Cohereとは?Command R+が大企業に選ばれる理由・導入事例を徹底紹介!
最終更新日:2024年12月25日
Cohereは、企業向けに生成AIツールの導入を推奨しているカナダのスタートアップ企業です。ChatGPTを開発したOpenAIに匹敵する生成AI(ジェネレーティブAI)企業として注目を集めています。
生成AI分野の中でも特にLLMの先駆者として、NVIDIAやオラクルといった世界的な企業からの支援を受けています。日本においては富士通がパートナーシップを結び、日本企業向けに生成AIの提供を目指していることから、国内でもその注目度が急上昇しています。
本記事では、Cohereの企業概要と提供しているサービス一覧を紹介します。サービスについては、メリットから始め方、ビジネスでの具体的な応用例に至るまで網羅的に解説します。
Cohereが提供するツールとその活用方法を深く理解できる内容となっていますので、生成AIの活用を検討している企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
LLMとは何か、仕組みと活用事例についてはこちらで詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは
ChatGPT/LLM導入・カスタマイズに強いAI開発会社を自力で選びたい方はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
Cohere(コーヒア)とは?
Cohere( Cohere Inc.:コーヒア)は、Google社のAI研究部門「Google Brain」で活躍していたメンバーが始めたAIスタートアップ企業です。Aidan Gomez CEOは、Transformerの開発に貢献した研究者が、2019年にカナダ・トロントで設立しました。
企業が生成AIを利用するための安全かつ柔軟な環境提供を目指し、主に企業向けのLLM(大規模言語モデル)を手掛けています。データのプライバシーとセキュリティを最優先に考慮したAIソリューションの提供により、多くの企業から信頼を得ています。
また、ChatGPTを開発したOpenAI社やClaudeを提供するAnthropic社などと並ぶ、主要な生成AI企業としても注目されており、これまでにOracle社やNVIDIA社などから総額20億ドルの資金調達を行っています。
大企業の生成AI導入支援実績が豊富
Cohereは大企業との連携を重視しており、Oracle社、富士通株式会社などとの提携を進めており、2024年7月には富士通株式会社と戦略的パートナーシップを締結し、CohereのLLMをベースに日本語対応を強化したモデル「Takane(高嶺)」を共同開発しました。2024年9月30日からグローバル市場に提供を開始し、日本においても幅広く注目を集めています。
金融、官公庁、R&Dなど高いセキュリティが必要な顧客向けにプライベート環境で利用可能なサービスとして展開しています。
また、Oracle社はCohereの技術を活用し、法人顧客に生成AIを提供しています。Oracle社はCohereに投資も行っています。
Oracle社は、Cohereの生成AI技術をOracle製品の多くに組み込み、CohereはOracle社のクラウドを利用してAIモデルの学習、構築、展開を実施しています。
Cohereの始め方
Cohereは、以下の手順に沿って簡単に始められます。
- 公式サイトへアクセス
- Googleアカウント、もしくはGitHubアカウントで登録
- 専用フォームにて職業や利用目的、名前を登録
- 利用開始
上記の手順に沿って登録が完了すると、Cohereのダッシュボードが表示されます。ここから各種サービスの利用を開始できます。
例えば、ダッシュボード内の「Coral」や「Try Command R+」をクリックすることで、Cohereのチャットツールや最新モデルを試せます。
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Cohereの提供AIモデル・サービス一覧
Cohereは、ビジネスでの利用を前提として開発された生成AIツールを開発しています。Cohereのツールでは、生成AIとのチャット機能・RAG(検索拡張生成)・ラベリング(Classify)・埋め込み(Embed)などのサービスを提供しています。
以下では、Cohereが提供する4つのサービスの特徴を紹介します。
Command R
CohereのCommand Rは、長いコンテキストを必要とするタスク向けに最適化されたLLMであり、特に以下のユースケースに対応しています。
- RAG(検索拡張生成):RAGアプリケーションでの利用に特化し、外部データやAPIとの連携を容易にする
- 外部APIやツールとの統合:エンタープライズ用途において、クラス最高の統合を実現
- EmbedモデルおよびRerankモデルとの連携:埋め込みやランキングモデルとシームレスに連携し、効率的な情報検索と処理をサポート
128,000トークンのコンテキストウィンドウをサポートし、推論、要約、質問応答などの多様なタスクに最適化されています。単一ステップおよび複数ステップのツール使用をサポートし、APIや計算機などの外部ツールと連携して複雑なタスクを実行可能です。
特に企業向けの検索や情報整理タスクにおいて、優れたパフォーマンスを発揮するよう設計されており、大規模データの管理が求められるエンタープライズユースケースでその強みを発揮します。
Command R+
Command R+は、会話型インタラクションや長いコンテキストを必要とするタスク向けに最適化されたLLMです。1040億パラメータを持ち、Command Rの上位モデルに位置されます。
主な特徴は以下のとおりです。
- 長文コンテキスト対応:最大128,000トークンのコンテキストウィンドウを持ち、長文の処理や複雑なタスクに適している
- 多言語対応:日本語を含む複数の言語で高精度な生成が可能
- 高度な検索拡張生成(RAG):外部データやAPIとの連携を通じて、より正確で信頼性の高い情報生成を実現
Command Rに比べて、高いパフォーマンスを実現し、企業がPoC(概念実証)から本番環境への移行を円滑に進められるよう設計されています。複雑なRAGワークフロー、マルチステップのツール使用、長文コンテキストを必要とするタスクに最適です。
Embed(埋め込みモデル)
Embedは、テキストデータを高次元ベクトルに変換するマルチモーダル埋め込みモデルです。テキストだけでなく画像データも高次元ベクトルに変換できる点が大きな特徴です。
主に以下の用途に活用できます。
- 意味的類似性の推定:キーワードマッチングを超えて、文脈やユーザーの意図を考慮した検索が可能
- 高度なテキストおよび画像分類:ユーザーフィードバックの分類や感情分析など、多様な分類タスクに対応
- 情報検索の強化:埋め込みを活用して、より精度の高い検索結果を提供
- テキストおよび画像のクラスタリング:類似コンテンツをグループ化し、パターンを発見
テキストから埋め込みを生成したり、パラメータに基づいてテキストを分類したりできる点が大きな特徴です。
関連記事:「Embedding(埋め込み表現)の概要や必要性、活用事例、他のベクトル化手法との違い、実装手順を解説」
Rerank(再ランク付けモデル)
Rerankは、検索結果やRAGシステムの精度を向上させる再ランク付けモデルです。Rerankは、指定されたクエリに対するテキスト入力の意味的関連性に基づいて、結果を再ランク付けします。
主な用途は以下です。
- 検索結果の最適化:既存の検索システムから返された結果を、ユーザーの意図により適した順序に並べ替え
- 情報検索の精度向上:関連性の高い情報を優先的に提示
- 多言語対応:100以上の言語をサポートし、グローバルな検索システムに対応
4,096トークンのコンテキスト長をサポートし、より複雑な検索タスクに対応可能です。Amazon SageMaker、Amazon Bedrockなどで利用できます。
Rerankにより、より自社に最適化された検索結果を得られます。既存の検索システムやベクトル検索システムに対して、1行のコード追加で強力な意味的ブーストを提供します。
これにより、システムの大幅な変更なしに検索品質を向上させることができます。
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企業がCohereを使うメリット
Cohereは、正確性や安全性、多言語対応といった企業ニーズに応える機能を備えており、特にビジネス用途においてChatGPTなど他の生成AIツールと比べて優位性があります。
以下では、Cohereのメリットを紹介します。
RAGの活用でハルシネーション対策に有効
Cohereは、AI生成モデルの大きな課題「ハルシネーション(実在しない情報や不正確な内容を生成してしまう現象)」の対策として有効です。
具体的には、外部データや指定された情報ソースを利用できるRAG(検索拡張生成)機能を搭載することで、ハルシネーションの課題に対応しています。
この機能により、単なる言語生成にとどまらず、実際のデータに基づく高度なインサイトの提供が可能です。たとえば、顧客データベースを基にしたパーソナライズされた対応や、最新の市場データを用いたビジネスレポートの自動生成が挙げられます。
このRAG機能を通じて、企業が生成AIを利用するうえで重要な基準となる生成内容の安全性をクリアできることから、他の生成AIツールでは適用が難しい金融や法律関係のビジネスシーンでの活用も期待できます。
関連記事:「RAGとはなにか、RAGの仕組みやメリット・デメリットを解説」
多言語対応
Cohereのモデルは、一般的な生成AIツールにある英語を用いた生成だけでなく、以下の多言語に対応しています。
- フランス語
- スペイン語
- イタリア語
- ドイツ語
- ポルトガル語
- 日本語
- 韓国語
- アラビア語
- 中国語
また、埋め込みモデルと再ランク付けモデルは100以上の言語にネイティブ対応しているため、多言語でのカスタマーサポートや市場分析の効率化において活用でき、特にグローバル市場をターゲットにする企業にとって大きな強みとなります。
このように言語の壁を越えて活用できる点は、他の生成AIとの差別化ポイントといえます。
操作性が優れている
Cohereは、複数の高度な機能を提供しているにもかかわらず、ユーザーインターフェースが非常に優れているため、高い操作性を実現しています。
例えば、インターフェース全体がシンプルで、ヘッダーやダッシュボードが整理されているなど、ユーザーが必要な機能へ直感的にアクセスできるよう設計されています。
このような優れたUIにより、導入時のトレーニングコストを抑えられるため、社内の生産性向上や業務効率化に繋がります。
カスタマイズ性が高い
Cohereは、企業の特定のニーズに合わせてモデルをカスタマイズする強力な機能を提供しています。ファインチューニングオプションにより、企業は自社の特定のタスクに合わせてモデルを調整できます。
これにより、テキスト分類、情報検索、要約、セマンティック検索などのタスクで、より正確で関連性の高い結果を得ることができます。
Cohereは以下の機能の利用を通じて、企業のニーズに合わせて、高度にカスタマイズできる点が大きな強みです。
- チャットモデルの作成
- 再ランク付け(RAGを活用したドキュメント検索結果の最適化)
- 分類モデルの構築
チャットモデルや分類モデルの作成によって新たなサービスへ応用することや、CohereのRAG機能を調整することが可能です。これにより、汎用モデルでは対応できない企業独自の課題や業務フローに適応したカスタマイズが可能となります。
さらに、Cohereはプロンプトの最適化機能(※現在はベータ版)も提供しており、特定のタスクやニーズに対して生成結果の精度向上が可能です。
コミュニティが充実
Cohereは、以下のような開発者や研究者をサポートするコミュニティが充実しています。
- 開発者向けのドキュメントやリソース
- 非営利研究ラボ「Cohere For AI」
まず、開発者向けのドキュメントやリソースでは、具体的な実装例やトラブルシューティングのガイドが整備されています。
これらのコミュニティ体制により、Cohereは初心者から上級者まで幅広いユーザーの研究開発に対応できています。それだけでなく、生成AIコミュニティ全体での知見共有や技術発展も推進しています。
Cohereの応用例
Cohereは、自社用の生成AIシステム構築においてもいくつか優れた実績を持っています。以下では、公式ユースケースから実際の導入事例を紹介します。
社内サポート
北米の大手小売チェーンでは、回答が曖昧な質問に対して多忙なマネージャーがIT部門にチケットを発行するケースが多く、解決までに数週間かかっていたことが課題でした。
そこで、マネージャーや従業員からの人事や業務に関する一般的な質問に迅速に対応するために、Cohereを採用しました。具体的には、Cohereの「Command」と「Rerank」をRAGと組み合わせることで、HRデータベースと接続された検索アプリを構築しました。
構築した結果、ユーザーは平易な言葉で質問し、所属場所や職位、組合加入状況に基づいたカスタマイズされた回答を簡単な会話形式で得られるようになりました。
カスタマーサポート
あるソフトウェアプロバイダーが、トランザクションデータをレポートできるような優れたサポートQ&Aエクスペリエンスを提供するためにCohereを活用しました。
具体的には、Cohereの「Command」と「Rerank」をRAGと組み合わせて、製品ドキュメントや社内ナレッジベースに基づいた会話形式のサポートアシスタントを構築しました。
このアシスタントを導入することで、ユーザーは、詳細な技術的質問を平易な言葉で入力するだけで、関連する回答とその引用元を得られるようになりました。
レコメンドシステム
ある大手高級品小売業者は、顧客対応を行うアドバイザーを支援し、商品の検索や調査にかかる時間を短縮するためにCohereを導入しました。
具体的には、「Cohere Command」と「Rerank」をRAG機能と統合しました。そのようにして、顧客の人口統計や購入履歴、個人の好みに基づいて、アドバイザーが顧客に最適な商品を提案できる会話型の仮想ショッピングアシスタントツールを構築しました。
このツールでは、顧客のWebサイトや製品カタログ、在庫データなどを連携させており、すぐにアドバイスや適切な提案を行えます。導入の結果、アドバイザーは顧客のニーズに即した提案を迅速に行えるようになり、顧客体験の向上と購入金額の増加につながりました。
AIを活用したレコメンドの仕組みを詳しく知りたい方はこちらをご参考ください。
エンタープライズサーチ
ある投資会社向けの金融リサーチプラットフォームでは、顧客が財務レポートやアナリストリサーチ、投資家の電話会議記録などの膨大なデータから、複雑な質問に対する総合的な回答を得られる自然言語インターフェースを構築する必要がありました。
そこで、同社は顧客の生産性と満足度を高めるために、まず検索の関連性を向上させ、その後に完全な会話型AIアシスタントの実現を目指しました。
この取り組みの第一歩として、Cohereの「Rerank」を微調整し、既存のレガシー検索ツールに統合しました。統合の結果、検索結果の関連性が即座に改善され、顧客が必要な情報を迅速に見つけられるようになりました。
次に、Cohere Embedを利用して埋め込みソリューションを導入し、検索パフォーマンスをさらに向上することに成功しました。埋め込み技術により、検索クエリとデータセットの意味的な関連性を効率的に評価できるようになり、顧客の情報アクセスが大幅に効率化されました。
エンタープライズサーチとはなにか、についてはこちらで解説しています。
Cohereについてよくある質問まとめ
- Cohereは他の生成AIツールと何が違うのですか?
Cohereは、特に大企業の利用を重視した設計が特徴です。RAG(検索拡張生成)や埋め込み(Embed)などの機能を活用することで、企業独自のデータに基づく正確な生成が可能です。
また、多言語対応やカスタマイズ性の高さにより、汎用的な生成AIツールよりも特定のビジネスニーズに適したソリューションを提供します。
- Cohereを利用するためのスキルや専門知識は必要ですか?
Cohereは、直感的なインターフェースを備えているため、AIやプログラミングの専門知識がなくても基本的な利用が可能です。
また、開発者向けの充実したドキュメントやリソースが用意されており、技術的なカスタマイズを希望する場合でも、必要な情報を簡単に取得できます。
まとめ
Cohereが提供する生成AIツールは、高いカスタマイズ性や安全性、多言語対応といった特長を持ち、企業向けの生成AIツールとして幅広いビジネス分野で活用が広がっています。
具体的なユースケースとして、社内サポートの効率化やカスタマーサポートの質向上、エンタープライズサーチの高度化など、多岐にわたる事例が報告されています。
特にRAGを活用した正確な情報提供や、Command・Embed・Rerankなどのモデルの柔軟な組み合わせにより、個別の業務ニーズに対応可能なカスタムソリューションを構築できる点が大きな強みです。
Cohereは、生成AIの信頼性を高め、企業の競争力を向上させるうえで有効なツールです。これから生成AIを活用して業務改善や新たなビジネス創出を目指す企業にとって、Cohereは最適な選択肢となるでしょう。
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