最終更新日:2024-09-04
弁護士業界のAI活用事例5選!AIが代替できる2つのこと【2024年最新版】
司法制度改革に伴う新司法試験によって、弁護士数は大幅に増加し、2007年に23,119人だった弁護士数が2020年には42,162人にまで大幅に増加しました。しかし、弁護士数の増加に比例して扱う事件が増えたわけではないため、就職できなかったり経済的に苦しい弁護士も増加しています。
ここのところは、司法試験受験者数が減少していることから、2016年以降は合格者数を1,500人台に抑えたことで、就職難は解消しつつあります。
そんな弁護士業界では、生き残りをかけてあの手この手で事業を展開しています。
また、紙が中心だった法曹界はデジタル化が急速に進みつつあります。裁判所がIT化に乗り出したため、民事裁判の論点整理のウェブ会議が導入されました。それに合わせて法律分野でITを使う様々な「リーガルテック」の動きも盛んとなり、AI(人工知能)を活用したサービスも続々と登場しています。この記事では、弁護士業界でのAIの活用事例をいくつか紹介していきます。
またAI Marketでは、弁護士業界に強いAI開発会社の選定サポートや適切な会社の紹介も行っています。開発会社の選定に迷ったり、依頼方法がわからなかったら、AI Marketの専門のコンサルタントが適切な会社の選定や事前相談を無料でサポートします。いつでもお気軽にご相談ください。
目次
弁護士の主な業務
弁護士は民事事件や刑事事件を扱い、依頼者から受けた訴訟や示談などの紛争について、法律の専門家として適切な解決策のアドバイスや支援をします。また、法律面から会社のビジネスのサポートをする業務なども行います。
具体的には以下の業務を中心に行います。
依頼者からのヒアリング
トラブルや問題を抱えた依頼者から相談を受け付けます。問題についての内容、原因、依頼者の要望、相手方の主張などを整理し、法的な解決策やアドバイスを提示します。
話し合いで解決できる場合もあれば、裁判に持ち込む場合もあります。
法律や判例の調査や裁判所提出書類の作成
ヒアリングして事実を整理したら、事実を組み合わせて法的に構成します。その際に法律や過去の判例に照らし合わせながら、問題や事件に関しての調査を行います。法律・判例は非常に文量が多く、内容も難解で複雑なので、慎重に精査しなければなりません。
またそれに合わせて裁判所へ提出する必要のある書類の作成も行います。
契約内容のチェックや契約書の作成
法律面から会社のサポートを行う業務として、契約内容のチェックや契約書を作成したり、M&Aや設立のサポート、特許といった知的財産についての法的手続きなどを行います。
弁護士業務だけでなく、企業内での法務部門はシステム化があまり進まなかったために属人化しており非効率な面が残っています。そのため、AIを使うなどして企業側でも契約業務の電子化の機運が高まっています。
AIができる弁護士業務2つ
裁判所への資料提出、契約内容の作成や確認などさまざまな業務をこなす弁護士ですが、AIを活用すれば業務の効率改善につながり、より質の高い仕事ができるでしょう。下記では、AIができる弁護士業務2つを紹介します。
契約書の作成・確認業務
契約書や提出書類などの文面校正などは、AIができる業務の一つです。実際、文面チェックなどでAIが導入されているケースが多いのが現状です。間違いの検知や最適化はAIの得意分野なので、うまく活用できれば業務効率につながるだけでなく、より質の高い仕事ができるでしょう。
作成・確認のボリュームは膨大のため人手を要しますが、AIなら瞬時に作業を行ってくれます。
賠償金の算出
AIなら人より正確に、そして早く過去の判例から賠償金の算出を行ってくれるでしょう。これまで弁護士が過去の判例や法律と照らし合わせていたものを、瞬時に照合してくれます。AIは複雑な計算も得意なため、賠償金も人よりも正確に算出してくれます。
実際にAIを搭載している弁護士向けサービスと導入事例5選
それでは実際に弁護士や弁護士事務所向けに活用できるAIのサービスやその導入事例を見ていきましょう。
弁護士が自ら起業してAI開発を行っているサービスもあります。弁護士業務での経験や知見を生かして、依頼者目線で法的助言ができるという利点があります。
AsiaWise 法律事務所での契約書自動レビューLeCHECKの導入
法務サポートのAI開発を手掛ける株式会社Lisseは法務サポートのAIクラウドサービス「LeCHECK」を提供しており、AsiaWise法律事務所が導入しています。
LeCHECKの機能には、専門知識が必要な契約書の自動レビュー、契約書の作成サポート、契約書雛形提供や管理などがあります。また海外との契約のやりとりのサポートに必要な英文契約書のレビューや和英訳ができる翻訳機能もあります。
AsiaWise法律事務所では、インド・ASEAN地域を中心に、日本企業の現地進出やM&Aの支援、現地でのトラブルへの対応、知財関連の業務を行っています。クロスボーダー案件のような国際間にまたがるものは、日本側と現地側とそれぞれから弁護士を出して協働する形を採用しています。そのため、弁護士間で知識や知見に差異が生じるため、共有方法を模索していました。
LeCHECKは、アソシエイト弁護士間での情報や知見の共有、平準化が可能となります。また、契約書の雛形を登録でき、携わった案件に関する契約書の雛形を各アソシエイトで共有が可能です。
リモートワークが常態化する中で、オンラインでの契約書の管理や知見の共有は重要になるということも導入の決め手となったということです。
弁護士法人ラグーンでの契約書リスク検知システムAI-CON Proの導入
弁護士法人ラグーンは、個人案件・企業法務の両方に対応し、企業法務は労務全般の相談を受けています。顧客の業界は土木・運輸関係が中心です。法務業務支援のサービスを手掛けるGVA TECHはAIによる大企業向けの契約書点検サービス「AI-CON Pro」を提供し、ラグーンが導入し活用しています。
AI-CON Proは、契約書を過去に締結した契約書と比較し、不足や相違を自動に判別し、契約書に潜んでいるリスクをAIが瞬時に検知できます。さらに、修正案の検索や参照もWord上でアシスト可能です。そのため、契約書レビュー業務の属人化の解消、効率化の実現で、法務の機能価値を向上させることができます。
ラグーンが受ける企業法務の相談には、契約書の「細かいリスクをすべてつぶしてほしい」「自社が有利となるような条項を修正や追加してほしい」という要望があるため、不足条文検知、AIリスク検知が豊富で、検討材料を洗い出してくれるという機能がとても有効ということです。
また、ノウハウを共有することで、若手弁護士への立ち上がりや、新人の教育にも成果を出してくれます。
吉田総合法律事務所での契約書点検AIシステムLegalForceの導入
吉田総合法律事務所は、主に会社法・労働法・契約法を扱っています。顧問として会社からの契約書のレビューや、契約交渉のアドバイスを行います。AI開発のスタートアップ企業の株式会社LegalForceは、法務部門の契約書の点検をAIで支援するクラウドベースの「LegalForce」を提供しており、吉田総合法律事務所で導入をしています。
LegalForceの機能には、契約書に潜むリスクを瞬時に指摘、抜け漏れがないかという自動レビュー、契約書の修正過程を自動記録、雛形・過去の契約書などのLegalForceライブラリから契約書の条文ごとに修正例の候補を表示する条文検索機能などがあります。
テレワークに伴う「脱ハンコ」などの動きで、契約書作成の効率化支援のためのシステムの需要は高くなっています。契約書作成にかかる時間が半分ほどに短縮するということで、弁護士としての判断に注力でき品質の向上にもつながっています。
桃尾・松尾・難波法律事務所でのAI自動翻訳「T-4OO」の導入
桃尾・松尾・難波法律事務所は、一般企業法務を中核に、会社法に関する取締役会・株主総会への対応や国際法務に関する案件を取り扱っています。企業向けの翻訳システム開発を手掛ける株式会社ロゼッタが提供する「T-4OO」は専門分野のデータベースを備えたAI自動翻訳で、桃尾・松尾・難波法律事務所が導入しています。
T-4OOの専門分野のデータベースには法務分野の専門用語も膨大に蓄積しており、国内外の公的文書やガイドラインなども多数収録されています。また、企業別データベース機能もあり、ユーザーの社内文書を登録することによって、社内表現や言い回しをAIが学習することが可能です。
T-400の導入は、翻訳の業務効率化に大きく貢献しており、桃尾・松尾・難波法律事務所が多数扱うクロスボーダー案件には欠かせません。「和訳のクオリティが高く、訳文に人間感がある、専門知識の訳語を選ぶことは難しいが、正確な翻訳がされている」という印象を受けたということです。
米大手法律事務所BakerHostetlerでのAI弁護士ROSSの導入
アメリカ大手法律事務所のBakerHostetlerは、アメリカ企業のROSS Intelligenceが開発する法律リサーチプロダクトの「ROSS」を導入しています。ROSSは「AI弁護士」とも呼ばれています。
ROSSはIBMのコグニティブ・コンピューティングの自然言語解析システム「Watson」をベースに構築した人工知能です。相談内容に対して、訴訟に必要な判例などの情報を迅速に見つけてくれます。また、受けた相談内容をこれまでの相談のどの内容に近いかをAIが判断し、適切な回答も行ってくれます。
アメリカ大手法律事務所のBakerHostetlerは国内有数の法律事務所で、弁護士は他に必要となることに集中して時間をかけることができたということです。
弁護士の仕事はAIに奪われる?
AIが代替すると、人間の仕事はなくなるのではないかという議論はしばしば起こります。失業してしまう仕事が増えるのでは?と懸念する人も多いでしょう。
弁護士業務についても同様の議論はされています。2017年に取り上げられた「ここ10〜20年の間でAIに替わっていく士業」でも、弁護士や行政書士などが挙げられていました。弁護士の仕事はなくならない仕事であるという報告も出されていますが、将来性はどうなのかというのはまだ分かりません。
弁護士は法律の相談や相手の感情を汲み取るなど、単純作業以外の部分も大きく、AIに代替することは難しいと考えられます。しかし、賠償金額の算出やチェック業務などはAIの技術革新によりほとんどなくなるかもしれません。
現状、単純作業など、業務効率化の部分的なAIの活用はどんどん進められています。業務の一部分をAIが担ってくれることになれば、空いた時間をより創造性が高い仕事に活用することができるでしょう。
弁護士業界のAI活用についてよくある質問まとめ
- 弁護士業界でAIはどのような業務に活用されていますか?
AIは主に以下の業務で活用されています。
- 契約書の自動レビューと作成支援
- 賠償金の算出
- 法律文書の翻訳
- 判例や法律の検索と分析
- 弁護士事務所でAIを導入するメリットは何ですか?
AIを導入するメリットには以下があります。
- 業務効率の大幅な向上
- 人為的ミスの削減
- 若手弁護士の教育・知識共有の支援
- クロスボーダー案件への対応力強化
- 弁護士が高度な法的判断に集中できる時間の確保
- AIの導入で弁護士の仕事はなくなりますか?
AIが完全に弁護士の仕事を代替することは考えにくいです。理由は以下の通りです。
- 法律相談や感情理解など、人間特有のスキルが必要な業務が多い
- AIは主に単純作業や情報検索の効率化に活用される
- AIの導入により、弁護士はより創造的で高度な業務に注力できる
まとめ
弁護士業界におけるAI活用の導入事例やサービスのご紹介をしました。
法務分野のAIサービスは、弁護士が起業して開発したものが多い特徴があります。法曹界という専門的な分野に長く携わることで、こんなものがあったらいいなという視点を取り入れることができます。
契約書などさまざまな書類のチェックや、翻訳、文例の検索など、膨大な時間がかかる確認にかかる作業であるけれども、専門的な知識がないとできない業務にAIは劇的な効率化をもたらしてくれます。
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