最終更新日:2024-09-23
人流解析とは?人流データでできること・注意点・活用事例を徹底解説!
「人流データってどう使えばいいの?」
「店舗ビジネスでなければ人流解析は関係ないんじゃ?」
まだまだ、上記のような悩みを抱えている企業担当者も多いようです。2020年の新型コロナ禍で急激に普及した用語である「人流」ですが、企業のマーケティング、顧客分析に欠かせないツールとなっています。国も普及を後押ししている今こそ、低コストで競合他社に先んじるチャンスです。
今回は、まだ人流解析のシステムを導入していない企業に向けて、人流データでできることや注意点、活用事例などを徹底解説していきます。この記事を読むことで、人流データの活用方法やメリット・デメリットなどが分かるため、膨大な人流データを上手に活用できるようになるでしょう。
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人流データの分析で実績豊富なAI開発会社を自力で選びたい方はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
人流とは?
人流とは、人々がいつどこにいて、どこに向かっていて何をしているのかを示す人の流れのことです。スマホのGPSデータ、Wi-Fiの基地局データ、街角に設置されたカメラの画像データ、クレジットカードやQRコードの支払いデータなど多くのソースから得られたデータで人の流れを見える化することが可能です。大勢の人の流れをデータ化して解析することを人流解析と呼びます。
国土交通省も「人流データの流通環境整備・利活用拡大支援事業」のなかで全国の人流データ(1kmメッシュ、市町村単位発地別)を公開して、普及に向けた環境整備・利活用拡大に向けた支援を行っています。総務省でも『「人の移動データ」とその活用について』というレポートを発表し、政府として人流データの活用と普及をバックアップする姿勢を見せています。
人流解析が注目されている4つの理由とは?
人流解析が注目されている4つの理由は、以下の通りです。
- 位置情報データが取得しやすくなった
- AIの発達で膨大なデータを分析しやすくなった
- データを格納するコストが安価になった
- 活用できる分野の事例が増えてきた
それでは、人流解析が注目されているそれぞれの理由について説明します。
位置情報データが取得しやすくなった
人流解析を効率良く行うためには、位置情報データを取得する必要性があります。群衆の位置情報データを取得し、データをまとめて分析する必要性がありましたが、これまではデータ収集の方法が限られていました。現在ではスマホの普及によって位置情報データが収集しやすくなったため、圧倒的に人流分析がやりやすくなったのがポイントです。
位置情報が特定できるGPS機能や携帯電話基地局、Wi-Fiなどの制度が高い位置情報のデータを大量に収集できるようになったことが、人流解析が注目されている一つの要因になっています。
データ収集の代表的な方法をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AIの発達で膨大なデータを分析しやすくなった
近年のPCの高性能化やAI技術の著しい発達によって、膨大な人流データを分析しやすくなりました。従来はPCの性能やAIが発展途上だったため、膨大な人流データのようなビッグデータを分析するのが難しい状況でした。分析できたとしても時間がかかったため、公的統計など限られた分野でしか活用できませんでした。
AIが実用化したことで、人流データをリアルタイムで分析できるだけでなく、ビジネスに活用できるさまざまな視点から低コストで分析できるようになったのも大きなポイントです。
こちらで企業でのデータ分析の基本的なやり方、手法を詳しく説明しています。
データを格納するコストが安価になった
現在では膨大なデータが格納できるサーバー環境を安価で整えられる環境になったのも追い風です。以前は膨大な人流データを格納するために大きなコストがかかっていました。現在は会社の内部サーバーであってもセキュアで低コストなサーバー環境を準備可能です。人流データは分析の要なので、より多くのデータを格納できる環境を整えやすいのがポイントです。
活用できる分野の事例が増えてきた
人流解析は2020年の新型コロナ対策で注目されましたが、実はそれ以前から以下のような幅広い分野で活用されています。
- 企業のマーケティングや経営戦略
- まちづくり、地域活性化、市街化計画
- 防災
- 観光
- 小売店、外食産業
- ショッピングモールなど大型商業施設
- テーマパーク、文化施設
- 製造業
- オフィス
- 交通機関、物流
- 自治体、公共団体
- 建設・不動産
- 金融・投資
- スポーツ・イベント
すべてのビジネスのターゲットは人間です。ですから、人々の動きを解析し、予測できる人流解析は、従来から活用されていた店舗ビジネスに留まらず、ますます幅広い分野で活用されていくでしょう。
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人流解析5つのメリット
人流解析を行う5つのメリットは、以下の通りです。
- 既存顧客がどこから来たか把握できる
- 潜在顧客にアプローチできる
- 人々の行動パターンの変化に対応できる
- リアルタイム情報を元に将来を予測できる
- 競合店の人流データを解析できる
それでは、人流解析を行うそれぞれのメリットについて説明します。
既存顧客がどこから来たか把握できる
人流解析を行うことによって、成約にいたる顧客の動きを今までになかった観点から分析できるようになります。顧客の情報は順調に収集できているものの、それだけでは店舗に来る顧客の行動パターンを知るのが難しいケースもあるでしょう。例えば、同じ時間帯でも曜日によって顧客の購買内容が異なる原因が明確になるかもしれません。リアル店舗(実店舗)だけでなく、ネット店舗の顧客の動きも人流データによって、より正確に把握できるかもしれません。
人流データを解析することで、顧客がいつどこからどんな方法で来店しているのかが分かるでしょう。
潜在顧客にアプローチできる
人流解析により、潜在顧客と既存顧客との共通点を見つけて、潜在顧客にも適切にアプローチできます。新規の顧客獲得に苦労している企業も多いのではないでしょうか?既存顧客の行動パターンの中で共通点、または相違点を見つけることで新たな潜在顧客を発見し、ベストなアプローチ方法を検討できます。
人々の行動パターンの変化に対応できる
顧客の行動パターンをデータ化して蓄積することで、人々の行動パターンの変化にマッチした新たな集客方法を実践できるでしょう。2020年の新型コロナ禍以降、人々の行動パターンは大きく変化しています。従来の方法では集客できない可能性があるでしょう。企業や店舗経営を行うにあたって、人がいつどこで何をしているのか分析してデータ化することは非常に重要です。人流解析によって人の行動パターンをデータ化して蓄積できるため、様々な状況下で活用できます。
リアルタイム情報を元に将来を予測できる
人流解析はリアルタイムでさまざまな情報が得られるため、ビジネスに直結するレベルの未来予測を行えます。従来はエリアごとの人口密度を調べたり交通量を人力でカウントするしかありませんでした。しかし、今は人の動きがリアルタイムで分かるため、誰がいつどこでどんなことをしているのか分析できます。人流解析によって人の最新の動きが把握でき、より正確な予測データを算出できるようになりました。
競合店の人流データを解析できる
適切にカメラを設置することさえできれば、人流解析で分析できるのは自店舗だけでなく、競合店の人流データも解析可能です。自店舗の人流データだけでなく競合店の人流データを解析することによって、時間帯やエリア別で競合店の活動状況が把握できます。
競合店の活動状況を踏まえた上で、どうすれば差別化を図ることができるのか具体的な案が思いつきやすくなるでしょう。
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人流解析の4つのデメリットと注意点
人流解析を行う時の4つのデメリットと注意点は、以下の通りです。
- 活用方法を事前決定する必要
- 個人情報漏洩対策が必須
- 専門知識が必要
- 効果がすぐに出ない場合がある
それでは、人流解析のそれぞれの4つのデメリットと注意点について説明します。
活用目的を事前決定する必要
人流解析による結果を出すのはとても重要なことですが、解析結果をどのように活かしていくのか事前に決めておくことが大切です。データを活用する目的を事前に決めておかなければ、ビジネスには使えない単なる興味深いデータ集合にしかなりません。また、目的を設定しておかなければ不要な種類のデータの収集と解析にコストが必要になります。そうなると、プロジェクトで本当に必要な部分にコストをかけられないリスクも生じます。
個人情報漏洩対策が必須
人流解析で活用されるデータは顔写真などの個人情報が多く含まれます。個人情報を保有している限り、漏洩する可能性も必ず生じます。適切な漏洩対策を講じないと、思わぬトラブルに繋がりかねません。個人情報が漏洩されてしまうと、会社や店舗の信用問題につながる可能性が高いので、事前にしっかりとした漏洩対策を行うことが大切です。
専門知識が必要
人流データを元に人流解析を行うためには、分析するための専門的な知識が必要不可欠です。人流データを活用できれば業務効率化やさらなるマーケティングの推進等ができますが、そのためには人流データを解析する専門の人員を用意しなければなりません。そもそも人流データを収集する方法や人流解析を行うためのシステム導入など、様々な専門知識が求められます。
IoT化やスマート化、DX推進の必要性が喫緊になっているなかでも、多くの会社組織の上位層でもまだまだAIに関して知識不足の状況が見られます。このことから、人流解析を行うための専門要員を雇用するか、育成する必要性があるのが最大の課題ではないでしょうか。
効果がすぐに出ない場合がある
人流データを活用しても、必ずすぐに効果が出るわけではありません。確かに人流解析によって顧客の分析を行うと、業務の効率化や新規顧客の獲得などにつながります。しかし、必ずしもすぐに効果に結びつくわけではないでしょう。あくまで人流データ活用も経営戦略の一つと考え、他の戦略も並行して同時に進めていくことが大切です。
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人流解析4つの活用事例
人流解析の活用事例は、以下の通りです。
- ショッピングモールの客層分析(コニカミノルタ・かわぐちキャスティ)
- 人流データx店舗データで売上予測(ドコモ・インサイトマーケティング/インテージ)
- 人流データでバス路線の最適化(西東京バス/クロスロケーションズ)
それでは、人流解析のそれぞれの活用事例について説明します。
ショッピングモールの客層分析(コニカミノルタ・かわぐちキャスティ)
埼玉県川口市にある丸紅系のショッピングモール「かわぐちキャスティ」では、AI映像分析システムにより客層・混雑する時間帯などの正確な把握ができるようになり、新たなテナントの誘致に活用しています。コニカミノルタ株式会社と、グループ会社の丸紅ネットワークソリューションズ株式会社が共同開発したシステムで、カメラ映像から来場者を時間帯ごとに分析するシステムです。
2021年11月8日に放映されたNHK「おはよう日本」の「おはBiz」内でも紹介されました。「館内を訪れる人の属性がより広く、深く把握できるようになった」というコメントも紹介されています。
人流データx店舗データで売上予測(ドコモ・インサイトマーケティング/インテージ)
株式会社ドコモ・インサイトマーケティングと株式会社インテージは、人流データ(リアルタイム人口データ)と販売動向データを基に小売店舗ごとの販売額を推計するサービス実験を行っています。市場調査大手であるインテージが保有する全国の小売販売動向データとドコモが保有する人流データから2020年前後の約2年間分の人々の動きを掛け合わせ、AIの機械学習で分析しました。
2020年の新型コロナ禍によって大きく人流が変化しましたが、それでも高い精度で各店舗の販売額推計を実現できることが検証されています。興味深いことに、過去の販売データを保有しない未知の店舗の販売推計でも高い精度で販売額の推計ができることを実証しました。エリアマーケティング戦略や競合店舗ポテンシャル把握などへの活用が期待されています。加えて、推計だけでなく未来の販売額をより正確に予測する需要予測領域でも活用されるでしょう。
AIによる需要予測の実例、活用の注意点についてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
人流データx車流データで見込み顧客を高効率集客(デンソー/NTTデータ)
株式会社デンソーと株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、人流データと車流データを活用して自動車ユーザーへの適切なレコメンド広告を表示する検証を行いました。た移動体験変革の実証実験を2020年6月から2021年3月に実施しました。車載器から収集した運転特性や運転状況などの車流データと、スマホのGPSやビーコンなどから収集した人流データから、ユーザーの属性・特性を分析します。個々の運転状況の好みにマッチしたレコメンド広告を行いました。
嗜好パターンや運転状況などに基づいたてパーソナライズされたレコメンドであるほど、広告の評価が高い結果が得られたとのことです。これから新たな集客手段、マーケティング手段としてサービス展開されていくことが期待されています。
AIによるレコメンド広告の最適化事例については、こちらの記事で特集していますのでご覧ください。
人流データでバス路線の最適化(西東京バス/クロスロケーションズ)
西東京バスは、新規路線の検討、増便や減便の検討にクロスロケーションズ株式会社が保有する人流データ解析システムを活用しました。従来は、サービス地域の人々が、いつ、どこへ移動しているのかわかる人流データはバス会社内で保有する交通系ICデータ以外にありませんでした。それで、最終的にはベテラン社員の経験と勘を頼りに路線を決めていました。
しかし、クロスロケーションズの位置情報ビッグデータ活用プラットフォームを活用して、メインユーザーである通勤・通学で都心へ向かうお客様が営業エリア内のどこから来るか(どこに住んでいるか)分析しました。スマートフォンから取得できるユーザーの許諾を得たGPSデータを基に需要を見込める路線の解析を行った結果、八王子・日野に重点的に停留所を設置し、新宿駅を結ぶ高速バス路線を提案したとのことです。2021年6月に実際にこの路線は「通勤ライナー」として新規設定されています。この路線によって、八王子・日野の居住者が新宿方面に向かう際に直面する乗り換えや混雑といった潜在的課題に対応できたのとことです。
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人流解析についてよくある質問まとめ
- 人流解析はどのような分野で活用できますか?
人流解析は以下の分野で活用できます。
- 企業のマーケティングや経営戦略
- まちづくり、地域活性化、市街化計画
- 防災
- 観光
- 小売店、外食産業
- ショッピングモールなど大型商業施設
- 交通機関、物流
- 自治体、公共団体
- 人流解析を行うメリットは何ですか?
人流解析のメリットには以下があります。
- 既存顧客がどこから来たか把握できる
- 潜在顧客にアプローチできる
- 人々の行動パターンの変化に対応できる
- リアルタイム情報を元に将来を予測できる
- 競合店の人流データを解析できる
- 人流解析の活用事例にはどのようなものがありますか?
人流解析の活用事例には以下があります。
- ショッピングモールの客層分析(コニカミノルタ・かわぐちキャスティ)
- 人流データと店舗データを組み合わせた売上予測(ドコモ・インサイトマーケティング/インテージ)
- 人流データと車流データを活用した見込み顧客の高効率集客(デンソー/NTTデータ)
- 人流データを活用したバス路線の最適化(西東京バス/クロスロケーションズ)
まとめ
人流分析は、競合他社が気づいていない事業のポイントを把握するうえでさまざまなメリットがありますが、分析結果を活かすことができなければ意味がありません。まずは、どんな種類の人流データをどんな方法で活かしていくのか決める必要性があるでしょう。
まだ人流解析のシステムを導入していないのであれば、これを機に導入検討してみてはいかがでしょうか。
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