【広告業界のAI活用事例9選】オーディエンスセグメント最適化、クリエイティブ自動作成、ビッグデータ効果計測まで幅広く活用
最終更新日:2024年11月05日
日本での広告費は電通の調査によると、2019年に初めてインターネット広告(web広告)費が地上波テレビ広告費を超えました。2020年にはその差がさらに開いており、今後もどんどん差が拡大していくことが見込まれています。その中でも成長を牽引しているのは、SNSや動画共有サービスの市場での動画広告です。
世界に目を向けると圧倒的な市場をGAFA系企業が独占しており、広告業界にも多大な影響を与えています。特に広告のAI活用を積極的に進めています。
広告の市場は拡大を続けていますが、新聞やラジオなども含めるとすべてが成長しているとは必ずしもいえず、特にインターネット広告はAI技術を活用するなどし、新手法を開拓しながらの競争はより一層激しさを増していくでしょう。その流れの中で広告のAI利用はこれまでよりも一層スピードを増しながら進められていくと考えられます。
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目次
インターネット広告業界における業務
インターネット広告業界での業務には、主に以下のものがあります。まずは、どのような業務があるのかを詳しく見ていきましょう。
クリエイティブ制作
静止画やテキストだけでなく、最近ではよりリッチな広告が生み出されてきています。特に動画広告は訴求力が高く、YouTubeなどの動画投稿サイトや、SNSにも多くが配信され、成長に大きく貢献しています。
画像生成AIの広告制作での活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
広告効果の評価
広告がユーザーにいかに影響を与えているかを評価することは重要ですが、広告対象のサービスや商品によって、どこを重視するかは変わってきます。
A/Bテストで、どの広告クリエイティブが効果的かをテストしたり、CVR、CTRなどの指標を取得・計測したりして評価します。特に最近は、CPA(顧客獲得単価)を重要成果の指標とする企業が増えています。
広告の入稿業務
入稿業務は媒体ごとに設定する作業です。媒体によって、管理画面が異なったり、フォーマットが別々だったり、準備することが非常に大変な場合もあります。また仕様が変更された場合には随時対応する必要もあります。
広告ターゲットの選定
広告を配信するには、ターゲットを明確にしなくてはなりません。広く一般の人を対象とすることもあれば、学生や主婦などある層に向けて訴求する広告を作る必要性も出てきます。
基本的にROI(広告の投資対効果)を最大化することが重要で、限られた投資の中で最大限の効果が得られることが望ましいでしょう。
そのためには細かい指標である、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、CPA(顧客獲得コスト)などを参考にしながら、戦略を考えます。
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AIを活用することで、どのようなメリットがあるのか?
では実際、インターネット広告にAIを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
AIを広告業務に活用することで、これまでは経験や勘など属人化していたノウハウを誰でも使用することができます。
また、手作業が当たり前であったマーケティングプロセスをAIで自動化することによって、大幅な業務効率化を実現することも可能です。
他にも、広告を評価する指標には多くの種類のものがあるため、得られたビッグデータを分析することはこれまでは大変でしたが、AI技術の導入で高い精度で評価ができ、より効果的な広告制作が可能となってきます。
高性能なオーディエンスターゲティングであるDMP
サイトへの訪問履歴、商品の購入履歴など、ユーザーの属性を示すデータに基づいて一元管理し、広告を配信するための重要な仕組みがDMP(Data Management Platform)です。
比較評価を大量に行うとなると、人の手による作業ではとても大変ですが、これらのビッグデータ分析をAIでは高性能に短時間で解析可能です。
独創的なクリエイティブの自動生成
クリエイティブな広告を生成するには、独創的、創造的でなければなりません。そこでAIによって、これまでに存在しない画像を作るモデルが考え出されています。
具体的には、AIの一手法であるGAN(敵対的生成ネットワーク)とよばれるもので、現実世界のデータを学習することで、実世界に存在しないデータを量産可能なAI技術です。この技術を活用することで、クリエイティブに自動生成することができます。
架空の人物が作成できるため、独創的なだけでなく、本来だったら人物写真には規制や本人確認などの手間があったものもなくなるため、制作作業の簡略化も可能となりました。
また画像だけでなく、広告の文章を自動生成するAIも開発されています。設定されたキーワードに基づいてAIが広告効果が高いと予測する広告文を自動生成します。リスティング広告(検索連動型)に効果的です。
広告運用の効率化
Google、Yahooなどの検索エンジンで、検索したキーワードに連動して掲載されるのが「リスティング(検索連動型)広告」と呼ばれる広告手法で、検索ワードと関連の高い広告を表示することで、より効率的に購買意欲の高いユーザーに表示可能です。
リスティング広告用にキャッチコピーを作ったとして、A/Bテストを毎日数百本単位で比較評価することによって、効果的なものを選んでいくことになります。人の手によって考えながらテストし、修正してテストし、という作業はとても大変です。
これを顧客の声やSNSの反応による生の声によるビッグデータから分析された文章の候補をAIによって自動生成することで、量産でき、品質もあげることができます。このようにして広告運用が効率化が可能となります。
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広告サービスにAIを活用している活用事例9選
ここからは、実際に広告サービスにAIを活用している事例をいくつかご紹介いたします。
最適なオーディエンスを自動生成する「Black Crow」
Black Crowは、アメリカのニューヨークでサービス提供を開始した、リターゲティング広告の効果改善や、リアルタイムプリディクションを実現する、D2C顧客を中心に急成長中のサービスです。
サイトに訪れたユーザーの行動をAIによって解析し、そのサイトでコンバージョン見込み度合いによってユーザーをスコアリングします。
Black Crowによってスコアリングされたユーザーは、オーディエンスデータとしてFacebook広告にAPIを通して連携可能で、これらのユーザーをFacebook広告、Instagram広告で活用することができます。
これまで、リターゲティング広告は一般的に、サイトに来訪したユーザーに対してまとめて配信を行っていましたが、Cookie問題が大きくなる中で、広告効果が下がる傾向にあります。
そこでBlack CrowのAIを活用することで、サイトに来訪したユーザーの中でも、コンバージョン見込みのあるユーザーに限定して配信を行うことが可能になり、リターゲティング広告の効果改善に有効的です。
日本国内では、株式会社ontologyがサービスを提供しています。
facebook広告を自動チューニングする「ATELLI」
ATELLIは、テクノロジー先進国として昨今注目を浴びる台湾で提供が開始されたサービスです。
Facebook広告のターゲットKPI最適化を目的に、AIによるオーディエンスセグメント(アドセット)の自動生成・運用を行ってくれるサービスで、KPI目標の達成に向けて、オーディエンスセグメントを24時間365日自動で測定・生成・チューニングします。
ATELLIは、もともとインターネット広告代理店として活動を行っていましたが、自社の広告運用最適化を目的に構築されたサービスのため、自社の広告運用ノウハウを詰め込んで構築されており、Facebook広告の運用の煩わしさを解消することができます。
日本国内では、Black Crow同様、株式会社ontologyがサービスを提供しています。
ビッグデータによる行動予測を行う「Rakuten AIris」
楽天は自社のビッグデータを分析してユーザーの消費行動を深く理解し、マーケティングのソリューションとして活用を最大限できるAI「Rakuten AIris」を開発しました。
これを導入した企業は、購入可能性があるユーザーを選び出すことが可能で、広告配信をより効率的に行えます。
購買傾向、価格、ユーザーの属性など約920項目を分析して点数化し、購買実績がないユーザーから、購買したことがある人と似た特性を持つユーザーが選び出すことができ、新規顧客の開拓に、まだ購入していないけれども欲しいと考えている層に効率よく広告配信できます。
活用効果として、CVRがマウスウォッシュで207%、日用品で147%、洗剤で503%、銀行で153%改善という結果が出ました。
クリエイティブをAIによって評価する「AIアートディレクター」
大手広告代理店の電通グループの電通デジタルは、AIを活用したクリエイティブ評価機能「AIアートディレクター」を開発しました。作成したバナー広告の見栄えを評価でき、広告と商品の購買の影響、企業や商品のブランドイメージ向上につながるかなどの特徴を数値化します。
電通グループで広告デザインを指揮する社員に実際に広告の良し悪しの評価をしてもらい、そのデータをAIに学習させました。
広告素材の広告効果を予測する「MONALISA」
大手広告代理店の電通は、ソーシャルメディア向けの広告素材の効果を、配信前に予測可能にする「MONALISA」を開発しました。
Instagram、Facebook、Twitterの動画と静止画広告に対応でき、過去の広告配信データと広告素材を分析し、ユーザーが最後まで動画を見る割合、バナーをクリックする割合などを予測できます。
広告素材の特徴を数値化、広告配信の結果と結びつけたものをAIが機械学習します。配信後、実際の効果との関係を再びAIが学習、予測精度を高めることが可能です。
LTVの高いユーザーを獲得する「CrossX」
台湾発のAI関連スタートアップのAppierは、AIを活用したマーケティング支援ソフトウェアを開発する企業です。
「CrossX」はWebサイト利用者の好みをAIによって分析し、集客効果、LTVを高めるサービスです。
日本の主力ゲーム会社には、CVR600%、ROAS200%に到達の結果が出ました。
また、フランスのスーパーマーケットであるカルフールでは、売上25%増加、CTR87%増加、CVR40%改善という結果が出ています。
GoogleによるGoogle広告の自動化
Google広告は高スピードで自動化を進めており、さらなるビジネス拡大と効率化の実現を提案しています。
複雑だった広告コンテンツの作成をAIを使って、大幅に自動化し、簡単に作成可能としました。
広告主の設定した目標や予算額に応じて作成でき、広告の目的を指定することによって、AIを通じて適切なユーザーに適切な広告文やメッセージを設定して表示できます。
ネット広告をあまり利用したことのない中小企業にとっても、手軽な設定で展開可能です。
クリエイティブの効果予測を行う「AI feed designer Plus」
サイバーエージェントはネット広告にAIを活用することで、ダイナミックリターゲティング広告の商品画像の最適化を行う効果予測モデル「AI feed designer Plus」を提供しています。
ダイナミックリターゲティング広告とは、サイトに一度訪れたことがある人をターゲットとする広告の配信手法で、商品データと行動履歴を組み合わせて、ユーザーごとに最適な広告が表示できます。
商品データ内の複数画像から、広告効果の高いものを選択して最適なものを表示可能にします。CPAが最大で約20%改善していることを確認とのことです。
顔のイラストを生成する「cre8tiveAI」(彩ちゃん)
ラディウス・ファイブは、AIプラットフォームの「cre8tiveAI」にて、顔のイラスト生成AIの「彩ちゃん」を提供しています。
Deep Learningの技術を用いて顔のイラストの特徴を学習しています。イラストのデータを保存するのではなく、顔のイラストの特徴を学習して、顔としてあり得るものを生み出すという特徴があるので、世界に同じものが存在しないオリジナルイラストが生成可能です。
広告業界のAI活用についてよくある質問まとめ
- 広告業界でAIを活用するメリットには何がありますか?
広告業界でAIを活用するメリットには以下があります。
- 高性能なオーディエンスターゲティング(DMPの活用)
- 独創的なクリエイティブの自動生成
- 広告運用の効率化
- ビッグデータ分析による効果的な広告制作
- 属人化していたノウハウの一般化
- 広告業界のAI活用事例にはどのようなものがありますか?
広告業界のAI活用事例には以下のようなものがあります。
- Black Crow: 最適なオーディエンスの自動生成
- ATELLI: Facebook広告の自動チューニング
- Rakuten AIris: ビッグデータによる消費者行動予測
- AIアートディレクター: クリエイティブの評価
- MONALISA: 広告素材の効果予測
- CrossX: LTVの高いユーザー獲得
- Google広告の自動化
- AI feed designer Plus: クリエイティブの効果予測
- cre8tiveAI(彩ちゃん): AIによる顔イラスト生成
- AIを活用した広告技術はどのような効果を上げていますか?
AIを活用した広告技術は以下のような効果を上げています。
- Rakuten AIrisによるCVR改善(マウスウォッシュで207%、日用品で147%など)
- CrossXによる売上25%増加、CTR87%増加、CVR40%改善(カルフールの事例)
- AI feed designer PlusによるCPA最大約20%改善
- リターゲティング広告の効果改善
- 広告運用の自動化による業務効率の向上
- クリエイティブ制作の効率化と質の向上
まとめ
広告業界でのAI活用のメリットと具体的な事例をご紹介しました。効果的な広告を表示できるようにビッグデータを用いた分析による手法や、自動化によって業務の効率化や独創性のある文章や画像が作成できるサービスなどが開発されています。
効率的にできるところはAIに任せ、クリエイティブな作業に注力することで、質が高く多くの人に訴えることができる広告の作成が可能となるかもしれません。
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