最終更新日:2021-04-27
【INTERVIEW】AI結合商標判定機能で商標調査業務の劇的な改善を実現するIP-RoBo
AI開発エンジニアと弁護士の顔を合わせ持つ岩原将文さんが創業した株式会社IP-RoBo。
今回は、そんな株式会社IP-RoBoの代表取締役社長である岩原将文さんにお話をお伺いしました。
AIエンジニアと弁護士の知見を活かしてサービスを開発
■まず、どのようなご経歴で、会社を創業されたのでしょうか?
—岩原さん
「私自身、30年ほど前、当時はエキスパートシステム型AIの時代だったのですが、大阪大学の情報工学科で
その後、広告代理店に就職した際に映画制作に関わっていたのですが、そこで弁護士の方とお仕事をする機会があり、弁護士を目指して退職しました。その頃、明治大学で法律をAI化するプロジェクトがあり、AIエンジニアとして関わったりもしていました。その後、弁護士登録を行いまして、技術的なバックグラウンドと知財を専門とする弁護士として現在まで20年ほど活動しています。
ただ、その業務を行う中で、
■では、TM-RoBoのサービスについてお聞かせください。
—岩原さん
「TM-RoBoは、一言で言えば、
そのため、TM-RoBoを紹介する前に、まずは簡単に「商標」について説明します。
商標とは、事業者が、自社商品・サービスを他社のものと区別するためのマークであり、特許庁へ出願・登録することで、独占権である商標権を取得することが可能となります。商標は5−6年前から急増して始めています。知的財産権は、商標、特許、意匠権などがありますが、特許庁への出願数が全体的に減少傾向なところ、
その上で、先述の通り、商標を取るためには、特許庁に出願する必要があるのですが、既に登録されている第三者の商標と類似していないことが権利取得の重要な条件となります。また、特許庁に出願しないとしても、商標を使用する場合には、第三者によって登録されている商標と類似していると権利侵害になってしまう、というリスクがあります。
そのため、商標を出願する前に、
調査する上において、外観(見た目)、観念(イメージ)、称呼(読み)から判断するのですが、現状は商標データベースの問題から、文字商標の場合、称呼で調査することが一般的で、外観や観念は補足的に調査することが実情です。
また、商標というのは、複数のワードから成立しているものも多く、これを結合商標と言うのですが、これらの類似性調査が実務において非常に重要となります。企業においてこの事前の類似性調査を行うためには、大きく2つの方法があります。
まず、商標データベースサービスを利用して類似商標を検索します。この商標データベースサービスは、民間のものもいくつかありますが、特許庁の関係法人が提供している「J-PlatPat」で調査することが一般的になりつつあります。但し、J-PlatPatも含めて、商標データベースサービスは、いずれも専門家向けの仕様となっているため、専門の方でないと使いこなすのが難しいという問題があります。また、いずれの商標データベースサービスも、部分一致かこれに類する検索しかできないため、調査者が大量のヒット商標との類否判断を行わなければならず、労力的にも時間的にも負担が大きいという問題があります。
また、専門家である弁理士へ依頼して調査を行ってもらうことも可能ですが、1~3日程度の時間を要し、自分で調べるよりも当然コストがかかってしまいますので、現実的なハードルが大きいと思います。
一方で、弊社サービスであるTM-RoBoは、
TM-RoBoでは、過去の特許庁や裁判所等の判断結果をAIを活用して網羅的に機械学習しており、出願・登録済みの全商標との類似度スコアを判断し、類似度順に出力することができます。そして、
■具体的な機能を教えて頂けますか?
—岩原さん
「TM-RoBoの基本機能として、「登録商標等との称呼類似度判定機能」「第三者使用商標との称呼類似度判定機能」「類似群コード検索機能」という3つの機能を提供しています。
この「称呼類似度判定機能」では、
出願したい商標キーワードを入力し、商品・サービス毎に特許庁が付している類似群コード等を入力することで、調査結果が出力されます。尚、この類似群コードは1万程度あり、探すのがかなり大変なので、これを検索する類似群コード検索機能も提供しており、簡単に選択することができます。
出力された結果には、類似可能性のある登録商標とその横に、全ての称呼との類似度が判定されてスコアとして表示されます。この結果を元に類似度順に並び替えることができますので、類似度が高いものだけを集中して確認することが可能です。大体上位10~20%程度を確認すれば、類似度は50%を切ってきます。尚、この調査結果と先述したJ-PlatPatを比較すると、TM-RoBoが類似度スコア100と出力して一番上に表示している第三者の登録商標が、J-PlatPatでは、50番台目や数百番台目に表示されていることもあり、結局膨大なヒット商標を上から全部確認しなければいけませんので、これだけでも
—岩原さん
「また、2020年8月に提供を開始した結合商標判定機能は、実務的に非常に重要な結合商標の判定処理を行うもので、国内外にも他に例を見ない画期的な機能です。
これまで、カタカナの読みでしか入力できない、もしくは漢字やアルファベット等の入力では完全一致しか対応できない、という縛りがあったのですが、新機能では、表記通りに漢字、ひらがな、カタカナ、数字、アルファベット、記号等のすべての文字に対応しており、更にそれが
例えば「うるリップ氷柱サウスポイント」のようなキーワードを入力すると、「うる」「リップ」「氷柱」「サウスポイント」のように4つのキーワードに自動分解され、これらのワードがそれぞれが、入力された商品・サービスとの関係で、どの程度インパクトのある言葉なのかを判別し、識別力を算出しています。
最終判断結果として、
また、更に詳細ボタンを押すことで、別のAIが動き、これはかなり専門的ですので説明は省きますが、併存登録例というものを表示することも可能です。この併存登録例は、大手の知財部や知財専門の弁理士などがここまで調査することがあります。」
—岩原さん
「尚、結合商標の判定機能に関して言えば、以前AI Expoなどに出展した際などにも「結合商標判定機能があればいくら出してもいい」といろいろな企業から言われるほど需要があった機能なのですが、
ちなみに、世界的に見てこの商標調査リーガルテックの領域は、日本とヨーロッパが進んでいます。現時点では、世界的に見ても、「Trademark Now」というフィンランドの会社と、Simons&Simonsというロンドンに本店を構える国際法律事務所が「Rocketeer」という同様のサービスを少し前に提供を開始した、という程度です。
結合商標に対応したサービスはTM-RoBoだけの機能だと考えていますし、アルファベットだけでなく漢字やひらがな、カタカナなどあらゆる文字種に対応しているのは間違いなく
■結合商標の分割はいわゆる形態素解析のようなもので行っているのでしょうか?
—岩原さん
「通常の文章であれば、句読点や助詞などを基準に形態素解析で文章解析ができるのですが、商標の場合は句読点がないことが通常で、名詞の羅列であることが一般的です。しかも、そもそも商標は新しい用語で勝負するという特性上、造語が多くなっています。そのため、通常の形態素解析では、正しく分割することが非常に難しいのですが、この点については、詳しくはお伝え出来ませんが、独自の手法で実現しています。」
■具体的な導入事例を教えて頂けますか?
—岩原さん
「知財関連ですので、大手企業がやはり多いのですが、公開ができる範囲で、例えば、
現在は知財部での導入が多いのですが、ツールの利用が簡単なため、事業部での導入にも拡大中です。実際、事業部側では、商標のトレンドや、他社が利用している商標なども簡単にわかるため、ネーミングのヒントにもなるということでご利用頂けるようになってきています。また、知財部と事業部での連携事例で言えば、事業部でTM-RoBoを活用して、ある程度調査を行った上で、わからないところだけ知財部に聞く、といった形での利用も進んでいます。」
知財分野を応用して更なる拡大へ
■今後AIの市場はどうなると思いますか?
—岩原さん
「以前の第二次AIブームの終わりに近いと感じています。そのため、今の第三次AIブームも間もなく終わるんだろうな、と思っています。但し、メディアが取り上げるような万能なAIという幻想が解かれ、
実際、第二次AIブーム(エキスパートシステム)が終わって、AIが終わったかと言うとそうではなく、現在のAIでもエキスパートシステムの考え方を取り入れているAIも多くあります。そのため、第三次AIブームで中心的な存在である「ディープラーニング」も、得意な領域や苦手な領域などが見えるようになってきて、画像認識や音声認識のような得意な領域において、今後も当たり前のように進化を続けるものだと思います。
そして、苦手な領域(与えたデータだけですべてを矛盾なく説明できないもの)においては、今後の第4次ブームに繋がっていくものだと思います。現状は、結果に結びつく全てのデータを用意しきれていない領域が多数存在しており、これらの領域では、十分な精度を実現できていないため、実用化はまだ困難な状況です。そのため、今後あらゆる情報をデータ化することができるようになれば、データの不十分性の問題が解決し、人文系等(技術系ではないもの)でも精度が上がるようになり、第4次ブームが来ると考えています。そしてその後、第5次ブームが…笑」
■今後のサービスの展開予定を教えて頂けますか?
—岩原さん
「当面実現を目指している機能としては、事業部と知財部の連携機能、図形判断機能、侵害監視機能などを考えています。また、中長期的には海外版の展開も行っていきたいと考えています。これは、海外の企業が日本に進出する際の調査用や、日本企業がアメリカや中国などの海外に進出する際の調査用で活用できる機能を開発していきたいと考えています。
他にも、
また、現在提供している月額プランは、商標調査を多く行っている大企業様や特許事務所様でご利用頂くケースが多いのですが、年間の調査件数はそこまで多くなかったり、例えば「これから新規事業を始めるにあたって会社名やサービス名などを決める必要がある」といった形で、ピンポイントで商標の出願を検討している企業様などにもご利用頂きやすい、
–ありがとうございました。
今回は、AIで商標調査業務の効率化を実現するTM-RoBoを提供する、株式会社IP-RoBoへのインタビュー記事でした。
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