。
例えば、「リンゴ」「バナナ」「オレンジ」といった果物の種類を判定するために画像分類を用いる場合、あらかじめ各果物の画像を大量に学習させておきます。そして、新たに入力された果物の画像がどのカテゴリーに属するかを高精度で判定できるようになります。
画像生成
画像生成はコンピュータに画像を「想像」させる技術です。CNNを含むAI技術を用いて新たな画像を作成します。この技術は、Webデザイン、医療診断、芸術表現、商品写真生成、ゲーム開発など、幅広い分野で応用されています。
CNN以外の画像生成に使われる技術と仕組みをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
画像や動画をAI技術で自動生成するジェネレーティブAI(生成AI)も、画像生成を基盤としているAIです。
こちらで生成AIの代表的なサービス、プロンプトの使い方を詳しく説明しています。
CNN導入の際の3つの注意点
CNN導入の際に注意しなければならない点を解説します。
ブラックボックス化してしまう
CNNをはじめとしてディープラーニングは膨大なパラメータがあって、内部で大量の計算をしており、推論の根拠を示しづらい課題があります。内部動作の原理が明らかにされず「ブラックボックス」となっています。実用化にあたり、推論の根拠を説明する場合が求められることも出てくるでしょう。
大量のデータが必要で計算コストもかかる
CNNは大量の学習データを必要とします。また高性能のマシンが必要であるため、コストもかかってしまいます。ディープラーニングは特徴量の設定をコンピュータがおこなえる利点がありますが、その分計算量が多くなりスペックの高いマシンが求められるからです。
CNNを使う必要があるのか、手段が目的とならないようあらかじめ検討しておきましょう。
CNNの技術的問題
CNNでは、少しのノイズが画像に追加されると全く別の物として認識してしまう場合があります。自動運転や医用画像などでノイズが作為的に送り続けられたら重大な事故につながる恐れもあります。
また、プーリング層でデータを圧縮する際に、位置に関する情報が削ぎ落とされてしまいます。これらの問題を解決するための改良モデルの検討が必要になることもあるでしょう。
畳み込みニューラルネットワークについてよくある質問まとめ
- 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の主な構造はどのようになっていますか?
CNNの主な構造は以下の3層から成り立っています。
- 畳み込み層:画像の特徴を抽出する
- プーリング層:特徴を圧縮し、位置ズレに対応する
- 全結合層:抽出された特徴を基に分類や予測を行う
- CNNのビジネスでの活用事例にはどのようなものがありますか?
CNNのビジネス活用事例には以下があります。
- 顔認証システム
- 自動運転での物体認識
- 医用画像の解析・診断支援
- 画像分類(商品分類など)
- AI画像生成
- CNNを導入する際の注意点は何ですか?
CNNを導入する際の主な注意点は以下です。
- 推論過程がブラックボックス化しやすい
- 大量の学習データと高性能な計算機が必要
- ノイズに弱く、誤認識の可能性がある
- プーリング層で位置情報が失われる可能性がある
- 導入目的と手段の適合性を事前に十分検討する必要がある
まとめ
本記事ではAIの画像認識の技術の一つであるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)について解説しました。CNNをはじめとしたAI技術はビジネスへの活用に大きなインパクトを与え、すでに多くの企業が導入を進めています。
自社でもCNNによる画像認識をビジネスで活用したいとお考えかもしれません。しかし、CNNをはじめとしたAIを導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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