最終更新日:2022-06-06
製造業でのAI導入・活用事例10選!【2022年最新版】

さまざまな分野においてAI(人工知能)の導入が進んでいますが、製造業もそのなかの1つです。製造業にかかわっている方のなかには、その動向が気になるという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、AIを導入・活用することで得られるメリットを、実際の事例を交えて紹介します。成功事例だけでなく失敗事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
製造業が抱える課題や問題点
まずは、現在の製造業が抱える課題や問題点を整理しましょう。
人手不足
日本では少子高齢化が進み、労働者の人手不足が本格化しています。限られた人員でいかに効率的に製造を続けるかは大きな課題といえるでしょう。
従業員の高齢化
少子高齢化は、従業員の高齢化も加速させています。高齢者にはどうしても病気による離脱や、スピード感の欠如、最新設備が導入しにくいといった問題が存在。会社を変化させにくいというのも高齢化に伴う課題の1つです。
技術の継承
製造業の要は技術。少子高齢化に伴って若い労働者が減ると、熟練した技術者が持つ技術を継承できなくなります。このことは、最悪事業が継続できないということにもつながりかねません。
競争の激化
日本の人口の減少とグローバル化は、さまざまな分野での競争の激化を生んでいます。そのなかで勝ち残っていくには、いかに効率化しコストを削減するかが重要。しかしながら、人手や人間の頭ではもはや改善の限界にきているところも多いと思われます。
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製造業へAIを導入するメリット
それでは、製造業へAIを導入することによりどのようなメリットが生まれるのでしょうか。できることを具体的に見ていきましょう。
作業の効率化
AI導入による大きなメリットの1つが作業の効率化。その中でも今製造業で非常によく活用されているAIシステムは、AIによる外観検査です。
たとえば、AIを工場で製造した製造品の外観検査に活用すれば、返品と手直しの費用を削減し、生産性を高めることが可能です。IT業界大手のGoogleもこの分野に進出し、ルノーやエアバスといった企業にAIを導入しています。
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安全性の向上
AIを導入することにより、作業の安全性を向上させることも可能です。立ち入り禁止エリアに作業員が入らないかカメラで監視したり、重機の近くに人がいないことをGPSを使って確認したりと、作業員が安心して働ける職場構築に役立ちます。
従業員へのストレス軽減
作業の効率化や安全性の向上は、働く人々のストレス軽減にもつながります。また、AIを使ってストレスチェックを定期的に行うことで、同僚によるサポート強化やストレスの早期ケアにつながるでしょう。
品質の均一化
人手による作業や検査は、どうしても行う人員によるばらつきが生まれ、それにより不良が出て損害になることも。作業や検査をAIによって行うこととで、品質を均一化でき、損害を減らすことが可能になるかもしれません。
従業員の疲労によるパフォーマンス力の低下抑制
人間は24時間休みなしに働き続けることはできません。疲労が蓄積するとどうしてもパフォーマンスが低下し、作業に影響が出ます。AIによって疲労度が大きい作業を代替することで、従業員の疲労の度合いを押さえ、平均パフォーマンスを向上させることが可能です。
人的事故の減少
製造業における作業のなかには、人的事故が起きうる危険なものも存在します。そのような危険な作業をAIが代替することで、人的事故を減少させることが可能です。これにより、作業の効率化だけでなく、職場環境の改善にもつながることでしょう。
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AI導入による製造業界の変化とは?
人手不足の解消や安全性の向上など、AIを導入するメリットは多くあります。これらのメリットを得ようと導入を検討する企業が増えていくことが考えられますが、具体的に業界はどのように変化していくのでしょうか。
AIロボットとの協業
AIを搭載したロボットの導入が進んでいるのが現状です。
これまでは、大きな力を扱い人とは隔離された場所で使用される「産業用ロボット」の活用がメインでした。しかし、多額な設備投資や複雑な管理システムになっているため、町工場などの中小企業での導入が困難であることが課題となっていました。
AIを搭載したロボットは、省スペースでの導入かつ、安全柵や広いスペースの確保がなくとも導入できるメリットがあります。そのため、中小企業を中心に協業ロボットの導入が進んでいくでしょう。
今後は、AIロボットとの協業する環境に変化していくことが考えられます。それに伴い、AIロボットに「どう教えていくか、どのような作業をやってもらうか」など、人ができる作業を選別しなければいけなくなるでしょう。
製造工程における無人化
AI開発・導入が進めば、製造工場は完全無人化になり圧倒的なコスト削減が実現するでしょう。AI開発と同時にIoTの導入も進めば、人間の考えを組み合わせたオペレーションが可能です。無人化でAIロボットの自動化が実現することも可能になるかもしれません。
単純作業をAIロボットに任せば、人はより創造性のある革新的な技術開発に取り組むことができるでしょう。
製造業へのAI導入・活用事例【7選】
製造業へAIを導入すると具体的にはどれだけの効果があるのでしょうか。ここでは実際に導入し活用した事例を7選ご紹介します。
機器稼働と人員配置の最適化
ある自動車部品メーカーでは、スカイディスク社と連携し、生産計画の策定作業をAI化したそうです。これまではベテラン社員5~6名が丸3日間かけて、経験則をもとに生産計画を立てていました。それでも、不良品発生などにより計画は日々修正され、機器に空きがある日もあったり、作業員に残業発生する日もあったりと、日によるばらつきが発生します。
これに対して、AI導入より、計画案が数分で出せるようになり大幅に効率が改善されたそうです。空き状況や不良発生をAIの学習に生かすことで、さらなる精度アップも見込めます。
鋳造条件をスコアリング
スカイディスクは、自動車メーカーと連携し、鋳造条件をスコアリングするAIを導入しました。従来は、熟練の検査員が射出ごとに変異、圧力、速度などの大量の波形データを目視点検し、鋳造条件の判断をしていたそうです。しかしながら、そのような熟練者の人数が減っており、技術継承が課題となっていました。
AI導入後は、AIによって波形データをチェックし、正常波形と異なる個所を減点するようにしたそうです。人間は点数がOKかNGかを判断するだけでよく、大幅な効率化が達成されました。
不具合要因の特定
東芝は、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所とともに、大量の欠損を含むデータからでも不具合の要因を特定するAIを開発しました。
工場やプラントなどの製造現場では、製造物のさまざまなデータが日々大量に蓄積されます。しかしながら、収集されるデータには測定ミスや通信エラーが発生し、また、抜き取り検査しか行わないために全体の1割程度しかデータが収集できない場合もあるそうです。
新しく開発されたAIはこのような欠損値の多いデータからでも高精度な回帰モデルを構築可能となっています。ほかの最先端アルゴリズムと比べ、推定誤差を約41%削減することに成功したそうです。
異音検査の代替によるストレス軽減
ある自動車メーカーでは、音による官能検査(異音検査)について、検査員によるばらつきや、熟練検査員の人材確保が問題となっていました。また、異音を聞き分ける作業自体が検査員の精神的ストレスとなっている可能性もあったとのことです。
そこで、この官能検査を音データをもとにしたAIに置き換えることで、人手に頼らず、均一かつ効率的な検査が可能になりました。
磁気探傷検査を自動化
トヨタ自動車では磁気探傷検査をAIによって自動化しました。
これは、外観目視検査では検出できないキズを検査するためのもの。熟練工を要する業務でぜひ自動化したいと考えていたそうですが、一般的なマシンビジョンでは不良品を良品と判定する見逃し率が32%、良品を不良品と判定する過検出率は35%も発生し、導入するには精度が低すぎたそうです。
これに対して、シーイーシーのAIであるWiseImagingを導入することで、見逃し率は0%、過検出率は8%と大幅に精度を改善することができたとのこと。これにより、これまで2交代勤務で4人おいていた人的リソースを2人に削減できたそうです。
【世界初】部材工程から検査工程までを自動化
タイヤ製造大手のブリヂストンは、2002年に世界で初めて部材工程から検査工程までの自動化に成功しています。このときはまだAIの技術が十分発展しておらず、工場のIT化と完全自動化にとどまっていたそうです。
その後、2016年にAIを導入したタイヤ成型システムである「EXAMATION」をマスコミに公開しています。AIにより、大量の情報とデータが取り込めるようになり、人間の高度な技術とノウハウが吸収できるようになりました。また、一度構築したAIはかんたんにコピーして使うことができます。
AI導入により、より精度が高いタイヤを作れるようになり、たとえばタイヤの真円度はAI化以前より15%向上したそうです。また、成形工程では、複数の工程を同時に制御できるようになり、生産性が約2倍に向上しました。
画像解析による異常検知システムの実用化
株式会社ダイセルは日立製作所と共同で、画像解析技術を用いた異音検知システムの開発を行いました。標準作業手順からの逸脱動作や異常が発生した場合、画像解析で検知して監督者のウェアラブル端末にアラートを通知するように開発。
さらに、異常検知だけでなく、エリア内の画像分析を行い人員の最適配置と作業を分析することを可能にし作業効率の向上にも貢献しました。
成果として、人、設備、材料の状態を監視することができるようになり、製品の工程内保証率の向上がUP。画像解析によって得られたデータより、予防処置や異常事態の未然防止が可能になりました。
上記の事例のように、AIの画像解析を用いた開発を検討している方は「画像認識・画像解析のAI開発に強いプロ厳選の開発会社」の記事をご覧ください。
製造業へのAI導入・活用【失敗事例3選】
AIを導入した製造業すべてが成功したわけではありません。ここでは、失敗事例を3件ご紹介します。
AI導入による精度ダウン
あるプロジェクトでは、パソコンの需要予測をAIで行おうとしました。しかしながら、モデルを作ってもなかなか精度が出ません。調べてみると、商品の売れ行きに対してプロモーション(CM等)やイベント(セール、OSのサポート停止等)が大きく影響しているのに対し、それらのデータが部署間の問題で得られていなかったそうです。
また、ほかのプロジェクトでは、交通量計測をAIを使って行おうとしたところ、データ量は十分であったものの、データの解像度が低く、モデルの精度が上がらないという事態が発生しました。
AIを活用するには、学習に使うデータの量と質が重要であることを示すよい事例です。
プロジェクト変更によるデータ不足
ある半導体メーカーで製造工程の一部にAIを活用しようとした際、現場と経営陣が連携を取れておらず、プロジェクトの途中で方針が変更されたそうです。製造工程の一部のみという方針から、全体に変更され、また一部に戻ったそうなのですが、これにより必要なデータが取れなくなってしまいました。
AIによる業務効率化を目指すには、目的によって必要なデータが変わります。また、AIの能力を十分に生かすには大量のデータが必要です。AIをうまく活用するためには、AIに何をさせるのか、最初に明確な目標を立てることが重要といえます。
現場の理解度不足や非協力
AIを導入するには、導入する現場の理解や協力が欠かせません。
あるプロジェクトでは、トンネルのコンクリート外観検査を、ドローンとAIを組み合わせて行おうとしました。このために現場にデータを集めるための協力を仰いだところ、「今は忙しい時期」といわれ、当初予定していたデータ量の1/3しか集まらないという事態に陥ったそうです。
また、集まった画像も質がいまいちで、AIモデル構築の外注先からは不満の声が上がったそう。それでも何とかAIのモデル構築までこぎつけたそうなのですが、当初予定していた期間の倍の時間がかかり、費用が1.7倍にまで膨らんだそうで、担当者はかなり苦労しました。
AI導入による製造業の更なる発展に期待
失敗事例もいくつか紹介しましたが、AIの導入が製造業の発展に対して大きく貢献するポテンシャルを持っていることは確かです。AIによる効率化や省力化は、競争力向上に必ず役に立つことでしょう。少子高齢化の未来に向け、今からAIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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