風力発電でのAI活用法は?企業導入事例・メリット・注意点を徹底解説!
最終更新日:2024年09月23日
風力発電は、地球温暖化やエネルギー資源の枯渇といった問題に対する重要な解決策として、注目を集めています。
本記事では、
太陽光発電(ソーラーパネル)でのAI活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは
目次
日本の風力発電業界が直面する課題
風力発電は、バイオマス発電、水力発電、太陽光発電、地熱発電と並んで日本における再生可能エネルギーの中心的存在として位置づけられています。まず、日本の風量発電が直面している課題についてご紹介します。
適地の確保と環境影響
日本は山が多く、平地が限られているため、風力発電に適した場所の確保が簡単ではありません。また、風力発電所の建設に伴う景観の変化や、騒音、鳥類への影響など、環境面への考慮も必要です。
コストの高さ
風力発電の初期投資コストは高いのも課題です。また、日本は自然災害が多い国であり、風力発電設備の維持・修繕にもコストがかかります。
風況の不安定さ
風力発電は風の力を利用するため、風況の変動が発電量に直接影響を与えます。特に日本では、季節や地域によって風況が異なるため、安定した電力供給が難しいという課題があります。風況予測の精度向上や、発電量の安定化に向けた技術開発が求められています。
グリッド接続の制約
風力発電所が発電した電力を効率的に送電網に接続することも大きな課題です。日本の送電網は地域によって容量に限界があり、新たな風力発電所の電力を受け入れる余地が限られている場合があります。
関連記事:「電力システムとは?課題解決のためのAIを活用したデジタル化事例徹底解説!」
AI Marketでは
風力発電におけるAIの活用法
風力発電の効率と効果を最大化するために、AI技術はさまざまな形で活用されています。以下では、具体的な活用シーンを3つ紹介します。
風況予測の精度向上
風力発電の効率を高めるためには、風の強さや方向を正確に予測することが重要です。AIは大量の気象データを分析し、風況予測モデルを構築します。これにより、発電量の変動を予測しやすくなり、運用計画の最適化が可能となります。
関連記事:「初心者向きAI予測分析完全解説!仕組み・導入事例・人気ツール」
風力発電の監視と管理
広範囲にわたる風力発電所の監視と管理は、手動では困難です。AIを活用することで、各タービンの状態や発電量をリアルタイムで監視し、異常が発生した際には即座に通知されます。また、AIはデータを分析して、発電所全体のパフォーマンスを最適化するための改善点を見つけ出します。
関連記事:「予知保全とは?予防保全・事後保全・予兆保全との違い、メリット・デメリットを解説」
電力需給のバランス調整
風力発電は自然エネルギーであり、発電量が天候に左右されるため、電力需給のバランスを保つことが重要です。AIは需要予測と供給予測を統合し、電力の需給バランスを最適化します。これにより、余剰電力の無駄を減らし、必要な時に適切な量の電力を供給することが可能になります。
関連記事:「スマートグリッドとは?次世代電力システムの特徴・AIを用いた仕組み・メリット・事例を解説!」
風力発電事業でAIを活用するメリット
風力発電にAI技術を導入することで、多くのメリットが得られます。以下では、具体的な4つのメリットを紹介します。
発電効率の向上
AIは大量のデータを解析し、風況予測やタービンの最適な稼働条件を算出することで、発電効率を大幅に向上させます。風力タービンの角度や回転速度を風況に合わせて自動調整することで、常に最適な状態で発電が可能になります。
関連記事:「プラントエンジニアリング業界でのAI活用メリットは?解決課題・活用事例を徹底解説!」
コスト削減
AIの導入により、タービンの予知保全が可能となり、故障の予測と防止が行えます。これにより、突発的な故障による修理コストや非稼働時間が減少し、メンテナンスコストを大幅に削減できます。また、発電効率の向上に伴い、同じ量のエネルギーを得るためのコストも低減されます。
安全性の向上
データ分析AIを活用することで、風力発電システム全体をリアルタイムで監視することができます。音や振動などに異常が発生した場合、即座に通知が行われ、迅速な対応が可能となります。これは安全面の強化に繋がります。
また、ドローンと組み合わせて外観検査をAIで行うことで、人力でチェックするよりも労力を大幅に抑えることができ、結果として劣化等によるトラブルを未然に検知し、安全性の向上に繋げることも可能です。
環境への負荷軽減
AIの活用により、風力発電の効率が向上し、再生可能エネルギーの利用が促進されます。これにより、化石燃料に依存するエネルギー生産の割合が減少し、二酸化炭素の排出量が削減されます。結果として、環境への負荷が軽減され、持続可能なエネルギー供給が実現します。
風力発電におけるAI活用事例5選
以下は、風力発電において実際にAIを活用した事例です。
【SKYSCAPE】自律型ドローンを使って点検
次世代エアモビリティに関する事業を手がけるSKYSCAPE株式会社は、Clobotics社と共同で商用風力発電機の点検に自律型ドローンを用いた実証実験を行いました。この実験により、従来の目視点検よりも6時間以上の時間短縮が実現されました。
また、Cloboticsの「IBIS」システムは、風力発電機のブレードを自動で検査し、欠陥箇所を撮影・分析・データ化します。これにより、早期の欠陥発見が可能となり、コスト削減や安全性向上を実現しています。
関連ニュース記事:「次世代エアモビリティのSKYSCAPE、自律型ドローンを用いた商用風力発電機点検の実証実験に成功」
【日本気象協会】風力発電出力予測AIを開発
日本気象協会は、風力発電出力予測サービス「SYNFOS-wind」の提供を開始しました。このサービスは、風向風速や風力発電出力の精度を高めることで、発電計画の作成支援や電力需給の安定化に寄与します。風況の面的補正が可能となり、予測精度が10%向上したとも報告されています。
短時間予測、短期予測、週間予測、2週間予測など、利用目的に応じた情報提供が可能です。一般送配電事業者向けには電力需給計画の作成支援も行えますし、小売電気事業者には経済的な電力調達計画の作成を支援します。風力発電事業者は、高精度な発電販売計画の作成に大いに力になるでしょう。
【東芝エネルギーシステムズ】気象予測とAIで高精度な風力発電量予測を実現
東芝は、気象予測技術とAIを組み合わせることで、風力発電量を高精度に予測する技術を開発しました。この「風力発電量予測AI」により風力発電量予測の平均誤差は10.1%となり、前年の17.3%から大幅に改善されました。この技術には以下の特長があります。
- 独自の気象予測システムにより、風車付近の地形効果を考慮して高度ごとの風速予測データを算出
- 風速補正AIと出力特性学習AIを用いて、風速と発電出力の関係を学習し発電量を予測
- 複数の予測モデルを混合し、予測誤差の傾向を学習しながら予測手法の混合比率を最適化
本技術は、東芝エネルギーシステムズ社の再エネアグリゲーションシステム「REBSet™」に搭載され、発電事業者の発電計画作成を支援します。太陽光発電量予測技術に続き、風力発電量予測の高精度化により、多様な再エネ電源を束ねた安定運用が可能となります。
【amnimo】カメラ監視とエッジAIで安定運用と効率的メンテナンスを実現
風力発電は再エネの主力として導入が進んでいますが、山間部や洋上など過酷な環境に設置されるため、故障によるメンテナンスコストと停止時間が課題となっています。amnimo社のエッジAI技術を活用したソリューションにより、SCADAなどの監視システムが故障しても、回転軸などの稼働状況を遠隔から把握可能です。現場に行かずに状況を判断し、的確な復旧作業が行えます。
関連記事:「エッジAIとは?活用事例解説!」
耐環境性の高い機器の採用と、自動復旧機能やデータバックアップ機能により、過酷な環境でも安定稼働。万一の故障時も遠隔対応が可能で、メンテナンスコストを最小化できます。また、電波の弱い場所でも複数キャリアへの自動切替えで通信を継続可能です。通信遮断時は現場で録画・蓄積し、復旧後にデータを回収できるので欠損を防げます。
加えて、光学カメラとサーマルカメラなど、異なるベンダーの複数カメラを統合管理するので。昼夜を問わず不審船などを監視し、設備の防犯に役立てることが可能です。
【東京工科大学】シミュレーションとAIを組み合わせた風車ブレード設計の効率化
東京工科大学工学部は、AIを活用した未来型風力発電システム技術の開発に取り組んでいます。東京工科大学工学部新海教授の研究室では特に、風車のブレード設計にAIを用いることで、試作工程の効率化を目指しています。従来は風洞実験や流体シミュレーションを用いてブレードの形状を最適化していましたが、これらの方法は時間と手間がかかるという課題がありました。
そこで、シミュレーションで生成した大量のデータをAIに学習させ、最適なブレードの形状を予測する手法を研究しています。AIが導き出したブレード形状は、3Dプリンターを用いて簡単に試作できます。この技術により、ブレード設計にかかる時間とコストを大幅に削減できると期待されています。
さらに、この技術はブレードだけでなく、他の機械部品や電気電子部品、材料の劣化予知など、幅広い分野への応用が可能です。特に、日本の製造業が得意とするインテグラル型の部品設計への活用は、製造業の競争力強化につながると考えられます。
風力発電でAIを活用する際の注意点
AI技術の導入には多くのメリットがありますが、以下のような注意点に考慮しながら導入を進めていく必要があります。
初期導入コストの高さ
AIシステムの導入には初期費用がかかります。ハードウェアの購入、ソフトウェアの開発、データ収集と解析など初期投資が大きくなることがあります。このコストを見越した上で、長期的な視点での費用対効果を考えることが重要です。
データの品質
AIは大量のデータを基に動作しますが、データの品質が低いと正確な予測や最適化が難しくなります。データの収集には信頼性の高いセンサーを使用し、データのクレンジングと整備を徹底する必要があります。
関連記事:「データ収集とは?AI開発に重要な理由・具体的な収集方法や収集のコツについて詳しく解説!」
セキュリティリスク
AIシステムはインターネットに接続されることが多いため、サイバーセキュリティのリスクが伴います。ハッキングやデータ漏洩を防ぐために、強固なセキュリティ対策が不可欠です。定期的なセキュリティチェックと最新のセキュリティプロトコルの導入が重要です。
継続的なメンテナンスとアップデート
AIシステムは導入後も継続的にメンテナンスとアップデートが必要です。技術の進歩に伴い、新しいアルゴリズムや解析手法が開発されるため、システムを最新の状態に保つことが重要です。また、運用中に得られる新しいデータを活用してモデルを再訓練し、精度を向上させることも必要です。
風力発電でのAI活用についてよくある質問まとめ
- 風力発電でAIを活用するメリットは?
- 発電効率の向上
- コスト削減
- 安全性の向上
- 環境への負荷軽減
- 風力発電でAIを活用する際の注意点は?
- 初期導入コストの高さ
- データの品質
- セキュリティリスク
- 継続的なメンテナンスとアップデート
まとめ
風力発電へのAI活用は、発電効率の向上やコスト削減、安定運用の実現など、多方面でメリットをもたらします。風況予測や設備の異常検知、ブレード設計の効率化など、AIの活躍の場は広がっています。先進企業の事例からも、その効果の大きさがうかがえるでしょう。
ただし、AI導入には初期コストやセキュリティ対策、継続的なメンテナンスなどの課題もあります。自社の状況を見極め、専門家の力を借りながら、戦略的にAIシステムを設計・運用していくことが肝要です。
風力発電業界が直面する課題を打開するカギは、まさにAI技術にあると言えるでしょう。ぜひ本記事を参考に、自社の風力発電事業へのAI活用を前向きに検討してみてください。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp