Magentic-Oneとは?エージェント構成・仕組み・メリット・注意点を徹底紹介!
最終更新日:2025年02月05日
Webやファイルベースの複雑なタスクを抱え、既存のシステムでは対応が難しいと感じている企業にとって、Microsoftが開発したマルチエージェントシステムMagentic-Oneは有力な選択肢となりえます。
この記事では、Magentic-Oneの概要から、導入するメリット、そして注意すべき点までを解説します。Magentic-Oneの利用価値が分かる内容となっていますので、Magentic-Oneやマルチエージェントシステムの導入を検討中の企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
Magentic-Oneとは?
Magentic-Oneは、MicrosoftがAutoGenフレームワークに基づいて開発された、オープンソースの汎用型マルチエージェントシステムです。Magentic-Oneでは、複数のAIエージェントが連携して相互に補完し合うことでタスクの解決を目指します。
リーダー型エージェント(Orchestrator)が4つの専門エージェントを統制するチーム構成となっています。
特にオープンエンドのWeb/ファイルベースのタスク解決に強みを持ちます。
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Magentic-Oneのエージェント構成
以下は、Magentic-Oneのエージェント構成です。
エージェント | 役割 | 主なタスク | 特徴 |
---|---|---|---|
Orchestrator(リードエージェント) | 進捗管理 全エージェントの指揮 |
| タスク・進捗・エージェントの管理 |
WebSurfer | Web検索や操作 |
|
|
FileSurfer | ファイル操作 |
| マークダウン形式のファイルプレビューアプリケーションを操作 |
Coder | プログラマー兼アナリスト |
|
|
ComputerTerminal | システム操作関連 |
| システム環境への直接的な操作能力を持つ |
Magentic-Oneの仕組み
Magentic-Oneの中枢エージェントとも言えるOrchestratorは、タスクの計画や進捗管理の中で全エージェントを統括します。Orchestratorの作業は大きく以下2つのループに分割されます。
- 外側のループ:タスク台帳(Task Ledger)を更新
- 内側のループ:進捗台帳(Progress Ledger)を更新
上記画像は、それぞれのループを詳細に示した図です。
Orchestratorはまずタスク台帳を作成します。タスク台帳には、確認済みの事実・必要な情報・推測・計算や論理に基づく結論・タスクを完了するための計画を記録します。
次に、計画の各ステップでタスクの進捗状況を反映する進捗台帳を作成し、WebSurferやFileSurferなど各エージェントのタスクが完了したかどうかを自律的に確認します。
確認した際にタスクが未完了の場合は、1つのエージェントに対して完了させるためのサブタスクを新たに割り当てます。そして、割り当てられたエージェントがサブタスクを完了すると、Orchestratorは進捗台帳を更新します。
タスクが完了するまで、Orchestratorはこの一連のループを続けます。また、進捗台帳で十分進捗が見られない場合には、タスク台帳を更新して新しい計画を作成することも可能です。
参考:Magentic-One: A Generalist Multi-Agent System for Solving Complex Tasks|Microsoft
商用利用可能なMagentic-One
オープンソースフレームワーク「AutoGen」を基盤に開発されたMagentic-Oneはライセンスコードに記載があるように、商用利用が許可されています。
そのため、以下のような商用目的での活用が可能です。
- ソフトウェアの使用:企業の内部システムや製品開発などで自由に活用できる
- ソフトウェアの複製・変更:必要に応じてソースコードを複製したり、独自の機能を追加・変更したりできる
- 統合・公開・配布:他のソフトウェアやシステムに統合したり、独自に開発したソリューションを公開・配布したりできる
- サブライセンスや販売:自社製品やサービスの一部としてMagentic-Oneを組み込み、販売できる
ただし、著作権表示と許可表示をソフトウェアのすべてのコピーまたは重要な部分に含める必要があります。
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Magentic-Oneのメリット
Magentic-Oneは柔軟性が高く、さまざまなメリットをもたらします。以下では、Magentic-Oneのメリットを紹介します。
異なるLLMやSLMを統合可能
Magentic-One は、マルチエージェントシステムを開発するためのオープンソースフレームワークであるMicrosoft AutoGen上に構築されています。そのため、特定のLLMなどのAIモデルに依存しません。
デフォルトではGPT-4oを使用しますが、モデル非依存なため、GPT-4oとo1-previewといったように異なるLLMを統合することも可能です。
AIモデルを柔軟に選べることから、リソースが限られる場合やエッジデバイスでの運用ではSLM(小規模言語モデル)やエッジLLMを中心に構成するといったように、タスクの要件や予算に応じて最適なモデルを組み合わせられます。
幅広い分野のタスクに対応する汎用性
Magentic-Oneは、単一のモデルや特定のタスクに限定されない、汎用的なエージェントシステムを目指して設計されています。
例えば、Magentic-Oneではモジュール設計により、新しいエージェントの追加や既存のエージェントの削除が容易に行えるため、システムの機能範囲を柔軟に調整可能です。新規エージェント追加時にも、既存システムの再構築は必要ありません。
さらに、GitHubで実装コード公開されてオープンソースライセンスで提供されています。そのため、カスタマイズや機能拡張のハードルは低いです。
そのため、Magentic-One一つでソフトウェア開発やデータ分析、Web操作など、幅広い分野のタスクに適用できます。
再利用性が高い
Magentic-Oneは、Pythonなどのオブジェクト指向プログラミングのように、各エージェントに特定のスキルを「カプセル化」している点が大きな特徴です。
例えば、WebSurferにはWebサイトに関連する操作や検索スキル、Coderにはプログラムの生成や編集をカプセル化しています。このように特定のスキルが各エージェントに割り当てられており、モジュールのようにエージェントを扱えるため、必要な機能を容易に再利用できます。
このような仕組みにより、開発者や企業はMagentic-Oneを基盤に柔軟かつ効率的なマルチエージェントシステムを構築可能です。
安全性が考慮されている
現状、Magentic-Oneは望ましくない行動やエラー、悪意のあるユースケースを取ることもあり、人間レベルのパフォーマンスに及びません。
このようなパフォーマンスの課題に対して、Magentic-Oneではエージェントシステムの安全性を重視し、エージェントの動作を分析する評価ツール「AutoGenBench」を提供しています。
AutoGenBenchの具体的な機能は、以下のとおりです。
- タスク間での干渉を防止:前タスクの実行結果が後のタスクに影響を与えないように公平な評価を行う
- エージェント間における動作のバラツキを抑制:既知の初期条件から開始することで、タスクの再現性を高める
- 分析スクリプトによる詳細な分析:各タスクの実行結果は、ホストマシン上の集中場所に記録され、分析できる
これらにより、Magentic-Oneはシステム全体の信頼性を向上させているため、他のマルチエージェントと比較して安全に導入できます。
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Magentic-One活用時の注意点
Magentic-Oneは発展途上のシステムであるため、改善が必要な点も多くあります。以下では、Magentic-One活用時の注意点を紹介します。
非生産的になる場合もある
Magentic-Oneを活用する際には、特定の状況下でエージェントが非生産的な行動を繰り返すリスクに注意が必要です。
以下が、考えられる非生産的な行動の一例です。
- エージェントがWebページ上の同じ箇所を何度もクリックして情報取得が進まない
- 指定されたデータベースツールを使用せずに、非効率なWeb検索を繰り返す
- 検索クエリを変更せずに失敗した検索を繰り返す
- Orchestratorが誤ったパスを繰り返し使用するように各エージェントに指示し、さらに修正することなくサイクルを繰り返す
- タスク間で学習した洞察は破棄され、同じサブタスクを何度も発見・再発見する
これらの非生産的な行為はMagentic-Oneで頻繁に発生するエラーであり、発生するごとにタスクが遅延し、非効率になることが懸念されます。
そのため、Magentic-Oneの効率性を確保するために対策が必要です。例えば、エージェントの動作や進捗を定期的に監視し、適切に修正できる仕組み作りが有効です。
人間の介入が必要
Magentic-Oneでは、以下のような初歩的なミスが発生するケースも報告されています。
- 不十分な検証ステップ:データセットの検証ステップを省略し、下流の分析で未解決のエラーが発生するなどでデータ検証を十分に行わずにタスクが完了とマークされる
- リソースの活用不足:FileSurferが手動でダウンロードを繰り返すなど、エージェントが利用可能なデータ・ツール・リソースを活用しない
上記のようなタスクの偽報告や非効率な行動選択自体は初歩的なミスであっても、積み重なるとプロセス全体の信頼性が損なわれてしまいます。そのため、現状では人間による管理や技術的介入が不可欠です。
Microsoftが公開した、エージェントシステムの主要ベンチマークであるGAIA、AssistantBench、WebArenaでの結果(上記画像)でも、同じオープンソースの競合モデルを上回る点はありますが、人間には遠く及びません。残念ながら汎用人工知能(AGI)にはまだまだ達していないのが現状です。
例えば、エージェントの実行環境をDockerコンテナで厳密に分離することで、誤操作の影響を最小限に抑え、実行ログを詳細に監査する体制が必要です。このような監査体制により、各エージェントの動作を正確に追跡でき、初歩的なミスが発生した際にも迅速に解決できます。
現状では人間による厳格な管理を組み合わせることで、Magentic-Oneの信頼性と効率性を向上させる必要があります。
処理コストが高い
Magentic-Oneは、タスク処理時に複数のLLM搭載エージェントを呼び出すため、処理コストが高くなります。完了するまでに数分から数十分要するケースもあり、計算リソースが限られた環境ではコスト効率が問題となります。
特に、情報取得やデータ整理のみを行うといった単純なタスクでは不必要な時間やリソースが消費され、システムのオーバーヘッドが大きくなる傾向にあるため、処理コストの効率問題が顕著です。
また、Magentic-Oneはタスク完了まで一定の時間を要するため、即時レスポンスが求められるユースケースには不向きです。
これらの課題を踏まえると、Magentic-Oneは大規模なタスク処理に適しており、一方低コストやリアルタイム性が重要な場面では別の軽量なシステムを検討する必要があるでしょう。
Magentic-Oneについてよくある質問まとめ
- Magentic-Oneはどのような業務で活用できますか?
Magentic-Oneは、複雑なタスクを効率的に処理するマルチエージェントシステムです。例えば、コーディングタスクの自動化やWeb情報の収集、ファイル操作、プログラム実行など、幅広い業務に対応できます。
特に、柔軟性と拡張性を活かして、企業の業務効率化や自動化に貢献します。
- Magentic-Oneを導入する際に注意すべき点はありますか?
Magentic-Oneは発展途上のシステムであり、非効率な動作やエラーが発生する可能性があります。そのため、導入初期段階では、エージェントの動作を監視し、必要に応じて人間の介入を行う必要があります。
また、処理コストが高くなる傾向があるため、リソースが限られた環境での利用には注意が必要です。
まとめ
Magentic-Oneは、オープンエンドのWeb/ファイルベースのタスクを効率的に解決できるマルチエージェントシステムです。
Microsoftの「AutoGenフレームワーク」を基盤としており、リーダー型エージェントがWebブラウザ・ファイル操作・コード実行・システム操作に特化したエージェントを管理し、タスクを遂行します。また、Magentic-Oneはプラグアンドプレイ設計を採用しており、エージェントの追加や削除が容易で、変化するビジネスニーズにも柔軟に対応できる拡張性の高さも特徴です。
しかし、現状では非効率な動作や人間の介入が必要な場面も存在します。導入を検討する際は、自社の課題やシステム環境との適合性を慎重に評価し、必要に応じてAI技術に詳しい専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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