汎用人工知能(AGI)とは?AIの進化が必要な背景・活用分野・社会影響を解説
最終更新日:2024年09月23日
今なお技術発展が続くAI業界ですが、将来的には汎用人工知能(AGI)の実現が期待されています。汎用人工知能が開発・実用化はあらゆる分野に影響し、革命的な変化を及ぼすとされています。
汎用人工知能が実現する瞬間は「シンギュラリティ」と呼ばれていて、働き方や法律の見直しの必要に迫られるでしょう。私たちの生活に直結するAI技術であるため、汎用人工知能について知っておくことは将来的に役立ちます。
この記事では、汎用人工知能の基礎知識や社会に与える影響、懸念点について解説します。
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目次
汎用人工知能(AGI)とは?
汎用人工知能(Artificial General Intelligence、AGI)は、人間と同等またはそれ以上の知性を持ち、幅広いタスクを自律的に遂行できる人工知能を指します。
従来のようなAIの技術に自主学習能力が備わり、問題解決や学習だけでなく、理解・創造などの能力も持ちます。クリエイティブで能動的な働きによって、さまざまな分野に革命的な変化をもたらすとされるAIです。
汎用人工知能の開発が進むことで、現在のAI技術の限界を超え、人間のような柔軟で適応力のある知能を実現することが期待されています。
汎用人工知能を活用できる分野例
汎用人工知能は、さまざまな分野での活用が期待されています。活用が想定される分野は、以下のようになっています。
- 医療:患者の病歴や遺伝情報を基にした個別化医療の実現・新薬の開発
- 教育:個々の学生の学習スタイルや進捗に応じたパーソナライズド教育・教育コンテンツの生成や評価
- 製造業:生産プロセスの最適化や品質管理の自動化・リアルタイムでの異常検知
- 金融:金融市場の動向を予測・投資戦略の策定やリスクの最小化
- エネルギー:再生可能エネルギーの発電予測・スマートグリッドの運用効率化
- エンターテインメント:ゲームや映画のストーリー生成・バーチャルアシスタントによるユーザー体験の向上
上記のように、変化が伴うタスクにも対応可能です。汎用人工知能は、膨大なデータを処理し、複雑なパターンを発見することができます。
現在人間が担っている仕事も、汎用人工知能は対処できる可能性があります。
強いAIと弱いAI
人工知能(AI)については、その能力と目的によって「強いAI」と「弱いAI」に分類されます。
弱いAIは、特定のタスクや問題の解決に特化して設計されたシステムです。音声認識や画像分類、チェスのプレイなど、特定の領域で優れた性能を発揮しますが、他の分野には応用できません。ChatGPTなど現在利用できるAIの全ては、弱いAIです。
一方、強いAIは人間の知性に匹敵する、あるいはそれを超える汎用的な知能を持つシステムを指します。異なるタスクや状況に対して柔軟に適応し、自律的な学習や思考、意思決定を行うことが可能です。強いAIは、問題解決や創造的な思考を必要とする複雑なタスクをこなす能力を持つとされています。
イメージとして分かりやすいのは、アニメのドラえもんです。人間の言葉や感情を理解し、それに対して自身の意志を伝えることができるのが、汎用人工知能です。
現在の技術水準では、実用化されているのは弱いAIのみであり、強いAIはまだ研究段階にあります。汎用人工知能、そしてさらにその先にあるASI(人工超知能)の実現を目指し、AIの技術開発が進められています。
関連記事:「ASI(人工超知能)とは何か?AI・AGIとの違いや社会にもたらす影響、現状と技術的弊害について徹底解説!」
なぜ汎用人工知能が必要?
汎用人工知能が求められる背景には、現代社会の複雑化と多様化があります。インターネットの普及やグローバル化に伴い、企業はさまざまな変化に対応しなければならなくなりました。既存の弱いAIでは、予測が難しい未来に対して常にアップデートが必要です。
また、AIがアップデートされるたびにプログラムの再構築が求められ、時間や労力、さらに新しいシステムを従業員に説明するといった手間がかかります。
そのため、アップデートやプログラムの再構築が不要の汎用人工知能は、コストや労力をかけずに複雑化・多様化した現代社会に対応できるAIとして実現が期待されています。AIが自律的に学習することで、問題に対する革新的なソリューションを提供し、持続可能な未来へのアプローチとなるでしょう。
日本においては、少子高齢化による労働人口の減少を解決する方法として、汎用人工知能が注目されています。「2025年の崖」や「2040年問題」といった労働力不足の課題を解決し、日本の経済・社会を維持できるのではないかと言われています。
シンギュラリティ到達への重要な礎
シンギュラリティとは、汎用人工知能が人間の知能を超える転換点を指します。この概念は、未来における技術の飛躍的な進化を示唆しており、技術的制約の突破や革新的な技術の開発といった期待が寄せられています。
一方で、シンギュラリティへの到達は人間の制御をAIが突破し、コントロールされない予測不可能な脅威になりかねないという懸念があります。自律的に判断し行動する能力を持つことは、人間の意図に反する行動を取るというリスクにもなるでしょう。
シンギュラリティは2045年に起こると予測されていて、「2045年問題」とも言われます。シンギュラリティへの到達は人類にとって大きな挑戦であり、その影響を慎重に評価し、対応策を講じることが不可欠です。
シンギュラリティについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
汎用人工知能を支える技術
汎用人工知能の実現には、高度なAI技術が不可欠です。これらの技術は、汎用人工知能が人間のように思考・学習し、適応するための基盤となります。汎用人工知能を支える主な技術について解説します。
アルゴリズム
汎用人工知能の基盤となるのが、高度なアルゴリズムです。ニュートラルネットワークを用いて複雑なデータの特徴を抽出すること(ディープラーニング)で、高次の抽象的な概念を理解し、AIが意志決定できるようになります。
また、アルゴリズムでは強化学習も重要です。強化学習では人間からのフィードバックやデータ提供をもとに、人間らしい感情や行動を学習します。ディープラーニングと強化学習を組み合わせたアルゴリズムは、汎用人工知能の実現に不可欠です。
認知アーキテクチャ
認知アーキテクチャとは、人間の認知プロセスをモデル化した設計図のようなものであり、人間による知識の表現や推論、学習、意思決定などの認知構造をAIに搭載しています。
認知アーキテクチャによって、汎用人工知能は人間らしい行動や感情を表現できるようになります。人間の思考回路のパターン化が実現すれば、汎用人工知能の実現に大きく近付くと言えます。
認知ロボティクス
認知ロボティクスとは、ロボットを活用しながらAIの研究・開発に取り組み、認知能力の向上を目指すことです。人間との活動を通して、コミュニケーションや言語処理などの能力を人間らしいものに高めることが可能です。
ロボットには、シンボルグラウンディングというシステム内の記号を現実世界の意味と結びつけられない問題があります。認知ロボティクスはシンボルグラウンディング問題を解決し、人間らしいコミュニケーション能力やジェスチャーでの意思疎通などを実現するのに不可欠です。
関連記事:「ロボット×AIの可能性とは?どんな種類?注目事例・メリット・課題徹底解説!」
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汎用人工知能が社会に与える影響
汎用人工知能はこれまでのAIと異なり、人間の社会に直接的な影響を及ぼします。そのため、AIを受け入れる社会構造を構築し、共存していくように適応しなければいけません。
しかし、汎用人工知能は労働市場や経済、文化、教育といった分野にまで影響するため、適応は簡単ではありません。汎用人工知能の誕生は社会構造の抜本的な変革と、AIと共生する社会への適応が求められます。
AIを管理する仕事や職種の需要が高まる
汎用人工知能の普及によって、AIを管理するための仕事や職種の需要が増加すると予想されます。
労働環境に汎用人工知能が使われることで、AIに特化したエンジニアやオペレーターが必要になります。AIの管理・運用・保守・学習維持などのシステム設計が行える仕事や職種は需要が高まり、会社内でも重要な人材として重宝されるでしょう。
また、AIに関する法律を理解し、倫理的に適した汎用人工知能の利用をサポートする職種も需要が高まります。汎用人工知能が日常的に利用されるようになると、コンサルタントのような職種は需要を高めるでしょう。
働き方や法律の見直し
汎用人工知能は、働き方や法律の根本的な見直しを促す要因となります。労働市場や社会の枠組みにさまざまな変化が生じる可能性があるため、それに対応するための法的・制度的な調整が行われます。
働き方については、プライベートとのバランスが調整しやすくなります。書類作成やデータ入力といった単純作業が汎用人工知能が担うことになるため、労働時間は減少し、残業や休日出勤といったことが起こりにくくなるでしょう。
また、企画の立案やアイデア創出などのクリエイティブな領域の仕事を担うようになります。こうした仕事は現場に行く必要がないため、場所にとらわれない働き方が可能です。
法律については、労働者の権利保護や雇用保障の観点から、新たな法的枠組みが求められるでしょう。
汎用人工知能に対して企業はAIに関する法律に対応しなければいけません。使い方を間違えると、従業員の権利・自由の侵害や個人データの流出、大量失業といった問題を引き起こす可能性があります。これらの事態に備えて、法律を根本的に見直すことになります。
特定企業への権力の集中
汎用人工知能の開発が一部の大企業に集中することで、その企業に大きな権力が集中する可能性があります。
現在、汎用人工知能の研究・開発を主導しているのは、OpenAIやDeepMindなどの大手IT企業です。OpenAIはChatGPTを開発し、DeepMindはGoogleの子会社として最先端のAI技術に取り組んでいます。特にOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、汎用人工知能の重要性を強調しており、同社の技術開発は加速していくと予想されます。
もし汎用人工知能の開発が一部の大企業に独占されてしまうと、その企業が強大な力を持つことになります。汎用人工知能は社会のあらゆる分野に応用可能であり、経済、政治、軍事など様々な領域に影響を及ぼす可能性があります。その技術を独占する企業は、社会に対して大きな影響力を持つことになるでしょう。
このような権力の集中は、民主主義の理念に反する可能性があります。特定の企業が強大な力を持つことで、社会の意思決定プロセスが歪められてしまう恐れがあるのです。したがって、汎用人工知能の開発は特定の企業に集中するのではなく、オープンかつ分散的に行われることが望ましいと考えられます。
汎用人工知能についてよくある質問まとめ
- 汎用人工知能とはどんなAIですか?
汎用人工知能とは、人間の指示がなくても自発的にフィードバックを行える、自主学習が可能なAIのことです。
- 汎用人工知能はいつ実現しますか?
汎用人工知能の実現は2045年頃になると予測されていました。汎用人工知能が誕生する瞬間は「シンギュラリティ」と呼ばれています。ただし、もっと早く実現する可能性が示唆されています。
まとめ
汎用人工知能の基礎知識や社会的影響、懸念点を解説しました。汎用人工知能の誕生は社会的に革命的な変化を引き起こし、働き方や法律を変えてしまう可能性があります。
汎用人工知能を上手く活用するには、汎用人工知能に関する知識を身につけ、最新の動向をチェックすることが大切です。シンギュラリティに備え、AIとの共生に適応できるように準備しておきましょう。
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