AIエージェントの開発手順を解説!必要な技術やフレームワーク、注意点徹底ナビ
最終更新日:2025年05月09日

- AIエージェント開発は、業務範囲の定義から知識ベースの構築、UI/UX設計、API連携、実装、運用・改善に至る体系的な手順で進められます。
- 開発には、LLM(大規模言語モデル)、自然言語処理、RAG(検索拡張生成)、API連携といった中核技術の理解と適切な活用が不可欠です。
- プロジェクトを成功させるためには、AIが担うべきタスクの適切な選定、堅牢なエラー管理体制の構築、出力結果の透明性確保、そして継続的なフィードバックに基づく改善サイクルが重要
生成AI技術の発展に伴い、自律性を持つ「AIエージェント」が注目されています。作業の効率化や人的負担の軽減を目的に、AIエージェントの開発に取り組む企業も増えています。
一方で、AIエージェントの開発は専門的な領域であり、開発フローの全体像が把握できないと最適なエージェントが設計できません。
この記事では、AIエージェント開発の具体的な9つのステップ、プロジェクトの成功に不可欠なコア技術、開発を加速させる主要フレームワーク、そして見落としがちな注意点まで解説します。本記事を最後までご覧いただければ、AIエージェント開発プロジェクトを計画し、実行するための明確な見通しと実践的な知識を得られるでしょう。
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目次
AIエージェントの開発手順
AIエージェントの開発手順は、以下の通りです。
- エージェントの業務やタスク範囲の定義
- 適切な技術とプラットフォームの選定
- 知識ベースの構築
- インテント・エンティティの設計
- ユーザーインターフェース(UI/UX)のデザイン
- 外部ツールやAPIの統合・連携
- マルチエージェント連携
- 実装~動作検証
- デプロイ~運用・改善
それぞれの手順について解説していきます。
エージェントの業務やタスク範囲の定義
まずは、AIエージェントが対応する業務やタスクの範囲を定義します。ここでは業務フローを洗い出し、AIによる自動化が適する領域を見極める必要があります。
どの業務領域にAIエージェントを導入するのか、具体的なユースケースを特定します。
要件定義においては、以下のような業務を想定して決定します。
- ルール処理
- 自然言語による対話
- 意思決定支援
- 外部システムとの連携
また、AIエージェントに期待する具体的な目標(例:問い合わせ対応時間の〇〇%削減、顧客満足度の〇〇%向上など)を明確にします。この段階での要件定義の精度が、プロジェクト全体の品質や保守性に影響します。
大規模な開発に入る前に、小規模なPoCで技術的な実現可能性や効果を検証することも検討できます。
適切な技術とプラットフォームの選定
タスクの複雑性や必要な機能に応じて、適切な生成AIモデル(LLM(大規模言語モデル)、画像生成モデルなど)や関連技術(自然言語処理、API連携など)を選定します。
そして、開発・運用に必要なインフラストラクチャやプラットフォームを選定します。セキュリティやスケーラビリティも重要な考慮事項です。
知識ベースの構築
知識ベースとは、エージェントが質問に回答したり、意思決定を支援したりする際の根拠となる情報の集約です。エージェントの回答精度と業務信頼性に直結する中核要素となるため、初期設計段階から設計することが求められます。
構築にあたっては、以下例に挙げるような構造化・非構造化データを収集、整理し、検索性と再利用性を高める設計が求められます。
知識ベースの構築においては、生成Aモデルとの親和性を意識し、検索用メタデータの付与や文書分割ルールの最適化が必要です。また、ナレッジ更新の頻度や正確性を維持するために、バージョン管理やレビュー体制も併せて整備することで、継続的な運用にも対応できます。
インテント・エンティティの設計
知識ベースを構築した後はこのインテント・エンティティを設計します。インテントとはユーザーの要求・目的を分類する概念であり、たとえば「資料請求」や「見積作成」などの業務アクションを指します。
一方、エンティティは日付・数値・商品名などの値や対象を指し、インテントに付随するパラメータとして機能します。
過去の問い合わせや業務オペレーションを分析し、頻出する要求パターンを分類することが有効です。また、各インテントごとに必要なエンティティを定義・整理します。
さらに、インテントとエンティティの関係をワークフローに反映させることで、エージェントが適切なプロセスを選択し、業務処理を遂行できるようになります。これらの設計は、対話の品質と業務処理の正確性に反映されます。
ユーザーインターフェース(UI/UX)のデザイン
AIエージェントが人間と自然な形で対話できるような、使いやすいインターフェースを設計します。ユーザーがAIエージェントの能力を最大限に引き出せるような、直感的で分かりやすい操作性を追求します。
外部ツールやAPIの統合・連携
インテント・エンティティを設計したら、外部ツールやAPIと統合・連携が必要です。こちらの手順では、以下のような外部ツールやAPIと接続します。
- 社内のCRM
- SFA
- スケジューラ
- ドキュメント管理システム
たとえば、顧客の最新情報をCRMから取得し応答に反映させたり、API経由でワークフローを起動する処理を担わせるといった拡張が想定されます。
これらの連携を行うには、RESTやGraphQLなどのインタフェース仕様を理解し、認証・認可方式(OAuth 2.0など)を実装します。また、通信エラーや例外系の制御も考慮し、インテグレーション基盤を構築することが必要です。
マルチエージェント連携
複雑な業務課題に対応するAIエージェントは、1つのエージェントにすべての機能を集約するのではなく、複数の専門エージェントを役割分担させて連携させる「マルチエージェント連携」の設計が有効です。
このアプローチでは、各エージェントが特定の業務領域や処理機能に特化し、相互にタスクを受け渡すことで、拡張性の高いシステムを実現できます。たとえば、以下のようなタスクをエージェントごとに分離し、それらが協調して1つの処理フローを構成するモデルが考えられます。
- 問い合わせ内容の分類
- 外部APIを通じたデータ取得
- 生成AIによる応答文の生成
こうした連携には、MAS(Multi Agent System)設計思想に基づくプロトコル管理や、状態共有のメッセージパッシング機構が必要となります。
各エージェントの責任範囲と通信ロジックを明確にすることで、保守性・拡張性の高い構造を保ちつつ、タスク間連携による高度な処理を実現できます。
実装~動作検証
AIエージェントの機能設計が完了した後は、各コンポーネントの実装に着手し、想定どおりの動作を行うか検証を進めていきます。
実装フェーズでは、以下のような技術を組み合わせ、ユースケースに応じたアーキテクチャを構築します。
- LLM
- 自然言語処理ライブラリ
- 統合API
- エージェントフレームワーク
動作検証では、単体テストに加えてユーザーシナリオに基づく対話テストを実施し、入力の揺らぎに対する頑健性や意図誤認、外部API連携の信頼性などを評価します。また、エラーハンドリングやログ出力設計もこの段階で整備し、障害時の原因分析や改善対応が必要です。
検証結果をもとにチューニングを重ねることで、実運用に耐える品質水準に仕上げていきます。
デプロイ~運用・改善
AIエージェントの実装と検証が完了した後は、デプロイを通じて本番環境への移行を行い、継続的な運用と改善フェーズに入ります。
デプロイでは、多くの場合クラウドインフラ上にエージェントをホスティングし、必要に応じてスケーラビリティやセキュリティ対策を施した設計を行います。特にエンドユーザーとの接点がある場合には、以下のような運用上のリスク対策が必要です。
- 通信の暗号化
- トークンベースの認証
- アクセスログの管理
運用開始後は、実際のユーザーとの対話データを蓄積し、対話の精度、回答の一貫性、業務KPIへの貢献度などを定量的にモニタリングします。これにより、インテント定義や応答テンプレート、ナレッジベースの改善点を特定し、リリース後も継続的に品質を向上させることが可能です。
AIエージェントは一度構築すれば終わりではなく、業務変化やユーザーニーズに適応させ続けるための改善プロセスが不可欠です。
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AIエージェントの開発に必要な技術
AIエージェントを開発するには、高度な対話処理や外部連携を実現するための技術を用いる必要があります。以下では、AIエージェントの核とな技術要素について解説します。
LLM
LLM(大規模言語モデル)は、AIエージェントの自然言語理解と生成の中核を担う技術です。対話の文脈把握・業務指示の解釈において重要な役割を果たします。
大量のテキストデータを基に自然な応答や推論を出力できるため、問い合わせ対応やレポート生成、業務手順の説明など幅広い業務に応用可能です。
ChatGPTに搭載されているGPTしリーズやAnthropic社のClaude、Google社のGeminiといった代表的なモデルに加え、用途や環境に応じてオープンソースのLLM(LlaMA、Mistralなど)を活用する選択肢も存在します。
エージェントに組み込む際は、API経由でLLMにプロンプトを送信し、戻ってきた出力を業務ロジックに接続する設計が一般的です。
自然言語処理
自然言語処理(NLP)は、ユーザーの発話を理解し、適切に応答するための基盤技術として欠かせません。具体的には、以下のような処理が含まれます。
- 文の構文解析
- 単語の分割
- 品詞の特定
- 感情分析
- キーワード抽出
- 意味の類似性評価
LLMによる生成と組み合わせることで高精度な対話が可能になります。ただし、特定の業務ドメインにおいては、ルールベースの処理やカスタム辞書の活用の方が効果的であったり、費用対効果がよいケースもあります。
また、インテント分類やエンティティ抽出といったタスクは、対話の分岐や外部システム連携の起点となるため、再現性と精度の高いモデル設計が求められます。
NLPはAIエージェントのロジック設計全体に関与する要素として、設計初期段階からの導入が推奨されます。
RAG
RAG(検索拡張生成)は、応答精度と情報信頼性を高める技術として活用できます。LLMによる生成に加えて、社内文書や外部データベースから情報を検索・取得し、その内容をプロンプトに組み込んで応答を生成します。
これにより、モデル単体では保持しきれない最新情報や固有知識を活用できるようになり、実務に即した回答が可能です。
RAGの実現には、テキストやその他のデータをベクトル表現に変換し、意味的に類似性の高い情報を高速に検索するベクトル検索エンジンの技術も欠かせません。
RAGについてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、併せてご覧ください。
チャットボット開発
テキストや音声による対話インターフェースを構築・管理するためには、チャットボットプラットフォームを活用するケースが多いです。チャットボットプラットフォームは、Webチャット、モバイルアプリ連携、音声アシスタント連携などの機能を提供します。
API
AIエージェントが実業務で機能するには、外部サービスとの連携を支えるAPI設計が欠かせません。エージェントは以下のような外部リソースにアクセスし、情報の取得や更新を行う必要があります。
- CRM
- 業務システム
- スケジューラ
- データベース
そのため、RESTやGraphQLといったインタフェースに対応したAPIを設計し、通信基盤を構築することが求められます。
近年ではLLMと連携したfunction callingの活用も進んでおり、自然言語による指示をAPI呼び出しに変換する構造を整えることで、対話能力と業務遂行力が一体化します。
CUA(Computer-Using Agent)
CUA(Computer-Using Agent)は、AIエージェントが人間の代わりにコンピュータ操作を実行する技術です。CUAではGUI上でのクリックや入力やスクロールなどの動作を実行可能であり、高度な判断力を加味する役割を果たします。
これにより、請求書の処理、社内システムへのデータ入力、帳票のダウンロードなど人手による定型操作を自然言語ベースの指示で代替できます。
CUAの実現には、以下のような高度なUI制御技術が求められます。
- 操作対象となるアプリケーション構造の解析
- UI要素の認識
- 非同期イベントの制御
近年では、LLMと画面認識技術を融合させた次世代型エージェントへの応用も進んでいます。業務における実行力をAIに持たせるための核としてCUAは不可欠です。
MAS(Multi Agent System)
MAS(Multi Agent System)とは、複数のエージェントが相互に連携・協調する分散型のシステム設計思想を指します。AIエージェント開発においてMASを導入することで、各エージェントに特定の役割や専門性を持たせ、分担してタスクを処理させることが可能です。
MASの運用には、メッセージングの非同期処理、状態管理、意図の共有といった高度な調整機構が必要です。そのため、LangGraphのようなフロー管理型フレームワークや、分散タスク制御の仕組みと組み合わせて実装されることが一般的です。
MASは単一のエージェントでは対応困難な複雑業務にも対応できるスケーラブルな構造を提供するため、特に大規模・高負荷な環境で有効です。
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AIエージェントの開発に有効なフレームワーク
AIエージェントの開発には、目的に応じてフレームワークを活用します。開発・設計を効率化するフレームワークを紹介します。
AutoGen
AutoGenは、次世代のLLMアプリケーションを実現するためのマルチエージェント会話フレームワークです。複数のエージェントが連携してタスクを実行するマルチエージェントシステムの構築に適しており、Magentic-OneなどのAIエージェントシステムの基盤としても利用されています。
オープンソースで公開されており、エージェントの性能を評価するためのツール「AutoGenBench」も提供されています。
尚、AutoGenは、AG2というフレームワークに分かれて進化しています。また、Microsoft社はノーコードでエージェントを開発可能なMicrosoft Copilot Studioというプラットフォームも提供しています。
関連記事:「AutoGenとは?特徴や機能、MastraやLangChainとの違い、できること、料金や使い方、活用事例を徹底解説」
LangChain
LangChainは、LLMを活用したアプリケーションを開発するためのフレームワークです。
LLMとのインタラクション、データ接続、エージェントの構築など、LLMを活用するシステムに必要なさまざまな機能を備えています。特に、連鎖的思考(Chain-of-Thought)のような推論戦略をAIエージェントに組み込む際に役立ちます。
Mastra
Mastraは、TypeScriptを使用したAIエージェント開発用のオープンソースフレームワークです。Mastraの特長は、ワークフローの管理に優れており、AIが作業を行う順序や手順を明確にコード化できる点にあります。
エージェントが外部のAPIやツールと連携しながらタスクを自律的に解決できるよう設計されています。RAG(検索拡張型生成)機能も備えており、外部データを活用してAIの応答を強化することが可能です。
また、MastraにはAIエージェントの応答を評価する仕組みが組み込まれており、回答の精度や関連性をチェックして改善できます。
OpenAI Agents SDK
OpenAI Agents SDKは、OpenAIが提供する軽量かつ柔軟なAIエージェント構築フレームワークです。
複雑なマルチステップのタスクを自律的に処理するエージェントの作成や、複数のエージェント間でタスクを柔軟に引き継ぐハンドオフ機能に対応しています。
エージェント間の連携、入力・出力の検証(ガードレール)、実行プロセスの可視化(トレーシング)などの機能を備えており、信頼性の高いAIエージェントの開発を効率的に支援します。
また、OpenAIのResponses APIやChat Completions APIをはじめ、Model Context Protocol(MCP)を用いた外部ツール連携など、さまざまなAPI・モデルと柔軟に統合可能です。オープンソースとして公開されており、コミュニティによる拡張やカスタマイズも可能です。
Amazon Nova Act
Amazon Nova Actは、Amazonが提供する次世代のWeb操作型AIエージェントSDKです。自然言語での指示に基づき、Webブラウザ上の操作(検索、クリック、情報抽出など)を自動実行することが可能で、業務プロセスの再現や自動化に適しています。
Playwrightとの連携や構造化データ抽出、ログ・動画による実行記録などの機能を備えており、エンタープライズ環境での活用も想定されています。
Novaシリーズの基盤モデルを活用して構築されており、Web上で動作するリアルなエージェント実装のプロトタイプとして位置づけられています。
CrewAI
CrewAIは、自律的なAIエージェントのチームを構築するためのフレームワークです。各エージェントに役割を割り当て、それぞれが協力してタスクを達成することに重点を置いています。
AutoGenと同様に、マルチエージェントシステムの開発を簡単にする仕組みを提供しています。
Agno(旧Phidata)
Agno(旧Phidata)は、マルチモーダルAIエージェントの構築に特化した次世代フレームワークです。テキスト、画像、音声、動画など多様なデータ形式に対応し、記憶・知識・ツール連携・推論能力を備えたエージェントや、複数のエージェントを連携させたチームを簡単に作成できます。
以下のような特徴を持ちます。
- 軽量・高速:エージェント生成がLangGraph比で最大10,000倍高速(約3μs)
- モデル非依存:OpenAI/Anthropic/Cohere/Ollamaなど23+プロバイダー対応
- マルチモーダル:テキスト・画像・音声・動画の統合処理
- 長期記憶管理:データベース/ベクターストアによるセッション保存
他のフレームワークと同様に、AIエージェントの開発を効率化し、より複雑なタスクへの対応を可能にする機能を提供しています。
Azure AI Agent Service
Azure AI Agent Serviceは、Microsoftが提供するフルマネージド型のAIエージェント開発基盤です。
エンタープライズ向けの高度な要件に対応する設計が特徴で、GPT-4oやLlama 3などの主要LLMを活用し、業務フローの自動化を実現します。また、1,400以上の外部ツールやデータソースとの統合が可能であり、RAGやマルチエージェント連携といった高度な機能をコードで実装できます。
LangGraph
LangGraphは、LangChainの拡張として開発されたフレームワークです。複雑なAIエージェントのワークフローをグラフ構造で設計・管理することを目的としています。
LangGraphでは以下の基本要素を用いて、処理フローを視覚的・直感的に構築することが可能です。
- ノード(Node)
- エッジ(Edge)
- 状態(State)
- グラフ(Graph)
特に条件分岐やループ処理、並列実行といった複制御構造を実装できるのが特徴であり、マルチエージェントシステムの構築にも適しています。また、LangChainとの高い互換性を持ち、柔軟で拡張性の高いエージェント開発が可能となります。
Semantic Kernel
Semantic Kernelは、Microsoftが提供するオープンソースのソフトウェア開発キットです。LLMを簡単にアプリケーションに統合することを目的として設計されており、エンタープライズ向けのAIエージェント開発に適しています。
Semantic Kernelの特徴として、プラグイン機能を活用した機能拡張が可能で、既存のコードやAPIとの統合を容易にします。また、Planner機能を用いることで、ユーザーの要求に応じたタスクの自動計画と実行を支援します。
さらに、メモリー機能を活用することで、ユーザーの入力情報やコンテキストを保持し、より精度の高い応答が可能です。
PraisonAI
PraisonAIは、マルチエージェント型のAIシステムを構築・管理するためのローコードフレームワークです。AutoGenやCrewAIと統合することで、複数のエージェントが協調して解決する設計が可能となります。
また、100以上のLLMに対応し、モデルを選択して利用できます。さらに、ウェブ検索やコード実行、PDF解析などのカスタムツールとの統合が容易であり、業務ニーズに応じた拡張が可能です。
対話型UIやチャットモード、APIモードを備えており、ユーザーのスキルレベルやプロジェクト要件に応じて柔軟に運用できます。
Vertex AI Agent Builder
Vertex AI Agent Builderは、Google Cloudが提供するフルマネージド型のAIエージェント開発プラットフォームです。ノーコードからローコードまで対応しており、MLの専門知識がない開発者でも、エンタープライズグレードのAIエージェントを構築できます。
主な機能として、以下のようなものがあります。
- 自然言語理解に基づく会話型インターフェースの設計
- モバイルアプリやウェブアプリケーション
- インタラクティブ音声応答システムへの統合
また、Vertex AI Searchとの連携により、AI対応の検索やレコメンデーション機能を組み込むことができます。これにより、ユーザーは独自のデータに基づいた高品質な検索体験を提供することが可能です。
さらに、HIPAAやISO 27000シリーズ、SOC-1/2/3、VPC-SCなどの幅広い標準をサポートしており、企業のセキュリティ要件を満たす構成が可能です。
AIエージェントを開発する際の注意点
AIエージェントの開発では、技術的な構築だけでなく、運用上のリスクやユーザー視点も踏まえた設計が重要です。以下では、開発における注意点を解説していきます。
AIが担うタスクの選定
AIエージェントの設計においては、すべての業務を自動化の対象とするのではなく、以下のような領域をAIに任せるのがおすすめです。
- 繰り返し性が高い
- ルールに基づいた判断が可能な処理
- 大量のデータをもとに要点を抽出する業務
こうした規則性のあるタスクをAIに任せつつ、徐々に業務処理の自動化や意思決定支援など、難易度の高いタスクへと展開することが想定されます。
一方で、法的判断や経営戦略といった高度な意思決定には、現時点でのAIでは限界があるため、人間と役割を分担できる設計が求められます。
システムの設計とエラー管理
AIエージェントの信頼性を確保するには、堅牢なシステム設計とエラー管理の実装が初期段階から求められます。
外部APIと連携する場合や対話制御を行う場面では、ネットワーク障害や想定外の出力といったエラーが発生する可能性が高まります。これらの問題に対処する方法として、以下の手法を組み合わせたエラーハンドリング戦略が効果的です。
- タイムアウト処理
- 再試行機構
- 入力検証
- フォールバック応答
また、障害発生時のトレーサビリティを担保するために、ログ出力やモニタリング機能も設計段階で組み込んでおく必要があります。
出力結果の説明性・透明性の確保
LLMを活用したエージェントはブラックボックス性が高く、なぜその回答に至ったのかが明確でない場合、信頼を損なうリスクがあります。AIエージェントを開発する上でも、出力結果の根拠を明確にすることが重要です。
この課題に対応するためには、応答の根拠となる知識ベースの出典や、使用された検索ドキュメントの提示といった仕組みの実装が有効です。
RAGを活用した設計では、参照されたコンテンツのURLや抜粋を提示するだけでなく、回答との対応関係を明示することで説明責任を果たすことができます。
フィードバック体制の構築
AIエージェントの対話の質や業務処理の妥当性は、リリース直後よりも運用を通じて明らかになることが多く、実ユーザーからの意見を反映する仕組みを整備することが重要です。
具体的には、ユーザーによる応答評価機能や再学習用データの収集機構を用意し、定期的にレビューする体制を構築します。また、エラーログや会話履歴のメタデータ分析、問い合わせ傾向の可視化なども有効です。
さらに、フィードバックプロセスの一部をエージェント自身が担うことで、洗練された対話構造の実現も可能です。
AIエージェントの開発についてよくある質問まとめ
- AIエージェントの開発手順は?
AIエージェントの開発手順としては、以下のステップで進めます。
- エージェントの業務やタスク範囲の定義: AIで自動化する業務領域と具体的なユースケースを特定し、目標を設定します。
- 適切な技術とプラットフォームの選定: タスクの複雑性に応じて、生成AIモデルや関連技術、インフラを選びます。
- 知識ベースの構築: エージェントが応答や意思決定の根拠とする情報を収集・整理し、検索しやすいように設計します。
- インテント・エンティティの設計: ユーザーの要求(インテント)とそれに付随する情報(エンティティ)を定義します。
- ユーザーインターフェース(UI/UX)のデザイン: 人間と自然に対話できる直感的で使いやすいインターフェースを設計します。
- 外部ツールやAPIの統合・連携: CRMやSFAなど社内システムと連携し、情報取得や処理を実行できるようにします。
- マルチエージェント連携: 複雑な業務では、複数の専門エージェントを役割分担させて連携させる設計を検討します。
- 実装~動作検証: 設計に基づき各コンポーネントを実装し、単体テストやシナリオテストで動作を検証します。
- デプロイ~運用・改善: 本番環境へ移行後、対話データやKPIをモニタリングし、継続的に品質を向上させます。
- AIエージェントの開発にはどのような技術が必要になりますか?
AIエージェントの開発には、主に以下のような技術が用いられます。
- LLM(大規模言語モデル): 自然言語理解と生成の中核を担い、対話の文脈把握や業務指示の解釈に利用されます (例: GPTシリーズ、Claude、Gemini)。
- 自然言語処理(NLP): ユーザーの発話を理解し、構文解析、キーワード抽出、感情分析などを行います。
- RAG(検索拡張生成): LLMの応答に社内文書などの外部情報を組み込み、回答の精度と信頼性を高めます。ベクトル検索エンジン技術も重要です。
- チャットボット開発: テキストや音声による対話インターフェースを構築・管理するためのプラットフォーム技術です。
- API: CRMや業務システムなど外部サービスと連携し、情報取得や更新を行うためのインターフェース技術です。
- CUA(Computer-Using Agent): AIエージェントが人間の代わりにコンピュータ操作(GUI操作など)を実行する技術です。
- MAS(Multi Agent System): 複数のエージェントが連携・協調する分散型システム設計思想で、複雑なタスク処理に用いられます。
- AIエージェントの開発で使えるフレームワークは?
AIエージェントの開発に有効なフレームワークとして、以下の5つがおすすめです。
- AutoGen: マルチエージェント会話フレームワーク。
- LangChain: LLMアプリケーション開発の汎用フレームワーク。
- Mastra: TypeScriptベース、ワークフロー管理に優れたフレームワーク。
- OpenAI Agents SDK: OpenAI提供の軽量かつ柔軟なエージェント構築フレームワーク。
- Amazon Nova Act: Web操作特化型AIエージェントSDK。
- CrewAI: 自律的なAIエージェントチーム構築フレームワーク。
- Agno(旧Phidata): マルチモーダルAIエージェントの構築に特化した次世代フレームワーク
- Azure AI Agent Service: Microsoft提供のフルマネージド型開発基盤。
- LangGraph: LangChainの拡張で、グラフ構造でワークフローを設計・管理。
- Semantic Kernel: Microsoft提供、LLMをアプリに統合するSDK。
- PraisonAI: マルチエージェント型AIシステムのローコード構築・管理フレームワーク。
- Vertex AI Agent Builder: Google Cloud提供のフルマネージド型開発プラットフォーム。
- AIエージェントを開発する上での注意点は?
AIエージェントの開発においては、以下の点に注意しましょう。
- システムの設計とエラー管理
- 出力結果の説明性・透明性の確保
- AIが担うタスクの選定
- フィードバック体制の構築
まとめ
AIエージェントの開発は、業務設計・データ基盤・技術選定・継続的な改善体制を統合的に構築する高度なプロセスです。また、Azure AI Agent ServiceやLangGraphといったフレームワークを活用することで、高精度なAIエージェントの構築が可能です。
AIエージェントの開発は、多岐にわたる技術要素と業務理解が求められる取り組みです。特に、自社の状況に最適化された設計や、複雑なシステム連携、継続的な精度改善などを目指す場合、専門的な知識や経験がプロジェクトの成否を大きく左右します。
もし、より詳細な技術選定や開発計画、あるいは特定の課題解決について専門的なアドバイスが必要だと感じられた際には、経験豊富な専門家やベンダーに相談することを検討してみてください。
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