AIが非常用発電機の異常を事前に察知。キヤノンITSとダイハツディーゼルが、データセンターの信頼性向上への取り組み
最終更新日:2024年09月25日
2024年9月25日、キヤノンITソリューションズ株式会社(キヤノンITS)とダイハツディーゼル株式会社は、非常用発電機の故障予兆検知システムの実用化に向けた実証実験の開始を発表した。この実験では、発電機の振動データとAI技術を組み合わせ、故障の予兆を事前に検知する基本技術の確立に成功している。両社は2025年内にプロトタイプによる試験運用を開始する目標を掲げており、この技術がデータセンターの安定運用や発電機の信頼性向上に大きく貢献することが期待されている。
<本ニュースの10秒要約>
- キヤノンITSとダイハツディーゼルが非常用発電機の故障予兆検知システムの実証実験を開始し、AI技術を用いた基本技術を確立
- 振動データを学習させたAIモデルにより、正常な発電機と劣化度の大きい発電機の判別が可能に
- 2025年内にプロトタイプの試験運用を目指し、データセンターの信頼性向上と発電機保守サービスの差別化を図る
実証実験の背景と目的
キヤノンITSは、自社が保有する西東京データセンターの安定稼働のため、日々設備の予防保全や点検に取り組んでいる。しかし、設備の故障をゼロにすることは困難であり、故障による冗長性の低下や、復旧のための突発的な対応、要員確保が必要となるなど、運営上の課題が存在していた。この課題に対し、故障予兆の検知が可能になれば計画的な対処ができ、より安定したデータセンター運営の実現につながると考えられた。
そこで、キヤノンITSとダイハツディーゼルは協業し、非常用発電機の故障予兆検知システムの実用化に向けた実証実験を開始した。この実験の主な目的は、振動データとAI技術を用いて発電機の異常を事前に察知する技術を確立し、データセンターの安定運用と発電機の信頼性向上を実現することにある。
実証実験の内容と成果
実証実験の第1段階では、キヤノンITSが西東京データセンターで使用している正常な発電機の振動データを学習させたAIモデルを作成した。このモデルに対し、ダイハツディーゼルから提供された劣化度の大きい発電機の振動データを評価させる検証を行った。
検証の結果、作成したAIモデルが劣化度の大きい発電機のデータを入力した際に、正常な発電機のデータとは異なると判定する基本的な技術を確立することに成功した。この成果により、AIを用いた非常用発電機の故障予兆検知の可能性が示された。
現在、両社は次の段階として、評価データと劣化度の大きい発電機のデータとの差異を可視化する技術の開発に着手している。この技術開発により、発電機の異常をより明確に識別し、その程度を判断することが可能になると期待されている。
今後の展開と目標
キヤノンITSとダイハツディーゼルは、今後の展開として以下の目標を掲げている:
1. 可視化技術の開発:現在開発中の可視化技術にダイハツディーゼルのノウハウを取り入れ、発電機の劣化要因の特定や劣化度合いの判断が可能となる技術を確立する。
2. プロトタイプの試験運用:2025年内に、開発した技術を組み込んだプロトタイプによる故障予兆検知システムの試験運用を開始する。
3. 応用範囲の拡大:キヤノンITSは、確立した技術を非常用発電機以外の設備にも応用し、データセンター全体のさらなる信頼性向上を目指す。
4. サービスの差別化:ダイハツディーゼルは、この技術を活用して発電機の信頼性向上および保守サービスの他社との差別化につなげていく。
これらの取り組みを通じて、両社はデータセンターの安定運用と発電機の信頼性向上に貢献し、ひいては社会インフラの安定性向上にも寄与することを目指している。
AI Market の見解
キヤノンITSとダイハツディーゼルの非常用発電機の故障予兆検知システムに関する実証実験は、AIの産業応用の新たな可能性を示す重要な取り組みだ。この技術は、データセンターの安定運用という喫緊の課題に対するソリューションとしての価値だけでなく、AIを用いた予防保全技術の発展に大きく寄与する可能性がある。
技術的な観点から見ると、振動データを用いたAIモデルの構築は、非破壊検査の分野に新たな可能性をもたらす。特に、正常データを学習させたモデルが異常を検知できるという点は、教師なし学習の有効性を示す好例となっている。今後、この技術がさらに発展すれば、発電機以外の様々な機械設備の予防保全にも応用できる可能性がある。
ビジネス的には、この技術の実用化により、データセンター運営のコスト削減と信頼性向上が同時に実現できる点が注目される。予期せぬ故障による運用停止のリスクを低減できれば、データセンターの競争力向上につながる。また、ダイハツディーゼルにとっては、この技術を活用した新たな保守サービスの展開が可能となり、ビジネスモデルの変革につながる可能性がある。
市場への影響としては、この技術の成功がAIの産業応用、特に重要インフラの保全分野における活用を加速させる可能性がある。他の産業分野でも類似の取り組みが増えることが予想され、AIを活用した予防保全市場の拡大が期待される。
参照元:PR TIMES
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