最終更新日:2023-03-04
ディープラーニングと機械学習の違いは?使い分け注意点、ビジネス活用事例徹底解説!

AI(人工知能)とともに頻繁に使われる用語に「機械学習」や「ディープラーニング」があります。AIのビジネスへの活用が広まっており、自社でも業務の効率化や生産性の向上に利用したいと考えている方も多いようです。
現在の第3次AIブームをけん引し、実社会へのAI導入をもたらした原因は間違いなく機械学習、そしてディープラーニングの急速な発展でしょう。でも、実は「AI」「機械学習」「ディープラーニング」について、それぞれの用語の意味や違いがあやふやな方も多いかもしれません。
本記事では、機械学習とディープラーニングの違いや使い分けについて解説して、ビジネスへの活用事例も合わせて紹介します。
AI Marketでは、
機械学習の種類、用いるアルゴリズムについてはこちらの記事で特集しています。
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目次
機械学習とディープラーニングの違いは?
機械学習はAI技術の1つの分野です。そして、機械学習の種類の1つにディープラーニング(深層学習)があります。ごく簡単に説明すると、機械学習は比較的少量の学習用データを用いて、シンプルなパターンを検出するのに使われます。一方、ディープラーニングは大量の学習データを用いて、システム自身が試行錯誤しながら複雑なパターンを検出するために用いられます。
実はAIには学術的に定型化された定義は特にありません。研究分野によって解釈が異なりますが、一般的に「人間の知能を模したコンピュータやシステム」と理解されます。AIには、機械学習以外にもルールベースや探索アルゴリズムなど他の技術分野が存在します。そして、機械学習の中に以下のような多くの技術があります。
- 決定木
- サポートベクトルマシン(SVM)
- 回帰分析
- ディープラーニング(深層学習)
つまりAIの一分野に機械学習があり、機械学習の一部分野にディープラーニング(深層学習)があると解釈できるでしょう。AIは人間と同様のタスクをコンピュータがおこなえるようにした技術です。これまで難しかった大規模のデータ処理や、人間では難しいパターンの検出などが実現できるようになっています。
AIの詳細な定義、成長の歴史についてはこちらの記事で解説しています。
本記事ではディープラーニング以外の機械学習を総称して「機械学習」と呼ぶこととします。もう少し機械学習とディープラーニングについて詳しく見ていきましょう。
機械学習とは
機械学習は、データ内に潜むパターンを機械(コンピュータ)に学習させて分類や予測のパターンを見つけさせる技術です。明示的にプログラミングすることなく、コンピュータに学ぶ能力を与えようとする研究分野として始まりました。比較的少量のデータをプログラムに入力し、プログラムが単純なアルゴリズムを使用してパターンを検出し、自動的に決定を下すように指示します。
機械学習では、原則として人間が特徴量を選択する必要があります。特徴量とはコンピュータが物事を認識する際に基準となる要素です。例えば、リンゴを画像認識するためには「色→赤」「形→円に近い」が代表的な特徴量になるでしょう。
ディープラーニングとは
ディープラーニング(深層学習)は、人間の脳の仕組みをモデル化したニューラルネットを用いてコンピュータに学習させる仕組みです。
2010年代に注目され始め、音声認識や画像認識の分野で他の手法よりも圧倒的な成果を示しました。
既存のニューラルネットと比較し、神経細胞を模した関数を超多層にして構成したものがディープラーニングです。機械学習で必須のパラメータである特徴量を指定することなく、コンピュータ自身が特徴量を探って学習します。膨大な量のデータをもとにネットワーク自身がルールやパターンを学習し、特定のタスクを高精度で実現できます。非常に複雑な問題を解決するのが得意です。
回転寿司店などの外食産業での迷惑行為防止にも活用されている動画解析も、実はAIによる画像認識・解析技術をベースとしています。
AIを活用する動画解析の仕組み、活用事例についてこちらの記事で解説しています。
機械学習とディープラーニングの使い分け方法3ポイント
機械学習とディープラーニングをどのように使い分ければ良いでしょうか。
以下の3つの観点から説明します。
- 学習に必要なデータ量
- できること
- 要する時間やコスト
それぞれのポイントについて説明します。
学習に必要なデータ量
機械学習は、学習に使えるデータ量が多くない場合に用いられます。比較的少なめのデータ量でも分析可能です。ディープラーニングは、分析の精度を上げるためのデータを大量に準備できる場合に向いています。
学習データの収集方法を相談できるおすすめ業者をこちらの記事で特集しています。
それぞれの技術でできること
機械学習は、分析の基準が明確な場合などの比較的単純な処理に向いています。一方、ディープラーニングは、複雑な処理も可能です。通常の機械学習では結果を出すことが難しい場合にはディープラーニングが向いているでしょう。
要する時間やコスト
機械学習は比較的少ない時間で済みます。機械学習が向いているのはできる限り早期に結果が必要で、コストを抑えたいケースです。一方、ディープラーニングは多くの時間を要します。またコンピュータなどの要求スペックは、ディープラーニングは高い水準のものが必要です。コストをかけてでも膨大なデータが処理できるような高速で高性能なコンピュータを準備できる場合に用いられます。
AIシステムの開発予算の立て方、注意点についてこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
ビジネスでのディープラーニング活用事例5選
ディープラーニングは、画像処理や音声認識などのパターン認識と呼ばれる分野で非常に有効な手段です。さらに、機械翻訳など文の生成を伴う自然言語処理でも活躍し、将来予測や新素材の探索にも用いられます。
ここではビジネスへの活用事例を以下に5つ解説します。
- 未来予測技術によるトマトの持続可能な生産
- 画像認識による病理標本の診断(メドメイン)
- 自然言語処理による文章の自動作成(LINE)
- 音声認識、自然言語処理、音声合成を組み合せたAIオペレーター(JCB)
- マテリアルズ・インフォマティクスによる新素材の開発(ENEOS)
それぞれの事例について説明します。
製造業での異常検知
製造ラインでの目視検査をディープラーニングにより代替できます。本来の形状と異なる不良品をAIが検出することで、生産効率を改善することに役立っているのです。特に合否の判定に限度見本を用いる不良のように熟練が必要な品質判定では、人材不足や高齢化の対策としてディープラーニングによる物体検出の導入が進められています。
物体検出に用いられるディープラーニングの仕組み、種類、具体的な活用事例についてはこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
未来予測技術によるトマトの持続可能な生産(カゴメ)
ディープラーニングの活用によって、膨大なデータからパターンを学習し、未来の予測が可能です。
トマトの生産や加工食品の販売を手掛けるカゴメ株式会社は、AIを活用した生鮮トマトの収量予測システムを独自開発しました。カゴメではこれまで蓄積した栽培や管理に関する独自の膨大なデータと最先端のAI技術とによって、5週後のトマトの収量を予測するAIモデルを開発し、国内での菜園で活用を始めています。
昨今の気候変動などの要因で農作物の生産管理は困難な状況となっているため、将来の収量予測の精度を上げる必要が出てきました。収量予測の精度は、高確度の営業計画の策定基盤となるとともに、食品ロスといった社会貢献においても重要度の高い管理指標です。
AIによる予測技術の仕組み、他の活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
画像認識による病理標本の診断(メドメイン)
画像認識の技術は、ディープラーニングが得意としている分野の一つです。顔認証、異常検知など応用範囲が広く、医療現場での画像診断の導入も進められています。
医療ソフトウェア、クラウドの企画・開発・運営および販売を手掛けるメドメイン株式会社では、病理診断を支援するソフトウェア「PidPort」の提供を手掛けています。ディープラーニングを活用して、患者の細胞や組織のデジタル画像から疾患の有無を判別可能としています。
病理医が足りない医療機関を中心に、業務負担や心理的負荷の軽減に貢献します。「PidPort」はディープラーニングによってプレパラートのデジタル画像を分析し、疾患の有無や病名などを判断し提示します。日本国内においては、AI解析機能は薬事承認が必要であるため今後の対応を目指しています。
AIによる画像認識の仕組み、他の活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
自然言語処理による文章の自動作成(LINE)
自然言語処理はディープラーニングの活用が進められる領域の一つです。GPT-3やBERTなどのモデルに加えてChatGPTは対話形式での自然な会話を可能としています。以前は英語での活用が主でしたが、日本語でもビジネス活用可能なモデルが作られています。
LINE株式会社が開発した日本語に特化した自然言語処理の基盤モデルが「HyperCLOVA」です。メールや小説に至るあらゆる文章を自然で正しい日本語で生成できます。人間が箇条書きで列挙した内容をもとに、丁寧な文面で生成します。要約も可能で、話し言葉で記述された議事録のテキストを与えれば、内容を理解したうえで会議の内容を要約します。
キーワードから広告文やキャッチコピーの生成、コールセンターでの問い合わせ内容の要約や自動応答分析など幅広い領域への活躍が見込まれています。
AIによる自然言語処理の仕組み、活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
音声認識、自然言語処理、音声合成を組み合せたAIオペレーター(JCB)
ディープラーニングのさまざまな分野の技術を複数組み合わせて、一つのサービスを提供している事例もあります。
株式会社ジェーシービー(JCB)では、IBM Watsonを活用した対話型の自動音声応答システム「AIオペレーター」の運用を開始しました。AIオペレーターは、ディープラーニングの技術である音声認識・自然言語処理・合成音声技術を組み合わせたシステムです。対話型で音声応答が可能で、ユーザーから発した音声を自然言語でAIが分析し、音声で回答、もしくは適切なオペレーターへ自動的につなげられます。
音声からテキストへの変換、そしてテキストの内容を分析することで回答を提供可能です。さらに応答テキストを音声へ変換する機能を備えるため、ユーザーからの電話での問い合わせに対して音声での自然な会話のやりとりを可能としています。
AIによる音声認識の仕組み、活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
マテリアルズ・インフォマティクスによる新素材の開発(ENEOS)
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、材料に関するさまざまな実験データから、ディープラーニングなどを応用して求めている特性や機能を満たす材料の設計をおこなうことです。
ENEOS株式会社と株式会社Preferred Networksは、原子レベルのシミュレーター「Matlantis」を共同開発しました。従来の物理シミュレータにディープラーニングモデルを組み込むことで実現しました。分子や結晶などの構造や物性を非常に高速に計算でき、広範囲での新規素材の探索が可能です。
ENEOSでは再生可能エネルギー、触媒、機能材料などの分野で、高性能で低コストな革新的素材の発見や開発につなげることを目指しています。
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ディープラーニング導入での3つの注意点
ディープラーニングをビジネスへ導入する際の注意点をまとめました。
判断過程のブラックボックス化
ディープラーニングの活用において、判断過程がブラックボックス化する場合が多くなります。特に複雑な分析であるため、アルゴリズムがなぜそのような出力をしたのか説明できない状態です。ビジネスへの活用において導き出された処理結果の根拠がたとえ不明確であったとしても、どこまで許容範囲であるか検討する必要があります。
学習に必要なデータが十分にあるか
学習に必要なデータが十分に準備できるか確認しておきましょう。機械学習やディープラーニングは、十分なデータが用意できないと結果の精度は下がってしまうからです。特にディープラーニングは大量の学習用データが必要となります。
コストに見合うだけの成果を出せるか
ディープラーニングを活用するためには、機械学習と比較すると多くの費用や時間がかかります。学習用のデータの準備に時間が必要だということも考慮すると、短期間で結果を出したい場合は適していません。高価で高性能なコンピュータが必要であるため、コスト面でも多くの負担が発生します。見込み成果がコストに見合っているか、あらかじめ十分に検討しましょう。
まとめ
本記事では機械学習とディープラーニングの違いを解説しました。ディープラーニングはビジネスへの活用に大きなインパクトを与え、すでに多くの企業が導入を進めています。
自社でもディープラーニングをビジネスで活用したいとお考えかもしれません。しかし、ディープラーニングをはじめとしたAIを導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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