最終更新日:2024-09-06
AIによる外観検査の活用事例10選!半導体・外壁・インフラを画像処理で点検するための導入事例は?
半導体や基盤、外壁などの外観検査は従来人の目で対応するしかありませんでした。また、高所や豪雪地帯などの危険地域や巨大構造物の点検も目視、かつ低頻度で行わざるを得ませんでした。目視検査は安全性のリスクや人材確保の問題があり、品質の担保とコストの両立が難しい問題です。
そこで、現在増えているのがAIカメラ、ドローンやIoTセンサーを用いたAIによる外観検査です。しかし、AIによる外観検査を導入したいと思っているが、自社のニーズには向いているのかよくわからないという方も多いかと思います。
今回の記事では、AIによる外観検査を用いている様々な業界の事例をご紹介します。AIを活用した外観検査の手法、導入の注意点についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
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目次
AIによる外観検査事例【製造業での工場ライン5選】
半導体・基板・溶接などの製造業において、AIによる外観検査を実施している事例をご紹介します。
車載半導体のAI検査(Horus AI)
Horus AIは、車載半導体のAI検査ツールです。電気自動車やハイブリッド自動車の需要が高まっている一方、検査工程が人海戦術となってしまいコストが大幅に掛かってしまう課題がありました。Horus AIは工場の検査員が識別する不良部材の特徴をAIに学ばせることで、省人化した検査工程を実現し、検査時間も短縮化しています。また、従来の目視検査は出荷時のみの検査にとどまっていましたが、AIシステムは24時間検査可能なので全数検査も可能となりました。
プラスチック加工品の外観検査(墨田加工)
墨田加工でAIによる外観検査を活用しているのは、円筒状プラスチック加工品です。墨田加工は製造業の基礎素材を制作している企業です。1ヶ月に4,320個近くの製品をチェックしなければならず、従来は従業員2名がかりで3日間近くかかっていました。
AIによる外観検査を導入することで、製品をAIの検査機にセットするだけでAIが判断してくれます。検査時間を36%以上削減できました。また、AIシステムによる判断を待つ間に、AI判断できない部分を目視検査する工程を組み合わせて検査品質アップにも繋がっています。
リングギアの溶接検査の自動化(武蔵精密工業)
武蔵精密工場はリングギアの溶接検査で外観検査を導入しています。従来溶接作業時の溶けた金属が飛散して粒状に固まったスパッタの検査は、目視での検査を行っていました。しかし、品質が一定ではないという問題がありました。AIでの画像検査と目視検査を組み合わせることで従来の検査の問題点を解決し、精度アップ、省人化に繋がっています。
ハウスメーカーの外壁検査(積水ハウス)
積水ハウス株式会社は、陶板外壁を製造している工場でAIによる外観検査を実施しています。陶板外壁を製造するときには、原板の外観不良から起こる不良や焼き上がりの色ムラによる不良品を弾いてしまうと、出荷必要枚数が足りなくなってしまう問題がありました。目視検査では検査できる量に限界があり、歩留まりが上げられません。
ディープラーニング画像処理ソフトウェア、ラインスキャンカメラとLED照明を備えたAIによる外観検査を導入しています。AIによる外観検査により生産中の製品すべてを検査でき、陶版外壁の安定供給ができるようになりました。余剰生産を減らすことができるので、在庫の削減及びコスト削減にもつながっています。
生産工場ラインの外観検査
切削工具研磨工場では丸ノコの歯の検査にAIが活用されております。従来丸ノコの検査は、一つの検査に1,800秒以上かかっており、また歯をすべてチェックするのに危険もありました。しかし、ディープラーニングを活用した外観検査が活用されています。
導入することで検査時間は20秒に短縮され、99%以上の精度を実現しており、微妙な歯のちがいも認識できています。また、ディープラーニングを活用しているため、運用しながら精度を向上することにつながっています。多くの生産工場ラインでAIの外観検査が活用されています。
トランスミッションギヤ向けのAI外観検査で負担の大幅な軽減(トヨタ/Musashi AI)
武蔵精密工業株式会社は、同社のグループ会社Musashi AI株式会社がトヨタ自動車の生産現場に対して、トランスミッションギヤ向けのAI外観検査装置を追加導入したと発表しました。
Musashi AIのAI外観検査機は、、製品/部品のキズや汚れなどを確認する外観検査において、AIの画像認識処理技術を活用することで高精度の不良品検出を実現。検査を自動化すると共に目視検査のミスを減らし、また検査基準の明確化やシステム化も可能にしています。AI外観検査装置が導入される以前のトヨタ自動車の現場では、1人の従業員が1日約数万歯の歯面を見る工程が生じていた。従業員の負担が大きかったが、自動化によってこの負担の大幅な軽減を実現しました。
トヨタ自動車におけるMusashi AIのAI外観検査装置導入は2020年12月からで、トヨタ自動車本社工場のトランスミッションギヤの生産ラインにAI外観検査装置が実装され、量産稼働を開始しました。
Musashi AIのAI外観検査装置は生産ラインに実装しやすい汎用性を持ったデザインで、AIによる画像認識の学習などもスムーズに行われるため、最短の場合は1~3か月程度で生産現場に導入することを可能にしています。
関連記事:「武蔵精密工業のAIグループ会社・Musashi AI、トヨタ自動車にAI外観検査装置を追加導入」
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AIによる外観検査事例【太陽光発電・ダムなどのインフラ設備5選】
太陽光発電施設、道路橋梁、ダムなどのインフラ設備や大規模工場施設において、AIによる外観検査を実施している事例をご紹介します。
製品やインフラ躯体の内部の欠陥や劣化を検知する非破壊検査についてはこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
太陽光発電における外観検査(オリックス)
オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社は、AI搭載のドローンを活用した太陽光発電パネルの診断サービスを提供しています。従来の検査は、目視でしか行えず異常を発見するために多くの時間がかかっておりました。しかし、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社はドローン空撮・解析サービスのトップシェアの会社SITEMARK.NVとパートナシップを結ぶことで新しいサービスを提供できました。
遠赤外線サーモグラフィーを搭載したドローンで太陽光パネルを撮影することで、AIが異常事態を分類することができます。実際大牟田市の太陽光発電所では解析を行うことで1000箇所以上の異常を感知し、発電収益増加につなげました。
配電設備の外観検査(四国電力)
四国電力は、送電線や電柱などに作られるカラスの巣を検知する営巣検知AIをNTTコムウェアと開発しました。配電設備で大きな問題となるのがカラスの巣です。カラスの巣には金属製のハンガーや濡れた木の枝などの電気を通す素材が使用されるため、停電につながっていました。従来は目視での検査で行っていましたが、カラスの巣が増える春頃は作業リソースが不足していました。
そこで四国電気はNTTコムウェアとともに、営巣検知AIを開発しました。点検にはカメラを搭載した自動車が点検箇所を走り画像を撮影し、AIがリアルタイムでカラスの巣を見つけ出します。リアルタイムで発見し、緊急度が高いものはその場で撤去も行えます。AI外観検査を導入することで、リスクを減らすとともに時間の節約にも繋がりました。
道路の老朽化の検査(首都高)
首都高技術株式会社は、国立研究開発法人産業技術総合研究所、東北大学とともにコンクリートのひび割れを検出するAIを開発しました。高速道路の多くは建設から50年以上経過しておりメンテナンスが必要です。しかし、メンテナンスの知識を保有している専門知識を保有している人材が高齢化し始めており人材不足が問題になっています。
ただひび割れを認識するだけでは意味はなく、ひびが生じた要因も含めて把握することが重要です。そこでAIには撮影したひび割れ画像だけでなく、専門家からのインプットも教師データとして学ばせることで特徴抽出を実現しました。その結果、表面に汚れや傷がある状態でもコンクリートのひび割れを80%以上という実用レベルの精度で自動検出できています。今後、点検作業におけるひび割れの記録にかかる時間は従来の10分の1に削減できると見られております。
発電所の品質検査(東芝)
東芝デジタルソリューションズ株式会社は、スペインの風力発電会社GRI Renewable Industriesは風力発電用タワーの外観不良と溶接部の形状不良などをAIで外観検査する実証実験を行っています。GRI社は大手風力発電機メーカー向けに、風力発電設備を支えるタワーの製造・販売をしている世界最大規模の企業です。
風力発電用タワーは直径3~15メートルある非常に大きな構造物です。外側表面と内側表面の外観検査や溶接部の形状検査をする必要がありますが、大型構造物であるため検査員による目視検査に時間がかかり、検査品質にバラつきが発生していました。外観検査にカメラと3D検査システムを活用することでAIによる自動検査が可能になっています。検査では、外観不良と溶接部の形状不良の検出だけでなく、不良位置を検出・記録なども可能です。精度評価用に設けた傷や約2.5mmの凹みなどの外観不良を100%検出したと報告されています。
ダムの外観検査(九州電力)
九州電力株式会社と株式会社オプティムは、ドローンとAI解析技術を活用してダムの遮水壁点検業務の効率化を検討しています。九州電力がドローン測量で使用している自動操縦プログラムでダム遮水壁の壁面を撮影し、画像をオプティムのAIシステムで解析することで1cm単位のひびや塗布の剥がれなどを検出可能です。AIを導入したことにより点検時間の短縮や検査クオリティーの均一化が可能になり、コストも40%近くカットされています。
将来的には、点検データを蓄積することで、将来的な経年劣化を予測する技術を開発し、AIによる最適な保全スケジュール作成管理機能の実装を目指しています。
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AI外観検査を製造業に導入する手順
以下のステップは大まかな流れを示していますが、実際の導入プロジェクトでは、製品の特性や検査の要求、組織の状況などに応じて適応的に進めることが求められます。
ステップ | ここに記入 |
---|---|
現状の確認 | 製品の特性、製造プロセスの特性、検査環境など、現状の検査プロセスについて詳しく理解する 具体的な目標を設定し、その目標が現実的で達成可能なものであることを確認する |
プロジェクトの計画と資源の確保 | 目標の設定、予算の確定、スケジュールの作成、人材の配置などを含む詳細な計画を立てます |
必要な機器とソフトウェアを選定 | カメラやセンサーは製品の特性や検査の要求に応じて選ばれます。また、AIソフトウェアは画像分析と機械学習の能力を持ち、頻繁にアップデートされていることが望ましい。 |
データ収集とラベリング(アノテーション) | 製品の良品と不良品の外観を撮影し、それらの画像を集めます。その後、それぞれの画像に「良品」または「不良品」のラベルを付けます。 こちらでAI開発におけるアノテーションの重要性を詳しく説明しています。 |
AIシステムの訓練と検査精度の評価 | 機械学習アルゴリズムがデータを学習し、良品と不良品を区別する能力を獲得します。 |
精度検証と改善のフィードバックループ | 検証データセットを用いてAIモデルの精度を評価します |
本番環境へのデプロイ | 本番環境にデプロイします。デプロイ後もシステムのパフォーマンスを定期的に監視し、必要に応じてシステムを再訓練します。 |
チームの研修とサポート体制の確立 | システムの操作方法、データ収集とラベリングの手順、問題発生時のトラブルシューティングなどを理解する必要があります。また、システムベンダーからのサポート体制も重要です。 |
AI Marketでは
AI外観検査の導入コスト
AI外観検査システムの導入には、初期導入コストと維持費の両方が発生します。また、これらのコストとシステムの効果を比較してROI(投資回収期間)を見積もることも重要です。
初期導入コスト:機器購入、ソフトウェアライセンス、システム設置と設定、データ収集とラベリング、研修
維持費:ソフトウェアライセンス更新、機器の保守・修理、データのストレージ、システムのアップデート
また、ROIを見積もる際には、導入コストと維持費を投資として、その対価として得られる利益を見積もる必要があります。AI外観検査システムの場合、利益は以下のような形で現れます。
- 効率的な生産
- 品質改善
- コスト削減
これらの利益を金額に換算し、導入コストと比較することでROIを見積もることができます。
AIによる外観検査についてよくある質問まとめ
- AIによる外観検査を導入するメリットは何ですか?
AIによる外観検査の主なメリットは以下の通りです。
- 検査時間の大幅な短縮
- 24時間稼働による全数検査の実現
- 検査品質の向上と均一化
- 人的リソースの有効活用
- 危険作業の削減
- コスト削減
- 予防保全の実現(データ蓄積による劣化予測)
- AIによる外観検査はどのような産業で活用されていますか?
AIによる外観検査の活用事例は以下の通りです。
- 製造業
- インフラ設備
- 製造業でAI外観検査を導入する手順を教えてください。
AI外観検査導入の主な手順は以下の通りです。
- 現状の確認:製品特性、検査環境の理解
- プロジェクト計画と資源確保
- 必要機器とソフトウェアの選定
- データ収集とラベリング
- AIシステムの訓練と精度評価
- 精度検証と改善
- 本番環境へのデプロイ
- チーム研修とサポート体制の確立
AI外観検査の導入はAI開発会社へ
AIによる外観検査は工場での製品検査だけでなく、太陽光から電線、ダムなどインフラ系まで幅広い領域で活用されており、検査時間やコストの削減、検査クオリティーの均一化に貢献しています。また、超過労働や危険作業によるスタッフへの負荷も下げられるので、ますますこれからAIによる外観検査のニーズは高まるでしょう。
しかし、自社の業務にAIによる外観検査を導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIやIoTの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
AI Marketでは、AI専門のコンサルタントが製造業・プラント・インフラなどでAIによる外観検査システムを導入するために最適な開発会社の選定を無料でサポートします。興味をお持ちの方はお気軽にご相談ください
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超える開発相談経験を活かし、AI(人工知能)に関する技術や、製品・サービスなどの紹介記事を提供しています。ご興味をお持ちの製品やサービスがありましたら、ぜひご相談ください。