生成AI(ジェネレーティブAI)ガイドラインとは?必ず記載すべき7項目は?重要性や自社ガイドラインの作成方法を徹底解説!
最終更新日:2024年09月28日
生成AI(ジェネレーティブAI)のガイドラインとは、生成AIを安全に利用するために企業や団体、場合によっては国が策定したガイドラインのことです。ChatGPTの登場以降、生成AIに関する関心が高まり、世界的なIT企業などさまざまな企業が生成AIのサービスを開発し提供し始めています。
生成AIとは何か?どんな種類があるか?こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
しかし、世界的に生成AIの利用に関する
今回は
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目次
生成AIのガイドラインとは?
生成AIのガイドラインとは、生成AIを安全に利用するために企業や団体が作成したガイドラインを指します。ガイドラインを定めることでユーザーが誤った利用をしないように徹底を促すことができます。
最近では各国でも生成AIに関する法整備などに取り組み始めています。生成AIの利用には個人情報を含むデータを入力してしまうリスクや、生成されたデータが著作権の侵害や規約違反してしまうリスクなどが常に潜んでいます。また、生成AIのサービスや機能の変化は著しく、一度作成しただけでは不十分であり、常に更新し続けることも重要な要素となっています。
生成AIのガイドラインはなぜ重要?
生成AIのガイドラインは法整備が十分に整っていないため、ガイドラインを作成することは重要な工数となります。今回は生成AIのガイドラインの重要性として、実際にそのサービスを利用するユーザーへのマニュアル・悪用を防ぐ目的の観点から解説していきます。
ユーザーへのマニュアルとして
生成AIのガイドラインの重要性の一つは、ユーザーへのマニュアルとしての役割です。生成AIのサービスはさまざまな種類が存在し、その使い方もそれぞれ異なります。生成AIの利用を許可したとしても、ユーザーのリテラシーは異なり、ガイドラインがなければその理解度や社内への浸透も不十分に終わってしまいます。
生成AIのガイドラインを作成することにより、導入するサービスはどのように利用するのか、どう利用すればうまく活用できるのか共通認識を合わせ、ユーザーによる知識の差を埋めることが可能になります。
悪用を防ぐ
生成AIのガイドラインの重要性には悪用を防ぐ目的も存在します。生成AIでは過去のデータや新しく入力されるデータをもとに新しいデータを出力するため、個人情報などの機密情報を入力してしまうと情報の漏洩につながります。
また、生成されたデータの利用に関する規約違反や権利侵害などを侵害してしまうリスクも存在します。このような悪用や誤用を防ぐためにも生成AIのガイドライン作成は非常に重要な役割を担っています。
入力するデータのルールや、生成されたデータの法律違反や権利の侵害をした実例を掲載することでユーザーへ強く意識させることもできます。
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生成AIガイドラインに記載すべき7つの項目
生成AIを導入してガイドラインを作成するにあたり、記載すべき内容がいくつか存在します。ガイドラインの内容は企業や団体によってさまざまですが、安全に利用するガイドラインとして最低限抑えておくべき内容を解説していきます。
データの入力に関する注意
生成AIのガイドラインには、入力するデータに関する注意点を記載する必要があります。生成AIは過去に入力されたデータをもとに学習して出力するデータを生成するため、一度入力したデータは基本的に保存・活用されます。個人情報を含むデータや企業内の機密情報を含むデータや有名人の画像など著作権に関わるデータを入力しないように注意すべきことを記載しましょう。
氏名、住所、電話番号などの直接的な個人情報だけでなく、写真や動画に写り込んだ個人の顔なども、プライバシー保護の観点から慎重に扱うべきでしょう。また、著作権で保護された画像やテキストなどを無断で入力することは、法的なリスクにつながる可能性があります。
関連記事:「生成AIの著作権に関する最新情報まとめ!侵害になるケース・事例・注意点を徹底解説!」
利用時の注意
生成AIのガイドラインには、生成AIを利用する際に意識すべき注意点を記載する必要があります。生成AIが生成するデータやコンテンツはハルシネーションなどによる不正確な場合もあるため、生成したデータをそのまま自社コンテンツに掲載するとユーザーの信頼や場合によっては法的な問題にまで発展することがあります。
特に、企業の公式コンテンツとして発信する場合は、事実関係の誤りやバイアスのある表現がないか、人の目でしっかりとチェックする体制を整えましょう。また、AIを過信せず、最終的な判断は人間が下すという原則を徹底することも大切です。
生成AIの利用にあたり、出力された情報は必ずファクトチェックするなど、利用における注意点は記載しておきましょう。
AIに関する社内教育・トレーニングの実施方針
社内教育・トレーニングの実施方針は、生成AIを導入するにあたって非常に重要な要素です。社員のAIリテラシーを向上させ、AIを適切かつ効果的に活用できるようにするために、ガイドラインには以下のような内容を記載することをおすすめします。
まず、教育・トレーニングの目的と対象者を明確にすることが重要です。AIを活用する部署だけでなく、全社的にAIに関する基本的な知識を持つことが必要であることを明記し、経営層から現場の社員まで、各階層に応じた教育・トレーニングを実施することを定めましょう。
次に、教育・トレーニングの内容として、AIの基本的な概念や仕組み、特性と限界について学ぶカリキュラムを用意します。自社での生成AIの活用方針や具体的な利用シーンについて、事例を交えて解説することも重要です。加えて、AIを利用する際の倫理的配慮事項(プライバシー保護、公平性、説明責任など)について、丁寧に指導することが求められます。AIに関する最新トレンドや社会的影響についても、定期的に情報提供を行う方針を示すことが有効でしょう。
加えて、社外の教育リソースを積極的に活用することを推奨します。AIに関する外部セミナーや交流会への参加を促し、大学や研究機関、AI関連企業との連携により、最先端の知見を取り入れる方針を明記するのも有効です。
AIの誤作動への対応手順
AIの誤作動への対応手順は、生成AIを安全かつ責任ある形で運用するために欠かせない要素です。予期せぬ事態に備え、適切な対応方針をガイドラインに明記することが重要です。
まず、AIの誤作動に関しては、その原因を迅速に特定し、影響範囲を最小限に抑えるための手順を定めることが求められます。AIが生成したコンテンツに誤りや不適切な表現が含まれていた場合、速やかに修正・削除するプロセスを確立しましょう。
同時に、誤作動の原因を分析し、再発防止策を講じることも重要です。AIモデルの改善やデータの再学習など、技術的な対応方針を明確にしておくことが必要です。
また、誤作動によってユーザーや社会に悪影響を及ぼした場合の対外的なコミュニケーション方針も定めておくべきでしょう。透明性を確保し、誠実に説明責任を果たすことが、信頼の維持につながります。必要に応じて、外部の専門家や関係機関とも連携し、適切な対応を図ることが求められます。
運用体制と責任者の明確化
運用体制と責任者の明確化は、生成AIを組織に導入する上で非常に重要な要素です。AIシステムの適切な管理と統制を実現するために、ガイドラインには以下の内容を盛り込むことが推奨されます。
まず、AIの開発・運用に関わる組織体制を明確に定義することが求められます。AIの企画・設計から開発、テスト、導入、運用、モニタリングに至るまでの一連のプロセスについて、各段階の担当部署と責任の所在を明文化しましょう。
特に、AIシステムの品質管理や安全性確保、倫理的配慮などの観点から、専門的な知見を持つ部署やチームの関与を明記することが重要です。その際、経営層の関与と責任を明確にすることが、AIガバナンスの実効性を高めるために欠かせません。
次に、AIシステムの開発・運用における責任者の設置と役割について、詳細に規定することが求められます。AIプロジェクトの全体責任者として、CTO(最高技術責任者)やCDO(最高データ責任者)など、経営レベルの責任者を置くことが望ましいでしょう。また、各開発・運用フェーズにおける責任者を明確にし、その役割と権限を明文化することが重要です。
AIの開発・運用体制と責任者の明確化は、単なる形式的な問題ではありません。AIがもたらす便益とリスクを適切にマネジメントし、組織としての責任を果たすための基盤となります。
セキュリティ問題への対応手順
セキュリティ問題については、AIシステムへの不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策を徹底することが重要です。アクセス権限の管理を厳格に行い、機密情報を扱うAIシステムについては、特に高度なセキュリティ対策を講じることをガイドラインに明記しましょう。暗号化や二要素認証など、技術的な対策に加え、社員の情報セキュリティ教育を徹底することも欠かせません。
万が一、セキュリティ事故が発生した場合の対応手順も、事前に定めておく必要があります。情報漏洩の範囲を特定し、影響を受けるユーザーへの速やかな通知と支援を行う方針を明確にしましょう。また、事故原因の究明と再発防止策の策定、関係機関への報告など、組織としての責任ある対応が求められます。
同時に、AIの発展に伴う新たなリスクについても、常に注視し、対応方針を更新していくことが重要です。技術動向や社会的な議論を踏まえ、ガイドラインを適宜見直し、より強固なAIガバナンスを構築していくことが求められます。
自社や他社の活用事例
ガイドラインに記載すべき内容として、自社や他社での活用事例も掲載しておくとユーザーが具体的な使用イメージがしやすくなります。生成AIは非常にたくさんの利用用途が存在し、まだまだ新しい活用シーンが生まれています。
しかし、どう利用するかはユーザーのリテラシーにも依存するため、ガイドラインで積極的な活用事例を掲載して社内で生成AIの幅広いシーンを促進することが期待できます。成功事例だけでなく失敗例やあまり機能しなかった活用事例なども掲載しておくと効果的です。
ガイドラインの作成手順5ステップ
生成AIの導入にあたり、具体的なガイドラインの作成手順の一例を解説していきます。自社の用途やサービスに合わせて適宜カスタマイズしていくことでより良いガイドラインができるので、ぜひ参考にしていきましょう。
JDLAの「生成AIの利用ガイドライン」を調査する
JDLA(日本ディープラーニング協会)はすでに「生成AIの利用ガイドライン」を作成しており、生成AIのガイドラインとしてある程度完成されています。そのため、ガイドラインの作成にあまり大きな工数をかけたくない場合はこのガイドラインを基準に作成することがおすすめです。
「生成AIの利用ガイドライン」はユーザーが入力する内容や著作権侵害などさまざまなリスクに対する考え方がまとめられており、生成AIを利用する上で共通する内容が記載されています。
ガイドラインの全体構成と主要な項目を確認し、自社のニーズとの関連性を検討します。そして、ユーザーの入力内容や著作権侵害などの主要なリスクについての考え方を理解します。
自社の事業特性やサービス内容に応じたカスタマイズを行う
自社の実務の中でどの領域がどのように活用できそうか、活用方法を記載しましょう。自社のAIサービスが特化している業界や用途を特定し、その分野固有の倫理的・法的課題を洗い出します。JDLAのガイドラインを基盤としつつ、自社の事業に即した固有の原則や指針を追加・修正します。
ユーザーのリテラシーはバラバラであるため、具体的に0から生成AIの活用方法をイメージできるユーザーは限られます。社内のベースラインを揃えるためにも具体的な活用方法を記載しておくことが必要となります。社内全体だけでなく部署や業務ごとに活用方法を記載するとより効果的なガイドラインとなります。自社のブランドイメージや価値観に沿ったガイドラインとなるよう、表現や強調点を調整します。
自社の実務における生成AIの具体的な活用方法を記載する
部署や業務ごとに、生成AIの活用事例を洗い出し、リストアップします。各活用事例について、期待される効果と留意すべきリスクや課題を整理しましょう。実務に即した具体的な活用シーンを、詳細かつ平易な表現で記述します。
ドラフトを関係部署に共有しフィードバックを収集する
ガイドラインのドラフトを、AIの開発・利用に関わる部署に共有します。各部署からの質問や改善提案を収集し、ガイドラインの完成度を高めます。
経営層からの承認を得て、組織全体へのガイドラインの発信と浸透を図ります。
ガイドラインの周知徹底と実践サポートを継続的に行う
全社的な教育セッションやワークショップを通じて、ガイドラインの理解と実践を促進します。各部門でのガイドライン実践状況をモニタリングし、必要に応じて個別の支援を提供しましょう。
ガイドラインの運用から得られる知見や課題を集約し、継続的な改善に活かします。
生成AIガイドラインの事例
生成AIのガイドラインを外部に公開している企業や団体を紹介していきます。初めてガイドラインを作成する方も、実際のガイドラインを参考にすることで作成する負担を減らすことができます。
デジタル庁
デジタル庁では、「ChatGPTを業務に組み込むためのハンズオン」というガイドラインを公開しています。ChatGPTをはじめとする生成AIを業務フローに展開し、業務データベースとの連携を可能にする内容を公開しています。
このガイドラインではGPT-4などの最新技術のAPI経由で利用する方法などを解説し、実際にワークショップで用いられたアプリケーションのソースコードも公開しているため、より実践的な生成AI活用に向けた内容となっています。
総務省
総務省でも生成AI利活用に関するガイドラインが公開されており、ビジネス上で生成AIを活用する際の注意事項などを解説しています。ガイドラインではAI利用に関するトラブルの対処法を自主的に検討したり、AI利用の基本概念、AI利活用に際しての10個の原則など、生成AIに関するトラブルを未然に防ぐための内容が記載されています。
また、各原則に対する解説なども細かく説明されています。
経済産業省
経済産業省では、事業者向けにAI技術の社会実装を支援するガイドラインを提供しています。事業者がAIを利用するときに潜むリスクへの理解や、国際的な動向やステークホルダーの懸念をもとにした対策などが記載されています。
このガイドラインではAIガバナンスにむけた統一的な指針を示しており、どの企業でもガイドライン作成時に参考にしやすい内容となっています。
文部科学省
文部科学省では、教育現場での生成AI活用に向けた適切な判断をするための指針を、暫定版として公開しています。生成AIはこどもでも利用しやすい仕様になっており、ChatGPTなどはどのような質問でも何かしらの回答をしてくれるため、こどもが実際にAIの回答が常に正しいという盲信が生まれてしまう可能性が潜んでいます。
ガイドラインではこのようなリスクに関する記載などがされています。生成AIの技術に関する国としての見解をこの資料で示しているため、ガイドライン作成時に参考にしておくことがおすすめです。
一般社団法人ディープラーニング協会
一般社団法人ディープラーニング協会では、生成AI導入を検討している組織がスムーズに導入し活用できるようにガイドラインを作成するための資料を公開しています。ガイドラインのテンプレートが公開されているため、企業ごとの活用目的に応じて必要な項目や内容を追加や修正していくことでガイドラインが作成できます。
ガイドラインの作成にあまり時間をかけたくない場合はこの資料を参考に作成することがおすすめです。テンプレートは定期的な更新がされており、作成用途に応じたテンプレートも用意されているため、企業の検討段階によって選ぶこともできます。
生成AIガイドラインについてよくある質問まとめ
- 生成AIガイドラインにはどんな内容を盛り込むべきですか?
データ入力時の注意点や利用時の留意事項、AIの誤作動やセキュリティ問題への対応手順、社内教育の方針、運用体制と責任者の明確化など、生成AIを安全かつ適切に活用するための指針を網羅的に記載することが重要です。
- 生成AIガイドラインの作成で参考になる事例はありますか?
一般社団法人ディープラーニング協会が公開している「生成AIの利用ガイドライン」のテンプレートは、企業ごとの活用目的に合わせてカスタマイズできるため非常に参考になります。そのほか、デジタル庁や総務省、経済産業省などの政府機関も、生成AI利活用に関するガイドラインを公開しています。
- 生成AIガイドラインの運用で大切なことは何ですか?
ガイドラインの周知徹底と実践サポートを継続的に行うことが重要です。全社的な教育セッションやワークショップを通じてガイドラインの理解と実践を促進し、各部門での実践状況をモニタリングしながら、必要に応じて個別の支援を提供しましょう。また、運用から得られる知見や課題を集約し、ガイドラインの継続的な改善にも努めることが求められます。
まとめ
今回は生成AIのガイドラインとはなにか、重要性や具体的な作成手順などを解説してきました。生成AIのガイドラインとは、生成AIを安全に利用し、健全に運用するためにはどのようなことに注意すべきか、具体的な活用方法などが解説されています。
また、すでに各団体が実際のガイドラインやガイドライン作成を支援する資料なども公開しているため、生成AIの導入を検討している企業も作成しやすい環境が整いつつあります。ぜひ、今回の記事を参考に生成AIの活用を積極的に検討していきましょう。
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