最終更新日:2022-06-06
物流業界向けAI導入・活用事例5選!おすすめサービスも紹介【2022年最新版】

2020年初頭から全世界に波及した感染症の拡大によって、世界経済は大きく減速し、物流業界においても大きな影響を与えました。経済の減速により、国内外の貨物輸送量は減少傾向にあります。
一方で、国内における宅配市場は成長を続けており、これは外出自粛による通信販売の荷物の取扱個数が大幅に増加したことによります。通信販売を扱うEC事業者にとっては配送料などのコストをできるだけ抑えたいため、中小事業者への委託が増加していますが、物流業界全体では運賃の値上げ、人手不足が大きな課題となっています。
このように、物流業界でさまざまな問題が起きていますが、AI(人工知能)をはじめとしたテクノロジーを活用して課題解決や効率化を図ろうという動きが始まっています。今回は物流業界のAI活用・導入事例を中心に紹介します。AIを活用するメリットもわかりますので、開発やサービス導入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、AI Marketでは、
物流業界で起きている問題・課題
具体的に物流業界において、近年問題や課題とされている事項をいくつか挙げながら、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
長時間労働
厚生労働省の調査によると、トラックドライバーは他の産業平均と比較すると、年間所得が約1割〜2割ほど低いのに対して、年間労働時間は約2割ほど長いことが分かりました。
上図:物流を取り巻く動向と物流施策の現状について
トラックドライバーの労働環境 (p.15)から抜粋
長時間労働は社会問題として認知され、働き方改革の名の元に是正されるよう取り組みが進められています。事故の防止や心身の健康の維持という観点からも、長時間労働の削減は、企業の健康経営にも大切な役割を果たすと理解されるようになりました。
再配達・受け取り拒否問題
宅配便を配達しても不在の家が多いことで再配達が増え、配達員の労働量が過剰になってしまうことが社会問題となりました。
宅配業者でも対策を進めたほか、宅配ボックスの普及や、受け取れる場所を増やすことにより改善の傾向は見られます。
2020年の外出自粛によって再配達率は大幅に減少しました。
上図:国土交通省の報道発表資料、統計から独自に作成
しかしながら、まだまだ高い水準にあるため、再配達率を減らすための対策は必要です。
外出自粛が一部で解除されると、再び上昇に転じていることからも見て取ることができます。
積載率の低下
上図:物流を取り巻く動向と物流施策の現状について、統計から独自に作成
積載効率の低下の推移 (p.16)から抜粋
積載率は輸送効率の指標の一つで、許容積載量に対して実際の貨物量の割合で計算します。ここ10年では小口配送の時代になっていて、100kg未満の貨物量が70%から80%へと増加しました。また1件あたりの出荷量も約25%小口化しています。これによって積載効率が直近では40%まで低下し、ドライバーの負担がより大きくなっているのです。
小口化によって、配送件数が増加し、配送・積込み・取卸しに時間がかかってしまいます。
配送は量よりも件数によって制約されるので、積載率が低下します。
また、空きがあっても運賃にならないので、小口化した貨物単価は高くなることになってしまいます。
宅配便だけでなく、企業間物流においても在庫を持たないように都度発注することが増え、小口化が進んでいます。行き過ぎた多頻度小口化を見直し、出荷ロットを大きくしたり、配送回数を少なくするといった対策が必要となるでしょう。
ドライバーの高齢化
少子高齢化によって人手不足がどこの業界でも深刻ですが、ドライバーは特に若い成り手が減少していて、高齢化が顕著に進んでいることが実情です。
上図:物流を取り巻く動向と物流施策の現状について
道路貨物運送事業における労働力の状況(p.14) から抜粋
少子高齢化によってさらなる人手不足が見通されますが、ドライバーを中心に関係している人の年齢が高齢化しています。
また深夜勤務や長時間労働などの働き方も非常に問題点が多くあるので、若い人たちは敬遠しがちです。また高齢になるにつれ、激務は事故の発生や心身の支障に大きな影響を及ぼすでしょう。
改善のためにも業務の効率化が早急に必要となります。
AI Marketでは、専門のAIコンサルタントが、
AIを活用することで、どのようなメリットがあるのか?
先程の項目で物流業界においての課題や問題点を挙げました。それらの問題を解消していくために、AIを活用することのメリットを考えていきたいと思います。
正確な物流予測
物流予測を正確に行うことにより、業務の効率化やコストの削減につなげることができます。
例えば、蓄積した過去のデータを大量に分析することで予測精度をあげることが可能です。
特に、過去の売上データや気象データなどの大量の時系列データは、AIによる機械学習と解析処理を用いることで最適な予測が可能です。
人による手作業の処理作業では困難なビッグデータでも、適切な機械学習モデルを用いることで、処理量と精度が飛躍的に向上します。
在庫の適正化
精度の高い需要予測によって、販売の機会損失での売上減少や在庫をたくさん抱えてしまうことでのコスト増大が防止可能です。
需要予測はどこにどれだけの在庫があり、消費者に供給するのかを、過去データや気象データなどさまざまな大量のデータを分析することで、これまで有識者の主観的判断だけで予測していた方法への多大な貢献となります。
人員配置の最適化
物流センター作業人員シフトの最適化や、トラック輸送の人員配置を最適化することで、省人化や効率化が可能となり、長時間労働の是正につながります。
ロボットやドローンを組み合わせて省人化、無人化を進めたり、トラック幹線輸送の無人化などにも応用できるでしょう。
配送計画の最適化
自動走行システムを利用した高速道路のトラック走行の実証実験が進んでいます。
制約条件下での配車計画を自動立案して、台数やルートを効率化することが可能です。
交通量の予測に基づいて、渋滞予測や回避ルートの選定などの精度を向上させます。
配送計画を最適化することにより、効率的に物資の輸送が可能となり、長時間労働や無駄な配送を少なくすることができるでしょう。
検品作業の効率化
IoT技術によるモノをインターネットにつなげることで効率化を図ることが可能です。
商品にセンサーや通信機能を搭載して、状態や動作を確認したり、RFIDタグを用いた商品管理によって検品作業が効率化できます。
5G環境の整備が進むとともに、大容量データを扱えるようになり、画像認識による商品やラベルの高速検品が可能となります。
AI Marketでは、専門のAIコンサルタントが、
物流業界におけるAI開発事例
実際にAIの開発事例を紹介します。開発背景や開発後の効果なども解説していきますので、ぜひご参考ください。
予測システムの開発による人員の最適化
株式会社ブレインバットは、物流業務において将来必要になる質と量(人員)を予測するための「予測システム」を開発しました。業務の要件が明文化されていなかったり、既存のソフトウェアでは要件が十分でなかったり等が課題となっていました。
予測モデルからのアウトプットデータを元に予測システムを開発し、人員のコスト削減に成功。さらに、人員配置の最適化を図る機能も開発したため、業務のスピードアップや不要な業務の削減が可能になりました。
これらはAIによる需要予測の技術を用いて開発されています。需要予測のAIシステム開発に強い、プロ厳選のAI開発会社の記事では、需要予測を得意とする開発会社を厳選して紹介していますので、ぜひご覧ください。
フォークリフトにAI判定システムを導入
フォークリフトの安全性を高めるため、2021年にサントリーロジスティクスと富士通社が共同でAIシステムを開発しました。このAI判定システムは、フォークリストのドライブ映像データを活用しています。AIが乗務員の操作から、爪操作と走行状態を検知し、危険操作シーンを抽出・判定することに成功しました。
リアルタイムに反映される映像の解析はまだ不可能でありますが、ハード面の機能の向上により、近い将来、リアルタイムな乗務員へのフィードバック・解析が可能になると予想されています。
AIによる配送ルートの最適化
株式会社オプティマインドは、ルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」を開発。物量の増加によるドライバーの人材不足、業務最適化を図るため、配送ルート最適化のAIを開発しました。配送員がどのようなルートを通って配送するか、どこに駐車するか等の可視化を実現したサービスです。配送員のGPSや実績データを蓄積し分析することで、ルートの最適化を図ります。
すでに日本郵便や大手商社等がサービスを導入しているのが現状です。Loogiaを導入してから、「走行時間が削減された」「人材不足の解消につながった」という効果を実感できている企業が多いようです。
OCR技術で商品ラベルの一括読み取り
東京都新宿区に本社を置くAutomagi株式会社は、商品のラベルに記載されている情報をスマホで一括で読み取るAIシステムを開発。事前のラベル毎の詳細設定は不要で、ラベルを撮影するだけと非常に容易。さらに、活字の読取精度は95%以上と、使用もとても簡単なのに高い質を担保しているのが魅力的です。
従来は、バーコードに登録されている情報を読み取るのは可能であったが、登録されている情報は目視や手作業のチェックで行う必要がありました。それをAIのOCR技術を用いて一括読み取り・管理することによって業務効率を図ることが期待されます。
今後の展開として、読み取った情報が自動登録されるようにすることと、入出荷検品業務をより簡略されるような運用に貢献したいきたいとありました。
【徹底比較】AI-OCRを徹底理解!AI-OCR活用のメリットとは?の記事では、OCRの製品を比較しておすすめを紹介しています。あわせてご覧ください。
異常検知のAI導入で自動封函の質を向上
三井物産グローバルロジスティクス株式会社は、自動封函機で発生する可能性があるトラブルをAIアプリケーションを活用して品質の向上に努めました。1時間に約4,000箱を自動封函機で処理しているため、不適切に処理されてそのまま発送されるというトラブルが稀に発生していようです。
この課題を解決するために、株式会社シーエーシーと共同してAIモデルに必要なデータ収集から、アノテーション、パラメーターのチューニング等、独自のAIモデルを開発。後に、複数枚のAIモデルの判定結果を基に異常を検知する機能も搭載しました。
異常検知のアプリケーションを導入してからは、不適切な箱の自動封函が抑制され、作業の品質向上につながったようです。
実際にAIを活用しているサービス4選
さまざまな企業がAI技術を活用したサービスを展開しています。各企業において物流とAIをどのように結びつけ活用させていくのか事例をいくつかご紹介いたします。
NEC
NECでは、物流網全体を高度・効率化するために、AIやIoT技術を活用して、現場データのリアルタイム収集で見えるかを実現させ、作業の淀みの解消、全体的な最適化への取り組みやソリューションを展開しています。
3つの最適化「サプライチェーン」・「リソース」・「ルート」を実現するためにAIやIoTを活用します。
日立
日立ではAI技術による倉庫業務効率化サービスを展開しています。
倉庫内のデータや作業実績、サプライチェーン全体の情報を、分析・学習し、業務効率の改善へつなげます。
生産性向上の施策の立案にAIを活用してAIを活用して物流倉庫内の商品配置を改善を目指します。
Automagi
Automagiでは、画像・映像解析AIを開発している技術を物流分野にも応用しています。
スマートフォンなどのカメラで荷物を撮影するだけで、対象物の大きさを素早く計測できる技術を開発しました。
商品のパッケージ、タグを撮影することで商品名や型番などを認識して検品時間の削減をすることができる技術です。
NTC
NTCでは、物流倉庫の業務を効率化するソリューションを開発しています。
スマホのカメラで商品を瞬時に判別し、入荷時や棚卸しなどにおける目視確認、データの手入力や、商品へのバーコードの貼り付けなどの人手による作業が削減可能です。
AI Marketでは、専門のAIコンサルタントが、
まとめ
この記事では物流業界に起きている問題点や課題を整理して、解決のためのAI技術の活用事例やソリューションをご紹介しました。昨今の社会情勢の変化で物流産業は生活をしていく上でなくてはならないものであると再認識した方も多いはずです。実際に携わっている方は、多くの問題がありながらも物を届けることを一番に考え懸命に働いてくれています。
長時間労働や人手不足によって負担が大きくならないようにするためにも、AI技術を活用して、効率化省人化が図られることを期待します。
今後もさまざまなソリューションが生まれてくることが見込まれますので、常にアンテナを張っていくとよいでしょう。
AI Marketでは、AI開発会社への相談前の事前サポートから、最適なAI開発会社の紹介までを無料で行っています。
AI Marketの
