DNN(ディープニューラルネットワーク)とは?仕組み・活用メリット・活用分野・注意点を徹底紹介!
最終更新日:2024年10月19日
DNN(ディープニューラルネットワーク)は、ディープラーニング技術の一つであり、複雑なデータからパターンを学習し、高精度な予測や分類が可能なモデルです。自動運転技術の画像認識、製造業の異常検知、ヘルスケアでの病気診断システムなど、さまざまな分野で活用されています。
LLMについてはこちらで詳しく説明していますので併せてご覧ください。
本記事では、
AI Marketでは
AI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
DNN(ディープニューラルネットワーク)とは
DNN(ディープニューラルネットワーク)とは、AIの手法の一つである「ニューラルネットワーク」を多層化(一般的に4層以上)したモデルのことです。入力データから自動的に特徴を抽出し、複数の層を通じてその特徴の細部まで学習します。
多層化、つまりディープラーニングにしたことにより、ニューラルネットワークと比べて複雑なパターンを解析でき、従来予測が難しかった未知のタスクに対しても高度な予測を可能にしています。
以下では、仕組みや混同されがちなディープラーニング・CNNとの違いについて紹介します。
DNNの仕組み
DNNの仕組みは以下のとおりです。
- 層構造:データを受け取る入力層・データを処理する複数の中間層・ 結果を出力する出力層から構成される多層構造が特徴
- 活性化関数:各ニューロンの出力を決定する関数で、非線形性を導入
- 学習アルゴリズム:誤差逆伝播法などのアルゴリズムを用いて、モデルの重みを最適化
ニューラルネットワークは、通常3層構造(入力層、隠れ層1層、出力層)です。一方、DNNの特徴は、2つ以上の隠れ層を持つことです。中間層(隠れ層)が多いほど、よりディープなモデルになり、複雑で高度な予測や分析を可能にします。
また、従来のニューラルネットワークでは、人間が特徴量を設計する必要がありましたが、DNNでは自動的に特徴量を学習・抽出できるので、より人間の脳に近づいたと言えます。
機械学習・ディープラーニングとの違い
機械学習とは、データからパターンを学習し、未知の事柄を予測する手法全般のことです。これには、決定木やサポートベクターマシン(SVM)、そしてニューラルネットワークを含む統計学的な手法やパターン認識技術が含まれています。ニューラルネットワークやDNNと対比して用いられる場合は、従来型のシンプルな学習方法を指す場合が多いです。
DNNはニューラルネットワークを拡張した手法であるため、機械学習の一種といえます。また、ディープラーニングは、DNNを含む層が深い、つまり多層化したネットワークを指す手法の総称です。
以上より、機械学習はコンピュータが自動で予測する技術の総称で、その中に人間の脳の神経細胞(ニューロン)を模倣したニューラルネットワークがあることが分かります。ニューラルネットワークをさらに拡張して深層学習、つまりディープラーニングにしたのがDNNです。
実は、ニューラルネットワークの拡張版にはDNNのほかにCNNもあります。DNNとCNNの考え方の違いについて次の見出しで説明します。
CNNとの違い
DNNとCNNはどちらもディープラーニングのモデルですが、以下のように用途や構造などが異なります。
項目 | DNN | CNN |
---|---|---|
構造 | 複数の全結合層(fully connected layers) | 畳み込み層(convolutional layers)とプーリング層を含む |
用途 |
汎用的な構造を持ち様々な種類のデータ処理 |
画像処理などの特定のタスクで高い性能 |
計算負荷 | 全結合層のため計算負荷が高い | 畳み込み層を使い計算効率が高い |
特徴抽出 | 基本的に手動で特徴量を設定する必要がある | 畳み込み層により自動的に画像内の特徴を抽出 |
DNNは汎用的なタスクに使用され、音声認識や自然言語処理などに適しています。CNNは主に画像認識に特化しています。畳み込み層で画像の特徴を抽出し、プーリング層で情報を圧縮します。これにより、画像の階層的な特徴を学習し、高度なパターン認識を実現します。
AI Marketでは
DNNの活用メリット
DNNは大量のデータ処理や複雑なパターン化が可能なことから、幅広く活用されています。ここでは、DNNの活用メリットを紹介します。
汎用性が高い
DNNは汎用性の高さから、さまざまな分野で幅広く応用可能です。音声認識や自然言語処理、異常検知といった高度なAIタスクから、ビジネス分野で必要とされるデータ分類や予測分析に至るまで、あらゆるタスクで柔軟に活用できます。
例えば、製造業では異常検知システムとして、金融業では不正取引の検出に利用されており、企業が抱える複雑な課題に対して有効な解決策を提供しています。
DNNのさまざまなデータ形式や業務プロセスに適応できる汎用性の高さは、多くの業界で注目される理由の一つです。
大量のデータを活用できる
DNNはデータの処理能力が高く、システムに搭載することで社内外にある膨大なデータを活用できます。例えば、顧客の購買履歴や行動パターン、業務プロセスで発生する大量のログデータをDNNで処理することにより、マーケティングや業務の効率化に役立てられます。
そのため企業がデータの利活用を進める際に、DNNはまず検討すべき手法といえます。
ただし、DNNは大量のデータを効果的に処理できますが、データの質も重要です。低品質や偏ったデータは、モデルの性能を低下させる可能性があります。また、データの前処理や特徴エンジニアリングも重要な要素で、これらの作業にも相当な労力が必要です。
より複雑なタスクに対応できる
DNNは複数の変数や非線形なデータパターンも処理でき、人力や古典的な統計モデルでは解決が難しい問題でも対応可能です。
例えば、農業分野では、気温や湿度、降水量といった複数かつ大量の環境データをもとに、DNNが作物の成長を最適に管理するシステムが開発されています。これにより、収穫時期の予測や作物の成長管理が効率化され、人件費の削減にもつながります。
DNNを活用することで、より多くの業務を自動化でき、省力化・省人化につなげられます。
精度を自動で向上できる
DNNは、与えられるデータを学習することで予測精度を自動的に向上可能です。基本的には人が調整することなく、新たなデータが加わるたびにモデルが自己改善を続け、精度を向上していきます。
例えば、製造業の異常検知システムでは、正常データが多ければ多いほど、異常を検知する精度が高まります。また、ECサイトのレコメンドシステムでは、顧客の購買履歴や行動データが増えれば増えるほど、個々の顧客に最適化されたレコメンドを行うことが可能です。
したがって、DNNを企業の業務に導入することで、データの増加に伴うシステムの運用や保守の負担が減り、運用コストの削減に寄与します。
と言っても、ビジネスレベルで用いるシステムでは完全に人間の介入なしで行えるわけではありません。ハイパーパラメータの調整や、モデルアーキテクチャの選択など、人間の専門知識が必要な部分も多くあります。
また、偏ったデータに基づいて学習してしまった場合は過学習(オーバーフィッティング)のリスクもあり、これを防ぐためには適切な監視と調整が必要です。さらに、新しいデータが既存のデータと大きく異なる場合(分布の変化)、モデルの再学習や調整が必要になる場合があります。
DNNの活用分野
DNNは、その高い汎用性と学習能力により、さまざまな産業で活用が進められています。以下では、主要な分野におけるDNNの活用例を紹介します。
【デンソー】自動運転
DNNは、自動運転技術の実現に向けて、車両の安全性や効率性を向上させるために広く活用されつつあります。自動運転車は道路状況や周囲の物体を認識し、リアルタイムで適切な判断を行う必要があり、DNNのスピーディな処理能力が自動運転における以下のタスクで貢献しています。
- 危険物の検出:道路上の障害物や歩行者をリアルタイムで認識し、事故を未然に防ぐ
- 衝突回避:前方の車両や障害物を検知し、自動で回避
- 自車進路の決定:車両が走行するルートを周囲の状況に応じて適切に提案
- トラッキング:周囲の車両や歩行者を追跡
実際にデンソーでは、DNNを用いて歩行者の軌道予測技術を開発しています。DNNは自動運転車の安全性を大幅に向上できる技術として、自動運転レベル4を目指すうえで欠かせません。
3D点群データを取得するLiDARデータを処理する際にDNNを用いることで、LiDARデータの解析精度と速度が大幅に向上します。例えば、物体の検出や追跡、距離測定などの精度が向上し、自動運転の安全性と信頼性が高まります。
関連記事:「自動運転にAIが欠かせない理由とは?仕組みとメリット・デメリット徹底解説!」
小売業
小売業においても、DNNは店舗運営や顧客対応の効率化に大きく貢献しています。具体的には、以下のようなシーンでDNNが活用されています。
- 在庫管理:商品在庫の最適化や補充タイミングの予測に使用し、効率的な在庫運営を実現
- 顧客分析:購買履歴や行動データを分析し、顧客ごとの購買パターンを把握することで、パーソナライズされたサービスを提供
- 商品需要予測:季節やトレンドに基づき、将来の需要を予測して適切な在庫量を維持
- レコメンドシステム:顧客に最適な商品を提案
小売店がDNNを活用することで、顧客データに基づいたレコメンドや顧客分析が可能となり、顧客満足度の向上につなげられます。
小売業の支援に強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
医療
医療分野では、以下のように医師や薬剤師の判断をサポートする目的で、DNNが積極的に活用され始めています。
- リモート診断:DNN搭載システムで患者バイタルデータを分析し、遠方の患者をリモートで診断
- 創薬支援:膨大な量の分子データを解析し、新しい薬の候補物質を発見するためのプロセスを加速
医療現場では、診断精度の向上や迅速化に役立つ技術として期待されています。
医療業界に強いAI開発会社はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
製造業
製造業においても、DNNは生産プロセスの自動化や品質管理に欠かせない技術となっています。具体的な応用例は以下のとおりです。
- 製品や部品の異常検知:製造ライン上の製品や部品の音を分析し、欠陥や異常を早期検出
- 不審者検知:集音マイク付きの監視カメラから、従業員の異常行動や不審者を検知
DNNは異常検知や不審者検出の自動化が可能なことから、製造現場のスマートファクトリー化を目指すうえで欠かせません。
製造業に強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
農業
農業でもDNNが活用され始めており、特にスマート農業の実現に貢献しています。具体的な活用例は以下のとおりです。
- 農作物の生育管理:DNNを使って、気温や湿度、土壌の状態をリアルタイムで監視し、作物の成長を最適化
- 出荷需要予測:市場の需要を予測し、適切なタイミングで作物を収穫・出荷することで、収益を最大化
このように、DNNは農業における省力化と生産性向上に貢献し、人手不足解消に貢献する技術として注目を集めています。
関連記事:「農業へのAI導入事例!スマート農業・自動化ロボットで変わる?」
LLM
DNNは、近年注目を集めているLLMの基盤技術です。LLMは、主にTransformer(トランスフォーマー)アーキテクチャを基に構築され、大量のテキストデータを学習し、自然言語の理解や生成を行うモデルです。以下のようなタスクで高い精度を発揮します。
- チャットボット:ユーザーの質問に自然な対話形式で応答するAIアシスタントを構築
- 文章の自動生成:ChatGPTのように大量のデータをもとに、コンテンツの自動生成や要約
- 翻訳:言語間の翻訳タスクを迅速かつ高精度に処理
- 質問応答:大量の情報から適切な回答を抽出・生成する
- コード生成:プログラミング言語のコードを自動生成する
今後DNNが発展することで、LLMを利用した上記システムの高度化が進むと期待されています。また、DNNだけでなく、新たなアーキテクチャや学習手法の開発も進められており、AIの更なる発展が見込まれています。
DNN活用時の注意点
DNNは高度な分析や予測が可能なことから、従来の古典的な統計モデルからの代替モデルとして活用される場合もあります。ここでは、サポートベクターマシンや線形回帰、ニューラルネットワークなど古典的な手法と比較しながら、DNN活用時の注意点を紹介します。
根拠を示せるように工夫が必要
DNNは多数のパラメータが絡み合い、層をまたぐことで特徴を学習しているため、「ブラックボックスモデル」と呼ばれるように、個々のデータに対する予測のプロセスや結果の根拠を説明できません。そのため、入力データと出力結果の関係性を可視化する工夫が必要です。
特に、医療や金融の分野ではDNNの結果に対する説明責任が求められる場面も多く、説明可能なAI(XAI)など結果の根拠を示せる方法を取り入れる必要があります。
高額な導入・開発コストがかかる
DNNは、線形回帰や決定木といった古典的な手法に比べて導入や開発コストが高額になる傾向があります。古典的な手法は計算量が少なく一般的な社用パソコンでも十分に動作するのに対し、DNNを動かす際には大量の計算処理が発生するため、ハイスペックなGPUが必要です。
ほかにも、DNNを開発できる高度な知識とスキルを持つAI人材も必要になるため、人件費もかかります。
大量の計算リソースを消費する
DNNは、簡易的なモデルでも数千~数万の膨大なパラメータを計算する必要があるため、線形回帰のように単純な数式で計算できるモデルと比較して、計算リソースを大量に消費します。特に大規模なデータセットを扱う場合、その計算量は飛躍的に増大します。
そのため、小規模なシステムや計算リソースが限られた環境では、DNNの学習や運用が困難になることがあります。
計算リソースが限られる場合にDNNの導入を検討する際には、計算リソースが潤沢なクラウドGPUの導入やDNNモデルの小規模化の検討が必要です。
DNNについてよくある質問まとめ
- DNN(ディープニューラルネットワーク)とは?
ディープニューラルネットワーク(DNN)は、多層構造を持つニューラルネットワークの一種です。DNNの特徴は、2つ以上の隠れ層を持つことです。この多層構造により、複雑なパターンや特徴を学習することができます。応用例として以下があります。
- 画像認識: 物体検出、顔認識など
- 自然言語処理: 機械翻訳、感情分析など
- 音声認識: 音声からテキストへの変換など
- 異常検知: 製造ラインでの不良品検出など
DNNは現代のAI技術の中核を担う重要な技術であり、様々な分野で革新的な成果をもたらしています。
- DNNの導入に必要なデータ量はどのくらいですか?
DNNは大量のデータを使って学習することで高い精度を発揮するため、データ量が多いほど効果的です。
ただし、具体的なデータ量はモデルの複雑さや目的に応じて異なります。一般的には、数千から数百万のデータが必要とされます。小規模なデータセットであっても、データ拡張技術を用いることで、ある程度の精度向上を図ることが可能です。
- DNNを導入する際のセキュリティリスクについてはどのように対処すべきですか?
DNNの導入においても、一般的なITシステムと同様にセキュリティリスクが存在します。特に、データのプライバシー保護と不正アクセスの防止が重要です。データ暗号化やアクセス制御、セキュリティ監査を定期的に行うことで、リスクを最小限に抑えられます。
まとめ
DNNは、複雑なデータから自動的に学習し、高精度な予測や分類を行う技術です。画像認識や自然言語処理、異常検知など幅広い分野で活用されており、特に製造業・自動運転・医療・農業分野において業務の効率化に貢献しています。
一方で、ブラックボックスモデルであるため結果の根拠を説明するのが困難なことや、多額の導入コストや大きな計算リソースを要することに注意が必要です。
DNNは適切に導入することで大きなビジネス効果を得られます。今回の機会にDNNを導入し、ビジネスを飛躍させましょう。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp