AIとIoTの違いは?結合効果や3つの導入事例、課題、活用法、仕組みを解説
最終更新日:2024年11月14日
注目のコンピューターテクノロジーとして語られることの多いAI(人工知能)とIoT。これからの社会を変えていく重要な技術として様々な場面で導入が進められています。この2つの技術はひとつながりのものとして説明されることも多く、2つの技術の関係が分かりにくくなっていることもあるようです。
AIとIoTはもともと全く異なるもので、目的も使われ方も違います。簡単に言えば、AIはコンピューターのデータ処理に関する仕組み。一方のIoTはコンピューターが扱うデータをどのように取得し、活用するかという端末の概念に関する技術です。
今回はAIとIoTの関係について説明し、両社の融合によりどのような効果が期待されているのかについて代表的な用途と事例について解説します。
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目次
IoTとは?
IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と翻訳され、あらゆるモノがインターネットに繋がっている状態を構築する技術革新全般を指します。
私たちの身の回りにある多くの機器(エアコン、電子レンジなどの自宅にあるものから、工場や街中の監視カメラなど)にはデータを処理するためのチップやデバイスが内蔵されていますが、IoTの技術を活用することで、これらは単にプロセス処理のためだけではなく、端末同士が相互に情報のやり取りを行ったり、インターネットを介してクラウドサーバとデータの連携ができるような仕組みになっています。
取得した情報をやり取りすることができるようになることで、一つひとつのデバイスは情報端末としての役割を果たし、データを別の場所に送信したり、スマートフォン等を介して遠隔からの操作なども可能になります。インターネットと接続ができるこれらの端末はIoT端末とも呼ばれ、身近な例で言えば、Amazon EchoなどのスマートスピーカーなどがIoT端末として有名です。
IoTは特に、コンピューターの情報処理をそのデータが発生した場所(例えば自宅のリビングなど)で処理して実行することを可能にします。これによって、高速な処理が可能となり、大型コンピューターによる中央演算処理によらない、局地的なデータコンピューティング(エッジコンピューティング)を実現しています。
関連記事:「エッジコンピューティングとは?メリット・AIでの利用シーン・導入注意点を徹底解説!」
IoTセンサーとは?
IoTセンサーは、自然現象や物理的な動きを受信してデータに変換する従来のセンサーをIOT化し、ネットワークに接続してデータを送信したり、収集・管理できるセンサーです。
IoTセンサーの急速な発展により、今までは収集が難しかった、または収集するためのコストが莫大だったデータを大量に収集できるようになりました。今までになかった多くの分野でIoTセンサーとAIの組み合わせによる自動化・省力化が進んでいます。
IoTセンサーの種類、活用事例についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
AI(人工知能)とは?
コンピューターは与えられたデータを決まった方法で処理して出力します。この作業方法は通常「プログラム」という形式で記述され、プログラムは人間のプログラマー(またはエンジニア)によって作成されることで初期の役割を果たす道具となります。
わかりやすく言えば、AIはこの「人間によるプログラミング」を必要としないコンピューターです。データを与えることでそのデータにどのような関係があるかをコンピューター自体が発見します。例えばあらかじめ分類されたテストデータをまずAIに学習させ、その後に実際のデータを与えてその特性を判別させることができます。
一旦学習プロセスを完了すれば、あとはデータを与えるだけでAIが自動的にデータを処理してくれるソフトウェアシステムです。
もちろん、そのAIを構築する際には人間の手が必要となりますが、一度構築すると、AIが自動で処理を行ってくれるようになります。(厳密に言えば、AIの処理精度を高めるための再学習などは必要になります。)
なぜAIとIoTを結合させるべきか?
IoTをビジネスに導入した場合、もしそれぞれのデータが発生した現場での処理を一つひとつプログラムするようなことになれば膨大な手間がかかります。現在の社会では、日々500万台以上の情報デバイスが導入されているともいわれており、そのすべてを設置した場所や条件に合わせてプログラミングすることは到底不可能です。
しかし、IoTのデータ端末にAIを取り入れることで、社会の全場面で個別・最適のデータ処理を実行できるようになるのです。
データ分析速度・分析能力の向上
IoTとAIが同時に機能することにより、AIによるデータ分析の能力は飛躍的に向上します。情報が発生する現場から最新のデータをいつでも取得してくれるIoTと、受け取ったデータを処理可能なAIによるデータ処理を掛け合わせることで、「リアルタイム分析」が可能です。
さらにこの分析結果は同時に更新されたIoTの情報でその都度評価されていくため、AIは自身の学習した内容を何度も再学習することで、最適な処理プロセスを獲得していけるようになります。
エッジとクラウドの機能バランス
IoTが取得したデータをデバイスまたはチップレベルでAI処理する場合、AI-IoTシステムはデータが発生した場所でそのままAIが処理を行います。これは局所的なデータ分析を行うエッジコンピューティングまたはエッジAIと呼ばれる技術です。エッジとは、日本語で「縁(ふち)」を意味し、コンピューターが処理を行うための末端であることを指します。
さらにこのIoTで取得したデータを、より上位の処理のために必要な情報源として集計しクラウドで活用すれば、同じデータについてより広域的なデータ処理を行うこともできます。
このようにデータ取得と処理の階層を分けることで、システム実装上のエッジコンピューティングとクラウドコンピューティングのリソースを配分することができます。局所最適と全体最適の2つの視点から状況をとらえることができるのです。
IoT端末と密接な関係にあるエッジAIの特性や活用事例についてより詳しく知りたい方は【エッジAIの活用事例】の記事もご参考ください。
なぜAIとIoTを組み合わせてDXを実現すべきか、AIとITの違いについてこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
AIとIoTの活用方法
AIとIoTの結合によるソリューションとして、社会に重要な影響を与えると思われる用途を4つ紹介します。
ウェアラブルデバイス
Apple Watchなどのウェアラブルデバイスは、ユーザーが指定した条件に合わせて継続的に状況をモニターします。血圧や心拍数などの健康データは個人のヘルスケアに、スポーツやフィットネスの場では体調をモニタリングすることに役立つでしょう。
ワイヤレスヘッドフォンやバーチャルリアリティデバイスなど、AI内蔵のウェアラブルデバイスは今後も続々と社会に広がっていきます。
スマートホーム
私たちの住む家もIoTとAIによる情報化が進み、より便利で快適なスペースとなっていくでしょう。空調や照明など、個人の好みを認識し、過ごしやすい環境が自動的に設定することなどができます。
AIが好みや習慣に合わせて音楽を選んでくれるスマートスピーカーや、コーヒーを淹れてくれるコーヒーメーカー。さらに必要な領域以外の電気や冷暖房では機能を「待ち」の状態にすることでエネルギー消費を抑え、環境負荷を最低限にすることもできます。
スマートシティ
すべての公共サービスにIoTとAIを導入することで、より安全で過ごしやすいシティライフを提供することができます。都市全体のエネルギー消費を最適化してエネルギーグリッドに送り、広域での供給量をコントロールする等が例として挙げられるでしょう。
インドのデリーでは、市内の道路渋滞を緩和する「インテリジェント交通管理システム」が導入されています。ポイントごとのデータを公開し、オープンリソースで分析することによって町全体の都市計画に反映させれば、より豊かで安全なまちづくりにつながるでしょう。
スマートインダストリー/スマートファクトリー
工場や物流の現場にはさまざまな産業用機械やロボットが設置されています。この機械やロボットにIoTセンサーを内蔵し、それぞれの作業に関する情報をやり取りすることで機械同士が同調して作業を進めることができます。
ロボットにAIを搭載するメリット、これからの課題点についてこちらで特集しています。
産業IoT(Industrial Internet of Things: IIoT)と呼ばれるこの技術にAIを追加することで、作業ミスによる品質低下や怪我につながる事故を劇的に減少させることができるようになります。自律制御の製造ロボットや予防的メンテナンスセンサーを配置した工場は生産性も高く、複雑化・大規模化したサプライチェーンではIoT・AIの活用が欠かせないレベルになっています。製造業、倉庫でのIoTセンサーの導入方法についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
工場のIoT化の先にあるスマートファクトリーの導入実例についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
AIとIoTの結合3事例
Tesla:次世代自動運転車
実現間近の自動運転車。特にレベル5と呼ばれる完全自動運転車の技術的課題を解決すべく、世界中の自動車メーカーがしのぎを削っています。電気自動車で世界をリードするTesla社もその一つ。TeslaではIoTとAIを搭載した未来の車のプロトタイプを製作しました。
自動車同士で通信可能なこのオートパイロットシステムは、一台のAIが学習したプロセスを他のすべての車に転送共有し、道路状況の判断や他の自動車の運転パターン、歩行者の行動予測などを全体で学習していきます。
最新の自動運転に用いられるAI技術、これからの課題、問題点についてはこちらの記事で解説しています。
NestLab:スマート空調システム
アメリカNestLab社のスマートサーモスタットは室内の温度環境を自在にコントロールできる人気商品。IoTで家の中のあらゆる場所の温度を測定し、住人の好みや行動パターンをAIが理解して室温を最適に設定します。
使っていない部屋の空調はストップし、これから使う予定の部屋がある室温は事前に予熱してくれますので省エネにも効果大。スマホで操作できる手軽さも成功の一因です。
ロールスロイス:航空エンジン設計
ロールスロイスではIoTとAI、ビッグデータを融合したデータエンジニアリングサービスのR²データラボを設立。社内の生産拠点に70兆のデータポイントを設置して社内のすべてのデータを活用します。
エンジンネットワークと呼ばれるシステムでは自家用飛行機のエンジンにIoTセンサーを設置。これをヘルスモニタリングシステムと結合してエンジンの効率を測定します。同時稼働するAIはエンジントラブルを事前に察知し、トラブルが起こる前に対処できるようにエンジニアに警告してくれます。
AIとIoTを結合させる際の3つの問題点
社会の情報化に革命的な影響をもたらすAIとIoT。全面的な実装のためには解決すべきいくつかの課題があります。
ネットワークセキュリティ
全ての情報がネットワークで繋がるプラットフォームでは情報セキュリティが大きな課題となります。セキュリティシステムが破られると、企業の生産情報や財務情報、公的サービスの関連情報や個人のプライバシーまですべての情報にアクセスされてしまいます。
また、データポイントで入手されたデータが実際のデータであるかどうかをどのように判別するか、という課題も挙げられるでしょう。IoTの拡大につれてデータの信頼性も保証されなければなりません。
ネットワークコネクティビティ
現在すでに世界中に情報端末がいきわたり、インターネットの活用が当たり前の状態になっていますが、未だ世界にはネットが届かない地域があります。IoTはあらゆる地点で情報入手可能であることを要求するため、世界全体を情報ネットワークでカバーできるかどうかが最大の問題になるでしょう。
エネルギー需要及び環境負荷
世界中の情報デバイスの数は100億を超えると推定されており、これらすべてを継続的に稼働させることのできる電力源は存在しません。寿命を迎えた情報デバイスは廃棄物となり、その処理において大きな環境負荷をもたらします。IoTの開発に当たっては、再生可能エネルギーの開発、及び環境負荷のない情報デバイスの設計が求められています。
AIとIoTについてよくある質問まとめ
- AIとIoTを結合させることで得られる主なメリットは何ですか?
AIとIoTを結合させることで得られる主なメリットは以下の通りです。
- データ分析速度と分析能力の向上
- エッジとクラウドの機能バランスの最適化
- 自動化と効率化の促進
- AIとIoTの結合による具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
AIとIoTの結合による具体的な活用事例には以下のようなものがあります。
- テスラ:次世代自動運転車
- NestLab:スマート空調システム
- ロールスロイス:航空エンジン設計
- ウェアラブルデバイスでの健康管理
- スマートホームでの快適な環境制御
- スマートシティでの交通管理システム
- スマートファクトリーでの生産性向上と品質管理
- AIとIoTを結合させる際の主な課題は何ですか?
AIとIoTを結合させる際の主な課題は以下の通りです。
- ネットワークセキュリティ
- ネットワークコネクティビティ
- エネルギー需要および環境負荷
IoTを活用したAI開発は専門の開発業者へ
今回はAIとIoTの関係とその活用について説明しました。IoTは単体でももちろん機能しますが、AIと組み合わせることによって、より強力な技術となり、多くのビジネス改革を実現することができるようになります。
社会を変える可能性のある2つの技術が融合することで、全社会にAIが実装される近未来を描くこともできます。AIとIoTは企業活動、個人生活にとどまらず社会全体の在り方を変えることになるでしょう。一方で情報セキュリティや信頼性、インフラの問題など解決すべき多様な課題があります。
そのため、AIとIoTを使ったシステム開発には、十分な経験を積んだ人材の選定・育成や開発会社の支援が必須でしょう。
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