日立製作所が品質保証業務にAIエージェントを適用し作業時間8割以上短縮を実現
最終更新日:2025年07月03日

日立製作所は2025年7月1日、大みか事業所において品質保証業務にAIエージェントを適用し、熟練者の経験や知見を生成AIで再現することで作業時間を8割以上短縮できることを発表した。
2024年10月から2025年3月まで実証実験を行い、機器故障やトラブルへの問い合わせ対応を高度化・効率化する成果を確認した。
- 日立が大みか事業所で品質保証業務にAIエージェントを適用し熟練者の暗黙知を形式知化
- 鉄道システム分野で検索時間9割削減と分析・レポート作成時間8割以上短縮を実証
- 2026年度を目標に電力や上下水道など大みか事業所全体への適用拡大を予定
日立製作所は、電力や鉄道、上下水道など社会インフラを支える情報制御システムを提供する大みか事業所において、品質保証業務にAIエージェントを適用する実証実験を実施した。
従来、機器故障やトラブルの問い合わせ対応では、発生事象と過去の類似事例やマニュアルなど複数の情報を紐づけ、総合的な判断から対策を導き出す必要があった。
しかし、膨大な情報の中から適切な情報を抽出するには熟練者の経験や記憶に基づく勘が必要であり、若手担当者が迅速に対応することは困難という課題があった。
この課題を解決するため、日立は品質保証業務支援ツールにAIエージェントを適用し、熟練者の探索パターンや業務プロセスなどの暗黙知を形式知化した。2024年10月から2025年3月まで実証実験を行い、現場で活用できるレベルまで精度を向上させた。
実証実験では、日立のGenerative AIセンターのデータサイエンティストを中心としたGenAIプロフェッショナルが、ヒアリングを通して熟練者の暗黙知を生成AIのプロンプトに落とし込み、改善・評価・チューニングを実施した。
実証実験の結果、3つの主要な効果が確認された。
第一に、トラブル事例検索の精度向上により検索時間を約9割削減し、担当者の経験値に関わらず適切な類似事例を抽出できるようになった。
第二に、特徴量抽出・分析による品質レベルの向上により分析時間を8割以上削減し、熟練者の過去のトラブル対応記録へのアクセスが容易になった。
第三に、初報レポートのドラフト生成によりレポート作成時間を8割以上削減し、熟練者が不在でもトラブル対応の初動が可能となった。
今後日立は、2026年度を目標として鉄道システム分野だけでなく、電力や上下水道など大みか事業所全体の品質保証業務へと適用を拡大する予定だ。また、人財不足や業務の属人化など同様の課題を持つ製造業向けのソリューション開発・提供も検討している。
日立は、OT領域の知見・経験と生成AI、AIエージェントをはじめとした最先端のITの知見を掛け合わせたLumadaで、技能伝承や生産性向上などの社会課題に取り組んでいくとしている。
AI Market の見解
日立製作所のAIエージェント適用による品質保証業務の効率化は、製造業における暗黙知の形式知化という重要な技術課題に対する実用的なソリューションを提示している。
特に、熟練者の経験や勘に依存していた業務プロセスを生成AIで再現し、検索時間9割削減、分析・レポート作成時間8割以上削減という具体的な成果を示した点は注目に値する。
この取り組みは、単なる効率化にとどまらず、技能伝承という製造業界全体が抱える構造的課題への対応策としても意義深い。熟練者の退職や人材不足が深刻化する中、AIエージェントによる暗黙知の保存と活用は、企業の競争力維持に直結する戦略的価値を持つ。
また、24時間体制での初動対応の実現可能性は、顧客サービスの質的向上とビジネス継続性の強化に寄与すると想定される。
技術的な観点では、熟練者とAI専門家が協働して100件以上の質問・回答ペアを作成し、共通の評価基準を構築したアプローチは、AI導入における実践的な手法として他社への展開可能性が高い。
2026年度の全社展開とソリューション化の計画は、日立のAI事業拡大戦略の具体化として市場への影響を与えると想定される。
参照元:株式会社 日立製作所
品質保証業務AIエージェント適用に関するよくある質問まとめ
- AIエージェントはどのような仕組みで熟練者の判断を再現するのか?
熟練者へのヒアリングを通じて探索パターンや業務プロセスなどの暗黙知を抽出し、それを生成AIのプロンプトに組み込みます。
さらに実際の業務を想定した質問と模範解答のペアを100件以上作成し、AI専門家が改善・評価・チューニングを繰り返すことで精度を向上させています。
- この技術は他の業界にも応用可能なのか?
日立は人財不足や業務の属人化など同様の課題を持つ製造業向けのソリューション開発・提供を検討しており、技術的には他の業界への応用も可能と考えられます。
特に複雑なシステムや長期稼働する設備を扱う業界での活用が期待されます。

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