人事分野でのAI活用事例10選!業務効率化・公平な人事評価活用を解説【2024最新版】
最終更新日:2024年10月07日
人事は企業・組織の中で、個人の身分や地位の決定に関わる事柄を指します。多くの企業や官公庁などの組織には、人事部や人事に関わる専門の部署があります。
人事部が行う業務は実にさまざまで、採用、配置・異動、評価、教育・キャリア開発、人事制度策定・運用、労務勤怠管理、社会保険・福利厚生など幅広い分野があります。人事情報は膨大なために管理が難しく、業務効率化が課題となっていました。また人の経験や勘に頼ってしまう属人化が起こりやすいことも課題でした。
そこで、AI(人工知能)やビッグデータ解析といった最新技術を、人事や採用に活用する動きが広まっています。AIにとって代わってなくなる仕事も多いと言われていますが、人事の業務はすべてをAIに任せることはまだ難しいでしょう。
本記事では、具体的にAIを活用することによりどのようなメリットがあるのか、またサービスの概要、企業が導入している事例をご紹介します。
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目次
- 1 AIを活用した具体的な方法やメリット
- 2 人事業界でのAI活用事例やAIサービス10選
- 2.1 新卒採用選考での動画面接の評価にAIシステムを導入
- 2.2 ホクト株式会社人事部が「AIチャットボット hitTO(ヒット)」を導入
- 2.3 なかやま牧場による人事評価クラウド「あしたのクラウド」の導入
- 2.4 株式会社松屋フーズホールディングスが店長昇格試験に「SHaiN」を導入
- 2.5 防衛省が人事評価や異動にAIシステムを導入
- 2.6 明治安田生命が人事異動にAI技術を導入
- 2.7 オンライン上でインターンシップが体験できるセプテーニHDの「オンライン・インターンシップ」
- 2.8 人事管理データをAIによる分析可能な「NEC HR Tech クラウド」
- 2.9 AIによるオンボーディングシステム「HaKaSe Onboard」
- 2.10 日立ソリューションズの人事ソリューション「リシテア」のAIによる分析システム
- 3 人事分野でのAI活用についてよくある質問まとめ
- 4 まとめ
AIを活用した具体的な方法やメリット
人事業務にAIを使うとどのようなメリットがあるでしょうか?具体的に活用できる場面や方法を見ていきましょう。
モチベーション管理
社員のモチベーションの低下を防ぎ、離職リスクを事前に察知し、対策を早めの段階で講じることも可能となります。客観的なデータを分析することによって、気づかなかった面を可視化することができるようになります。
客観的なデータによる公平な評価や評価項目の多角化
社員の客観的で公平な評価を、さまざまなデータを大量に集めて分析することによって、評価項目を多角化できます。その評価を昇給や昇格の判断基準にしたり、適切な部署への配置に活用したりということが可能となります。
関連記事:「AIによる人事評価システムとは?導入企業が受けているメリット・デメリット・成功のポイントを徹底解説」
採用工程での業務効率化や精度向上
採用工程で人事担当者は労力がかかる業務が多く、効率化が必要でした。履歴書やエントリーシートをAI-OCRによって読み取ってデータ化することや、書類選考をAIが読み取って評価までを行うサービスも開発されています。
一方で、AIが下す人事評価の根拠がわかりにくく「ブラックボックス化」しやすい点は、デメリットにもなるので注意が必要です。
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人事業界でのAI活用事例やAIサービス10選
人事で実際に活用されているAIのサービスや事例を10例ほど厳選してご紹介します。
新卒採用選考での動画面接の評価にAIシステムを導入
通信サービス大手のソフトバンク株式会社は、AI開発を手掛ける株式会社エクサウィザーズと共同でAIシステムを開発しました。これは、新卒採用の選考で応募者を客観的に公平な観点で評価することを目的として、動画面接の評価ができるAIシステムです。
ソフトバンクの新卒採用選考では、応募者の選考会場への移動時間や費用の軽減のため、グループディスカッションや集団での面接を廃止して、動画面接へ移行していきました。以前より実施していたインターンシップ選考での動画面接のデータと、熟練の採用担当者による評価を、エクサウィザーズが開発した動画解析モデルによって学習させ、新たに提出された動画面接の評価を自動で算出させることを可能にしたということです。
これまでと比べて動画面接の選考の作業にかかる時間を約70%削減できると見込んでいます。
ホクト株式会社人事部が「AIチャットボット hitTO(ヒット)」を導入
AIチャットボットの開発を手掛ける株式会社ジェナの「AIチャットボットhitTO(ヒット)」を、きのこの生産・販売を行うホクト株式会社の人事部で導入しました。
人事部では、従業員から寄せられる問い合わせ対応、働き方改革や新しい制度の導入や変更に伴う対応、などに追われることが多く戦略的業務に集中ができないという課題がありました。hitTOの導入により、「24時間365日気軽に質問できる環境整備による生産性の向上」、「リモートワークなどの新しい働き方への問い合わせ環境の整備」、「人事業務ナレッジを体系化し属人化の解消」を目指しています。
従業員の頭の中のノウハウや知識を体系化して、ライフサイクルの変化に対応できる強い組織づくりに貢献できるでしょう。
なかやま牧場による人事評価クラウド「あしたのクラウド」の導入
肉牛の肥育・食肉加工・総合食品スーパーを手掛ける株式会社なかやま牧場は、人事評価ツールを提供する株式会社あしたのチームの「あしたのクラウド」を導入しました。
なかやま牧場では、適切な評価制度を構築すること、企業理念の浸透を図ることが課題でした。あしたのクラウドの導入で、個人個人の頑張りを可視化でき、結果の評価だけでなく、目標に対して個人がどのように頑張ったかという点も含めて、公平にチャンスを与えて評価できます。
また、人事評価制度の運用で、期日管理・回収・配布などの作業をする際に、表計算ソフトや紙だと非常に工数がかかってしまうものが、一気通貫で管理できることも高評価の点だということです。
人事評価制度や業務知識の定着化、早期離職の防止にもつなげることができたということです。
株式会社松屋フーズホールディングスが店長昇格試験に「SHaiN」を導入
採用コンサルティングを手掛ける株式会社タレントアンドアセスメントが開発した「SHaiN」を株式会社松屋フーズホールディングスが導入しました。SHaiNは、時間や場所を選ばずにできる対話型のAIの面接サービスです。300通りの中からAIが評価に必要な質問を投げかけヒアリングし、結果を分析して評価レポートを作成します。
松屋フーズでは店長昇格試験にSHaiNを導入しました。店長昇格試験の課題として、評価基準が異なってしまい、全体的に納得感、統一感が得られにくいことがありました。
導入後は、同じ基準で評価を可視化でき、人事部の負担軽減にも繋がりました。
結果として、「面接評価のバラツキをなくす、面接のエビデンスが残る、フィードバックが的確、人事業務の効率化向上」といったメリットが得られたということです。
防衛省が人事評価や異動にAIシステムを導入
引用:PR TIMES「ACESが陸上自衛隊にAI技術活用についての助言を行うことで合意」より
防衛省は人事評価や人事異動に関して、AIを使ったシステムを導入していくという方針を示しました。すべてをAIが評価するのではなく、あくまで補助という形で、最終的な判断は人間が行うことにしており、システムの対象として自衛官全体の6分の1にあたる約4万人の幹部自衛官を対象とするとのことです。
この防衛省での人事に関するAI活用の一つとして、AIスタートアップの株式会社ACESが技術活用の助言を陸上自衛隊に行うと合意した事例があります。
ACESはディープラーニングの画像処理を主に手掛けており、自衛官の健康向上、人事評価など、組織や働き方について全体のパフォーマンスを高めるためのサポートを行うということです。
明治安田生命が人事異動にAI技術を導入
生命保険大手の明治安田生命保険は、2024年度を目処に内勤の社員およそ1万人ほどを対象に、人事異動にAI技術を導入する方針を示しました。社員の個々の適性、能力をAIが分析し、最適な人員配置や構成を進め、生産性が高い組織を目指します。
それに先立ち、人事情報を網羅して一元化したシステムの運用を開始し、このシステムに電通国際情報サービスの「POSITIVE」のタレントマネジメント機能を導入しました。個人のキャリア、研修履歴、評価、保有資格などのあらゆる人材情報が一元管理でき、必要な能力や資格を入力することで適任者を見つけることも可能です。
将来的に蓄積したデータとAIを掛け合わせて、適切な教育、人材配置を客観的に行う仕組みを作ることを考えていくということです。AIから受けた提案を考慮して、最終的に人事担当者が異動を決めるということを予定しています。
オンライン上でインターンシップが体験できるセプテーニHDの「オンライン・インターンシップ」
AIによる人材育成に強みがある株式会社セプテーニ・ホールディングスは、自社が展開する就職活動やキャリア支援サービス総称「COGRESS」の一サービスとして、「オンライン・インターシップ」を提供しています。
オンライン・インターンシップは、一般的なインターンシップに関するコンテンツをオンライン上で場所や時間を選ばず、いつでもどこでも体験できるサービスです。特に学業が忙しくて時間がとれない、地方在住で大都市になかなか行くことができない学生にとっては大きなメリットとなるでしょう。
人事管理データをAIによる分析可能な「NEC HR Tech クラウド」
システム開発を手掛けるNECソリューションイノベータ株式会社は、「NEC HR Tech クラウド」を開発しています。
従来は人の手で行っていた人事管理のデータ分析を、AIを活用することにより人事業務の効率化を支援します。AIにモデル社員の人事管理データを学習させて、導入企業ごとの特徴を反映した学習モデルを作成します。その後、対象社員の人事管理データと学習モデルとを分析することによって、業務適性などを数値化することができます。人事関連業務の遂行での判断材料の支援をします。
AIによるオンボーディングシステム「HaKaSe Onboard」
ヒューマンリソースのテクノロジー事業を手掛ける株式会社人的資産研究所は、オンボーディングサービス「HaKaSe Onboard」の提供を開始しました。オンボーディングとは、新入社員がいち早く会社やチームに適応し、自分の強みを生かして早期戦力化できるようにするための取り組みです。
人的資産研究所では、人事領域を大きく「採用・適応・育成」の3段階に分類し、HaKaSe Onboardは中間の「適応」領域の支援をします。昨今では、働き方改革や価値観の多様化、またテレワークの普及に伴って、組織適応の難しさが課題となっています。
サービスには、育ちやすい職場を見つける「相性分析」、根拠に基づく育成方針「適応プラン」、評判と課題を可視化する「ピアレビュー」、そして一連のデータを学習して自動で制度を改善する機能を備えています。
実際に人的資産研究所において導入した結果、新入社員の早期戦力化が2倍に向上したということです。
日立ソリューションズの人事ソリューション「リシテア」のAIによる分析システム
ソフトウェア・情報処理機器の開発や販売を手掛ける株式会社日立ソリューションズは、人事総合ソリューション「リシテア」を開発しています。
リシテアのサービス「リシテア / AI分析」は、社員の属性情報や勤怠のデータを学習させます。その後、過去の勤怠データを読み込ませることで、ストレスケア候補者を含む組織を検出して、早期ケアできるようにします。ストレス状態を可視化することで、離職リスクの軽減や、心身の不調による休職者が発生することの抑止を支援することができます。
人事分野でのAI活用についてよくある質問まとめ
- 人事分野でのAI活用にはどのようなメリットがありますか?
人事分野でのAI活用の主なメリットは以下の通りです。
- 社員のモチベーション管理と離職リスクの早期察知
- 客観的データに基づく公平な評価と多角的な評価項目の設定
- 採用工程での業務効率化と選考精度の向上
- 人事業務の属人化解消と戦略的業務への集中
- 人事評価にAIを導入している企業の具体的な事例はありますか?
はい、以下のような事例があります。
- ソフトバンク: 新卒採用の動画面接評価にAIシステムを導入
- なかやま牧場: 「あしたのクラウド」を導入し、個人の頑張りを可視化
- 松屋フーズホールディングス: 店長昇格試験に「SHaiN」を導入し、評価の統一性を向上
- 防衛省: 幹部自衛官約4万人を対象にAIを活用した人事評価システムを導入予定
- 採用プロセスにAIを導入するとどのような効果が期待できますか?
採用プロセスにAIを導入すると以下の効果が期待できます。
- 書類選考の効率化(AI-OCRによるデータ化)
- 面接評価の客観性向上
- 候補者の適性をより正確に判断
- 採用担当者の業務負担軽減
- 採用プロセス全体の時間短縮
まとめ
人事業務におけるAI活用のメリットや実際のサービス、活用事例を10例ご紹介しました。
人事業務はあまりIT化が進められず、効率化や属人化が特に課題となっていました。技術進歩に伴うデータ処理の向上によって大量のデータを扱えるようになった結果、客観的な採用基準や人事評価ができるようになりました。
優秀な人材確保や、在籍従業員の満足度を高めるような仕事環境の提供のためにも、人事のAI活用は今後も進められていくでしょう。
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