データプレパレーションとは?AIにも重要!データ整備のためのETLツールとの違いも解説
最終更新日:2024年09月23日
データ活用が活発化した現代では、、データ収集手段の多様化により、これまで以上に膨大な情報が手に入るようになりました。しかし、このデータの洪水の中で、多くの経営者や企業担当者は、収集したデータを上手く活用できているのか、収集したデータが事業の成長エンジンになっているだろうか、と疑問をぬぐい切れていないのではないでしょうか。
データの可能性を最大限に引き出すためには、ただ集めるだけでは不十分です。データの保管場所が分散していたり、形式が統一されていなかったり、さらには不備が含まれていたりすることで、その価値が大幅に損なわれることがあります。
そこで、この記事では、データの事前準備の手法であるデータプレパレーションに焦点を当てます。
データを収集したものの、うまく活用できていない、準備に時間がかかってしまうと小野闇の方は是非、最後までご覧ください。
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目次
データプレパレーションとは?
データプレパレーションとは、生データを変換・加工してデータ分析やAI開発、機械学習などにデータを活用できる状態にする一連のプロセスです。単にデータを「使える」状態にするだけではなく、それを「価値ある」ものへと変貌させる鍵です。
データ分析の方法をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
データを活用するためには、一定のルールや定型化されている必要があります。しかし、収集したデータは表記ゆれや欠損値、フォーマットのズレなどが存在し、データの変換や加工なしでは使用できません。
例えば、収集した顧客データの中には表記の揺れや不完全な情報が含まれるかもしれません。より具体的な例として、「東京都」と「Tokyo」のような地名の表記ゆれや、郵便番号の全角半角や漢数字の記載スタイルのばらつきが存在するケースです。
これらのデータをそのまま分析やAI開発に用いると、誤った結論に至るリスクが高まります。データプレパレーションを通じて、これらの表記の揺れを統一し、欠損値を補完または除外する作業が不可欠となります。
特に、AIの開発や機械学習では、整備された質の高いデータでなければ、精度を保つことができず、信頼性のないAIになってしまいます。
そこで、データの不備を効率的に処理し、正常にデータを活用できるレベルに引き上げるのが、データプレパレーションなのです。
データクレンジングとの違いは?
データプレパレーションとデータクレンジングは密接に関連していますが、それぞれ以下のように異なる焦点を持っています。
比較ポイント | データプレパレーション | データクレンジング |
---|---|---|
目的 | データを分析やAIモデルのトレーニングなど、特定の用途に適した形に変換・整理 | データセットから誤りや不整合を除去し、データの品質を高める |
代表的な内容 | データの統合、変換(例:カテゴリデータを数値に変換) 構造化(非構造化データを構造化データに変換) | 誤ったデータの修正 重複の削除 欠損値の処理(補完または削除) |
例 | 異なるデータベースからのデータを統合し、一貫した形式に変換することで、データ分析に使用できるようにする | 顧客データベース内の重複したレコードの削除や、住所情報の欠落部分を補う |
データクレンジングはデータの品質を向上させることに焦点を当てています。データプレパレーションは、クレンジングされたデータを分析やモデル開発に適した形に整える広範なプロセスです。
データクレンジングはデータプレパレーションの一部と考えることができますが、それ自体が独立した重要なステップでもあります。
データクレンジングを行う方法をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
なぜ重要?データプレパレーションの必要性とは
なぜデータプレパレーションが重要となってくるのでしょうか?その必要性について以下の点から説明していきます。
- データの事前準備の効率化
- 膨大なデータの処理への対応
- データの質の向上・担保
- 非構造化データの変換
- 持続的な学習と適応
- データの新たな関係の発見
データの事前準備の効率化
様々なBIツールやAIの開発では、データの質がその結果に大きく関わってきます。整理させれたデータを活用することで、本来の目的を達成するツールとなります。
しかし、そのデータの整理にはかなりの手間がかかります。データ整理全体を担当するデータサイエンティストの業務の50~80%はデータ準備であると言われています。そのことからも、データ準備にどれほど時間がかかるのか、また時間をかけてでもデータ整理をしなければならないということがよくわかります。
データプレパレーションは、データ準備を効率的に行うために必要となります。
データサイエンティストの仕事内容をTech Forwardで詳しく説明していますので併せてご覧ください。
膨大なデータの処理への対応
近年、AIやIoT技術、ビッグデータなどによりデータの種類や量が急速に増え続けています。どの企業もデータ活用を重視するようになり、様々な手法でデータを収集を行い、複数のシステムを使い分けながらデータを保管しています。
企業内の各部署が、エクセル、ワード、システムのデータベース、機器から収集したデータなど、それぞれの形式で様々な場所にデータを保管するのが当たり前となってきました。このような膨大で多様なデータを効率的かつ効果的に活用するためにデータプレパレーションが重要視されてきているのです。
ビッグデータとは?どう使う?こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
データの質の向上・担保
収集したデータを整理しないといけないのは、以下のような問題があるからです。
- 表記ゆれがある
- 欠損値がある
- 外れ値がある
- フォーマットがズレている
AI開発やデータ分析で上記のような問題がある場合は、使用してもその精度が低く正確な結果になりません。
非構造化データの変換
データには、構造化データと非構造化データが存在しています。構造化データとは「列」と「行」をもつデータで、システムのデータベースなどにはこの構造化データが用いられています。非構造化データとは、画像や音声、CADなどの形式のデータのことです。
非構造化データをAI開発やデータ分析などで活用する場合には、非構造化データを構造化データに変換することや、AIや分析に必要なデータをすばやく見つけ出すための管理のルール化などが必要となります。これらの問題を解決し、データの質を向上するためにデータプレパレーションが有効になるのです。
持続的な学習と適応
現代のAIシステムは、新しいデータから学習し続ける能力が求められます。データプレパレーションは、新しいデータを既存のデータセットに統合し、AIモデルが継続的に学習して性能を向上させるために不可欠です。
これにより、AIシステムは変化する環境や新しい種類のデータに迅速に適応し、その精度を維持することができます。
データの新たな関係の発見
データプレパレーションにより、データセット内の隠れたパターンや相関関係が明らかになることがあります。これらの新たな発見は、AIモデルの訓練において新しい洞察を提供し、より複雑な問題の解決や予測の精度を高めます。
混同されやすいETLとの違い5ポイント
ETLは、散在するデジタルデータを抽出・収集し、変換・加工して、データウェアハウスのような所定の格納先に配信・送出することです。Extract(引き抜く、抽出)、Transform(変身、変換)、Load(載せる、配信)という単語の頭文字を略した用語です。
散在するデータを集約し、変換し、データウェアハウスに格納するというETLの行為はデータプレパレーションと同じように感じます。
しかし、データプレパレーションとETLでは以下のような違いがあります。
- ターゲットの違い
- 作業目的の違い
- ユースケースの違い
- 必要な知識の違い
- データ構造
ターゲットの違い
データプレパレーションの目的は、データ分析やAI開発に必要なデータを整理・準備することです。主に、開発に直接携わらないビジネス部門の担当者やデータサイエンティストをターゲットとしています。彼らはデータを直感的に理解し、分析やモデル開発に利用するための準備を行います。
一方、ETLは主にシステム開発部門のエンジニアをターゲットとしており、高度なプログラミングやコーディングを自分で行えるユーザーがメインに使用するものです。と言っても、現代の多くのETLツールは直感的な操作が可能で、プログラミングスキルがなくても扱えるよう設計されています。
作業目的の違い
データプレパレーションは、データを分析や機械学習モデルのトレーニングに直接活用するために整えるプロセスです。ここでは、データクレンジング、特徴エンジニアリング(分析に適したデータ特徴の作成)、形式の変更など、データを特定の分析目的に合わせて加工します。データプレパレーションは、データをより深く理解し、洞察を引き出し、精度の高い分析や予測モデルを構築するための前提条件となります。
ETLは、主にデータを統合することに焦点を置いています。ETLの主な目的は、データを一箇所に集約し、整理することです。これにより、データの統一性とアクセスのしやすさが向上し、ビジネスインテリジェンスやレポーティングに適した形でデータを利用できるようになります。
簡単に言えば、ETLはデータを集め、整理し、アクセスしやすくすることに注力し、データプレパレーションはその整理されたデータを具体的な分析やモデリングのためにさらに洗練するプロセスです。
ユースケースの違い
データプレパレーションは、データ分析、予測モデリング、機械学習の開発といったより動的なアプリケーションに用いられます。データプレパレーションのプロセスを通じて、データサイエンティストやアナリストは、より複雑で洗練された分析やモデル開発を行うための基盤を整えることができます。
一方、ETLは、データウェアハウスの構築、ビジネスインテリジェンス(BI)、レポーティングなどの領域で広く活用されます。ETLにより、企業はデータを組織全体で一貫した方法で分析し、意思決定に活用できます。ETLは、データの整合性と信頼性を保ちながら、大規模なデータセットを管理し、利用可能にするのに特に適しています。
総合すると、ETLはデータの統合と一貫性に重点を置き、データプレパレーションはデータを分析やモデリングに向けてより具体的に加工することに焦点を当てています。
ツール活用のための前提知識の違い
多くのデータプレパレーションツールは、主にビジネス部門のユーザーが利用することを想定して設計されています。これらのツールは多くの場合、ノーコードまたはローコードのアプローチを採用し、マウスクリックや直感的なインターフェースを通じて操作できます。
このため、IT専門知識がないユーザーでも、容易にデータ分析を行うことが可能です。
ETLプロセスは伝統的にはエンジニアやデータベース管理者が使用するものですが、最近のトレンドとして、ローコードやノーコードのETLツールが増えています。
これにより、SQLやデータベースの基本的な知識を持つユーザーでも、ETLプロセスを容易に実行できるようになっています。ただし、より複雑なデータ操作やカスタムのデータ処理ロジックを実装する場合は、引き続き専門的なコーディングスキルが必要になることがあります。
取り扱うデータ構造の違い
データプレパレーションは、構造化データだけでなく非構造化データの扱いも可能です。これには、ソーシャルメディアの投稿、電子メール、ビデオやオーディオファイルなどが含まれます。
ビジネス部門の担当者が使うことを想定しており、データ構造について詳しくないユーザーでもデータを整理・分析できるツールが多くあります。ただし、非構造化データを扱う際には、それを適切に構造化するための追加のステップが必要になることがあります。
ETLプロセスは主に構造化データの取り扱いに特化しています。これには、データベース、CRMシステム、ERPシステムなどからのデータが含まれます。最新のETLツールでは非構造化データの取り扱い能力も向上していますが、ETLの主要な用途は構造化データの処理に重点が置かれています。
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代表的なデータプレパレーションの方法
データプレパレーションでは、専用のデータプレパレーションツールのほかに、一般オフィスで使用されるExcelなど汎用アプリも使用されます、ここでは、各ツールの特徴を説明します。
Excelの活用
Excelを活用したデータ加工は多くの会社で行われています。どんな企業でも日常的に使用されるツールであり、ビジネス部門でも使い慣れているため、データプレパレーションをすぐにでも始めることができます。
Excel・CSV出力に対応しているシステムも多いため、散在したデータを収集しやすく、その後の整理・加工も行いやすいメリットもあります。
しかし、基本的にはすべて手作業であり、複雑な加工が行えない、データの整理に時間がかかる、担当者によって手法や形式がそろわないなどのデメリットもあります。
ETLツールの活用
ETLツールを導入することでもデータプレパレーションを行うことができます。散在するデータを収集し、加工、データの送出を行うということはデータプレパレーションと同様の行為であるため、ETLツールをデータプレパレーションで使用することも可能です。
ETLツールを活用することで、ツールを使ってデータベースやクラウド間のフロー開発を行い、ツール内でデータを整理・加工を行うため作業が効率的で、送出するデータの統一性もあるというメリットがあります。
一方で、選択するツールによってITスキルが必要になる場合もあり、知識のない状態でツールを使用することで、かえって手間や時間がかかってしまう可能性もあります。
データプレパレーションツールの活用
データプレパレーションを行うための専用のツールも多数存在しており、これらのツールを活用することでデータプレパレーションを効率的に行うことができます。
ExcelでのデータプレパレーションやETLツールを代用したデータプレパレーションは、手作業で行うことやプログラムによるシステム間の連携など、人の手による作業時間が長くなってしまう問題があります。
しかし、データプレパレーションツールを活用すれば、プログラムの知識がなくとも操作でき、手作業でデータを整理・加工する必要がないため、素早く正確にデータプレパレーションを行うことができます。
さらに、機械学習のアルゴリズムを組み込んだデータプレパレーションツールも存在しており、このようなツールであれば、AIがデータ加工作業を支援し、分析に適したデータをより効率的に整理・加工することが可能となります。
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データプレパレーションの活用例
実際にデータプレパレーションはどのようなことに活用できるのでしょうか?以下の観点から説明していきます。
- 顧客分析
- 生産性向上のためのデータ分析
- AI開発
顧客分析
企業のマーケティング施策のためには、データプレパレーションによる顧客データの分析が不可欠です。顧客データとは主に以下のようなデータです。
- 顧客名や住所、業種などの基本データ
- 顧客別の売上データ
- 顧客ごとの商品別売上履歴データ
- 顧客別の注文方法や媒体の履歴データ
- 顧客別アンケート調査データ
- 営業やコールセンターでの対応履歴データ
これらのデータは、顧客管理システムだけでなく、社内情報共有のツールやエクセル、メールソフトなど様々な形で保存してあります。顧客分析においては、こうしたデータを単独で分析するだけでなく、複合的に組み合わせて分析することが求められますが、散在するデータを整理するだけでもかなりの手間がかかります。
このような場合に、データプレパレーションを行うことで、データを集約し、整理・加工し、目的に応じた分析に必要なデータを準備することができます。
企業のマーケティング施策のための顧客分析を行うにはデータプレパレーションは必要不可欠なプロセスです。
生産性向上のためのデータ分析
社内には生産性を向上させるための様々なデータがあり、これらを活用して現状分析や改善活動を行って生産性を向上させることも多くあります。例えば、以下のようなデータがあります。
- IoTツールで収集した生データ
- 従業員別の勤務データ
- 作業時間データ
- 動画
これらを分析することで現状を把握し、生産性向上のための施策を考えることができます。しかし、このようなデータは、それぞれ異なる機器やアプリケーションに保存されており、データ形式も様々であるため、データの収集や整理が煩雑になります。
データプレパレーションは、ツールを活用することで、異なる機器やアプリケーション、クラウドシステムなどにも対応しており、様々なデータ形式でもデータ整理や加工を行うことが可能となります。生産性を向上させるための現状分析を行い、どこに問題があるかを把握するツールとして、データプレパレーションは非常に有効です。
AIの開発
データプレパレーションによる生データの整理やクリーニング、変換といった前処理は、AI モデルの開発における基本的なステップです。AIが学習するために準備するデータセットによってAIモデルの性能が大きく変わります。
また、AIの精度を向上するために常に学習をさせるには、既存のデータセットに合わせたデータを学習させることも重要になってくるでしょう。
データプレパレーションにより整理されたデータを準備することで、データ内の新たな関係を明らかすることができ、より正確な分析・予測ができるAIを開発することができるようになります。
データプレパレーションについてよくある質問まとめ
- データプレパレーションとは?
データプレパレーションとは、生データを変換・加工してデータ分析やAI開発、機械学習などにデータを活用できる状態にする一連のプロセスです。単にデータを「使える」状態にするだけではなく、それを「価値ある」ものへと変貌させる鍵です。
- データプレパレーションとデータクレンジングの違いは?
データクレンジングはデータの品質を向上させることに焦点を当てています。
データプレパレーションは、クレンジングされたデータを分析やモデル開発に適した形に整える広範なプロセスです。データクレンジングはデータプレパレーションの一部と考えることができますが、それ自体が独立した重要なステップでもあります。
- データプレパレーションとETLの違いは?
ETLは、散在するデジタルデータを抽出・収集し、変換・加工して、データウェアハウスのような所定の格納先に配信・送出することです。Extract(引き抜く、抽出)、Transform(変身、変換)、Load(載せる、配信)という単語の頭文字を略した用語です。データプレパレーションとETLでは以下のような違いがあります。
- ターゲットの違い
- 作業目的の違い
- ユースケースの違い
- 必要な知識の違い
- 取り扱うデータ構造
まとめ
データプレパレーションは、AI開発やデータ分析・活用において、期待した効果を得るために非常に重要な工程です。
取り掛かり易い手法としてExcelを活用することがあげられますが、全て手作業であり、手間がかかります。データプレパレーションと同様の整備を行うETLツールを活用することもできますが、プログラミング等の専門知識が必要となってきます。
そこで、データプレパレーションの専用のツールを活用することで、データ分析を行いたいビジネス部門でも、データの整理・加工を容易に行うことができるようになります。また、データプレパレーションツールにはAIを搭載しているツールもあり、これらのツールで自動化することで、より効率的かつ正確にデータ整理が行えるようになるでしょう。
整理した正確なデータを、AIの開発やデータを活用した経営、マーケティング施策に役立てることで、生産性の向上やマーケットの拡大、新サービスの開発などに繋がります。
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