PyTorchとは?Pythonの人気ライブラリの使い方・メリット・デメリットを徹底解説!
最終更新日:2024年09月27日
PyTorchは、Pythonで利用できる強力な機械学習ライブラリです。Facebook(現Meta)の人工知能研究グループによって開発され、直感的な操作性と柔軟性を兼ね備えています。
音声認識や画像認識など幅広い分野で活用でき、大規模データの処理にも対応。クラウドサービスとの連携も充実しており、AIシステム開発の強力な味方となるでしょう。
この記事では、PyTorchの基本的な知識や使い方、メリット・デメリット、インストール方法などを解説します。
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目次
PyTorchとは?
PyTorchとは、AIやWebサービスの開発・研究に使われるオープンソースの機械学習ライブラリです。プログラミング言語「PyTorch」向けのライブラリツールとして、2016年にFacebook(現Meta)の人工知能研究グループが開発・公開しました。
主にディープラーニングの分野で使用されており、その使いやすさと柔軟性から多くの開発者や研究者に支持されています。
PyTorchは動的計算グラフを採用していて、柔軟で直感的に使うことができ、コードのデバッグや開発が容易になります。他のライブラリと比較すると操作性に優れ、柔軟性のあるコーディングで効率的なプログラミングが可能です。機械学習のプログラミングは高度な専門知識が必要となるため、PyTorchの活用が不可欠です。
PyTorchはAIやWebアプリ・サービスの開発といった領域で活用され、Pythonと合わせて利用されます。
PythonにおけるPyTorchの役割
PyTorchは、Pythonでディープラーニングモデルを開発するための強力なオープンソースライブラリです。Pythonにおけるディープラーニング開発の攻略本のような役割を果たしています。
ライブラリとは、プログラミングにおいて利用される機能やツールをまとめたデータのようなものです。ライブラリは機械学習のプログラミング、特にニュートラルネットワークの設計に役立ちます。
機械学習にはニュートラルネットワークの構築が必要ですが、これには高度で複雑な計算やプログラミングを行わなければいけません。Pythonに慣れたユーザーでも難しいとされていましたが、PyTorchによって柔軟でリアルタイムでのコーディングが可能となり、機械学習のハードルを大幅に下げています。
PyTorchはPythonのライブラリとして開発された専用のツールです。PyTorchはPythonの文法や構造に沿って設計されているため、Pythonプログラマーにとって学習しやすく使いやすいフレームワークです。Pythonの攻略本がPyTorchである、という認識だと分かりやすいでしょう。
PyTorchの活用方法
多様なディープラーニングタスクに応用できるPyTorchは、さまざまな分野で実用することが可能です。PyTorchの主な活用方法を4つ解説します。
音声認識
音声認識AIについても、PyTorchは開発をサポートすることが可能です。torchaudioライブラリを使用して音声データを読み込み、音声データの前処理からモデルの構築、トレーニング、評価までのプロセスに対応できます。
議事録の自動記録や音声認証システムの導入など、さまざまな業務を効率化するために音声認識技術は欠かせません。PyTorchは音声認識の分野で、データ処理の柔軟性と高度なモデリング能力を提供し、実用的な音声認識AIシステムの開発をサポートします。
関連記事:「AIによる音声認識の仕組みとは?何ができる?技術や企業の活用事例を徹底解説!」
画像認識
PyTorchは画像認識の領域で広く利用されており、画像分類やセグメンテーションなどさまざまなタスクに応用されています。
画像認識AIは、監視カメラ映像の解析や顔認証システムの導入などに効果的です。これらのタスクにおいて、PyTorchは実用的かつ高精度なソリューションを提供します。画像解析のプログラミングも高度であるため、PyTorchによって自社でシステムを構築できるようになるでしょう。
PyTorchはAI技術の研究・開発のプラットフォームとして優れており、最新のアルゴリズムや技術を試すための環境を提供します。これにより、自社に最適な画像解析システムを設計し、業務の効率化やセキュリティの向上などが実現できます。
物体検出
物体検出AIは、画像内の物体を認識する技術であり、コンピュータビジョンの中でも重要な要素です。PyTorchは物体検知に優れたフレームワークを提供しており、さまざまなアプリケーションで利用されています。
PyTorchの豊富なライブラリやツールセットを活用することで、画像データの処理や拡張が可能です。例えば生産現場において、規格に適していない商品を自動で選別し、人的ミスを削減できるといった活用方法があります。
テキスト生成
与えられた入力テキストに基づいて新しいテキストを生成するテキスト生成AIは自然言語処理(NLP)の一分野であり、PyTorchはこの領域で強力なツールとして利用されています。
PyTorchのシンプルな操作性と動的計算グラフの特性を活かして、複雑な言語モデルの構築とトレーニングが簡単に実施できます。LSTMやGRUなどのリカレントニューラルネットワークを用いることで、自然なテキスト生成が可能となります。
ChatGPTのような高度な対話が可能な生成AIほどの開発は難しいにしても、基本的なテキスト生成であればPyTorchで開発できるでしょう。迅速にプロトタイプを作成し、実験を行うことができます。
関連記事:「生成AIとは何かが5分でわかる!代表ツールを種類別に徹底解説!仕組み・使い方は?」
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PyTorchの6つのメリット
PyTorch以外にもPythonで利用できるライブラリは存在しますが、PyTorchが多くの開発者に利用されるのにはメリットがあるからです。ここでは、PyTorchのメリットを解説します。
直観的な操作でコーディングできる
PyTorchは直感的な操作によるコーディングが可能です。PyTorchのAPIは、Pythonユーザーにとって親しみやすい構文が採用されています。これにより、機械学習のモデル構築やトレーニングプロセスがシンプルかつ直感的に行えます。
例えば、テンソルの操作にはtensor.view()
やtensor.sum()
のようなメソッドが用意されており、Pythonのリストや辞書とよく似た感覚で扱うことができます。また、torch.nn
モジュールを使えば、ニューラルネットワークの構築が非常にシンプルに行えます。
また、動的計算グラフも直観的なコーディングに貢献しており、効率的にモデルを改善することが可能です。これは、計算グラフがプログラムの実行時に動的に構築されることを意味します。動的計算グラフを使えば、各イテレーションでモデルの構造を柔軟に変更できるため、効率的にモデルを改善することが可能です。
初心者から専門家までの幅広いユーザーが直感的に操作できるなど、PyTorchは使いやすさが重視されています。
大規模なデータセットの処理も可能
PyTorchは、大規模なデータセットの処理に優れています。PyTorchではCUDAというプログラミングモデルをサポートしているため、GPU(画像処理装置)による複数のタスク処理が可能です。CUDAは、NVIDIA社が開発したGPU向けのプラットフォームです。
関連記事:「CUDAとは?NVIDIAが開発したGPU活用技術の仕組み・アーキテクチャ・応用分野を徹底解説!」
ディープラーニングでは、大量のデータを用いてモデルを学習させる必要があります。特に、画像分類や自然言語処理などのタスクでは、数十万から数百万規模の大規模なデータセットを扱うことが一般的です。例えば、画像分類の代表的なデータセットであるImageNetは、100万枚以上の画像を含む巨大なデータセットですが、PyTorchとGPUを使えば、このようなデータセットを用いた学習も現実的な時間で完了できます。
PyTorchはこれらの大規模なデータを高速で処理し、防犯カメラやテキスト生成などの実用化にも貢献します。
主要なクラウドサービスの多くを利用できる
PyTorchでは、以下のクラウドサービスを利用することができます。主要クラウドサービスにPyTorchは対応しているため、PyTorchを使い慣れたクラウド環境で利用することが可能です。
- Amazon Web Services(AWS)
- Google Cloud Platform(GCP)
- Microsoft Azure
AWSの場合、PyTorchを使ったAI開発に特化したサービスとして、「Amazon SageMaker」が提供されています。SageMakerは、PyTorchを含む主要な機械学習フレームワークをビルトインで提供しており、API一つで簡単にPyTorch環境を構築できます。
GCPでは、「Google Colaboratory」というJupyter Notebookの環境が無料で利用できます。Colaboratoryには、PyTorchがプリインストールされており、GPUも無料で利用可能です。
Azureでも、「Azure Machine Learning」というサービスでPyTorchがサポートされています。
クラウドサービスは高度なハードウェアリソース(GPU・TPU)を提供しており、PyTorchのパフォーマンスを最大限に引き出せます。これにより、大規模なデータセットや複雑なモデルも効率的な処理を可能にし、AIの開発環境を整えられます。
コミュニティが活発
PyTorchは豊富なリソースとアクティブなコミュニティに支えられています。公式サイトには、60分でPyTorchの基礎が学べる「Deep Learning with PyTorch: A 60 Minute Blitz」や、画像分類、自然言語処理、強化学習などの具体的なタスクを解説した「PyTorch Tutorials」など、充実したチュートリアルが用意されています。
これらのリソースを活用することで、エンジニアはPyTorchの使い方を効率的に習得できます。
シンプルで柔軟なモデル構築が可能
PyTorchは柔軟なモデル構築が可能です。例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を構築する場合、torch.nn.Conv2d
を使ってたった数行のコードで畳み込み層を定義できます。この柔軟性により、研究者は新しいモデルのアイデアを迅速にプロトタイピングし、エンジニアは複雑なモデルを効率的に実装できるのです。
NumPyと類似性が高い
PyTorchのテンソル操作は、NumPyと非常に類似しています。NumPyは、Pythonにおける科学計算ライブラリの代表格であり、多くのエンジニアに親しまれています。
例えば、テンソルの要素wise積は、NumPyのnumpy.multiply()
に対応するPyTorchのtorch.mul()
を使用します。このような類似性により、NumPyに慣れているエンジニアにとって、PyTorchのテンソル操作は直感的に理解しやすいのです。
PyTorchのデメリット
PyTorchを利用する上で、デメリットとなり得る点に注意しなければいけません。PyTorchのデメリットとして代表的なものを3つ解説します。
情報の多くが英語
PyTorchの公式サイトやチュートリアルの多くは英語で提供されており、日本語での情報が限られています。英語に不慣れなユーザーにとっては、PyTorchの学習やトラブルシューティングが難しくなる可能性があります。
また、サポートリソースも英語で運営されているケースが多いため、日本語でのPyTorch活用がしにくいと感じる方もいるでしょう。必要な情報を理解するには、PyTorchやPythonに関する専門的な知識や英語でのコミュニケーションが求められます。
研究や開発、実験向けのライブラリツールである
PyTorchが持つ機能やライブラリは、主に研究や開発、実験向けのツールとして活用されています。高度で専門性を要するレベルであり、実務向けのツールではありません。そのため、企業が期待するサービスと実際のサービスには差があるかもしれません。
TensorFlowといった他のライブラリと比べると、PyTorchを活用できるのは一部のエンタープライズであり、機能やサポート体制は限定的であるとされています。一般的な企業がプロダクション環境での長期的な運用やサポートとしてライブラリを活用する場合には、PyTorchは選ばれにくいでしょう。
TensorFlowは静的計算グラフを使用し、大規模な本番環境に適しています。PyTorchは研究開発向け、TensorFlowは商用プロダクション向けと言えるでしょう。目的に合わせて使い分けることが大切です。
関連記事:「TensorFlowとは?特徴・使い方・Pytorchとの違いを徹底解説!」
コーディングやプログラミングの専門知識が必要
PyTorchを効果的に活用するには、コーディングやプログラミングの専門知識が必要です。PyTorchは優秀なライブラリですが、前述したように研究や開発、実験向けのツールであり、難解なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に設定されています。
APIとはソフトウェアやプログラムの接続点を指します。PyTorchのAPIは設定項目や機能が多く、人間の言語に転換されずに表示されるため、コーディングやプログラミングの専門知識が必要となるのです。
そのため、初心者はもちろんPythonユーザーでも扱うのは難しいでしょう。直観的に利用できると解説しましたが、実用的なレベルまでには落とし込めていないのが、PyTorchのデメリットです。
PyTorchのインストール方法
PyTorchのインストールは、Pythonをダウンロードしていることが前提です。Pythonが利用できる状態にある上で、PyTorchは以下の手順でインストールできます。
まずはPyTorchの公式サイトにアクセスし、インストールガイドを確認します。ここでは、使用する環境(OS・パッケージ管理システム・Pythonのバージョン・CUDAのバージョンなど)に基づいて最適なコマンドが表示されます。
「Run This Command:」より下に表示されるコマンドをコピーし、ターミナルに貼り付けて実行します。
Anacondaを使う場合は、以下のコマンドを実行するだけで、PyTorchがインストールされます。Anacondaは、Pythonの包括的なパッケージ管理システムです。Anacondaをインストールすると、PyTorchを含む主要な科学計算ライブラリが一括でインストールできます。
conda install pytorch torchvision -c pytorch
pipを使ったインストール pipは、Pythonのパッケージ管理システムの一つです。以下のコマンドを実行することで、PyTorchをインストールできます。
pip install torch
インストールが完了したらPythonを起動し、PyTorchが正常にインストールされていることを確認します。
PyTorchについてよくある質問まとめ
- PyTorchとPythonの違いは?
PyTorchはPythonで活用できるライブラリツールの一つで、Pythonでのコーディングをサポートします。
- PyTorchはどんなことに活用できる?
- テキスト生成
- 音声認識
- 画像解析
- 物体検知
ただし、PyTorchの活用はPythonを利用することが前提です。
- PyTorchとTensorFlowの違いは何ですか?
PyTorchは動的計算グラフを採用し、柔軟で直感的なコーディングが特徴。一方TensorFlowは静的計算グラフを使用し、大規模な本番環境に適しています。PyTorchは研究開発向け、TensorFlowは商用プロダクション向けと言えるでしょう。目的に合わせて使い分けることが大切です。
まとめ
この記事では、PyTorchの基礎知識や活用方法、メリット・デメリットを解説しました。PyTorchはディープラーニングを実現する最先端のライブラリである一方で、実用的なツールとは言えません。
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