生成AIの仕組みは?使われるモデル・得意・不得意タスク・活用注意点を徹底解説!
最終更新日:2024年09月23日
生成AIは、機械学習とディープラーニングを活用して、これまでにないレベルの高品質なコンテンツを自動生成する革新的な技術です。生成AIの仕組みを理解し、その得意分野と不得意分野を把握することで、生成AIの可能性を最大限に引き出し、ビジネスや創作活動に活かすことができます。
この記事では、
生成AIとは?代表的なツールは?こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
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目次
生成AIの仕組みは?
生成AIは、トレーニング、チューニング、生成・評価の3つのフェーズを経て、高品質なコンテンツを生成します。
トレーニング
まず、「トレーニング」と呼ばれる段階では、AIに大量のデータを与えて学習させます。例えば、テキストを生成するAIには、大量の文章データを読み込ませ、文章の構造やパターンを学習させます。この段階では、AIは与えられたデータから、コンテンツ生成に必要な知識を蓄えていきます。
生成AIは、トレーニング、チューニング、生成・評価・再調整の3つのフェーズを経て、高品質なコンテンツを生成します。まず、トレーニングフェーズでは、LLM(大規模言語モデル)や画像生成、動画生成、音声・音楽生成用の基盤モデルなど、複数の生成AIアプリケーションの基盤となるディープラーニング・モデルを作成します。
チューニング
次に、「チューニング」の段階では、AIを特定のタスクに適応させるために、基盤モデルを特定のコンテンツ生成タスクに合わせて調整します。例えば、ニュース記事を書くAIには、ニュース記事のデータを追加で学習させることで、より自然でリアルなニュース記事を生成できるようになります。
ファイン・チューニングでは、アプリケーション固有のラベル付きデータをモデルに入力します。人間のフィードバックからの強化学習(RLHF)では、生成コンテンツに対する人間の評価を用いてモデルを更新します。
生成・評価
最後の「生成」の段階で、AIは学習したデータをもとに、新しいコンテンツを生み出します。生成されたコンテンツは、人間が評価し、フィードバックを与えることで、AIはさらに学習し、品質を向上させていきます。
検索拡張生成(RAG)という基盤モデルを拡張するフレームワークを用いて、追加ソースを用いてモデルを補足・改良することもあります。
生成AIに用いられる生成モデルは?
生成AIは、機械学習(ML)・ディープラーニングを用いて、人間が作成したコンテンツのデータセットからパターンと関係性を学習します。その後、学習したパターンを基に新しいコンテンツを生成します。
一般的には教師あり学習が用いられ、人間が作成したコンテンツとそれに対応するラベルがモデルに供給されます。よく用いられる生成モデルは以下です。
VAE(変分オートエンコーダ)
VAEは、ディープラーニングを活用した画像生成モデルで、特定の傾向を持つ作品を学習し、その作風に近い新しいコンテンツを生成します。VAEは特に、複雑な工業製品の異常検知などにも利用されています。
VAEの生成プロセスは以下です。
- 学習用データをAIに供給
- AIがデータから特徴を学習
- 学習した特徴から新しいコンテンツを生成
- 生成したコンテンツをユーザーに提供
Stable Diffusionでの画像生成などでも利用されています。
GAN(Generative Adversarial Networks)
GANは、GeneratorとDiscriminatorという2つのネットワークを用いて、高解像度の新しい画像を生成します。特に入力画像を異なる画像に変換するi2i(Image to Image)で活用されます。
GANの生成プロセスは以下です。
- ランダムなノイズからGeneratorを生成
- 学習用の正しいデータ(Discriminator)を用意
- GeneratorとDiscriminatorを比較し、精度を高める
- 高精度な画像を出力
GANの詳しい仕組みをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
拡散(Diffusion)モデル
拡散モデルは、GANの進化形とも言えるモデルで、高解像度な画像生成が可能です。
拡散モデルの生成プロセスは以下です。
- 学習用の画像にノイズを付加
- ノイズを除去し、元の画像を復元
- 上記プロセスを繰り返し、高精度な画像を生成
これまで、画像生成にはGANが用いられることが主流でしたが、拡散モデルの登場により、現在はより精度の高い画像を生成することが可能な拡散モデルが主流となっています。
Diffusion model(拡散モデル)とは?実際の利用シーンは?こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
GPT
GPT(GPT-3やGPT-4)は、OpenAIが開発したLLM(大規模言語モデル)です。特にGPT-4は、GPT-3を大きく凌駕する性能を持ち、非常に高精度なテキスト生成が可能です。
GPTとは、Generative Pre-trained Transformerの略で、生成領域で利用される事前学習されたトランスフォーマー、という意味になります。トランスフォーマー(Transformer)モデルは、2017年にGoogleが発表したディープラーニングモデルで、多くのLLMの基盤となっています。
GPT-3とGPT-4の生成プロセス
- ユーザーが質問を入力
- AIが質問内容を解析し、最適な回答を生成
- 回答をユーザーに提供
仕組みからわかる生成AIが得意なタスク
生成AIがコンテンツ生成を得意とするのは、トレーニングフェーズで大量のデータから学習し、そのパターンを認識できるためです。つまり、過去のデータに基づいて、似たような新しいコンテンツを生成することが得意なのです。一方で、過去のデータにない全く新しいコンセプトを生み出すことは苦手です。
生成AIが得意とする具体的なタスクは以下の通りです。
- フィクションの世界創造:大量の小説データを学習することで、新しい物語や設定を生成できます。
- 自動ブレインストーミング:特定のテーマに関するアイデアを大量に生成できます。
- 自動プログラミング:プログラミングのパターンを学習することで、指定された機能を持つコードを自動生成できます。
- メールやレポートの自動生成:過去のメールやレポートのデータを学習することで、状況に応じた適切な文面を生成できます。
- 自動要約:長い文章を学習することで、その要点をまとめた要約文を生成できます。
生成AIは学習したデータの範囲内で、常に新しいコンテンツを生成できるため、人間の創造性を刺激し、新しいアイデアの発見にも貢献できます。生成AIはチューニングフェーズで、特定のタスクに特化した調整を行います。これにより、そのタスクに関連する分野では高い性能を発揮できるようになります。
仕組みからわかる生成AIが不得意なこと
生成AIは人間の能力や感性に関連する領域では、まだ十分な性能を発揮できていません。これは、感情や主観性、曖昧性など、数値化や明確な定義が難しい概念を扱うことが苦手なためです。
生成AIが苦手とする具体的な分野は以下の通りです。
- 芸術作品等の主観的評価:美しさや感動など、主観的な価値判断が必要な領域では、人間の感性に及びません。
- 五感の活用:におい、味、触感など、五感から得られる情報を直接処理することができません。
- 独創性のある生成:学習したデータの範囲を大きく超えた、全く新しいコンセプトを生み出すことは困難です。
- 長期記憶:人間のように過去の経験を長期的に記憶し、それを基に推論することは苦手です。
- 曖昧な物事の理解:文脈に応じて解釈が変化するようなニュアンスを理解することが難しいです。
生成AIは感情の理解・表現、創造性・直感、倫理的・道徳的な意思決定などの能力も持ち合わせていません。これらの能力は、人間の脳が長い進化の過程で獲得してきたものであり、現在のAI技術では再現が難しいと考えられています。また、チューニングを行っていない分野では、十分な性能が出せない可能性があります。
さらに、芸術作品の評価など、主観的な判断が必要な領域では、明確なフィードバックを与えることが難しく、モデルの改善が進みにくい可能性があります。
ただし、生成AIの研究は日進月歩で進んでおり、その能力は着実に向上しています。生成AIと人間が協力することで、これまでにない新しい表現が生み出される可能性があります。
生成AIの注意点
生成AIは多くの利点を持つ一方で、いくつか問題点も伴います。
関連記事:「生成AIガイドラインとは?必ず記載すべき項目は?重要性・作成方法を徹底解説!」
ハルシネーション
ChatGPTやGeminiのような、LLM(大規模言語モデル)を利用した対話型AIで起きる問題です。
ハルシネーションとは、AIがもっともらしく嘘をつくという問題で、事実とは異なる回答をあたかも本当のように生成する問題です。LLMは膨大な学習データを元に最も次に続く言葉として適切である確率が高いと算出された言葉を予測して生成しているため、学習データに誤りがあったりすることが原因で、結果的に嘘をついてしまうということが起きます。
このため、LLMを提供する各社は、生成した文章の根拠となった文献やWebサイト等を併記することで、嘘かどうかを人が判断できるような対策を取っていますが、今後もさらなる対策が行われると想定されます。
ユーザー側としても、生成AIがハルシネーションを起こしにくい入力方法の工夫も必要です。Chain-of-Thoughtプロンプティングと言った、思考のプロセスが見える化されるプロンプティングが求められます。
再現性が難しく品質が安定しない
生成AIには、再現性の難しさや品質の安定性に関する問題があります。生成のプロセスにはランダム性が含まれているため、特定のプロンプトに対して正確な再現は困難です。
画像生成のために大量のデータを学習する生成AIは、どのような決定を下すのか理解が難しい場合があります。また、同じプロンプトを使用しても出力される画像は少しずつ異なることがあり、これは再現性の問題をより深刻なものにしています。
ディープフェイクなどの倫理的な問題
ディープフェイクは、AIを用いて現実の人物の顔や声を模倣して動画や音声に組み込む手法です。このディープフェイクの技術が倫理的な問題を引き起こしています。フェイクニュースや誤った情報が拡散され、人々を欺く事態が発生し、社会的な混乱や不安を引き起こす可能性があります。
こちらでディープフェイクとは?何が問題となっているか?ビジネスでの利用事例はあるか?などの疑問の答えを詳しく説明しています。
関連記事:「アマナイメージズが画像生成AIの安心・安全な活用に向けて日本画像生成AIコンソーシアムを設立」
プライバシー保護や著作権の問題
生成AIによる生成画像には、プライバシー保護や著作権の問題が関わる場合があります。生成画像が他人のプライバシーや著作権を侵害しないように注意が必要です。
不適切な画像を使用しないようにするためには、どのような学習データを用いて構築された生成AIなのかを把握したり、生成された生成画像が著作権を侵害する可能性のある画像かどうかをチェックするなどの注意が必要です。
関連記事:「生成AI活用普及協会がAuthense法律事務所と顧問契約を締結し「生成AIパスポート」監修などを委託へ」
生成AIの仕組みについてよくある質問まとめ
- 生成AIのトレーニングフェーズでは何が行われますか?
トレーニングフェーズでは、生成AIに大量のデータを与えて学習させます。例えば、テキストを生成するAIには大量の文章データを読み込ませ、文章の構造やパターンを学習させます。この段階で、AIはコンテンツ生成に必要な知識を蓄えていきます。
- ファイン・チューニングとはどのような作業ですか?
ファイン・チューニングは、生成AIを特定のタスクに適応させるために行われる調整作業です。アプリケーション固有のラベル付きデータをモデルに入力することで、そのタスクに特化した性能を引き出します。例えば、ニュース記事を書くAIには、ニュース記事のデータを追加で学習させることで、より自然で高品質なニュース記事を生成できるようになります。
- 生成AIの再現性が低い理由は何ですか?
生成AIの再現性が低い理由は、生成のプロセスにランダム性が含まれているためです。同じプロンプトを使用しても、出力されるコンテンツが少しずつ異なることがあります。この問題は、特に画像生成のために大量のデータを学習する生成AIにおいて顕著です。AIがどのような判断基準で生成を行っているのか、理解が難しいケースもあります。
まとめ
生成AIは、トレーニング、チューニング、生成・評価・再調整の3つのフェーズを経て、様々なタイプの高品質コンテンツを自動生成する革新的な技術です。VAE、GAN、拡散モデル、GPTなどの生成モデルを用いて新しいコンテンツを生み出します。
一方で、芸術作品の主観的評価、感情の理解・表現、倫理的判断など、人間の能力や感性に関わる領域では、まだ課題が残されています。また、ハルシネーション、再現性の低さ、プライバシー侵害や著作権侵害のリスクなどの問題点もあります。生成AIの可能性を追求しつつ、これらの課題に真摯に向き合い、倫理的な配慮を怠らないことが重要です。
生成AIの仕組みを理解し、長所を活かし、短所を補いながら、生成AIと人間が協力し合うことで、これまでにない新しい価値が生み出されるでしょう。
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