最終更新日:2024-09-23
不動産業界のAI導入事例11選!データ活用・マッチングによる効率化方法解説【2024年最新版】
AI(人工知能)の発達は留まるところを知らず、一見AIとは関係なさそうな不動産業界にもAI導入の動きが出ています。不動産業界で働く方のなかには、実際にどのような効果があるのか興味がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、
AI Marketでは
目次
不動産業界が抱える課題や問題点
現在の不動産業界はさまざまな課題や問題点を抱えています。まずはそれらを整理してみましょう。
少子高齢化
日本は少子高齢化により、人口減少の一途をたどっています。人口が減れば、それだけ不動産の需要が下がるのは明白。減っていく需要のなかで、他社との差別化を図ったり、業務を効率化していくことが求められます。
また、不動産業界そのものの人手不足も大きな課題です。
過去の膨大なデータ量
不動産には膨大なデータが存在します。地価、路線価、築年数、設備、駅からの距離など、1つの物件にはさまざまな種類の属性が存在。それらを人間が経験と勘に頼って扱っているだけでは、完全に有効活用できているとはいいがたいです。
家賃などの値段設定
家賃や購買価格を決める作業は、高すぎれば人が入らず、安すぎればもうけが少ない、非常に繊細で難しいものです。これまでは業者の経験と勘で決められてきました。物件は1件1件ことなるものであり、数式やデータによって決まるものではないという考えも依然として不動産業界には残っているそうです。
マッチングまでに必要な時間
物件を借りるにしても買うにしても、条件から導き出される候補は一般的に膨大です。しかしながら、それらすべてを把握して自分に合った不動産を見つけるには長い時間がかかります。また、そもそも情報をWeb上の仲介サイトや不動産の実店舗など、さまざまなところから探さなくてはいけないのも、時間を長くする要因です。
不動産業界へAIを導入するメリット
それでは、不動産業界にAIを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
業務の効率化
これまで人手で行ってきた作業をAIに任せることで、業務の効率化が図れます。これにより、少子高齢化によって起きる需要の低迷、および不動産業界で働く人不足の両方に対応できるでしょう。
データ管理の精度向上
AIは、うまく使うと人間よりもはるかに高い精度で予測や分析が可能です。これにより、不動産業界が抱える膨大なデータを利用し、高精度かつ短時間で査定などが行えることでしょう。担当者ごとに発生していたばらつきも抑えられ、サービスの均一化も実現できます。
顧客満足度の向上
AIに面倒で時間のかかる作業を任せることで、人間には時間や精神的な余裕が生まれます。それを、人対人の「おもてなし」に向けることで、より顧客満足度の向上が図ることが可能です。
また、AIの高い精度での予測や分析も、顧客満足度の向上につながることでしょう。
不動産業界へのAI導入・活用事例【11選】
ここからは、実際に不動産業界にAIを導入した事例をご紹介します。
マンション相場価格へのシステム開発
マンションの適正価格を知るには、過去の売買情報が重要ですが、この調査は業務負担が大きいです。また、査定の依頼をする方のなかには、不動産会社の社員が付けた値付けには不透明性があるという方もいます。
そこで、NetSimleは過去の売買事例データを用いて、人工知能にマンションの相場観を学習させることで、特定のマンションの相場価格を算出するシステムを開発しました。国土交通省も、AIを用いた中古住宅査定、マンション査定に積極的だそうです。
AIチャットボットによるノウハウ共有と営業力強化
桧家ホールディングスには、これまで、営業活動に必要な情報が社内に点在し、マニュアルが活用できないといった問題がありました。また、営業担当者の業務効率向上や営業力強化が課題とされていたそうです。これに対し、ソフトバンクのAIチャットボットである「EXA AI SmartQA」を導入することで解決を図りました。
まず、EXA AI SmartQAにさまざまな学習データを蓄積させ、情報を集約し活用容易化を実施。また、営業の疑問にEXA AI SmartQAが即時に回答できるようにしたことで、業務効率向上と知識の向上につながったという効果があったそうです。
EXA AI SmartQAは導入1ヶ月で営業の約半数が活用し、アンケートでは営業担当者の50%が業務に役立っていると回答しました。
営業セクションでのAI活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
ChatGPTを活用した相談・問い合わせ対応が可能なチャットサービス
株式会社GOGENではChatGPTを活用したチャットサービス「Chat管理人 Powered by GPT-4(β版)」を提供してます。ChatGPTを活用したマンション管理関連サービスとしては、日本で初の事例です。
GPT-4の自然言語処理能力を活用し、24時間365日の対応や多言語への対応だけでなく、生成AIによる自然な回答文章生成が可能です。また、マニュアルや規約の読み込みも不要で、管理関連の書類を登録するだけで利用できます。
結果として、サービスクオリティや顧客満足度が向上され、人手不足の解消にも役立っているシステムです。
関連記事:「マンション管理業務にAIをどう活用する?導入事例・活用方法・メリットを解説!」
帯自動差し替えによる工数削減とビジネス速度の向上
不動産の仲介において、他社の取り扱い物件を紹介することは基本的に可能ですが、その際に物件案内図の「帯」を自社の内容に差し替える必要があります。この帯には不動産会社名、連絡先、免許番号など必要な情報が記されていますが、大量の物件を紹介する際に、この帯を差し替えるという作業に非常に手間がかかるのが株式会社オープンハウスにとって問題だったそうです。
そこで、株式会社オープンハウスは、手作業で行っていた帯を自動的に差し替えるAIを開発しました。これにより、年間2万5,700時間の工数削減に貢献したそうです。また、手間がかかるという心理的負担が軽減し、社員のモチベーションが向上するという副次効果もありました。
ノマドクラウドで来店率の向上
株式会社ライフデザインでは、対応する営業スタッフや月によって来店率に差があることを課題としていました。そこで、AIツールであるイタンジ株式会社の「ノマドクラウド」を導入したところ、来店率が40%から50%に改善されたそうです。
理由としては、チャット形式でのメッセージのやり取りが使いやすく顧客への返信が早くなったことや、顧客管理やフォローがしやすくなったことが挙げられています。
不動産査定システムで第三者目線での提案が可能に
明豊エンタープライズでは、賃料設定において、開発側と管理側で基準の違いが生まれていました。これを解決するためにリーウェイズ株式会社が提供する不動産査定システムの「Gate.IP」を導入したそうです。Gate.IPは2億件超の不動産ビッグデータをAIが分析し、賃料、利回り相場、価格、空室率を高精度に査定します。
これにより、ビッグデータに基づいた「第三者目線」で提案が可能となり、一貫性のある一定の査定基準を設けることができました。
AI Marketでは
AIチャットボット導入による顧客獲得
米国の住宅販売不動産エージェントであるChubb Realtyは、毎日多く届く問い合わせメールに対して、即時にレスポンスを返せないことが課題でした。問い合わせに対して5分以内に回答できなければ、見込み顧客のその後の反応率が大幅に下がってしまうのだそうです。
そこで、人のオペレーターに近いAIチャットボットである、Structurely社の「Aisa」の導入を決めました。
Aisaは導入5カ月で500件以上の住宅購入に関する問い合わせの対応をリアルタイムに行い、従来のオペレーターのみでの対応に比べ、住宅購入につながる顧客獲得率を大きく高めることに成功したそうです。
物件売り出しの可能性を絞る
不動産買い取りの営業は、これまで特定のエリアの住人に対して、ローラー式に訪問営業を行っていました。しかしながら、この方法では営業の人員がいくらいても足りません。
そこで、アメリカのSmartZip Analyticsは、AIを使って1年以内に物件を売りに出すターゲットを推定するソリューション「SmartTargeting」を開発しました。
SmartTargetingは、膨大な量の住宅とその世帯情報や、不動産価格データ、ローンの状況、住宅保有者の金融資産、仕事、ライフステージなどのデータをAIに学習させています。総データ量は130万GB以上にもなるそうです。
SmartTargetingを利用することで、物件を売り出す可能性が高い世帯に絞って営業活動ができ、効率化を図ることができます。
混雑状況などをダッシュボード上のデータで確認
AI導入によって、オフィスビルに対して新たな価値を付加することもできます。三井不動産はオプティムの「OPTiM AI Camera」というAIソリューションを導入しました。
このソリューションでは、混雑状況、滞留、入店者数、エリア別の人数分布、属性(性別、年齢)といったデータを計測することが可能。これらをダッシュボード上で可視化することで、食堂の営業時間の最適化を図るなど、運用者に気づきを与えているそうです。
AI温度検知システムによる健康管理サポート
JCVは、AI温度検知ソリューションである「SenseThunder」を、葛飾区体育施設の3施設に納入しました。SenseThunderはAIを活用した顔認識技術と赤外線サーモグラフィーにより、マスクを着用したままでも、僅か0.5秒でスピーディーに発熱の疑いを検知できます。
これにより、新型コロナウイルスなどの感染症対策になるほか、施設の利用者に安心を与えることが可能です。
投資用区分マンションでのマッチングシステム開発
東急リバブルとNECは、AI技術を活用した区分マンション投資に対するマッチングシステムの開発に着手してします。このAI技術によって、個々の顧客に最適化された情報を迅速に提供することが可能です。また、顧客としても、よりフィットした物件情報を得ることができ、満足度の高い投資対象を選択することが可能となります。
マッチングシステムの開発実績豊富な開発会社はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
不動産業界のAI導入についてよくある質問まとめ
- 不動産業界がAIを導入する主な理由は何ですか?
不動産業界がAIを導入する主な理由は以下の通りです。
- 少子高齢化による人手不足への対応膨大な不
- 動産データの効率的な処理と活用
- 価格設定の精度向上
- 顧客とのマッチング時間の短縮
- 業務効率化による生産性の向上
- 不動産業界でのAI活用にはどのような事例がありますか?
主な事例は以下の通りです。
- マンション相場価格算出システム(NetSimle)
AIチャットボットによる営業支援(桧家ホールディングス) - 物件案内図の帯自動差し替えシステム(オープンハウス)
- AI不動産査定システム「Gate.IP」(明豊エンタープライズ)
- AIによる物件売却可能性予測(SmartZip Analytics)
- AI温度検知システムによる健康管理(JCV)
- マンション相場価格算出システム(NetSimle)
- 不動産業界でAIを活用することで、どのような効果が期待できますか?
主に以下の効果が期待できます。
- 業務の効率化と人手不足への対応
データ管理と分析の精度向上 - 顧客満足度の向上(例:24時間対応のチャットボット)
- 営業活動の最適化(例:SmartTargetingによる効率的なターゲティング)
- 価格設定の適正化(例:AIによる相場価格算出)
- 新しい付加価値の創出(例:オフィスビルの混雑状況把握)
- 業務の効率化と人手不足への対応
AIの導入は不動産仲介業者も支える?
この記事で紹介したように、AI技術は不動産業界にさまざまな恩恵をもたらします。現在そして将来における不動産業界の問題や課題の解決を図ることができ、今後は不動産業界においてもAI技術の導入が必須となっていくのではないでしょうか。
一方で、AI導入により、仲介業者そのものが不要になる可能性もあります。不動産業界の構造そのものにもAIは変革をもたらすのかもしれません。
AI Marketでは
以下の記事では、AI MarketがオススメするAI開発会社も紹介していますので、AI開発をご検討中の方はぜひご参考ください。
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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