最終更新日:2023-07-10
AIを活用した画像認識・画像解析の不得意分野・今後の課題と対応策は?

近年、AI(人工知能)を活用した画像認識や画像解析のサービスが増えています。ディープラーニング技術の急速な進展によって画像認識の精度が飛躍的に進歩したからです。しかしながら画像認識・解析技術には課題や問題点も多く残されています。
「画像認識をAIに任せて自社のコストを削減したい」などのニーズや、「AIの画像認識に自社業務をすべてを任せることはできるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
画像認識AIには、得意な分野と不得意な分野がそれぞれあります。画像認識AI導入の際には、得意分野と不得意分野を整理しましょう。
本記事では、AIを使った画像認識の課題点を5つ取り挙げ、課題への対応策や画像認識の得意・不得意を説明してAIを適用した方が良いケースを紹介します。
こちらで画像解析とは何か、どんな種類があるかを詳しく説明しています。
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目次
AIの画像認識の得意分野は?
人間にとっては得意ではなく、AIが得意とする分野に絞って導入を始めるとAIシステム導入はうまくいく可能性が高くなります。
AIは以下のような分野を得意としています。
定型作業を絶え間なく行う
画像認識に限らず、AIは人間が対応できないような膨大な量の作業をこなせますが、定型的な作業であることが求められます。人間のように休みは必要なく24時間動きますし、疲れたからといってパフォーマンスが落ちることもありません。
学習データが大量にある業務
学習データが膨大にある業務は精度が向上し、複雑な処理でもこなせます。ディープラーニングは、学習データが多ければ多いほど精度が高くなります。しかし本記事であげたようにバイアスのあるデータセットにならないように注意しなくてはなりません。
特徴を抽出して分類すること
ディープラーニングの画像認識は、認識する要素の特徴を収集したデータから、共通している特徴を自動で導き出すことで分類ができるようになります。
導いた特徴点から画像の中の物体を判断する起因度合いに応じた重みづけの値を設定します。精度が上がると細かい特徴を抽出して、人間では困難な判別や分類が可能です。
AIの画像認識の不得意分野は?
得意分野とは反対に、AIは以下のような分野は不得意です。
人の心や感情の理解、創出、創造的なこと
AIは数値化によって計算するため、数値化が難しい感情の処理は苦手です。人間のように推論するのは難しいとされています。思考して創造的なことを生み出すAIは研究が発展途上であり、まだまだ実現には時間がかかるでしょう。
完全な自動化は不可能
全ての業務を一から自動化することは難しいでしょう。例えば検査業務などにおいて、現場の熟練者は長年の経験から、異常の兆候を五感を働かせて情報収集し、総合的な判断をします。視覚情報であれば人間の感覚より優れているかもしれませんが、聴覚や嗅覚など、そのほかの感覚を取り入れた判断はまだ困難です。
そのため、人とAIが密接に連携していく必要があります。(複数の認識技術を組み合わせてAIが判断を行うマルチモーダルAIの開発研究も進み始めています)
データが少ない業務は精度が低い
AIは学習データによって成長するため、データが少ない業務は精度が低くなります。画像認識AIは、読み込んだ画像が何であるか判別できるようになるために、大量の画像をあらかじめ読み込んで学習しておかなければなりません。そもそもデータが少ない分野の処理は不得意です。
AI画像認識の5つの課題
AIを活用した画像認識の技術は、研究開発の進展によって大きな成果を上げています。しかしながら過度に期待し、「AIであれば何でもできるだろう」と誤った認識を持ったまま現場へ適用してしまうと、多くのトラブルが発生しかねません。
重要なことは、AI画像認識についての課題を把握した上で導入について検討することです。まずは画像認識の課題を5つ取りあげましたので見ていきましょう。
適切な学習データが大量に必要
AIには学習データが大量に必要です。さらに認識対象物の判別には適切な画像データをインプットしなければなりません。適切な画像であるというのは、判別の精度を上げるためのさまざまな条件で撮影された画像で、偏りなく集められたデータセットを指します。
新たに学習データを与えないと、人工知能が成長することもありません。しかし学習に必要なデータを大量に集める作業はとても大変です。特に異常検知の画像認識には不良品や故障のデータが必要であり、発生の頻度が少ないために集めるのは難しくなります。
こちらで異常検知とは何か詳しく説明しています。
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バイアス、透明性の確保
バイアスの問題は、特定要素がAIのアルゴリズムに大きく影響を与えてしまうことです。前述した学習データの収集にも関わることですが、同じ条件で撮影したものばかりを学習させてしまうと、偏った結果が生まれてしまいます。
学習するデータセットや書く人のアルゴリズムのバイアスによって、AIの判断に偏見や差別が含まれてしまう可能性があることは、AIにおける問題として言われ始めています。
説明可能性
説明可能性の問題とは、AIが判断した根拠を説明可能であるかです。多くの場合判断を下した根拠を提示できずブラックボックス化していく傾向があります。
AIが答えを導くプロセスを人間が理解できなかったり、人間のように自らの考えを説明することもできなかったりとなってしまいます。
特に画像認識AIの主流になりつつあるディープラーニングでは、物体を認識する要素の特徴点を収集したデータや共通の特徴などを自動で導き出しているため説明がより困難です。
昨今では、このようなAIのブラックボックス化が問題であることは周知され始めており、説明可能なAI(XAI=Explainable AI)という概念で、AIの判断根拠や判断プロセスをホワイトボックス化しよう、という研究も広く行われ始めています。
破局的忘却
ディープラーニングには、新しいデータの学習を開始すると過去に学習したことを忘れてしまう「破局的忘却」、もしくは「破壊的忘却」と呼ばれる問題点があります。
例えば、リンゴとバナナのデータで学習をした後に、新たにみかんとブドウのデータで学習をすると、みかんとブドウの分類は可能となりますが、リンゴとバナナの分類はできなくなってしまうなどです。
このように学習済みのモデルにさらに学習させると、既存のタスクに対しての性能が大きく低下してしまう問題点があります。
プライバシー侵害
画像認識AIは多くの取得したデータを取り扱いますが、個人情報を目的外で利用できないようプライバシーに配慮しなくてはなりません。事業規模の拡大でデータ集積が進むと、データ漏えいの恐れや差別的な判断などのリスクが生じてきます。
画像にも生体情報データなど、たくさんの情報が含まれています。個人情報が写っている画像については特に注意しなくてはなりません。直接的な影響はなくても、プライバシー保護に取り組んでいないと見做されることによる、企業イメージの低下につながるでしょう。
また、プライバシーの保護の観点からエッジAIを活用する動きも広まっています。エッジとは製造などの現場の近くにある端末で、この部分にAIを導入して活用します。取得したデータが漏えいしないようにエッジ部分のAIで処理し、データは送信しないことで外部にデータ流出を防ぐことが可能です。
画像認識の課題への対応策
AI画像認識の技術はさまざまな場面で活用可能です。しかし課題もいくつかあることを本記事では解説しました。画像認識の問題点を把握した上で活用できる範囲を見極めましょう。
次に、導入の検討の参考となるよう、課題に対しての注意点や対応策を解説します。
AIを使う必要性の検討
まずは、本当にAIを使った画像認識システムを自社へ導入する必要があるのかよく検討しましょう。ディープラーニングはAIの一つの手段で、導入が目的ではありません。
適切に使用すればAIは飛躍的に生産性を上げて業務を効率化できますが、闇雲に導入しただけでは効果が得られない可能性があります。
また、すべての業務をAIに代替しようとするのは現実的ではありません。本記事であげた課題や欠点を考慮した上で、AIの得意分野を部分的に適用するところから始めましょう。
コストと成果の精査
AI導入のコストと得られる効果を比較する必要性があります。AIの導入には多くのリソースやコストがかかります。AIの精度を検証するためのPoC開発費用やAIを稼働させるためのマシンリソース、その設備投資やAIを運用するための人材を確保するためには、多額のコストがかかるでしょう。
高度な学習のためには、高価な計算が可能な環境が必要です。最近では低価格でのクラウドサービスやIoTをうまく組み合わせた運用も可能となってきています。
導入しただけで大きな成果が得られるわけではありません。事前の検討や、学習データの精査など各段階で成果を得られているかチェックしましょう。
先述した通り、すべての業務にAIを使う必要はありません。人の手を使うほうが圧倒的にコストを抑え速くできる作業もあれば、他のツールや手法を使ったほうが良い場合もあるでしょう。
社会性・倫理への問題の判断
AIは人間が設定したアルゴリズム通りに作業していますが、人間と同じ思考ができるわけではありません。
動作の判断基準が不透明で説明可能性が低いために、意図せぬ差別や悪用などの恐れがあります。AIが間違った判断をし続けると人間に危害を加える場合もあり、ビジネスの持続可能性の脅威にもつながりかねません。
プライバシーの保護や倫理チェックを、画像認識のガイドラインに反映させる取り組みを始めた大手IT企業も増えています。
AIがもたらす差別の多くは開発時に生じるとされ、学習データにバイアスがかかると誤った判断をしやすくなります。公平なデータを揃えられることがベストですが、大量のデータを集めることは難しいため、倫理を軸とした安全検証が今後は欠かせなくなるでしょう。
例えばGoogleでは社内のAI倫理憲章を定め、「不公平な偏向をもたらさない」「人へ危害を加えない」などの指針を定めています。AIの社会性・倫理への判断は、まずは人間が最終的に行えるような仕組みづくりを徹底することが大切です。
AI画像認識の不得意分野・課題についてよくある質問まとめ
- AIの不得意なことは?
AIは以下のような分野は不得意です。
- 人の心や感情の理解、創出、創造的なこと
- 完全な自動化は不可能
- データが少ない業務は精度が低い
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本記事ではAIを使った画像認識の概要の解説と、課題や対応策について説明しました。
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