アノテーション作業は外注?内製?ツール活用?注意点・トラブル対策方法を解説
最終更新日:2024年09月23日
AIモデル構築に必須の作業であるアノテーション。アノテーションを利用して教師データを作成しなければ、機械学習を進めることができません。しかし、「ツールを使えばアノテーションは内製で作業可能?」「アノテーションを外注する際の注意点は?」「アノテーション作業中に問題が生じたらどうする?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
関連記事:「アノテーションとは?AIでの必要性や種類・作業方法徹底解説!」
この記事ではアノテーション作業の基本から課題、課題解決のための対策について解説します。アノテーションサービス会社を利用するメリットやポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
また、AI Marketでは、アノテーション代行サービス会社の紹介も行っています。アノテーション代行サービス会社の比較・選定に迷ったり、アノテーションの依頼方法がわからなかったら、AI Marketの専門のコンサルタントが適切なアノテーション代行サービス会社の選定を無料でサポートします。もちろん、アノテーションツールのご紹介も可能です。いつでもお気軽にご相談ください。
外部のアノテーション会社への作業委託を考えられている際は、プロ厳選おすすめアノテーション会社紹介記事をご参考ください。
目次
アノテーション作業は内製?外注?どちらが有利?
アノテーションはAIシステム全体の制度を左右しますし、社内の重要機密情報を扱うこともあるのでアノテーションは内製化したいと考える企業も多いでしょう。内製化に向けて、多くの企業が直面する課題を以下で説明します。
AIシステムを自社で導入・開発する際の流れをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
人材の確保が難しい
アノテーション業務を進めるには、AIに関する知識を保有した人材が必要です。AI業界は人材が潤っているわけではないので、集中力と忍耐力の必要になるアノテーション業務を継続できない可能性があります。
AI開発の知見を持つ人材はどの業界においても重宝されますが、最適な人材が少ないのが課題です。日々蓄積され、多種多様に変化していくビックデータを適切に取捨選択し活用していくのは安易なことではありません。
おすすめのAI人材育成・人材教育サービスと選定のポイントの記事では、AI人材育成・教育に関することを解説していますので、あわせてご覧ください。
作業時間の確保が難しい
AIの性能を左右するアノテーション業務ですが、良質な教師データを用意し、学習させるためには一定の時間が必要です。AI開発の要件を満たすアノテーションデータを準備するため、膨大なアノテーション作業に追われてしまい、コア業務に集中できない可能性があります。
また、その膨大な作業を社内のリソースで行おうとすると、どうしても限られたリソースしか準備ができないため、プロジェクトにかけられる時間の大部分を使ってしまう可能性もあります。
とは言え、アノテーションの準備を妥協してしまうと、期待していたAIの開発ができなくなり、想定以下のパフォーマンスしか発揮できません。アノテーション業務以外にも、モデル構築や精度検証、チューニングなども行う必要があるため、十分な時間が確保できないでしょう。その場合、時間がかかりコア業務の妨げになる可能性があります。
アノテーションの実施方法は他にもある
アノテーションを実施する方法は、主に以下3つです。
作業方法 | 概要 |
---|---|
アノテーションツール(内製)を使用 | 自社にAIの開発担当者がいる場合 開発担当者の人手が不足しており、業務や開発をより効率して行いたい企業 |
アノテーションサービスを外注 | アノテーションを実施したいが自社に専門知識をもつ人がいない場合 アノテーション業務を委託したい場合 |
データ収集のみ外注 | アノテーションツールを用いて内製開発を行う場合でも、データセット(教師データ)の作成・収集を外注 |
近年、無料で使用できるアノテーションツールなども出ています。無料ツールとアノテーションサービスを有効活用し開発を進めていくのもよいでしょう。自社の開発環境や体制を考慮しながら、適した実施方法を選択ください。
アノテーションサービス会社を利用するメリット
自社で対応すると課題の多いアノテーション業務ですが、外部委託することで効率的にAI開発を進められます。ここでは、アノテーションサービス会社を利用するメリットについて解説します。
コア業務に注力できる
アノテーションサービス会社を利用することで、業務にかける時間がなくなるため、コア業務に注力できます。アノテーション業務を自社で行う場合、コア業務と並行しながら作業を進める必要があります。
そのため、開発要件の作業によっては、十分にコア業務の時間を取れないことが課題としてありました。一方、アノテーションサービス会社に作業を委託することで、自社で人的リソースを割くことなく、自社の重要な業務に専念できます。
重要な業務に力を入れることで、部門全体の生産性を大きく向上させられるでしょう。
人件費を抑えられる
アノテーションサービス会社に作業を委託することで、自社内のリソースを使うことなく、人件費を抑えることが可能です。自社でアノテーション業務を進める場合、AIに関する知識・技術を保有した人材を確保する必要があります。
アノテーションだけに人材を確保することで、人件費や管理コストが発生し、企業にとっては大きな負担となるでしょう。しかし、アノテーションサービス会社を利用することで、新たに人材を確保する必要がなく、人件費を抑えながら開発作業を進められます。
教育コストがかからない
アノテーションサービス会社に依頼すれば、人材教育コストを抑えることができます。専門の人材を確保した場合、業務を進めるための教育を一定期間施す必要があります。
しかし、アノテーションサービス会社は別途人材を確保・教育することなく、教師データが必要なタイミングに依頼するだけです。人材を雇用・教育するコストや時間がかからないため、効率的に開発を進められるでしょう。
アノテーション業務を全部請け負う事業者については、プロ厳選!アノテーションサービス会社を参考にしてください。
アノテーションサービス会社を選ぶポイント
アノテーションサービス会社に作業を委託することで効率的なAI開発が進められますが、最適なアノテーションサービス会社を選ばなければ、スムーズに進めることはできません。ここでは、アノテーションサービス会社を選ぶポイントについて解説します。
- 自社の要件に適しているか
アノテーションサービス会社が、画像アノテーションを得意とする会社なのか、アノテーション用のデータ収集を得意とする会社なのかなど、アノテーションサービス会社の強みを確認しましょう。 - 利用コスト
アノテーションサービス会社へ依頼する際は、全体的な利用コストを確認しましょう。必要になる教師データの数や種類によってコストは異なります。 - セキュリティ体制
アノテーションサービス会社には、自社の重要なデータや情報を任せることになるため、セキュリティ体制の確認は欠かせません。
AI Marketでは、アノテーション作業で直面するトラブルを解決してくれる会社を紹介可能ですので、お気軽にご相談ください。
アノテーション作業で教師データを収集する際の重要ポイント
アノテーションの品質を左右する教師データ(データセット)を集めるうえでは、以下のようなポイントがあります。それぞれについて説明します。
データの種類を決める
構築したいAI(人工知能)モデルによって、必要となるデータセットの種類が変わります。
- 画像認識モデルを構築するのであれば、識別対象となる画像
- 自然言語解析モデルを構築したいのであれば、その対象となる文章
- 音声認識モデルを構築するのなら、その対象となる音声データ
- 予測モデルを構築するのであれば、関連する数値データ
当然ですが、これらのデータを大量に収集する必要があります。もう少し具体的に見ていきましょう。
- 自動運転(画像認識)のモデルであれば、車から撮影した映像ファイル
- 顔認識のモデルであれば、顔写真の入った画像ファイル
- 建造物の劣化具合を識別するモデルであれば、サビや傷の入った建造物の画像ファイル
- チャットボット用の言語認識モデルであれば、チャットコミュニケーションで発生する口語文章
このように、構築したいモデルに合わせてインプット対象となる元データを集めていきます。
プロ厳選!AI学習用データ収集に強い会社の記事では、AI学習に必要なデータ収集についてやおすすめの会社を紹介しております。あわせて、ご覧ください。
膨大なデータ量が必要
AIの精度向上のためには膨大なデータ量を集めなければなりません。少ないデータでは学習量が足りず、精度の高いAIを実現することはできません。そのため、AIを導入したとしても精度が悪く意味のないものになってしまいます。
無償のデータセットは活用できる?
近年AI(人工知能)の活用が盛んになってきており、大学や研究機関などが、アノテーション済みのデータセットを無償公開するケースも増えています。これらのデータセットを活用すること自体はもちろん可能ですし、自社が構築したいAIモデルに合致した適切なデータであれば、ぜひ活用しましょう。
公開されているデータの多くは、訓練用、検証用、テストデータ用に既にアノテーション済みになっており、活用できる形式になっています。
ただし、自社で構築したいモデルは、多くの場合において、自社専用の固有モデルであり、これらのデータセットが活用できるかどうかはしっかりと見極める必要があります。
例えば、自社工場で製造した部品の不良品を識別する画像認識モデルを構築するためには、その自社工場で製造した部品の画像が必要になりますが、このデータは当然ながら自社でしか手に入りません。
顔認識のモデルのように、汎用的なモデルであれば、活用できるデータセットは多くありますので、探してみるとよいでしょう。
尚、公開されているデータセットのなかには、商用利用ができないデータセットもありますので、その観点でデータセットを確認することも必要です。
有償データセット提供サービスも
データセットと聞くと、上述のような無償データセットを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は民間の会社が提供しているデータセットも多くあります。
このデータセットでは、無償で提供されているデータセットには含まれていないようなニッチなデータ(マスク付きの顔写真画像やキーポイントアノテーション済みの顔画像データ、赤ちゃんの泣き声など)を提供している場合もありますので、データセットの購入を検討してみるのも良いかもしれません。
データの質が重要
アノテーションでは、データの質も非常に重要です。データの扱い方や教師データに間違いがあった場合、AIが思うように学習できず間違った判断をしてしまうなど、品質低下につながりかねません。
品質管理を行う上で、アノテーション作業者の習熟度も重要な要素ですが、最も重要になるのは、アノテーション作業要件と言えるでしょう。アノテーション作業要件とは、対象となるデータに対して、「どのような判断ロジック」で「どのように」アノテーションを行うのか、を明示化することを指します。
この要件がブレると、どれだけ作業者が正確にアノテーション作業を行おうとしても、品質はほとんどの確率でバラつきます。
作業前の要件明確化が重要
アノテーション作業を行う前に、可能な限りアノテーション要件を明確に定め、また、アノテーション作業を行う方と認識を統一できるように進めていきましょう。
ただし、判断ロジックに人の判断が入ってしまう場合などもどうしても出てきます。その場合は、極力作業者とその理解を統一し、その判断ブレの許容範囲を決めておくと、作業品質として明確化ができてよいでしょう。
また、画像のアノテーション作業などにおいて、どのように、を細部まで決めすぎてしまうと、作業者の作業負荷が大きく上がってしまいますので、ここも作業者と話しながら、バランスを取って決めていきましょう。
AI Marketでは、データセットを提供している会社の紹介も可能ですので、よろしければぜひご相談ください。
アノテーション作業で問題発生した場合の解決方法
内製で行おうと、外注で行う場合でもアノテーションで生じた問題を解決する対策について解説します。
業務管理と作業プロセス改善
アノテーションにおける課題を解決するためには、業務管理と作業プロセスを効率化する必要があります。
業務管理を実行するためには、人が対応する部分とAIで自動化する部分を明確にすることが重要です。人によるアノテーション作業は品質の担保は行いやすいものの、人的ミスが発生したり、どうしても作業コストが発生してしまうことは避けられません。そのため、どこからどこまでを人が対応するのか明確化し、AIによる自動アノテーションを適切に活用しながら、業務管理を実行すると良いでしょう。
作業プロセスの効率化には、アノテーション作業そのもの以外にも、抽出したデータの管理において、スクリプト・マクロの作成や作業基準の見直しなど、複数の手法が存在します。自社にとって最適な手法を選択することが重要です。
何度も繰り返す作業を自動化し、本当に人の作業が必要な部分を限定することで、作業プロセスの効率化が期待できるでしょう。
アノテーションツールの見直し
アノテーションに利用しているアノテーションツールを見直しすることも課題を解決する大きなポイントです。
アノテーションデータの管理しやすいツールや、複数人で実施しているアノテーションの作業進捗管理が行いやすいツール、AIによる自動アノテーションを組み込んでいるアノテーションツールなど、アノテーションツールも進化していますので、アノテーションツール自体を見直すことも検討してみてはいかがでしょうか。
特に最近は、アノテーションツールの多くがクラウド型で提供されているため、社内のパソコンに一つ一つインストールする必要もなく、簡単に使えるアノテーションツールがほとんどです。
アノテーションツール厳選記事では、AI Marketが厳選したアノテーションツールを紹介していますので、ぜひご覧ください。
品質管理方法を改善する
アノテーション作業で品質を管理する方法を紹介していきます。実際にアノテーションサービス会社が行う品質管理の取り組みの一例です。
1人作業 | アノテーター1人による実装・チェック |
1人作業と1人検品 | アノテーター2人による実装・チェック ※1人はアノテーションを行い、1人はデータのチェックがメイン |
1人作業と複数人検品 | アノテーター1人が実装し、複数人で検品する方法。 |
複数人並行作業 | 複数のアノテーターが実装し、多数決で結果を採用する方法。 |
1人作業
この方法は、アノテーション作業を1人のみで行う手法です。難易度が非常に低い、予算がどうしても限られている、属人的な作業となる可能性が高い場合、信頼に足る作業者が行う場合、に取るべき手法でしょう。
ただし、人為的ミスが起こる可能性は防ぎきれませんので、極力アノテーション作業は1人のみで行うことは避け、品質の高い作業となるようにしていくべきです。
1人作業と1人検品
この手法は、アノテーション作業を行う上で最も一般的かもしれません。1次作業者がアノテーション作業を行い、その後、1人の検品者がその作業をチェックするというフローです。この場合、1次作業者が意図せずミスを犯したとしても、検品者が発見することが可能となります。
また、この際、検品者が修正作業を行うか、1次作業者に修正指示を戻すか、という2つのパターンがあります。どちらのケースでも対応は可能ですが、検品における修正率などを元に判断していくのが良いでしょう。
尚、修正率が低い場合には、ピックアップ検品という形で、ランダムに検品する対象を決めて行うことも1つの手法です。この場合は、検品率(作業件数に対して何件検品を行うのか)を決めておきましょう。
1人作業と複数人検品
この手法は、とにかく品質を重視したい場合に取るべき手法です。
基本的な流れは1人が作業を行います。その後検品するという流れは変わりませんが、難易度が高いアノテーション作業においては、検品者がミスに気づかないケースも発生する場合がありますので、セマンティックセグメンテーションなど、特に細かい作業を行う際などに検討をしてもよい手法です。
ただし、当然ながらその分アノテーション全体の作業工数は上がりますので、予算や時間的制約も踏まえて検討しましょう。
複数人並行作業
複数人で並行作業を行うアノテーション作業もあります。これは、アノテーション作業自体が0か1かの判断ではなく、主観による判断を含む場合に多く利用される手法です。
例えば、自然言語分類において、指定文章がポジティブかどうか、であったり、顔写真を見て笑っているかどうか、といった作業者によって判断が変わってくるケースなどで取られる手法です。
この場合、何人が並行作業をするべきか、は判断の難しさや予算を元に検討を行う必要がありますが、並行作業の場合、3人以上で実施し、多数決で結果を判断していく、という形が良いでしょう。
アノテーションサービス会社へ依頼する
コストとの兼ね合いですが、最も早くアノテーションにおける課題を解決する手段として、アノテーションサービス会社へ依頼も考えましょう。アノテーションはAIに関する一定の知識と技術があれば自社対応できる作業ですが、膨大な数のデータにタグ付けが必要です。
そのため、上述の通り、人的リソースの確保やコア業務に時間を割けないなどの課題が発生します。外部のアノテーションサービス会社に依頼することで、自社でリソースや知見を確保することなく、AI開発をスムーズに進められます。
アノテーションサービス会社には、専門知識や経験を持った従業員が複数在籍しているため、自社で作業を進めるよりも高い効率が期待できるでしょう。
AI Marketでは、アノテーション作業で直面するトラブルを解決してくれる会社を紹介可能ですので、お気軽にご相談ください。
アノテーション作業についてよくある質問まとめ
- アノテーション作業で教師データを収集する際の重要なポイントは何ですか?
教師データ収集の重要ポイントは以下の通りです。
- 構築したいAIモデルに適したデータの種類を決める
- 精度向上のため膨大なデータ量を確保する
- 無償のデータセットの活用可能性を検討する
- データの質を重視する(間違いのないデータ)
- 作業前にアノテーション要件を明確化する
- アノテーション作業で問題が発生した場合、どのように解決すればよいですか?
アノテーション作業の問題解決方法は以下の通りです。
- 業務管理と作業プロセスの改善
- アノテーションツールの見直し
- 品質管理方法の改善
- アノテーションサービス会社への依頼
アノテーション作業に関する相談はAI Marketへ
本記事では、アノテーションの基本から課題、課題解決のための対策について解説しました。自社でアノテーション業務を進める場合、人材の確保・教育やコア業務に十分な時間を割けないなどの課題が発生する可能性があります。
そこで、アノテーションサービス会社を利用して担当者の負担軽減、作業の効率化を図ることが重要です。しかし、どのようにしてアノテーションサービス会社を選定すればいいのかわからないケースも多いのではないでしょうか。そのような場合は、ぜひAI Marketへご相談ください。
AI Marketでは、アノテーション代行サービス会社の紹介を行っています。アノテーション代行サービス会社の比較・選定に迷ったり、アノテーションの依頼方法がわからなかったら、AI Marketの専門のコンサルタントが適切なアノテーション代行サービス会社の選定を無料でサポートします。もちろん、アノテーションツールのご紹介も可能です。いつでもお気軽にご相談ください。
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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