AIはホテルでどう活きる?メリット・代替可能な業務や導入事例を徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
ホテルや旅館、ゲストハウスと言った宿泊業界でもAIの導入が進んでおり、人手に頼っていた多くの業務をAIで代替したり、AIでアシストできるようになっています。
適切なAIを導入することで「人手不足の解消」「人にしかできないおもてなしサービスへの集中」が可能になります。
本記事では、ホテルにAIを導入するメリットや代替できる業務、4つの活用事例を解説。AIの活用でどのように運営コストを下げることができるかや、144室規模のホテルを7人で運用している事例などを知ることができます。
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目次
AIをホテルに導入する5つのメリット
ホテルにAIを導入すると、経営コストを削減できたり、付加価値サービスを提供できるなどのメリットを得られます。
ここでは、ホテルにAIを導入する以下のメリットを説明します。
- 経営コストを抑えられる
- 海外客の対応がスムーズになる
- 労働環境が改善する
- 付加価値サービスを提供できる
- AIを用いた高度な顧客分析ができる
それぞれのメリットについて説明します。
経営コストを抑えられる
従来人が行ってきた業務をAIに任せることで人件費を圧縮し、経営コストを削減することが可能です。事務作業などの単純作業はもちろん、最近では受付にAIロボットを活用するホテルもあります。
ロビーや廊下などのシンプルな清掃区域であれば、AIを搭載した自走式ロボットでも清掃可能です。また、ベッドメイク作業の仕上がりを判定する画像分析AIを活用すれば、ベテランスタッフによるダブルチェックの手間を省けるので余計なコストを削減できるでしょう。
海外客の対応がスムーズになる
AIの自動翻訳機能を利用すれば、多言語の海外客へのスムーズな対応が可能です。これにより、言語能力の高いスタッフの負担が減り、スタッフ全員が全ての顧客に対応できるようになります。
また、AIが搭載された自動応答システムである「ボイスボット」を利用すれば、顧客の話した内容を理解し、それぞれの顧客に応じた最適解をボイスボット応答してくれます。海外客とのコミュニケーションが取れるようになれば、顧客満足度の改善も期待できるでしょう。
ボイスボットに関しては「ボイスボットとは?人件費・労力削減可能?」で紹介していますので、海外客とのコミュニケーション改善に役立ててください。
労働環境が改善する
AIにより、従業員の作業量が減り、労働条件を改善することができます。宿泊業界は慢性的な人手不足に悩まされています。その一因は長時間勤務や一部スタッフへの偏重業務などの良くない労働環境です。
例えば、AIを用いてスタッフのスケジュール調整を行うことで、より効率的な労働環境を作ることができます。スタッフの勤務状況や能力、業務量などを分析し、最適なスケジュールを作成可能です。これによって、スタッフの負担が軽減され、生産性が向上します。
また、ホテルでの業務は非常に多岐に渡り、新しいスキルを習得することが必要となります。AIを用いて、スタッフのトレーニング支援を行うことで、スタッフの負担を軽減できます。AIによる自己学習の機能を使って、スタッフが問題解決やサービス提供のスキルを習得できるでしょう。
人手不足により働き手がなかなか見つからない状況が続いていくと予想されていますが、より良い労働条件を提示できるため、雇用が比較的楽になるでしょう。
付加価値サービスを提供できる
事務作業や単純作業をAIに任せることで、人にしかできない「おもてなし」業務の割合を増やすことができるようになります。
特に受付接遇業務にAIを導入すると、機械的で冷たい印象になってしまうと思われがちです。しかし、AIを用いてチェックイン・アウトを自動化することで、フロントスタッフは顧客のお出迎えやサポートに集中できるようになります。
例えば、AIを用いて自動的に顧客の情報を把握し、ルームキーを発行するなどの業務を行うことができます。適切にAIを活用すれば人にしか行うことのできない業務に集中でき、接遇品質を向上させることが可能です。
このように、人とAIの棲み分けを適切に行うことで、これまで以上に付加価値サービスを提供できるようになります。
AIを用いた高度な顧客分析ができる
AIの高い計算処理能力を活用することで、より高度な顧客分析が可能です。AIの解析機能を活用することで、収集した全てのデータを有効に活用できるようになり、顧客のニーズをより深く理解できるようになります。
例えば、ホテルや旅館には宿泊者の属性情報や予約データ、レストランやスパなどの施設の利用状況、クレーム情報などの情報があります。これらのデータをAIによって分析することで、例えば「20代女性の宿泊者が増えている」といったような傾向を正確に捉えることができます。その結果、需要予測や商品開発などの意思決定がより精度良く行えるようになります。
またAIは、過去のデータから予約数の予測を行えるので、需要の高まりや低下などの予測が正確になります。その結果、宿泊料金の最適化やキャンセルリスクの軽減などにつながります。
こちらでAIによる需要予測の仕組みと活用事例を詳しく説明しています。
AIで代替できる6つのホテル業務
AIがホテルで代替できる業務は主に以下の6つあります。
- チェックイン
- コンシェルジュサービス
- ルームコール
- 清掃業務
- データ分析
- 予約管理
ここでは、それぞれがどのように代替されるのかを解説します。
チェックイン
チェックインは、AIロボットやAI搭載の入力パネルによって代替可能です。感染症対策としてパネルでのチェックインは積極的に取り入れられています。受付時に不明点があっても、ボイスボットやチャットボット機能が付いていれば、AIが質問内容を解析し、最適な答えを導き出してくれます。
学習していないことは答えられないため、スタッフが必要になることもあります。それでも、受付にずっと人がいる必要がなくなるため、スタッフの負担軽減にも繋がります。
コンシェルジュサービス
AIの膨大なデータベースを利用することで、より高度なコンシェルジュサービスを提供することが可能です。また、AIは休む必要がないため、コンシェルジュが不在ということもありません。
例えば、AIコンシェルジュに地元の観光情報やおすすめスポットなどの情報をプログラムすることができます。宿泊客が興味を持つ観光スポットやイベントを自動的に把握し、最適な旅行プランを提案することができるでしょう。
最近話題の観光型MaaSと組み合わせることで、オーダーメイドで最適な旅行プランを提案する試みも進んでいます。
さまざまな移動手段の検索、予約、決済をアプリ内で完結できる観光型MaaSについて、別記事で特集しています。
また、AIを用いて、宿泊客のニーズに合わせた部屋の照明やエアコンの操作、テレビのチャンネル変更などを自動的に行うことができます。これによって、宿泊客はより快適な滞在を楽しむことが可能です。
早朝や夜間でもコンシェルジュサービスが利用できるため、顧客により快適な時間を提供することができるでしょう。
ルームコール
ボイスボットを使えば、ルームコールの応対を自動化することができます。電話対応スタッフを常駐させる必要がないため、他の業務に人員を充てることが可能です。
また、AIの自然言語処理能力を活用すれば、多言語に対応した対応サービスを提供することができます。
自然言語処理については「自然言語処理とは?仕組み・3つの活用事例徹底解説!」で解説しておりますので、参考にしてみてください。
清掃業務
ロビーや廊下の掃除機がけといった簡単な場所であれば、AIの画像分析機能を搭載した機器で効率的に清掃できます。または、清掃の仕上がり具合をAIによる画像分析で確認できます。清掃員の数を抑えることができるため、経営コストの削減や、労働条件の改善が可能です。
カメラを搭載した清掃ロボットであれば、自動車の自動停止システムのように、人との衝突を防いでくれます。デザインを工夫すれば、見て楽しめる工夫を施すことも可能です。
データ分析
AI解析を用いれば、詳細なデータ分析を瞬時に行うことが可能です。活用次第では、レストランの在庫を管理して、食品ロスを減らすことなどもできます。
さらに、過去のデータや季節、月などから客足を予測し、最適なシフトを組むことが可能です。
また、データさえあれば、系列店が行った施策のベストプラクティスを、ある店舗に適用すると、どのような結果が出るかを数分で導き出すこともできます。
予約管理
AIを活用すれば、予約サイトからの予約を自動で管理できます。また、チャットボットが搭載されているシステムを利用すれば、予約前の顧客の疑問点にAIが即座に答えてくれます。
対話型AIチャットボットであるChatGPTのAPIやプラグインを活用して予約管理を自動化できれば、予約率も上げることが可能でしょう。
こちらでChatGPTの仕組みと使い方の注意を詳しく説明しています。
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ホテルのAI導入事例4選
ここでは、ホテルにAIを導入している事例を4つご紹介します。
ロボットが受付業務を担当(変なホテル)
エイチ・アイ・エスグループの「変なホテル」は、メインスタッフをロボットと考えるサービス方針でホテル運営をしており、受付業務などの多くの業務をAI搭載のロボットに任せています。
変なホテルでは、受付業務の他にも清掃業務や芝刈り作業をロボットに任せており、人件費のかからない仕組みで運営してきました。単純作業はAI搭載のロボットに任せられるため、144室の客室を7人で回すことに成功し、それぞれのスタッフが高い生産性を生み出しています。
客室へのAIスピーカー導入で17言語の顧客対応が可能に(小田急電鉄)
小田急の「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」は、TradFit 株式会社がホテル向けに開発・提供する多言語チャットボットを搭載したITサービスを375室全てに導入し、電話対応の手間削減と、多言語への対応を実現しました。
チャットボットは、備品の貸出受注を行ったり、従業員への問い合わせを行うことが可能です。17言語に対応しているため、幅広い国からの訪問客に対して対応することができます。
同社は、AIスピーカーとチャットボットの導入により、電話対応の手間や言語の壁がなくなるほか、それぞれの顧客に最適なおもてなしを行うことが可能になると考えています。
ロボットによるコンシェルジュサービス(ヒルトンホテル)
ヒルトンホテルでは、2016年からソフトバンクグループの傘下にあるフランス企業「Aldebaran」のNAOをベースに作られたロボットコンシェルジュサービスを展開し、AIを活用した周辺情報の提供を行っています。
AIは、顧客との対話を繰り返す毎に内容を学習し、人がその場面に応じた適切な修正データを教えることで対応の質を上げられます。
ヒルトンホテルでは、早期にAIを導入したことにより、多くの会話データを収集できています。早期からDX化を行うことで、ホテル環境に合わせたデータを収集し、顧客満足度を上げることが可能です。
予約業務の削減で月間30万円の手数料削減(SARASA HOTEL)
更紗ホテルズのSARASA HOTELでは、tripla株式会社のチャットボットを自社の予約サイトに導入することにより、月間30万円の手数料を削減することに成功しました。手数料の削減は、自社の利益率を向上に繋がるだけでなく、会員登録やLINEの友達追加に繋げやすいなどのメリットが多くあります。
また、チャットボットを導入することにより、顧客がより詳細なサービス内容を気軽に問い合わせられるようになり、顧客満足度の向上にも寄与しています。予約後のリピーター戦略に活かせるため、売上を着実に伸ばしていく導線作りにも役立つでしょう。
ホテル AI活用についてよくある質問まとめ
- ホテルにAIを導入するメリットは何ですか?
ホテルにAIを導入するメリットには以下があります。
- 経営コストの削減(人件費、運営コストの圧縮)
- 海外客への多言語対応の円滑化
- 労働環境の改善(業務効率化、スタッフの負担軽減)
- 付加価値サービスの提供(おもてなし業務への集中)
- 高度な顧客分析と需要予測の実現
- ホテルでAIが代替できる具体的な業務にはどのようなものがありますか?
AIが代替できるホテル業務には以下があります。
- チェックイン(AIロボットや入力パネルの活用)
- コンシェルジュサービス(AIによる観光情報提供、旅行プラン提案)
- ルームコール(ボイスボットによる自動応答)
- 清掃業務(AIロボットによる簡単な清掃、画像分析による品質チェック)
- データ分析(需要予測、在庫管理、シフト最適化)
- 予約管理(自動予約管理、チャットボットによる問い合わせ対応)
- ホテルでのAI導入事例を教えてください。
ホテルでのAI導入事例には以下があります。
- 変なホテル:AIロボットによる受付業務や清掃業務の代替
- 小田急ホテルセンチュリーサザンタワー:AIスピーカーによる17言語対応の客室サービス
- ヒルトンホテル:AIロボットによるコンシェルジュサービスの提供
- SARASA HOTEL:チャットボット導入による予約業務の効率化と手数料削減
まとめ|課題に合わせたAI導入でコストや労力を削減できる
ホテルへのAI導入は、人件費の削減だけでなく、顧客満足度の向上や従業員の業務量削減など、コスト面以外のメリットを生み出すことが可能です。
改善すべき問題はホテルによって違うため、最適なAIを導入することがメリット最大化の鍵となるでしょう。インバウンド需要の最大活用、東南アジア富裕層の取り込みと言った業界共通の課題に対して効果的な施策として打ち出して、競合との差別化にもなるでしょう。
しかし、AIは全くの門外漢なので何から検討すればいいのかわからないと感じている方がほとんどかと思います。
AI Marketでは、
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高専、理系国立大学にて工学・農学を専攻後、AIを中心にテクノロジー調査や記事執筆を実施中。
AI開発会社やDXコンサルファームにて、AIのビジネス活用やテクノロジーの技術調査記事などを多数寄稿している。