AIによる図面検索とは?仕組み・メリット・ユースケース・活用事例を徹底紹介!
最終更新日:2024年12月26日
近年、AI(人工知能)を活用した図面検索技術が、設計図や製図データの効率的な検索と活用を可能にする新たな手法として注目を集めています。この技術の基盤には「画像認識AI」が採用されており、従来のキーワードベースの検索では発見できなかった高度な検索や類似性の高い図面の特定を実現しています。
本記事では、AIによる図面検索の仕組みや導入メリット、具体的なユースケースを紹介します。図面検索の活用によって、設計・製造現場においてどのような効果が期待できるのかを分かりやすく解説します。
AI搭載の図面検索技術を導入したい企業担当者や、効率化に課題を抱える方はぜひ最後までご覧ください。
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図面検索とは?
図面検索とは、膨大な図面データベースから必要とする図面を迅速かつ高精度で検索するシステムです。検索時間の短縮により、他の創造的な業務に時間を割くことが可能になります。
また、過去の設計資産を有効活用することで、設計の効率化とコスト削減が可能です。図面検索システムは、以下のように多彩な機能を備えています。
- 類似図面検索:過去の図面と類似したデザインを自動的に探し出す機能
- 差異表示:検索された図面間の違いを色付けなど視覚的な強調で明示する機能
- 複数品番検索:Excelなどで共有された品番を一括で検索できる機能
これらの機能により、大規模な図面検索を必要とする場面でも、類似した事例の迅速な検索や設計上の重要な差異をひと目で確認でき、設計業務の大幅な効率化を実現します。
図面検索のユースケース
図面検索技術は、さまざまなシーンで活用可能です。以下では、図面検索のユースケースを紹介します。
設計業務
過去の類似設計を迅速に検索し、再利用することで新規設計を効率化できます。特に、過去に使用した部品や構造を再利用することで設計のスピードアップが可能になり、設計ミスの防止やコスト削減にもつながります。
例えば、シリーズ化されている製品の設計では、以前の図面をもとにすることで、一貫性を保ちながら作業負担を軽減できます。
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製造管理
図面に紐付けられた発注情報を活用して、最適な供給元を迅速に特定できます。これにより、調達プロセスがスムーズになり、部品や材料の納期遅延を防止することが可能です。
また、類似部品の調達により、仕入れコスト削減や在庫管理の効率化が期待でき、製造業務全体の最適化に役立ちます。
見積もり対応
図面検索では、過去の類似案件を基に見積もりを迅速に作成できます。AIが蓄積されたデータを分析し、類似図面を特定することで、見積もりの基礎となる情報を効率的に提供します。
これにより、見積もり精度が向上すると同時に、顧客への対応スピードも大幅に改善されます。
また、経験や知識に依存していた属人的な見積もり業務を標準化し、誰でもスムーズに対応できる仕組みを構築することが可能です。この結果、業務の効率化だけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。
不良発生
AIによる類似図面検索では、潜在的な不良部品の洗い出しや見直しが可能です。さらに、洗い出した不良部品の結果をもとに、関連図面の一括更新や差し替えも容易に行えます。
この機能により、更新作業が短縮されるだけでなく、更新漏れを防ぎ、不良発生の再発防止に役立ちます。
従来の図面検索方法
従来の図面検索は主に以下の方法で行われてきました。
- ファイル名やキーワードによる検索
- 紙の図面を書庫や図庫から手動で探す
- ベテラン社員の記憶や経験に頼った検索
これらの方法では、適切なタグ付けがされていない場合や検索キーワードが曖昧な場合に、図面を見つけるのに多くの時間を要しました。そのため、従来の図面検索方法に加えて、AIを活用した検索手法が注目を集めています。
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AIで図面検索を行う仕組み
AI類似図面検索システムでは、過去の図面や資料から類似する図面を自動的に探し出せます。そのため、従来の手動での検索作業に比べて大幅な時間短縮が可能です。
例えば、見積もり依頼があった際に、過去の類似図面を迅速に見つけ出せるため、見積もりの遅延を防げます。
AIの図面検索システムは、以下の流れで検索を実現します。
図面登録
まず、AIの図面検索システムでは、図面データを読み取って、データベースに登録する必要があります。
システムへ登録された図面の形状や寸法、属性情報、図面内の文字などを画像認識AIが解析し、特徴量を抽出するためです。この解析によって、後の検索に必要なデータ構造が生成されます。
関連記事:「AIによる図面読み取りとは?図面OCR導入メリット、設計・積算業務の効率化方法・導入注意点・最新トレンドを徹底解説」
図面ファイルの検索
次に、ユーザーがシステムに入力した条件や基準となる図面をもとに、登録されたデータから類似図面を検索します。検索方法は以下に挙げるアプローチから複数を組み合わせて行われるのが一般的です。
- 形状類似検索:図面全体の構造や形状の特徴を解析し、類似性を判定する方法
- 寸法線検索:特定の寸法データを基に一致する図面を検索する方法
- 属性テキスト検索:図面内に登録された属性データや注記情報をキーワードとして検索する方法
- 図面内文字検索:図面内に記載された型番や材料名、コメントなどの文字情報を対象に検索します。
これらの検索方法を組み合わせることで、ユーザーの目的に合った図面を効果的に探し出せます。
最後に、検索結果が表示されたあと、ユーザーは類似点や差異を確認しながら最適な図面を選定します。なお、一部のシステムでは、類似度スコアや詳細な比較機能を提供しており、より精度の高い選定が可能です。
このようにAI搭載により高度化を実現した図面検索は、大量の図面が社内に存在する製造業や建築業への活用が期待されています。
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AIによる図面検索のメリット
AIの図面検索を導入することで、従来の図面検索手法よりも迅速化や見積もり精度の向上など、さまざまなメリットを得られます。以下では、AIによる図面検索のメリットを紹介します。
図面検索の迅速化
AIが図面の形状や属性情報を解析し、類似度順に検索結果を提示するため、過去の図面を手動で探す手間を大幅に削減できます。これにより、設計作業や見積もり作業のスピードが飛躍的に向上します。
特に、過去の類似デザインや仕様を迅速に参照できることで、業務の効率化が図れます。
見積もりの精度向上
AIによる類似図面の検索結果を活用することで、新規図面に対する見積もりの精度が向上します。過去のデータを基にした正確なコスト計算や納期予測が可能となり、全体の業務プロセスがよりスムーズに進行します。
結果として、顧客への提案力を強化でき、信頼性の高いサービス提供につながります。
過去データの共有化
AIによる図面検索システムを活用することで、過去のデータを組織全体で共有化することが可能になります。これにより、特定の担当者に依存していた設計業務の属人化を解消し、誰でも必要な図面に迅速にアクセスできる仕組みを構築できます。
共有化された図面データは設計や見積もり作業の効率化に貢献するほか、業務プロセスの一貫性と透明性を向上させます。
変更箇所の見落とし防止
図面のチェックやレビュー作業においても、AIによる類似図面検索は有効です。多くのAI図面検索システムには、単なる検索機能だけでなく、図面や文書の比較機能も搭載されています。
この比較機能を活用することで、新旧の図面間の変更箇所を自動で特定し、変更点を明確に表示することが可能です。これにより、変更箇所の見落としを防ぎ、レビュー作業の精度と効率が向上します。
デジタル化の推進
AIを搭載した図面検索システムの導入により、紙ベースでの図面管理から解放され、業務全体のデジタル化が進みます。データがデジタル化されることで、検索性や管理性が向上するだけでなく、リモートワークや部門間での情報共有が容易になり、業務の柔軟性と効率がさらに向上します。
したがって、AIによる図面検索システムは、単なる検索ツールとしての役割に留まらず、図面管理システムとしての役割も担うことが可能です。
AIによる図面検索の活用事例
図面検索技術の導入により、業務効率の向上や属人化の解消を実現した企業も増えてきています。以下では、図面検索の活用事例を紹介します。
【川崎重工業】スムーズな仕分け作業を実現
川崎重工業では、キャディ株式会社の「CADDi Drawer」を導入し、図面検索業務を大幅に効率化しました。従来のシステムでは、複数のシステムを一覧で見ることができず、図面を一つずつ開き確認する非効率な作業が発生していました。
しかし、CADDi Drawerでは一覧表示機能によって複数の図面を同時に確認できるため、導入することで発注先や価格、発注時期をひと目で把握できるようになりました。
また、見積もり依頼において活用される「複数品番検索機能」により、Excelで送られてくる複数品番を一括検索できるようになり、1品番ごとに検索する手間が省けました。この結果、仕分け作業がスムーズに進められるようになりました。
【日本シーム】紙管理からの完全脱却
日本シーム株式会社では、ニューイノベーションズの「図面バンク」を導入し、紙ベースの管理からクラウド管理への移行を進めています。従来、社内の図面や知見はベテラン社員に依存しており、図面を探す度にベテラン社員に直接聞く必要があり、非効率な状況が課題となっていました。
そこで、図面バンクの導入によって、図面や関連書類をクラウド上で一元管理することが可能となり、検索の効率化が期待されています。
現在、データ移行を進めながら社内体制の整備を行っており、最終的には紙管理から完全脱却を目指しています。
【今野製作所】見積業務の属人化を解消
株式会社今野製作所では、見積業務が長年ベテラン社員に依存しており、業務の属人化が大きな課題となっていました。特定の担当者しか対応できず、その担当者が不在の場合には見積が進まないなどの非効率があり、見積業務の標準化と若手への引き継ぎが喫緊の課題でした。
そこで、AIが過去の見積もり済み案件の中から類似図面を見つけ、類似度順に提示する「匠フォース」を導入しました。匠フォースに搭載されるAIの類似検索などにより、図面のほかに仕様書や議事録なども迅速に検索できる点を評価しています。
導入の結果、経験や記憶に頼らない形で見積を行える仕組みを構築でき、見積業務を現場の若手社員にも引き継ぐことが可能になり、業務の複線化を実現しました。また、見積ロジックを明確にしたことで、将来的な変更にも柔軟に対応できる仕組みが整いました。
AIによる図面検索の今後の展望
図面検索システムは、AI技術の進化とともに以下の実現が期待されています。
- LLMによる自然な文での検索
- 3Dモデル対応の一般化
- 完全自動設計
LLMによる自然な文での検索
今後さらにLLM(大規模言語モデル)が進化すれば、図面検索と組み合わせることで、普段の会話に近い検索が可能になります。例えば、「このような機能を持つ部品の図面が欲しい」といった直感的な指示にも対応できるようになり、検索の利便性と精度が大幅に向上するでしょう。
関連記事:「LLMの正しい理解と具体的な活用方法、導入コストの分析をわかりやすく解説」
3Dモデル対応の一般化
また、現在は2D図面が主流ですが、将来的にLiDARや3Dカメラ等から取得した点群データをもとに作成した3Dモデルの検索や比較が実現することで、より複雑で詳細な検索が可能になります。これにより、立体的な設計や製造物の相互確認がよりスムーズになるでしょう。
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完全自動設計
AIが主体となり検索結果をもとに最適な設計案を自動的に提案する「設計の完全自動化」が進むと予想されます。これにより、従来は手動で行っていた設計作業が大幅に簡略化され、設計プロセスの効率化だけでなく、新たな価値創造にもつながるでしょう。
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図面検索についてよくある質問まとめ
- どのようなファイル形式に対応していますか?
一般的に、「PDF・TIFF・JPEG・DXF・DWG」の形式に対応しています。システムによっては、PNG・BMP・STLなどの形式や3D図面にも対応可能です。
そのため、事前に自社の利用形式に対応しているか確認しておくと良いでしょう。
- AIによる図面検索はどのような業務で役立ちますか?
設計業務では過去の類似設計の再利用、製造管理では最適な供給元の特定、見積もり業務では迅速かつ精度の高い対応が可能になります。
まとめ
AIの図面検索は、設計や製造業務の効率化に役立つ技術です。画像認識AIの機能により、従来のキーワード検索では不可能な高精度な検索を実現でき、類似図面の迅速な特定や見積もり精度の向上、変更箇所の見落とし防止など多くのメリットを提供します。
今後は、AI技術の進化に伴い自然文検索や3Dモデル対応の一般化、完全自動化の実現ができれば、検索プロセスのさらなる効率化が見込まれます。
AIによる図面検索を導入することで、業務効率を高めるだけでなく、競争力強化や新たな価値創造にもつながります。この機会にAI図面検索の導入を検討し、次世代の業務環境を構築してみてはいかがでしょうか。
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