レコメンドAI活用事例9選!機能の活用メリット、注意点とは?
最終更新日:2025年01月14日
ECサイトの運用やマーケティングにおいて、顧客一人ひとりに最適な商品やサービスを提案することは、売上向上の鍵となっています。しかし、膨大な商品やコンテンツの中から、各顧客の興味や好みに合った提案を人手で行うことは現実的ではありません。
そこで注目されているのが、AI(人工知能)を活用したレコメンデーションシステムです。レコメンドとはユーザーの閲覧商品やお気に入り商品、FAQなどをAIが認識し、ユーザーに合わせておすすめの商品を表示させるものです。
今回はAIレコメンド機能を導入を検討している方向けに、Netflix、LinkedIn、Airbnbなど、世界的企業から地域の観光サービスまで、様々な分野でのAIレコメンド活用事例、AIレコメンドの種類やメリットから具体的な事例、注意点までをご紹介します。
なお、AI Marketでは、レコメンドやデータ分析が得意なAI開発会社の選定サポートや最適な開発会社の紹介を行っています。AI開発会社の選定に迷ったり、依頼方法がわからなかったら、AI Marketの専門のコンサルタントが最適な開発会社の選定を無料でサポートしますので、いつでもお気軽にご相談ください。
目次
AIレコメンド活用事例9選
それでは具体的にAIレコメンド機能を導入している事例を紹介します。
エノテカ・オンライン:好みに合わせてワインのマッチング
エノテカはワイン販売を行っている小売業者で、通販向けに展開している日本最大級のサイトがエノテカ・オンラインです。エノテカ・オンラインでは、味わいベースレコメンド、特集ページレコメンドという2つのレコメンドを行っています。
味わいベースレコメンドでは、タイプ・産地・品種・価格帯・醸造方法の5要素に加えて、ソムリエが判断している味わい・ボリュームなどの6つの要素を数値化することで取り扱い種類2,000種類の中から類似したレコメンドを行うことができます。
また特集ページレコメンドでは、お客様の検索履歴や購入履歴などから今まで制作してきた最適な特集ページを表示することなども可能。これらから収集してきたデータを活用し、LINEやメールでのOne to One マーケティングを行うことでお客様の満足度向上、そして売上も1.5倍に向上することができました。
ECサイトでのAI活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
朝日カルチャーセンター:Webサイトでの講座選びをサポート
朝日カルチャーセンターは、美術や工芸、語学など100以上のジャンルの6,000以上の講座を全国13ヶ所以上で提供している日本最大級のカルチャースクールです。朝日カルチャースクールは13万人の顧客の実績があり、従来は問い合わせする必要がなく集客ができました。
しかし、様々なサービスがローンチされ、競争が激化してきたことにより、コストを掛けずに集客する方法としてWebサイトの活用をはじめました。
従来のWebサイトではパーソナライズ機能もありましたが、レコメンドのルールを手作業で決めていたようです。そこで、手間を省力化するためにAIレコメンドシステムを導入。
レコメンドには、あるページに何回訪れたのか、どれだけの時間を見たのかという行動履歴をベースに機械学習を導入し、その結果、サイト滞在時間1.4倍、講座閲覧数10%アップと言う結果に繋がったようです。
NETFLIX:おすすめ作品をレコメンド
NETFLIXは強化学習を活用したAIレコメンドを活用することで大きく業績を伸ばした企業の一つです。NETFLIXでは視聴した作品や傾向によって自分におすすめの作品が表示されます。このおすすめ作品の精度が高いことでNETFLIXでの利用頻度・滞在時間が伸長して、ビジネスの成長にも繋がりました。
NETFLIXは現在のストリーミングビジネスの前のDVDレンタルサービス時代からレコメンド機能を用いています。現在レコメンド機能は、おすすめの作品や特集などの表示だけでなく、映画を選ぶ際のサムネイルにまで活用されています。
NETFLIXでは、強化学習のアルゴリズムの一つである「文脈バンディット」を使い、レコメンドする映像作品のサムネイルをカスタマイズしています。同じ映画やコンテンツに至った場合でも、視聴者によって反応が変わるので、視聴履歴に応じて強調するテーマや俳優を変えています。
例えば、人によって中心に使われる人物が男性なのか、女性なのかなどがレコメンドされます。文脈バンディットを含む強化学習の代表的アルゴリズムについてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
当初は出演俳優、監督、ジャンルなどの基本的な情報を中心にレコメンドしていましたが、精度が低い中で協調フィルタリングを導入したり、5段階評価などの評価基準をアルゴリズムなどに追加するなど常にブラッシュアップを続けることでアルゴリズムの精度の向上を行ってきています。
現在利用されているアルゴリズムの一つとしてタグ付けがあります。例えば、作品ごとに「主人公が左利きのロマンチックなドラマ」と細かいタグ付けを複数設定することにより視聴者が予想もしないようなレコメンドができています。
LinkedIn:キャリア関連レコメンド
LinkedInのキャリア関連レコメンデーションシステムは、ユーザーの個人情報やキャリア履歴を活用して、高度にパーソナライズされた推薦を提供しています。LinkedInは以下の要素を考慮して、ユーザーごとにカスタマイズされた推薦を生成しています。
- ユーザープロフィール情報
- スキルセット
- 職歴
- 業界
- 所在地
- ユーザーの行動データ(閲覧履歴、検索履歴など)
これらの情報を分析し、機械学習アルゴリズムを用いて、各ユーザーに最適な推薦を行っています。
LinkedInのレコメンデーションシステムは、ユーザーの興味・関心に合致した情報を優先的に表示し、ユーザーが気づいていなかった潜在的なキャリアパスを提示してくれます。また、ユーザーのスキルギャップを特定し、適切な学習リソースを推薦する機能も人気です。
関連記事:「【人材派遣業界AI活用事例】AIによるマッチング精度の向上から書類処理の効率化」
Airbnb:宿泊施設のレコメンデーションシステム
Airbnbの宿泊施設レコメンデーションシステムは、高度に洗練されたAIを活用して、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされた宿泊オプションを提供しています。
Airbnbのアルゴリズムは、以下のような膨大なデータを収集・分析しています。
- ユーザーの検索履歴
- 過去の予約情報
- 閲覧したリスティング
- レビュー履歴
- ウィッシュリストに追加したプロパティ
これらのデータを基に、AIはユーザーの好みや傾向を学習し、個々のプロフィールを構築します。
このシステムにより、Airbnbはユーザーの好みに合った宿泊施設をすばやく表示可能です。そして、パーソナライズされた提案により、ユーザーのニーズにより適した宿泊施設を見つけやすくなります。
ZOZOテクノロジーズ:行動データをもとにおすすめ商品提案
ファッションテクノロジーサイトであるZOZOでもレコメンドを導入しています。ZOZOでは商品の下部のおすすめの商品を提案するシステムをGoogleのReccomendation AIをベースに開発しました。
システムの開発のために、各商品の情報を更新しアルゴリズムが読み取れるように設定した上で、ユーザーの閲覧履歴やお気に入り追加、購入履歴などの行動データをもとにモデルを作成し、作成したモデルをベースにおすすめ商品を呈示するシステムを構築しました。
関連記事:「ファッション・アパレル業界でのAI活用事例、導入の課題」
SABON(サボン):香りをベースに商品提案
ボディケア&バスケアブランドのSABONのECサイトでは購入履歴や初めてのお客様には売れ筋商品を提示するなど一般的なレコメンドを行ってきましたが、それ以外にSABONならではの香りをベースとしたレコメンドを設定しました。
SABONの実店舗では、香りや使用心地が体験ということを重視していました。例えば、お客様の中には、ヘアケアで買ったのと同じ香りをバスケアで買いたいと思うお客様も多かったのです。しかし、レコメンドを導入する前までは香りでのレコメンドをしていなかったため、商品が探しにくいなどの問題がありました。
そこで香りをベースにしたレコメンド機能を導入することにより、同じ香りお商品群をまとめて表示することが可能になりました。それ以外にも、香りにマッチする別の香りの商品をレコメンドすることで、新たな商品の訴求ができるなど売上にもつながったようです。
まちのPRと二次交通の活用(射水市/高岡市/氷見市)
富山県内で人気の観光スポットを多く持つ射水市、高岡市、氷見市では、現地の交通検索のシステムと観光情報を組み合わせることで、訪問観光客の嗜好にあったプランを提案し、そのプランに沿ったルートの提供を行っています。
地元の観光協会とJTBパブリッシングが連携することで進めている観光MaaSの一環です。観光MaaSの導入事例についてはこちらの記事で特集していますのでご覧ください。
日本旅行/ジャスミー:ブロックチェーンとエッジAIによるユーザー生成コンテンツ活用
株式会社日本旅行とジャスミー株式会社は、ブロックチェーン技術とエッジAI技術を用いて、日本旅行が運営する旅行メディアサイト「Tripα(トリパ)」におけるユーザー生成コンテンツ活用に向け、2022年4月より共同で実証実験を開始したことを公表しました。
このAIエンジンは、これまで多くのインターネットサイトで活用されている協調フィルタリング等のレコメンド手法とは異なり、収集した情報から得られる個人の嗜好性を、全く異なるジャンルやサイト等のレコメンドに活用出来る仕組みです。
PDLに蓄積された、個々人それぞれの個性を表すデータと、このAIエンジンをエッジ環境(パソコンやスマートフォン等の機器内)で利用することで、これまでにない安全なデータ利用と、それによるユーザー本位のアウトプットの実現を目指しています。
本実証実験を実施する日本旅行運営の旅行メディアサイト「Tripα」では、旅行に関心があるユーザーや自らの旅行体験を発信するユーザーの情報により、「Tripα」を訪れたユーザーに対して、慣れ親しんだ旅先の新たな魅力の発見や、まだ見ぬ新たな旅との出会いを実現する、訴求力のあるメディア提供が実現できるとのことです。
関連記事:「日本旅行とジャスミー、ブロックチェーンとエッジAIによるユーザー生成コンテンツ活用に向けた実証実験を開始」
AIレコメンドエンジンの仕組み
AIレコメンドとは、おすすめの商品やサービスをAIが顧客の購買履歴やお気に入りから分析して提示する手法のことです。店舗において店員から趣味嗜好にあわせた商品をおすすめされていたことを、AIがオンライン上で行うイメージです。
AIレコメンドの仕組みとして、様々なデータを元に、個人個人に合わせた最適な商品がなにかを分析するアルゴリズムが用いられます。サイトを利用していると、顧客の商品の購買や視聴、閲覧などの行動履歴など様々なデータが集まります。
このようなデータはビッグデータとも呼ばれており、このビッグデータを機械学習のアルゴリズムが解析します。解析することで個人個人の趣味嗜好の傾向などが見えてくるため、この解析結果をベースにお客様におすすめの商品やサービスを表示するという仕組みです。
マッチングシステムとしても進化
近年、AIレコメンドはマッチングシステムとしても進化を遂げています。例えば、人材業界では、AIを活用した高度なマッチングシステムが導入されています。これらのシステムは、求職者のスキルや経験、そして企業の求める人材像を詳細に分析し、最適なマッチングを提案します。
さらに、最新の動向として、生成AIを活用したマッチングシステムの開発も進んでいます。例えば、社内知見をマッチするレコメンドシステムは、AI技術とマッチング理論を融合させた新しいアプローチを採用しています。このようなシステムは、従来のAIレコメンドの枠を超え、より複雑で多様なニーズに対応できる可能性を秘めています。
関連記事:「AIマッチングシステムとは?メリット・課題・活用されている業界・導入ポイントを徹底解説!」
AI レコメンドの種類
AIレコメンドは先述したアルゴリズムの仕組みを用いていますが、アルゴリズムの設定により結果は大きく変わります。ここでは代表的なアルゴリズムの種類に関してご紹介します。
1.アイテムベースレコメンド
アイテムベースレコメンドとは、商品特徴や商品名をベースに類似製品や関連製品をレコメンドするものです。例えば、今閲覧している商品と同じメーカーの商品や商品の周辺機器など商品情報などを軸にレコメンドします。
2.協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、閲覧履歴や購買履歴などのビッグデータを分析して、同じような行動をしているお客様向けに一緒に買われている商品やよく買っている商品をレコメンドするものです。
具体的には、誰がどのような行動を行っているのかなどを数値化することにより、レコメンド対象を選びます。また数値化の際は、行動だけでなく、アイテムベースの商品特徴などの情報をスコアにすることもあります。
3.パーソナライズドレコメンド
パーソナライズドレコメンドとは、個人の嗜好などに合わせてレコメンドを行う方法です。例えば、年齢、性別、住まいなどの個人情報やそれぞれの検索キーワード・閲覧履歴、またそれぞれが設定している嗜好情報などをベースにレコメンドを行います。
パーソナライズドレコメンドと合わせて、他のアルゴリズムと合わせて活用される傾向にあります。最近では、自動車に乗っているユーザーに向けて走行データと人流データを活用してパーソナライズ度された広告を配信する事例もあります。
関連記事:「AIは自動車販売業界をどう変える?カーディーラーでの活用方法・メリット・事例を徹底解説!」
AIレコメンドを利用するメリット
AIレコメンドを導入効果は大きく2つです。
- ユーザーの満足度向上につながる
- アップセルやクロスセルにつながる
ECサイトでは実店舗とは異なり、並べる商品数が大幅に増えます。便利にもなった一方、求めている商品を探すのが困難にもなりました。しかし、レコメンド機能を用いることで探していた商品に出会えたり、実は知らなかった商品を見つけられるきっかけができるようになったりと、結果的に利用者満足度が高まることにつながっています。
関連記事:「AIはEC業界をどう変える?活用方法・メリット・実際の事例を徹底解説!」
また、店舗側やサービス提供側の視点で見ると、追加の商品を購入してくれたり、サービスをより利用してくれたりなど、売上アップやビジネスの成功に繋がります。
オンライン接客システムに強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
AIレコメンドを利用する注意点
一方AIレコメンドは導入してすぐに効果が出るものではありません。大きな注意点としては2点あります。
1点目は時間がかるということです。AI全体に共通することではありますが、AIが正しく認識し、最適な分析を行えるようになるためには、多くのデータを学習する必要があります。
AIレコメンドにおいても同様で、様々なビッグデータを解析し、企業やサービスごとにレコメンド精度を高めるためには、ある程度データ量を集める必要があり、このデータを貯める、という工程において時間を要するケースがある点は注意が必要です。
そのため、もし今後AIによるレコメンド機能の活用を考えているようでしたら、AIを実際に導入する直前にデータについて考え始めるのではなく、予めAIに学習させることを見越して、データの取得を開始しておくとよいでしょう。
2点目として、レコメンドする上で商品数が多いことにより、レコメンドの価値が上がるため、まだ商品が少ない状況であれば投資対効果が十分出ない場合があります。そのため自社の規模や目的などを整理した上で導入を検討しましょう。
レコメンドAIの活用事例についてよくある質問まとめ
- AIレコメンドシステムの導入にはどのくらいの期間が必要ですか?
効果的なAIレコメンドシステムの構築には、通常6か月から1年程度の準備期間が必要です。
- データ収集期間(3-6か月)
- システム開発・調整期間(2-3か月)
- 精度向上のための運用期間(1-3か月)
ただし、既存データの量や質、目標とする精度によって期間は変動します。
- 小規模なECサイトでもAIレコメンドは効果がありますか?
商品数や顧客数が限られている場合、従来型のルールベースのレコメンドシステムの方が効果的な場合があります。
AIレコメンドの導入を検討する際は、月間アクティブユーザー1,000人以上、商品数500点以上を目安としてください。それ以下の規模では、まずはデータ収集と分析基盤の整備から始めることをお勧めします。
AIの導入に関する依頼はAI Marketへ
AIレコメンドシステムは、ビジネスの効率化と顧客満足度の向上に大きな可能性を秘めています。しかし、効果的な導入には、自社のビジネスモデルや顧客特性に合わせた適切な設計と、十分なデータ収集期間が必要です。
また、アルゴリズムの選定や精度向上には専門的な知識が求められます。自社での導入をご検討の際は、AIソリューション開発の実績がある専門企業へのご相談をお勧めします。
適切なパートナー選定により、より効果的なAIレコメンドシステムの構築が可能となるでしょう。
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