YOLOv8とは?特徴・前バージョンからの改良点・導入方法・メリットを徹底解説!
最終更新日:2024年11月27日
2023年にリリースされたYOLOv8は、企業が画像認識AI、特に物体検出機能を活用する際に直面する課題を解決するための強力なツールです。最新の物体検出技術を駆使し、精度と速度を兼ね備えたこのモデルは広い業界での導入が進んでいます。
事前学習済みモデルによる迅速な導入や、エッジデバイスからクラウドまで柔軟な運用を実現し、製造ラインの品質管理から監視カメラシステムまで幅広い業務に対応可能です。
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本記事では、YOLOv8の特徴、前バージョンからの改良点、具体的な導入ステップまで徹底解説します。
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YOLOv8とは?
YOLOv8は、2023年1月にリリースされた物体検出の定番であるYOLOモデルです。Ultralytics社が開発を手がけています。YOLOv5の開発を手掛けたチームが継続して改良を重ねた結果、APIやコマンドラインインターフェースの一貫性が大幅に向上し、より使いやすいシステムへと進化しました。
オープンソースなので、商用利用を含むより自由な活用が可能です。さらに、エンタープライズライセンスを利用することで、商用製品やアプリケーションにUltralyticsのソフトウェアやAIモデルを組み込む際に、ソースコードを公開する義務を免れることができます。
YOLOv8で何がすごくなった?
YOLOv8は、精度と処理速度の最適なバランスを実現しています。最新のバックボーンアーキテクチャと効率的な特徴抽出メカニズムにより、リアルタイムの物体検出を可能にしながら、高い検出精度を維持しています。
特に小さな物体の検出精度が改善されており、リアルタイムアプリケーションにおいて優れた性能を発揮します。
この特性により、自動運転車や監視カメラなど、即時性が求められるアプリケーションでの実用に適しており、限られたリソース環境でも優れたパフォーマンスを発揮します。
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YOLOv8でのアーキテクチャ改良点
YOLOv8は、前バージョンであるYOLOv7やYOLOv5からいくつかの重要な改良が施されています。以下にその主な違いを示します。
アンカーフリーのUltralyticsヘッドによる高精度な検出
YOLOv8は、アンカーフリーのUltralyticsヘッドを採用しています。つまり、従来のYOLOモデルで使用されていたアンカーボックスによる予測方式を廃止し、オブジェクトの中心を直接予測する方式を導入しています。
この変更により検出プロセスが簡素化され、以下を実現しました。
- ボックス予測の数が削減
- 非最大抑制(NMS)処理が高速化
- カスタムデータセットでの学習において、データの分布に依存せず柔軟な検出
特に、アンカーボックスは特定のベンチマークデータセットのボックス分布を表現できても、カスタムデータセットの分布を適切に表現できない場合があったため、この変更は重要です。
最新のバックボーン
アーキテクチャ面では、従来の6×6畳み込み層を3×3に置き換えています。これにより、より効率的な画像抽象化が可能になっています。
また、C3モジュールをC2fに進化させました。C2fモジュールでは、すべてのBottleneck出力を連結することで、特徴抽出能力が向上しています。
この改良により、YOLOv8は前バージョンと比較して複雑な物体検出タスクにおいても精度と速度が向上しており、小さな物体や密集した物体の検出能力が強化されています。
ネックアーキテクチャによる性能向上
ネック部分では特徴の直接連結に同じチャネル次元を強制しない設計を採用し、パラメータ数とテンソルサイズの削減に成功しました。
また、YOLOv8ではPath Aggregation Network (PANet) が統合されています。PANetは、ネットワークのバックボーンから抽出された特徴マップを効果的に統合するために設計されたネットワーク構造です。
YOLOv8では、このPANetを最適化して採用しています。これにより、異なるスケールの情報を効果的に統合し、様々なサイズの物体検出精度が向上しました。
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YOLOv8の企業活用のメリット
YOLOv8は、企業のAI導入において特に注目される機能とメリットを数多く備えています。高度な検出機能と使いやすさを両立し、様々な業界のニーズに対応できる柔軟性を持っています。
以下では、企業活用における主要な特徴と利点について詳しく解説します。
画像分類・セグメンテーション・物体検出の統合機能
YOLOv8は、単一のフレームワークで複数のコンピュータビジョンタスクを実行できるように設計されています。従来の物体検出機能に加え、画像分類やインスタンスセグメンテーションなどの高度な機能を備えています。
これにより、製造ラインでの品質検査から医療画像の解析まで、幅広い業務用途に対応可能です。また、静止画だけでなく、動画やWebカメラからのリアルタイム入力にも対応しており、以前のバージョンと比べて入力ソースの柔軟性が大幅に向上しています。
事前学習済みモデルによる迅速な導入
YOLOv8では、nano、small、medium、large、xlargeなど、多様なモデルサイズが用意されており、用途や計算リソースに応じて最適なモデルを選択できます。各モデルは、COCOデータセットなどで事前学習済みであり、一般的な物体検出タスクにおいて高い精度を発揮します。
これにより、企業は最小限のカスタマイズで迅速にシステムを導入できます。特に、製造業や小売業における在庫管理、セキュリティシステムなどの分野で、短期間での実用化が可能です。
エッジデバイスからクラウドまで柔軟な運用
YOLOv8は、多様な実行環境に対応する柔軟な設計を特徴としています。軽量なnanoモデルは、ラズベリーパイ(Raspberry Pi)やJetson Nanoなどのエッジデバイスでの運用に適しており、製造現場での検査や監視カメラシステムなどのリアルタイム処理を実現します。
一方、大規模なxlargeモデルは、クラウド環境での高精度な解析に活用できます。また、TensorRT、ONNXなど様々な最適化フレームワークへのエクスポートをサポートしており、既存のインフラストラクチャとの統合も容易です。
YOLOv8の導入ステップ
YOLOv8の導入は、適切な手順に従えば比較的容易に実現できます。ここでは、環境構築から実際の運用までの具体的なステップを解説していきます。
Python環境とパッケージのセットアップ
環境構築の第一歩として、Python 3.8以上の環境を用意する必要があります。Anacondaを使用して仮想環境を作成することで、プロジェクト固有の依存関係を適切に管理できます。
環境を作成したら、pipコマンドを使用してultralyticsパッケージをインストールします。このとき、PyTorch環境との互換性を考慮することが重要です。
特にGPUを使用する場合は、CUDAバージョンとの整合性に注意が必要ですが、CPUのみの環境でも問題なく動作します。
学習済みモデルの活用方法
YOLOv8では、事前学習済みのモデルを簡単にダウンロードして利用できます。モデルの読み込みは、YOLOクラスのインスタンスを作成し、必要なモデルファイルを指定するだけです。
学習済みモデルは、nano、small、medium、largeなど、様々なサイズが用意されており、用途に応じて適切なものを選択できます。モデルのロードは以下のようなシンプルなコードで実現できます。
from ultralytics import YOLO
model = YOLO(‘yolov8n.pt’)
推論実行
推論の実行は、モデルのpredictメソッドを使用して行います。画像、動画、Webカメラなど、様々な入力ソースに対応しており、結果は自動的に指定したディレクトリに保存されます。
推論結果には、検出された物体の位置情報や信頼度スコアが含まれ、これらの情報はプログラムから直接アクセスすることも可能です。
結果の確認
結果の確認は以下のコード(一例)で実行できます。
# 推論を実行し、結果を保存
results = model.predict(“path/to/image.jpg”, save=True)# 結果の確認
for result in results:
print(f”検出されたオブジェクト数: {len(result.boxes)}”)
推論結果には検出された物体の位置情報や信頼度スコアが含まれます。これらの情報はプログラムから直接アクセスすることが可能です。
まとめ
YOLOv8は、2023年に登場した物体検出AIモデルで、高精度な検出能力と使いやすさを両立しています。
事前学習済みモデルの活用により、短期間での導入が可能で、製造ラインの品質管理から監視カメラシステムまで幅広い業務に対応可能です。エッジデバイスからクラウドまで柔軟な運用ができ、既存システムとの統合も容易です。
YOLOv8の導入は、企業にとってAI技術を活用した競争力強化の鍵となります。しかし、その効果を最大限に引き出すためには専門家の助けが必要です。具体的な導入ステップやカスタマイズについては、専門家と連携しながら進めることをお勧めします。
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YOLOv8についてよくある質問まとめ
- YOLOv8を既存のシステムと統合することは可能ですか?
TensorRT、ONNXなど、様々な最適化フレームワークへのエクスポートをサポートしており、既存システムとの統合は比較的容易です。エッジデバイスからクラウドまで柔軟な運用が可能で、製造ラインの検査システムや監視カメラなど、多様な環境に対応できます。
- YOLOv8はどの程度の精度や処理速度が期待できますか?
YOLOv8は、革新的なアーキテクチャにより高い検出精度と処理速度を実現しています。nano、small、medium、large、xlargeなど、用途に応じて最適なモデルサイズを選択でき、リアルタイムでの物体検出が可能です。特に製造ラインの品質管理や監視システムなど、即時性が求められる用途でも高いパフォーマンスを発揮します。
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