最終更新日:2024-09-23
ボイスボットとは?人件費・労力削減可能?AIとIVR(自動音声)の決定的違い・事例徹底解説!
顧客対応部門やコールセンターで「ボイスボット」を用いたAI化が進んでいます。ボイスボットを利用すれば、「あふれ呼による機会損失が多い」「コールセンターの人手が足りない」といった悩みの解決につながるほか、人件費や従業員の労力を削減可能です。
本記事では、ボイスボットとIVRの違いから、ボイスボットのメリット・デメリットを解説します。記事後半では導入事例まで紹介しておりますので、実際に導入した企業が出している効果を知ることができるでしょう。
また、コールセンターでのAI導入事例はこちらの記事で紹介しております。コールセンターに特化したAI事例を見たい方は併せてご覧ください。
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ご自分でコールセンター向けおすすめAI開発会社を絞り込みたい場合はこちらの記事を参考にしてください。
目次
ボイスボットとは?
ボイスボットとは、音声認識・言語解析能力を搭載したAIを用いて、電話オペレーターの業務を代行してくれるシステムです。
従来の電話自動応答システムであるIVR(自動音声システム)では、難解な質問やシステムに組み込まれていない問題には対応できませんでした。ボイスボットには人工知能が搭載されているため、どんな質問にも臨機応変に対応できます。
現在ボイスボットは、金融・保険・運送・飲食などの幅広い業界で利用されています。
ボイスボットの仕組み
ボイスボットには、大きく分けて3つの技術を持ったAIが搭載されています。
1. 音声認識技術
2. 自然言語処理技術
3. 機械学習技術
まず「音声認識技術」が使われます。音声認識技術では、顧客の音声データをテキストデータ(自然言語)に変換します。
ボイスボットに使われる音声認識の種類、仕組みについてこちらの記事で解説しています。また、音声認識・音声解析システム開発に強い会社をこちらの記事で特集しています。
自然言語を解析するのに使われるのが「自然言語処理技術」です。自然言語処理(NLP)技術では、音声認識技術によって変換されたテキストデータの意味をAIが解析し、顧客がどのようなことを言っているのかをくみ取ります。
ボイスボットに欠かせない自然処理言語の仕組みをこちらの記事で解説しております。
そして、回答をAIが文字として導き、音声へと合成(変換)して顧客に伝えることで「顧客→AI→顧客」の会話が成り立ちます。
音声合成でボイスボットを実現する仕組みについてはこちらの記事で解説しています
さらに、この流れを機械学習することで、顧客とのやり取りをAIが学習し、対応を重ねるたびにより良い顧客対応ができるようになります。
最後の音声変換の部分をテキスト変換にすれば、AIによるチャットボットへの応用も可能です。
チャットボットとは?メリット、よく使われる種類についてわかりやすく関連記事で解説していますので併せてご覧ください。
ボイスボットとIVR(自動音声システム)の違い
比較ポイント | ボイスボット | IVR |
---|---|---|
問題点の把握方法 | 直接聞く(速い) | 条件分岐(遅い) |
把握できる問題の粒度 | 顧客が話した内容全て(深い) | シナリオ想定まで(浅い) |
通話時間 | 短い | 長い |
ダイアル操作 | 無 | 有 |
ボイスボットとIVRの最も大きな違いは「顧客が受け身か否か」です。IVRは、〇〇であれば1、□□であれば2というような案内をするため、顧客は常に受け身で対応することになります。
そのため、顧客が抱えている問題が伝わるまでにかなりの時間がかかったり、シナリオにない問題は解決できないデメリットがあります。
ボイスボットは、顧客の声を聞くことができるため、顧客が抱えている問題を無駄なく詳細に把握できます。また、人工知能により解析するため、幅広い問題を解決することが可能です。
例えば、飲食業界では予約受付のためにIVR(電話自動応答)を使用している店がまだ多いようです。しかし、ボイスボットはAIが対応するため、かなり複雑な質問にも答えることができます。顧客は不安点を解消してから来店できるため、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。
こちらの記事で、ボイスボット以外の飲食業界でのAI活用事例について説明しています。
ボイスボットを導入する6つのメリット
ボイスボットを導入する以下のメリットを紹介します。
- 「あふれ呼」による機会損失を防げる
- 対応の質と顧客満足度を向上できる
- シナリオの変更が容易
- 従業員の労力を削減できる
- 人件費・教育費を削減できる
- 24時間対応できる
それぞれのポイントを解説します。
「あふれ呼」による機会損失を防げる
ボイスボットを導入すると、コールセンターの人員以上の顧客に電話対応できるため「あふれ呼」が発生しにくく、機会損失を防ぐことができます。ボイスボットのみで対応できる問題も多くあるため、ボイスボットによる対応後に必ずオペレーターに繋ぐ必要もありません。
また、ボイスボットはIVRよりも迅速に問題を把握できるため、電話対応時間が短くなる傾向にあります。よって、同時接続数を少なく維持し、今と同じスタッフ数でより多くの顧客に対応することが可能です。
対応の質と顧客満足度を向上できる
通話履歴を機械学習することで、ボイスボットによる顧客対応の質、そして顧客満足度を向上させることができます。オペレーターが応答する場合は、問題がある都度、文章に起こして問題を集約して全体周知しなければなりません。
ボイスボットの場合はシステムを変更するだけで問題点の改善が可能です。
さらに、AIは音声から感情を分析することも可能です。感情に合わせた対応の変化も可能ですので、より良い対応が可能になります。
ボイスボットに必要な音声による感情分析をこちらで解説しておりますので併せてご覧ください。
シナリオの変更が容易
ボイスボットの場合は、シナリオの変更が生じた場合でもシステムを変更するだけで完結します。一方、オペレーターが対応するコールセンターの場合、シナリオを変えるとなると全員分のマニュアルを変更して全体周知しなければなりません。
問題点に臨機応変に対応できるうえ、期間限定のシナリオにもオペレーターの負担なく対応できます。
従業員の労力を削減できる
ボイスボットが簡単な問題を解決してくれるため、オペレーターまでつながる電話は少なくなり、オペレーターの業務負担が減ります。
また、IVRを経由してオペレーターにつながった場合、顧客はかなりの時間を使った後の相談となるため、多少なりともストレスを溜めています。しかし、ボイスボットは初めに問題が解決できないと判断するとすぐにオペレーターに繋ぐため、機械での対応段階でストレスをそこまで溜めていません。
スタッフの精神的苦痛が問題となっているコールセンターですが、ボイスボットのアシストにより顧客のストレスが少ない状態で対応できるのも大きいメリットです。
人件費・教育費を削減できる
ボイスボットはオペレーターの業務の一部を担うため、オペレーターの業務が減ります。より少ない工数で顧客対応できるため、残業で発生する人件費や教育にかかる費用を削減することが可能です。
規模によりますが、ボイスボットの導入はオペレーターを雇うよりも安く済む場合が多いので長期的にコスト削減になります。
24時間対応できる
ボイスボットはAIが対応するため、24時間休まずに対応できます。営業時間外の問い合わせ対応ができないのは機会損失につながります。
時差のある海外からの問い合わせが多い場合は、日本での営業時間外に全く対応できないならますます機会損失が大きくなるでしょう。ボイスボットの導入によって顧客を取りこぼさないのは大きなメリットです。
ボイスボットを導入する3つのデメリット
ボイスボットを導入するデメリットを以下に紹介します。
- すべてに対応できるわけではない
- 初期費用・運用コストがかかる
- 雑音・方言・訛りに弱い
それぞれのデメリットについて説明します。
すべてに対応できるわけではない
AIは学習していないことに対応できません。問い合わせ内容によっては解決できないものがあります。
しかし、IVRよりも「わからない」ことを迅速に判断できます。加えて、わからなかった内容も学習すればわかるようになります。
人間のオペレーターでも解決できない問題があるように、どんな問題でもシステムで完璧に対応することは難しいでしょう。しかし、ボイスボットを適切に運用していけば、解決不能な問題も少なくなっていきます。運用にかける時間と方法次第で改善可能なデメリットと言えるでしょう。
初期費用・運用コストがかかる
ボイスボットを利用するためには、新たなシステムを導入する初期費用・運用コストがかかります。削減される人件費や教育費用、ボイスボット導入による顧客満足度の向上を天秤にかけて検討しましょう。
AI導入にかかる費用見積のコツについて、こちらの記事で解説しています。
雑音・方言・訛りに弱い
聞き取り音に外部からの雑音が入ってしまうと、AIが顧客の声と勘違いしてしまい正確な情報を聞き取れないことがあります。そのため、駅のホームなどの雑音が多い環境からの問い合わせには向きません。
また、方言や訛りが強い方が話した内容をAIが認知できない可能性もあります。
しかし、雑音を除外して声を聞き取る技術はあるため、雑音が極端に多くなければ実用に問題はありません。また、方言や訛りの強い地域からの問い合わせが多いと事前に分かっている場合は、事前にアクセントを機械学習することで対処可能です。
このように、ボイスボットにもデメリットはありますが、事前の対策や計画をしっかり行えば、対処できるものばかりとなっています。
特に、有人オペレーターとの分岐方法など、実際の人間との役割分担を明確にしておくとよいでしょう。
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ボイスボットの導入事例4選
実際にボイスボットを導入している事例をご紹介します。
月間3,500件の住所変更受付の自動化に成功(オリックス生命保険/PKSHA)
オリックス生命保険は株式会社PKSHAのボイスボットを導入して、月間3,500件を超える住所変更受付を自動化することに成功しました。これにより、住所変更受付希望者の半分以上をシステム対応で完結することができ、従業員の労力削減を実現しました。
同社内では、ボイスボットの導入で顧客満足度が落ちるとの不安もあったようです。しかし、電話応対のアンケートでは、90%以上の方が5段階評価の3(普通)以上を選んでいます。
検討から1年半をかけての導入ということで多少時間はかかりましたが、事前準備を入念に行った成果もあり、労力削減と満足度の向上を両立しました。
24時間対応に加え人件費を約50%カット(ナリコマエンタープライズ)
ナリコマエンタープライズは、株式会社AI ShiftのボイスボットAI Messenger Voicebotで営業時間外の一次受付対応をすることにより、お客様満足度向上と人件費の50%削減を実現しました。ナリコマエンタープライズは高齢者向けの委託給食や食品販売を行う会社です。
従来は、営業時間内に社員が電話応対するのに加え、問い合わせが集中する朝の1時間のみ外注して対処していました。しかし営業時間外の電話には対応できず、お客様満足度の低下や機会損失につながっていると考えられていました。
そこで、ボイスボットを導入することにより24時間対応が可能になったのに加え、朝の早い時間帯に必要だった外注の必要がなくなりました。
また、ボイスボットは同時に複数の電話応対ができるため、問い合わせが集中しても電話口で待たせるリスクを抑えることができます。これらを活かした結果、人件費を約50%カットすることが可能になりました。
応答内容を自動解析しクレーム分析に活用(エーアイスクエア)
エーアイスクエアは、ボイスボットで応対した内容をAIが解析することにより、顧客の声をクレーム分析や、新商品の企画・開発に役立てています。実際に地方銀行様の総合窓口で活用されています。
従来、通話履歴は録音やテキスト化のみに留まっていました。その通話履歴データを分析・機械学習することで、顧客のニーズをより深く知ることが可能になりました。
ボイスボットは顧客の声を自動で文章にしているため、文字起こし等も必要ありません。このように、ボイスボットを用いれば、費用削減や労力削減に加え、電話応対の質も向上させることが可能です。
客室へのAIスピーカー導入で17言語の顧客対応が可能に(小田急電鉄)
小田急の「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」は、TradFit 株式会社がホテル向けに開発・提供する多言語チャットボットを搭載したITサービスを375室全てに導入し、電話対応の手間削減と、多言語への対応を実現しました。備品の貸出受注を行ったり、従業員への問い合わせを行うことが可能です。
17言語に対応しているため、幅広い国からの訪問客に対して対応することができます。AIスピーカーとチャットボットの導入により、電話対応の手間や言語の壁がなくなります。そして、それぞれの顧客に最適なおもてなしを行うことが可能になるでしょう。
関連記事:「AIはホテルでどう活きる?代替可能な業務や導入事例を徹底解説!」
ボイスボットについてよくある質問まとめ
- ボイスボットはIVR(自動音声システム)とどう違いますか?
- イスボットはAIを搭載し、より柔軟な対応が可能
- 主な違いは以下の通りです。
- 問題把握方法:ボイスボットは直接聞く(速い)、IVRは条件分岐(遅い)
- 把握できる問題の粒度:ボイスボットは深い、IVRは浅い
- 通話時間:ボイスボットの方が短い
- ダイアル操作:ボイスボットは不要、IVRは必要
- ボイスボット導入による具体的な効果はありますか?
- 主な効果は以下の通りです。
- 人件費削減(約50%カットの事例あり)
- 24時間対応の実現
- 多言語対応(17言語対応の事例あり)
- 主な効果は以下の通りです。
- ボイスボット導入による具体的な事例はありますか?
- 具体的事例は以下の通りです。
- オリックス生命保険:月間3,500件の住所変更受付を自動化
- ナリコマエンタープライズ:人件費50%削減と24時間対応を実現
- エーアイスクエア:応答内容の自動解析でクレーム分析に活用
- 小田急電鉄:ホテルの全客室に17言語対応のAIスピーカーを導
- 具体的事例は以下の通りです。
- ボイスボットの主な技術要素は何ですか?
ボイスボットには主に3つの技術が使われています。
- 音声認識技術:顧客の音声をテキストデータに変換
- 自然言語処理技術:テキストデータの意味を解析
- 機械学習技術:対応を重ねるごとに精度を向上
これらの技術により、人間のオペレーターに近い対応が可能になっています。
まとめ|ボイスボットの導入は人件費・労力削減に役立つ
ボイスボットの概要・メリット・デメリット・導入事例が分かったのではないでしょうか。ボイスボットは、事前の計画を丁寧に行えば、費用削減・労力削減・顧客満足度向上など様々なメリットを受けることができます。
ボイスボットには様々な特徴・価格のものがありますが、最適なものを選ぶことにより、長期的に良い成果を得ることができます。一度、AIのプロに相談してみるのも手です。
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