NTTがAIとドローンで道路橋点検。腐食深さを自動推定し維持管理コストを大幅削減
最終更新日:2024年10月04日
日本電信電話株式会社(NTT)と株式会社NTT e-Drone Technologyは2024年10月3日、熊谷市と連携し、ドローンと画像認識AIを用いた道路橋の鋼材腐食検査の実証実験を2024年9月2日から開始したと発表した。
この新技術は、ドローンで撮影した画像からAIが鋼材の腐食を検出し、腐食の深さを自動的に推定する。従来の目視点検や超音波装置による計測に比べ、作業効率の向上と維持管理コストの縮減が期待される。実験は2025年2月28日まで行われ、2025年度の実地導入を目指している。
<本ニュースの10秒要約>
- NTTとNTT e-Drone Technology、ドローンと画像認識AIを用いた道路橋の鋼材腐食検査技術の実証実験を熊谷市で開始
- AIが画像から腐食を検出し深さを自動推定、従来の目視・超音波計測に比べ作業効率向上とコスト縮減を実現
- 2025年度の実地導入を目指し、将来的に様々なインフラ設備への技術拡大を計画
新技術導入の背景と意義
道路橋の老朽化は重大な社会問題となっており、鋼材の腐食は耐久性能や耐荷性能を低下させる主要因の一つだ。現行の点検方法では、検査員による目視で腐食の有無は確認できるものの、腐食の深さ(鋼材断面の欠損量)を把握することは難しい。超音波装置による計測も可能だが、多大な作業コストがかかる。
また、大型の道路橋点検では足場設置等のコストも発生する。
このような背景から、国土交通省は効率的な道路橋点検を推進するため、直轄国道での点検支援技術の導入を原則化している。NTTとNTT e-Drone Technologyが開発中の新技術は、これらの課題解決を目指すものだ。ドローンによる撮影で足場設置コストを削減し、画像認識AIによって腐食箇所の把握と鋼材厚の計測を簡単かつ低コストで実現する。
実証実験の概要と検証項目
実証実験では、ドローンで道路橋の画像を撮影し、画像認識AIを用いて鋼材の腐食検出と腐食深さの推定を行う。主な検証項目は以下の3点だ。1)ドローンによる画像撮影と画像認識AIによる検査の作業時間。2)画像認識AIによる鋼材の腐食検出率(AIの検出結果と専門検査員の判断の一致率)。3)画像認識AIによる腐食深さの計測精度(AIの推定値と超音波装置による計測値の比較)。
実験で使用するAIは、NTTが通信用管路で構築した腐食検出技術と鋼材断面の欠損量推定技術を道路橋用にカスタマイズしたものだ。実験期間は2024年9月2日から2025年2月28日までの約6ヶ月間に設定されている。
技術的課題と解決アプローチ
実用化に向けた主な技術的課題は、ドローンと道路橋の撮影距離の一定化が困難な点にある。橋の形状や飛行可能空間の制約により、同一の腐食箇所でも遠写と接写で画素分解能(mm/pixel)に差が生じ、腐食深さの推定精度に影響を与える可能性がある。この課題に対し、NTTは二つのアプローチで対応する。
まず、粗い画素分解能の画像からでも高精度に腐食深さを推定できるよう、画像認識AIをカスタマイズする。次に、腐食深さの推定精度と画素分解能の関係性を明らかにし、運用時のドローン撮影条件(撮影距離・撮影機材等)を最適化する。これらの取り組みにより、実用的で信頼性の高い検査方法の確立を目指している。
AI Market の見解
NTTとNTT e-Drone Technologyによる道路橋点検へのAIとドローン技術の応用は、インフラ維持管理の効率化と高度化に大きく貢献する可能性を秘めている。技術的には、画像認識AI、ドローン制御、そして超音波計測技術を統合し、さらに画素分解能の変動に対応する高度なAIアルゴリズムの開発が注目される。
この技術が実用化されれば、点検作業の大幅な効率化とコスト削減だけでなく、人間の目では見逃しがちな微細な劣化の早期発見にもつながる可能性がある。ビジネス面では、インフラ点検市場に大きな変革をもたらし、新たなサービス産業の創出にも寄与するだろう。
さらに、この技術の応用範囲は道路橋にとどまらず、鉄塔やガードレールなど幅広いインフラ設備に拡大できる可能性がある。これにより、社会インフラ全体の維持管理の効率化と安全性向上に大きく寄与し、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となることが期待される。
参照元:NTT
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