AutoMLとは?できることやメリット・デメリット、主要サービス、注意点から活用事例まで徹底解説!
最終更新日:2024年11月06日
AutoML(Automated Machine Learning)を使えば、AI(人工知能)の知識を持たないユーザーでも簡単に高精度な機械学習モデルを作成できます。そのため、AIモデルのライフサイクル全体改善を目指すMLOpsに欠かせないツールとして幅広い企業から注目されています。
本記事では、AutoMLの基本概念から導入でできること、メリット・デメリット、主要なサービス、注意点、活用事例までをわかりやすく解説します。AutoMLを活用して企業活動を効率化したいと考える企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
AI Marketでは
AutoMLとは?
AutoMLとは、機械学習モデルの構築プロセスを自動化する概念・手法です。AutoMLで自動化される一連のプロセスには、以下が含まれます。
- データの前処理:欠損や異常値のある生データを整った形に変換する
- 特徴量エンジニアリング:データから有用な特徴を自動で抽出する
- モデルの選択:複数の機械学習アルゴリズムを比較し、最も適したモデルを選ぶ
- ハイパーパラメータ調整:モデルのパフォーマンスを最大化するためのハイパーパラメータを自動調整する
- モデル評価:複数のモデルを評価し、最も高性能なものを選定
- デプロイ支援
データサイエンスや機械学習に関する専門知識を持たないユーザーでも、手軽に高性能なモデルを構築できるようにすることを目的としています。
AutoMLを活用することで、画像認識、画像分類、データ分析や予測等の時間のかかる機械学習開発プロセスを短縮でき、リリースまでの時間を短くできます。結果として、より多くのプロジェクトに機械学習を適用できるようになります。
また、習開発の省力化に大きく貢献できるため、これまでAI専門人材の不足により機械学習の導入を先送りにしていた企業を中心に注目を集めています。
さらに、AutoMLでモデル開発プロセスを加速させ、同時にMLOpsでそのモデルの運用と管理を最適化することで、企業は機械学習プロジェクトの全体的な効率性、品質、スケーラビリティを大幅に向上できます。
AutoMLで使う主要サービス・プラットフォーム
AutoMLは以下のようなクラウドプラットフォームで利用できます。
- Google「Vertex AI」
- Microsoft「Azure Machine Learning」
- Amazon「Amazon SageMaker Autopilot」
各プラットフォームを活用すれば、専門知識がなくても機械学習モデルを容易に開発できることから、幅広い企業が活用しています。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
AutoMLでできること・メリット
AutoMLは企業にとって多くの利点をもたらします。その主なメリットを以下で紹介します。
専門知識なしで機械学習を利用できる
AutoMLの中には「Vertex AI」のようにノーコードで使えるツールもあり、AIやデータサイエンスが専門ではない人材でも簡単に機械学習モデルを構築できます。通常は、機械学習モデルを開発するために統計学モデルや理系大学相当の数学の深い理解と、AIプログラミングの知識が必要です。
AutoMLのプラットフォームの中には、学習過程やモデル評価の結果が画像でアウトプットされるものなど、視覚的なインターフェースを提供しているものもあります。これにより、直感的にモデルの構築プロセスを理解することが可能です。
したがって、AutoMLの活用により、社内の非技術部門でも機械学習を積極的に取り入れられます。そして、高度なスキルを持つデータサイエンティストの不足を補うことができます。
組織全体でデータドリブンな意思決定が促進されます。
精度と一貫性の向上
AutoMLシステムは、大量のモデルとパラメータの組み合わせを試行錯誤し、最適な結果を導き出すことが可能です。専門家でさえが見落としがちな複雑なパターンや関係性を発見し、より精度の高いモデルを構築できる可能性があります。
さらに、人為的なミスや偏見を排除できるので、再現性の高い結果を得られます。
機械学習開発の迅速化
AutoMLを活用することで、手動で行う必要のあったデータの前処理やモデルのパラメータ調整など手間のかかるプロセスを自動化し、機械学習モデルの開発時間を大幅に短縮できます。
従来は数週間から数ヶ月かかっていたプロセスが、数時間から数日に短縮される可能性があります。
これにより、企業は新しいデータに基づいて素早くモデルをアップデートし、市場の変化に即応することが可能になります。また、異なる業務や部門のニーズに合わせて、迅速にモデルを開発・展開できます。
迅速な機械学習開発サイクルにより、より多くのアイデアを試すことができ、ビジネス上の課題に対するソリューションを迅速に見つけられるようになります。
コスト削減
機械学習開発には、数百万円するハイスペックなGPUサーバーなどのハードウェアや、各ハードウェアを保管するためのサーバールームが必要なため、多額の開発・メンテナンスコストがかかります。また、高度なAI人材を雇うための人件費も必要です。
一方、多くのAutoMLプラットフォームでは、クラウド上でデータ保存用のドライブやGPUなどの開発環境が提供されており、社内用パソコンでも開発できることから、初期投資を抑えられます。
また、ベンダーがインフラの管理やアップデートを行うため保守コストも軽減されることから、運用面でも負担が少なく、長期的な保守コストの削減が可能です。
ほかにも、機械学習開発に必要な多くのプロセスが簡易化されるため、省力化が可能となり、人件費の削減にもつながります。
したがって、限られた予算でAIプロジェクトを開始でき、中小企業でも大企業と競争できる開発力を持つことが可能になります。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
AutoMLを導入する際の注意点
AutoMLを導入する際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、AutoMLの導入をより効果的に進められます。以下では、AutoMLのデメリットについて紹介します。
学習データの品質に依存
AutoMLはすべての機械学習タスクを自動化するわけではありません。例えば、AutoMLに与えるデータの収集は、人間で行う必要があります。
データの品質はAutoMLの精度を大きく左右する要素であり、高度な前処理やモデルの最適化が可能なAutoMLでも初めに与えられたデータの質が低ければ、高精度な予測はできません。
そのため、AutoMLを活用する際には、ビジネス専門家とデータサイエンティストが協力してデータを選別することが求められます。適切なデータの収集と管理、そしてそのデータがビジネスに与える影響を理解することが、最終的にモデルの有効性を高める鍵となります。
ブラックボックスになりがち
AutoMLは、モデルの構造やアルゴリズムの選択が自動化されるため、内部構造がブラックボックスになりがちです。そのため、結果の解釈性や透明性を持たせることが課題となります。
その結果、ビジネス上の重要な意思決定において、どの要因がモデルの出力に影響を与えたのかを理解しにくくなり、信頼性や説明責任の確保が課題となることがあります。
これを克服するためには、説明可能なAIモデル(XAI)の併用や、モデルの透明性を向上させる工夫が必要です。例えば、SHAP(SHapley Additive exPlanations)や、LIME(Local Interpretable Model-agnostic Explanations)が有効です。これらのXAIにより、各特徴量がモデルの予測にどのように寄与しているかを可視化することが可能になります。
また、「Azure Machine Learning」のように、モデル選定の理由などを説明・可視化できるダッシュボード機能付きのツールもあるため、解釈可能性を求める場合には利用するとよいでしょう。
細かくチューニングができない
AutoMLのプラットフォームでは、モデルのハイパーパラメータ調整機能が制限されることがあります。
例えば、「MATLAB® with AutoML」では、基本的にベイズ最適化の適用により、ハイパーパラメータが調整されます。パラメータの自動調整方法には、グリッド検索やランダム検索など多数ありますが、MATLABでは複数の手法を比較して調整されるわけではありません。そのため、ハイパーパラメータの精度に限界が生じます。
このようにAutoMLの自動調整だけでは限界があるため、より高いパフォーマンスを求められない場合も少なくありません。
したがって、最適化されたモデルを得るためには、ハイパーパラメータに対して手動での微調整が必要になるケースがあります。特に、複数のハイパーパラメータが存在するなど難易度の高いタスクに対応する場合は、AutoMLを補完する方法での調整もしくは完全にAutoMLを利用しない方法にする必要があります。
応用分野が限定的
AutoMLはすべてのモデルやデータセットに適しているわけではありません。特殊なデータの場合にはカスタマイズされたアプローチが必要となることがあります。その場合には、AutoMLで利用できるResNetなどの普遍的なモデルではなく、特定のデータに特化した最新手法のほうが適していることも少なくありません。
そのため、AutoMLを最大限に活用するうえでは、自社のニーズに合ったツール選びや導入戦略が重要であり、事前の適用可能性の評価が成功の鍵となります。
AutoMLの活用事例
多くの企業がAutoMLを活用して業務効率化に成功しています。以下では、AutoML活用の成功事例を紹介します。
【JAL/NEC】航空機の故障予測分析を自動化
JALエンジニアリングでは、航空機の不具合に起因する遅延・欠航を防ぐために、ビッグデータを活用した航空機の故障予測に取り組んでいます。これらの課題を解決するため、2019年にNECの予測分析自動化AI「dotData」を導入しました。
dotDataと従来の仮説検証型分析を組み合わせることで、データから不具合の兆候を捉えるのに有効な特徴量を得ることが可能になりました。
dotDataは、国内スタートアップ企業が開発した予測分析自動化AIプラットフォームです。モデル選択、ハイパーパラメータ最適化、特徴量選択などのAutoMLの主要機能を含んでいます。
従来は、整備士やエンジニアの五感に依存する「仮説探索型分析」と呼ばれる手法で予測を行っていましたが、不具合の予兆検知に課題がありました。
また、多くのAI製品では、膨大なフライトデータから不具合の予兆パターン(特徴量)を網羅的に検証することが困難です。さらに、予測結果がブラックボックス化されることから活用されていませんでした。
AutoMLを使うアプローチにより、従来整備士の知見に依存していた不具合の予兆のほかに、フライトデータや整備データに潜む予兆をより多く検知することに成功しています。
関連記事:「航空業界におけるAI活用の目的やAIがどのように活用されているのか、事例も含めてご紹介」
【LIFULL/Google】物件画像のカテゴリー分類の時間を2秒に短縮
不動産テックを推進するLIFULLでは、物件画像のカテゴリー分類を効率化するためにGoogle Cloud AutoML Visionを導入しました。
Cloud AutoML Visionは、Googleが提供する画像認識モデルを自動的に構築・トレーニングするためのクラウドベースのプラットフォームです。機械学習の専門知識がなくても、高品質な画像認識モデルを作成できることを目的としています。
従来、手作業で10数枚の画像を分類するには40秒~50秒かかっていましたが、AutoMLの活用後は10秒~12秒で分類が可能となり、画像の登録作業の手間を大幅に低減できました。特に画像分類のプロセス自体は2秒~3秒で完了し、迅速な入稿が可能です。
また、分類精度も高く、「その他」に分類される率が2%低減し、その他のカテゴリー分類率も最大で3.9%改善されました。不動産やデベロッパーの担当者からも、「以前と比較して入稿が格段に早くなり、手間が省ける」と高い評価が寄せられています。
利用者の多くが物件画像を重視するため、AutoMLを通じた正確な画像情報の提供によって、問い合わせ件数や資料請求数が増加し、最終的には成約率の向上が期待されています。
画像認識・画像解析に強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
【パナソニック/富士通】部品の高精度な需要予測を実現
2024年4月、パナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)は、富士通が提供するデータとAIを活用する「Fujitsu Data Intelligence PaaS」(以下、FDI PaaS)を基盤とするシステムの本格運用を開始しました。
FDI PaaSは、富士通が提供するクラウドベースのデータ分析プラットフォームです。データの収集から分析、可視化、そして予測モデルの構築まで、データ活用の全プロセスをカバーする統合ソリューションとして位置づけられています。
これにより、工場を含む3,000社以上の拠点が持つ膨大なデータを横断的に統合し、拠点ごとの在庫・発注状況を全社レベルでの見える化に成功しています。
また、構築したシステム内のAIサービス「Fujitsu Kozuchi AutoML」を利用し、データ基盤の統合情報から、過去5年の主要部品の販売実績をもとに300種の予測モデルを生成しました。これにより、部品カテゴリーごとに精度の高い需要予測ができ、災害発生時の製品供給停止の回避を可能にしています。
パナソニックEWでは、災害時の迅速な状況把握とAIによる不確実な将来予測に基づいて意思決定を行うことで、レジリエントな供給網の構築を目指しています。
需要予測に強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
AutoMLについてよくある質問まとめ
- AutoMLはどのような企業に向いていますか?
AutoMLは、AI専門人材が不足している企業や、迅速に機械学習モデルを構築したい企業に向いています。
また、低コストでAI技術を活用できるため、データサイエンティストを雇う余裕がない企業に特に適しています。
- AutoMLと従来の機械学習モデル開発の違いは何ですか?
従来の機械学習モデル開発では、データ前処理や特徴量エンジニアリング、ハイパーパラメータ調整を専門家が手動で行いますが、AutoMLではこれらのプロセスが自動化されています。
これにより、開発時間が大幅に短縮され、専門知識がなくても機械学習モデルを構築できる点が異なります。
まとめ
AutoMLとは機械学習モデルの構築を自動化する技術で、専門知識がなくても高度なAIモデルを短時間で作成できる点が大きな特徴です。
データの前処理からモデル選定、最適化までが自動化され、開発コストと時間を大幅に削減できます。そのため、AIが専門外の企業においても積極的に導入され、小売業の売上予測や製造業の品質管理、医療分野での診断支援などで活用されています。
AIや機械学習の導入を検討している企業は、AutoMLを通じて自社における機械学習の活用可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp