最終更新日:2024-09-06
ChatGPTで著作権侵害の可能性は?論争の原因・注意点を徹底解説
ChatGPTを個人での利用だけでなく、商用利用している方も多いと思います。ChatGPTはとても便利ですが、一方で気をつけなければならないこともあります。それは「著作権」です。
ChatGPTは、他のAIツールと比べて誰でも気軽に汎用的に使えることもあり、リリース直後から非常に大勢のユーザーが使用しています。多くのユーザーが利用することで、著作権に関する問題が表面化してきています。実際に海外ではいくつかの訴訟も発生しています。
この記事では、ChatGPTの著作権に関する説明を行っていきます。
わかりやすいChatGPTの仕組み、企業での活用事例をこちらで詳しく説明しています。
AI Marketでは
貴社の要望に応えることが可能な企業複数社の紹介が可能で、
ChatGPTの導入支援を発注する会社を自力で探したい方はこちらもぜひ参考にしてください。
目次
ChatGPTで著作権が発生する理由
ChatGPTで著作権問題が起こるのは以下のような理由です。
- 機械学習にWeb上のコンテンツを使用している
- 既存コンテンツと酷似している生成物の可能性
それぞれの詳細を解説します。
機械学習にWeb上のコンテンツを使用している
ChatGPTは、大量のWebページや書籍、雑誌、論文、ニュース記事など様々なコンテンツのデータセットを学習することで、ユーザーの質問に対して自然な会話で返答できる仕組みです。この学習に使用されているデータセットには、Web上に公開されている著作物が数多く含まれています。
この公開されている著作物を学習することで、著作権問題が発生するのではないかと言われています。
既存コンテンツと酷似している生成物の可能性
ChatGPTが学習しているデータに著作権のあるものが数多く含まれており、これにより生成された文章が著作物に酷似する可能性があります。酷似している生成物を公開することで、著作権を侵害したとみなされる可能性があります。
日本における著作権法と生成AIの関係
日本企業は、基本的に日本の著作権法を遵守することになります。著作権に関する諸課題に対応する文化庁は、ChatGPTのようなAIと著作権の関係について以下のように説明しています。
「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、行われている著作物の利用行為が異なり、関係する著作権法の条文も異なります。そのため、両者は分けて考える必要があります。
出典:文化庁 令和5年度著作権セミナー 「AIと著作権」
AI開発・学習段階
著作物が含まれるデータセットを学習するAIの開発については、以下のように説明されています。
AI開発のための情報解析のように、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能です(権利制限規定)。
出典:文化庁 令和5年度著作権セミナー 「AIと著作権」
「享受」とは、著作物の視聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為のことを指しています。
著作権法では、この「享受」に該当する場合、著作物の使用について著作権者の許諾が必要になり、許諾なく使用する場合に、著作権の侵害とみなされることになります。
しかし、AI開発に伴う学習段階では、この「享受」に該当しないと判断されることが多く、基本的には著作権の侵害とみなされないため、日本でのAI開発・学習時に著作権が問題になることは少ないでしょう。
生成・利用段階
AIを利用して画像等を生成した場合、著作権侵害となるかどうかは、人が絵を描いた場合と同じ様に判断されます。つまり、ChatGPTなどのAIを利用して画像を生成しても、人が描いても著作権に関する取り扱いは同じであるということです。
既存の著作物との「類似性」又は「依拠性」が認められる場合に、著作権の侵害とみなされます。
「類似性」又は「依拠性」が認められる場合に、生成物をアップロードする行為や、生成した画像等の複製物(イラスト集など)を販売する行為に関して、著作権の侵害とみなされます。ただし、私的な鑑賞のため画像等を生成する場合は、権利制限規定(私的使用のための複製)に該当し、著作権者の許諾が必要ないため著作権の侵害にはなりません。
出典:文化庁 令和5年度著作権セミナー 「AIと著作権」
つまりChatGPTを利用して画像等を生成する場合、まず生成物が「類似性」又は「依拠性」が認められるかどうかで判断されます。そして、認められる場合に商用に利用するのか、私的に利用するのかで著作権の侵害とみなされるかどうかが判断されるわけです。
著作権についてのOpenAIの公式見解
ChatGPTはOpenAI社が開発したアプリケーションであり、ユーザーはあくまでOpenAI社のアプリケーションを利用して生成を行っています。この場合、生成物はOpenAI社かユーザー、どちらに帰属するのでしょうか?
OpenAIの公式見解を日本語に訳すと、以下の通りとなります。
OpenAI はここに、Output に関するすべての権利、権原、および利益をお客様に譲渡します。これは、本規約を遵守する限り、販売や出版などの商業目的を含むあらゆる目的でコンテンツを使用できることを意味します。
出典:OpenAI利用規約第三条「Content」
上記の通り、ChatGPTでの生成物の権利については、商用利用する目的であっても生成者に帰属することになります。
ChatGPTを商用利用する場合の注意点をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは
貴社の要望に応えることが可能な企業複数社の紹介が可能で、
ChatGPTで著作権侵害にならないためのポイント
ChatGPTを使用して著作権を侵害しないために気をつけるポイントをいくつか紹介します。
元となるデータの著作権の確認
ChatGPTで生成する際に、元となる情報やデータが誰かの著作物でないかどうか確認しましょう。ChatGPTを利用して記事やコンテンツ、画像等を生成した場合、生成物が既存の著作物との「類似性」又は「依拠性」が認められた場合、著作権者の許諾が必要になります。
ChatGPTで生成する段階で、ChatGPTに送る情報やデータが著作物である場合は、生成物に対しても「類似性」又は「依拠性」が認められる可能性が十分にありえます。
生成する際に、公開されている情報やニュースを利用する場合は、必ず元の資料や公式サイトの規約を確認し、問題がないことを確かめてから使用することでトラブルを回避できます。
GPT-4Vを用いて画像認識させる際にChatGPTに取り込む画像の著作権にも注意が必要です。
生成物が著作権を侵害していないか確認する
ChatGPTは数多くの著作物を学習しています。そのため、ChatGPTに送る情報が著作物ではなかったとしても、生成したコンテンツが著作物を含んだ内容である恐れも十分にあります。
ChatGPTで生成したコンテンツが、Web上のコンテンツと全く同じ文章や類似した内容になっていないか、コピーコンテンツチェックツールなどを利用して確認しておくと良いでしょう。
著作権関連の規約を定期的に確認
現在のOpenAI社の利用規約によると、ChatGPTを使用して生成された文章やコンテンツは、生成者に帰属し、商用利用も可能となっています。しかし、今後規約が変更される可能性もありますので、定期的にOpenAI社の利用規約やポリシーを確認しましょう。
また、必要に応じて専門家と相談しながら正確な対応を行うことも大切です。
実際に海外で起きたChatGPTの著作権問題
海外では、ChatGPTの著作権に関するトラブルが実際に発生しています。いくつかの実例を紹介します。
ChatGPTにネットニュースを無断で学習させて世界的な問題に
海外では、ChatGPTの学習データを巡ってトラブルが発生しています。2023年2月、ChatGPTの機械学習に複数のニュースメディアの記事が用いられたことが著作権侵害に当たるとして、アメリカのウォールストリート・ジャーナルなど大手紙を傘下に持つニューズ・コーポレーションがChatGPTに抗議しました。
抗議の内容は、ChatGPTがウォールストリート・ジャーナル所属の記者たちが作成した記事から学習用データを得ているにもかかわらず、適切な許可を受けていないというものです。
実際に、ChatGPTはニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ウォールストリート・ジャーナルなどの大手メディアを学習していることが確認されています。アメリカだけでなく、その他の国でも大手メディアが学習対象になっていることが明らかになっており、今後、各国で同様の問題が起こる可能性もあります。
大量のウェブスクレイピングに複数の訴訟
OpenAI社に対して集団訴訟を起こしたアメリカのClarkson法律事務所が2023年7月4日、Twitterで世界に共闘を呼びかけています。同事務所は、不正に3000億語のWebスクレイピングを行い、同意なしに個人情報を含む情報を収集したことが「盗用」であると主張しています。
また、OpenAI社が不正に収集した個人情報を商品化することで、プライバシー侵害が拡大しているとの指摘もしています。
この訴訟の他に、6月28日に、二人のアメリカ人作家が、許可なく大量の書籍がスクレイピングされたことを理由に訴訟を起こしています。「同意を得ず、また著作権を認めることなく、対価を支払わずに」作品を用いて訓練したと主張しています。
彼らの作品で訓練した場合にしかできない表現や要約を生成できるとして、ChatGPTに作品が無断で学習に用いられているのではないかとのことです。
ChatGPTの著作権侵害についてよくある質問まとめ
- ChatGPTで著作権が発生する理由は?
ChatGPTで著作権問題が起こるのは以下のような理由です。
- 機械学習にWeb上のコンテンツを使用する
- 酷似している生成物を公開する
- ChatGPTで著作権侵害にならないためのポイントは?
ChatGPTを使用して著作権を侵害しないために気をつけるポイントは以下があります。
- 元となるデータの著作権の確認
- 生成物が著作権を侵害していないか確認する
- 著作権関連の規約を定期的に確認
まとめ
ChatGPTは、インターネット上の多くのデータから学習をしていますが、その中には著作物も含まれています。
ChatGPTでの生成物は生成者に帰属するため、それを公開・商用利用する場合に生じる責任も当然、生成者にあります。ChatGPTに入力する情報が著作物か、
アメリカをはじめとする海外では、ChatGPTの学習時点で適切な許諾を得ていないことが問題となり複数の訴訟が発生しています。今後、このような問題が増えれば、OpenAI社の利用規約が変更になる可能性や、グローバルに合わせて日本の制度が変わることも考えられますので、常に情報収集することが大切です。
AI Marketでは
貴社の要望に応えることが可能な企業複数社の紹介が可能で、
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超える開発相談経験を活かし、AI(人工知能)に関する技術や、製品・サービスなどの紹介記事を提供しています。ご興味をお持ちの製品やサービスがありましたら、ぜひご相談ください。