太陽光発電におけるAI活用方法は?メリット・最新企業実例を徹底解説
最終更新日:2024年09月23日
太陽光発電の普及に伴い、発電効率の低さやメンテナンスコストの高さといった課題が顕在化しています。しかし今、AIの力でこれらの課題を克服し、太陽光発電の可能性を最大限に引き出す新たな動きが加速しています。
AIによる発電量予測や異常検知、ドローンを活用した自動点検など、先進技術の導入で太陽光発電はより効率的で経済的なエネルギー源へと進化しつつあります。
この記事では、
風力発電でのAI活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは
目次
日本の太陽光発電業界が直面する課題
太陽光発電は、バイオマス発電、水力発電、風力発電、地熱発電と並んで日本における再生可能エネルギーの中心的存在として位置づけられています。しかし、太陽光発電業界はその成長過程でいくつかの課題に直面しています。
発電効率の向上
太陽光発電の課題の一つは、発電効率の向上です。これは、太陽光のエネルギーの大部分が熱として失われていることを意味します。天候や日照時間に大きく依存するため、効率の低さが発電コストの増加や安定供給の難しさにつながっています。
太陽光パネルの発電効率は、現在主流のシリコン系で20%前後、最高でも25%程度に留まっています。発電効率の低さは、発電コストの高止まりや設置面積の増大を招き、太陽光発電の経済性や実用性を大きく制約しています。
研究機関や太陽電池メーカーは、ペロブスカイト化合物や多接合型太陽電池など、新材料や新構造の開発に注力していますが、実用化にはコストや耐久性などの課題が残されています。
関連記事:「スマートグリッドとは?次世代電力システムの特徴・AIを用いた仕組み・メリット・事例を解説!」
出力変動と電力系統への影響
太陽光発電は、天候や時間帯による出力変動が大きい特性を持っています。晴天時の日中は大量の電力を発電する一方、夜間や悪天候時はほとんど発電できません。この出力の不安定性は、電力系統の需給バランスを崩す要因となります。太陽光発電の導入量が拡大するほど、余剰電力の発生や電力品質の低下が懸念されます。
調整力の不足は、再生可能エネルギーの出力制御(抑制)を招き、設備利用率の低下や収益性の悪化につながります。太陽光発電だけでなく電力システムの安定運用と太陽光発電の導入拡大を両立するには、蓄電池や水素などの調整手段の確保が不可欠です。
メンテナンスと運用コスト
太陽光発電システムは、設置後のメンテナンスや運用に多大なコストがかかります。特に、メガソーラーなどの大規模なファームでは、パネルの汚れや故障、部品の交換などが頻繁に発生し、これが運用コストの増加要因となっています。
土地の確保と環境影響
太陽光発電所を設置するためには広大な土地が必要です。しかし、日本のように土地の限られた国では、適切な設置場所の確保が困難です。また、メガソーラーの適地として、山林や農地への設置が進められていますが、森林伐採や農地転用に対する地域の反発は根強いものがあります。
太陽光パネルの設置は、動植物の生息環境を脅かし、生態系へ悪影響を及ぼす恐れがあります。山林の開発は、土砂災害のリスクを高める要因ともなります。景観の悪化や反射光による周辺への影響なども問題視されています。環境配慮型の設置手法の確立と、地域社会との合意形成が重要な課題となっています。
AI Marketでは
太陽光発電でAIを利用する方法とメリット
太陽光発電においてもAIを活用することは多くのメリットがあります。例として以下のようなものがあります。
発電効率の向上
AIを活用することで、天候やパネルの位置など、発電に影響を与える要素をリアルタイムで分析し、最適な運用方法を導き出すことができます。気象データや過去の発電データを基に、発電量の予測精度を大幅に向上させることが可能です。
これにより、太陽光発電システムの発電効率が大幅に向上し、より多くのエネルギーを生成することが可能になります。AIを使用することで、天候の変動や季節ごとの日照時間を考慮し、より正確な発電量の予測が可能になります。
関連記事:「初心者向きAI予測分析完全解説!仕組み・導入事例・人気ツール」
コスト削減
AI技術は、太陽光発電システムの運用とメンテナンスを効率化します。例えば、障害の予知と予防によって無駄な修理コストを削減したり、エネルギー管理の最適化により運用コストを削減したりすることができます。
また、AIを用いた画像認識技術により、太陽光パネルの状態を常に監視することができます。ドローンやIoTセンサーを使って収集された画像データをAIが解析し、パネルの汚れや破損、影の影響などを検出します。
これにより、メンテナンスが必要な箇所を迅速に特定し、効率的なメンテナンススケジュールを組むことができます。これにより、トータルコストの低減が期待できます。
安定した電力供給につながる
AIの予測能力により、発電量の変動を事前に予測し、必要な対策を講じることができます。AIを搭載した電力システムは、リアルタイムで発電量や消費電力を監視し、エネルギーの需要と供給を最適化します。風力発電や化石燃料発電を含めた包括的なエネルギーの需給供給安定は必須です。
これにより、発電した電力を効率的に利用し、余剰電力の蓄電や他のエネルギー源とのバランスを取ることができます。これにより、天候による発電量の変動を平準化し、安定した電力供給を実現します。特に、エネルギーの需要と供給のバランスを取ることで、ピーク時の負荷を軽減することが可能です。
太陽光発電でのAI活用事例
日本においてもすでにAIを活用した事例が存在します。ここでは2つの事例をご紹介します。
【センシンロボティクス】AIとドローンによる自動点検システム
社会インフラのDXを推進するAIカンパニーであるセンシンロボティクスは「SOLAR Check」をリリースしています。これは赤外線サーモグラフィカメラを搭載したドローンを使用してソーラーパネルを自動点検するシステムです。太陽光パネルの配置に合わせて自動で航行ルートを設定し、ドローンを飛行させることができます。これにより、点検しづらい傾斜地でも柔軟に対応が可能となっています。
自動航行のドローンを用いることで点検時間を大幅に短縮できます。特別な技術を持たないスタッフでも対応可能なため、高頻度での点検が実現します。撮影した画像データに対し、ディープラーニングによる画像解析を行うことで、ホットスポットの異常を高精度で検知します。
撮影したデータはクラウド上で一元管理され、異常箇所のAI解析や点検レポートの作成も自動で行われます。これにより、迅速な点検レポートの作成が可能となります。ドローンが自動で航行し、短時間でパネルの異常を検出します。
関連記事:「AIを搭載したドローン活用例!できることや今後の課題とは?」
【住友電工】AIでストリング電力値を測定
住友電工はAIを活用して、太陽光発電所のPLCストリング監視システム用データ蓄積・解析装置を提供しています。AI技術を駆使してストリング電力値を測定し、異常をリアルタイムで判定します。
広域で多くのパネルが稼働する発電所では異常個所を検知することが難しいという課題があります。従来の監視システムは閾値判定が主であり、発電量が一定値を下回ると異常と判断する仕組みでした。しかし、発電量は季節や時間帯、設置地域など様々な要因に依存するため、閾値判定による異常判断は信頼性に乏しく、人間による分析・判断が必要な運用が大半でした。
住友電工の開発した装置は、計測したストリング電力値をAIを用いて異常判定し、その異常原因を緊急度別に通知します。発電低下の原因を特定し、異常を即時または日次のようにレベル分けして通知することで、異常個所の把握と現場作業者への指示が容易になります。
異常の原因を特定し、緊急度別に通知することで、迅速な対応を可能にし、発電所の運用効率を向上させます。
【JDSC】太陽光発電の発電電力量を高精度で予測
株式会社JERAと株式会社JDSCは、太陽光発電の発電電力量を高精度で予測するシステムを共同開発し、このたび運用を開始しました。発電量予測の高精度化の課題に対し、JERAとJDSCはそれぞれのエネルギー領域とデータサイエンス領域における専門性を結集し、気象予報データから太陽光発電量を高精度で予測するシステムを共同で開発しました。
本システムはサーバレス構成で実装されており、運用負荷を大幅に低減できるのが特長です。今後は蓄積した発電量データとJDSCのAIの知見を活用し、更なる予測精度の向上を目指します。
JERAは2025年の再生可能エネルギー開発目標500万kWの上積みも視野に、本システムの活用を通じて安定供給と再エネ普及拡大の両立に貢献し、「JERAゼロエミッション2050」の実現を目指します。
関連ニュース記事:「AIソリューションのJDSC、太陽光発電の発電電力量を高精度で予測するシステムをJERAと共同開発」
太陽光発電でAIを活用する際の注意点
AIの導入は、太陽光発電の効率化やコスト削減に大きく寄与しますが、同時にいくつかの注意点も存在します。以下に、太陽光発電でAIを活用する際に留意すべきポイントを挙げます。
気象条件の変動への対応
太陽光発電は気象条件に大きく左右されるため、AIによる発電量予測や異常検知においては、天候や日照時間の変動を適切に考慮する必要があります。季節や時間帯、設置地域ごとの気象パターンを学習し、予測精度を高めることが重要です。
パネルの経年劣化の考慮
太陽光パネルは長期間使用するうちに徐々に劣化し、発電効率が低下します。AIによる異常検知では、この経年劣化による性能低下と、故障や破損による異常とを適切に区別する必要があります。パネルの劣化特性を考慮したアルゴリズムの開発が求められます。
発電所ごとの個別性への対応
太陽光発電所は、設置場所や周辺環境、パネルの種類や設置方法などが異なるため、発電特性にも個別性があります。AIシステムを導入する際は、各発電所の特性を考慮したチューニングが必要です。発電所ごとのデータを蓄積し、個別性に対応したモデルを構築することが求められます。
データ品質の確保
AIの性能は、提供されるデータの品質に大きく依存します。誤ったデータや不完全なデータは、AIの解析結果を歪める可能性があります。そのため、センサーやデータ収集システムの信頼性を確保し、高品質なデータを収集することが重要です。
導入コストとROIの評価
AIシステムの導入には高額な初期投資が必要です。この投資が実際にどれだけのリターンをもたらすか、ROI(投資対効果)を事前に評価することが重要です。導入コストと予想される効果を比較し、投資に見合った効果が得られるかを慎重に判断する必要があります。
サイバーセキュリティの強化
AIシステムは、インターネットに接続されていることが多く、サイバー攻撃のリスクがあります。システムの脆弱性を狙った攻撃やデータ漏洩を防ぐためには、強固なセキュリティ対策が必要です。定期的なシステムアップデートやセキュリティ監査を行い、最新のセキュリティ対策を実施することが求められます。
太陽光発電におけるAIについてよくある質問まとめ
- 太陽光発電におけるAIの活用法は?
- 発電予測
- パネルメンテナンス
- エネルギー管理
- 異常検知とトラブルシューティング
- 太陽光発電でAIを利用するメリットは?
- 発電効率の向上
- コスト削減
- 安定した電力供給につながる
まとめ
太陽光発電におけるAIの活用は、発電効率の向上や運用コストの削減、システムの信頼性向上など、多くのメリットをもたらします。AI技術を駆使することで、天候予測や発電計画の最適化、パネルの故障予測、エネルギー管理システムの効率化など、太陽光発電の様々な課題に対処することができるでしょう。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp