Azure AIとは?価格・代表的サービス・メリット・注意点・導入手順を徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
Azure AIは、Microsoftが提供するクラウドベースの人工知能(AI)プラットフォームです。近年、企業がデータ活用を進める中で、AIの導入が急務となっています。特に、顧客データや製造データを扱う企業にとって、AIは業務効率化や意思決定の高度化に欠かせないツールとなっています。
しかし、AIツールは多種多様であり、自社に最適なものを選ぶのは簡単ではありません。
そこで本記事では、Azure AIに焦点を当てます。Azure AIは、Microsoft の豊富な AI 技術を集約したプラットフォームであり、幅広いニーズに対応可能です。画像認識や音声認識、自然言語処理など、AIの主要分野をカバーしているのが特長です。
以下では、
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目次
Azure AIとは?
Azure AIとは、Microsoftが提供するクラウドベースのAI開発総合プラットフォームです。Azure AIでは、機械学習、ディープラーニング、自然言語処理、画像認識、音声認識などAIに関するさまざまなサービスを利用できます。基本的にAIに関するサービスは一通り揃っているため、Azure AIのみでAI開発を完結することも可能です。
Azure AIの提供社であるMicrosoftは、OpenAIやMeta、Hugging Faceなどと連携し、AIの基盤を固めています。例えば、Azure OpenAI Serviceでは、ChatGPTにも用いられているGPT-4などのOpenAIの言語モデルを利用できます。
Azure AIはMicrosoftの技術力向上により精度が向上していきますが、このような背景から今後も進化していくと考えられます。サービスを組み合わせることで、Azure AI上でエンドツーエンドのAI開発が可能になります。
Azure AIの価格
Azure AIの55のサービスが無料で利用できます。無料で利用できるサービスの一部を紹介します。
- Azure SQL Database(100,000 仮想コア秒、32 GB ストレージ/1ヵ月)
- Azure App Service(1時間/1日)
- Azure Event Grid(100,000 件の操作/1ヵ月)
また、有料サービスであっても、新規で利用する場合は12か月間無料で利用できるものもあります。有料サービスのAzure AI価格は、利用するサービスによって異なります。以下では、主要なサービスの価格を紹介します。
言語モデル
モデル | コンテキスト | 1,000トークン入力 | 1,000トークンの出力 |
GPT-3.5-Turbo-0125 | 16K | 0.1円($0.0005) | 0.2円($0.0015) |
GPT-4 | 8K | 4.6円($0.03) | 9.1円($0.06) |
画像モデル
モデル | 画質 | 解像度 | 100件当たりの価格 |
DALL・E 3 | 標準 | 1024 * 1024 | 606.8円($4) |
DALL・E 3 | HD | 1024 * 1792, 1792 * 1024 | 1820.4円($12) |
音声モデル
モデル | 100万文字当たり |
TTS (テキスト読み上げ) | 2275.5円($15) |
TTS HD | 4551.0円($30) |
関連記事:「Microsoft Azureの料金の仕組みは?費用を抑える方法・絶対必須の見積もり計算ツールの使い方を解説!」
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Azure AIが提供する代表的サービス
Azure AIは、AIに関するあらゆるサービスを提供しています。ここでは、以下の主要なサービスを解説します。
- Azure OpenAI Service
- Azure Speech to Text
- Azure AI Document Intelligence
- Azure AI Search
- Azure Machine Learning
- Azure Bot Service
- GitHub Copilot
Azure OpenAI Service
Azure OpenAI Serviceは、GPT-4、GPT-4 Turbo with Vision、GPT-3.5-Turbo、Embeddingsモデルシリーズなど、OpenAIの強力な言語モデルへのアクセスをREST APIで提供します。
これらのモデルは、コンテンツ生成、要約、画像解釈、セマンティック検索、自然言語からコードへの変換など、特定のタスクに合わせて簡単に調整できます。ユーザーは、REST API、Python SDK、またはWebベースのインターフェースであるAzure OpenAI Studioを介してサービスにアクセスできます。
Azure Speech to Text
Azure Speech to Textは、Microsoft Azureが提供する高度な音声認識サービスであり、音声データをリアルタイムまたはバッチ処理でテキストに変換する機能を提供します。
Azure Speech to Textは、ディープラーニングを用いた最先端の音響モデルと言語モデルを活用しており、ノイズの多い環境や多様なアクセントの音声でも、業界をリードする高精度な認識を実現します。Azure Speech to Textは、100以上の言語に対応しており、グローバルなビジネスにも適用可能です。
利用シーンとしては、コールセンターでの通話の文字起こし、議事録の自動作成、字幕の生成、音声アシスタントの開発など、幅広い用途が考えられます。APIを介して簡単に利用できるため、開発者はアプリケーションに音声認識機能を容易に組み込むことが可能です。
Azure AI Document Intelligence
Azure AI Document Intelligence (旧 Form Recognizer) は、ドキュメントからの情報抽出に特化したAIサービスです。OCR(光学式文字認識)技術を用いて、スキャンした文書やPDFから自動的にテキストを抽出します。テキスト情報を表形式にしたり、文章内の情報をチェックボックスにしたりすることが可能です。
また、カスタムモデルを利用すれば、名刺やレシートなどから情報を抽出し、定型データにまとめることもできます。例えば、自社の請求書を学習させることで、フォームの構造を理解し高精度なデータ抽出を実現できます。
Azure AI Search
Azure AI Search(旧Azure Cognitive Search)は、検索に特化したAIサービスです。Microsoft ResearchやBingで利用されているディープラーニングを用いて、関連性の高い結果をアプリ上で出力できます。単なるキーワードマッチングではなく、自然言語処理や機械学習を用いて、ユーザーの意図を汲み取った検索を可能にします。
例えば、「本社から近いイタリアンレストラン」と検索すると、「本社」や「イタリアン」だけでなく、「近い」という概念も理解し、適切な検索結果を返します。これは、Bingなどのウェブ検索で培われた技術を応用したものです。
また、Azure AI Searchは、構造化データと非構造化データの統合検索もサポートしています。検索結果はテキストに限らず、画像や動画、グラフなどでも出力できます。
高負荷にも耐えられるようスケーリングされており、テラバイト単位の情報をインデックスし続けるMicrosoft社内の検索エンジンにも活用されているようです。
Azure Machine Learning
Azure Machine Learningは、機械学習の一連の業務を行える開発プラットフォームです。データの前処理、モデルの構築・トレーニング、デプロイ、モニタリングまで、一貫して実施できる環境を提供しています。
Azure Machine Learningの特長は、コードレスでの開発が可能な点です。ドラッグアンドドロップ操作で機械学習パイプラインを構築できる「デザイナー」機能を使えば、プログラミングスキルが不足していても、機械学習モデルを構築できます。
Azure Bot Service
Azure Bot Serviceは、チャットボットの開発と運用を支援するサービスです。Bot Framework SDKをベースに構築されたオープンソースのIDE「Bot Framework Composer」を使用すると、開発者は対話型のエクスペリエンスを作成、テスト、プロビジョニング、管理することができます。Composerからボットをテストし、Azureに公開できます。
次のようなリソースをサポートしており、システム統合などのより複雑なタスクのためにコードでボットを拡張することができます。
- ダイアログ
- 言語理解モデル
- QnA Makerのナレッジベース
- 言語生成(ボットの応答)テンプレート
ComposerはWindows、macOS、Linuxのデスクトップアプリケーションとして利用できます。デスクトップアプリがニーズに合わない場合は、ソースからComposerを構築したり、クラウド上でComposerをホストしたりすることができます。
GitHub Copilot
GitHub Copilotとは、AIを活用したコーディング支援サービスです。開発者がコードやコメントを入力すると、AIが次に来るべきコードを提案します。以下のようなさまざまな言語に対応しているため、多くの現場で活用可能です。
- Python
- JavaScript
- TypeScript
- Ruby
- Go
- C#
GitHub Copilotは、コーディングに慣れていない人のサポートだけでなく、上級者の業務効率化にも用いられています。
GitHub Copilotを「再構築」しているシステムがGitHub Copilot Xです。Githubが発表したGitHub Copilot Xの新機能が、既存のGitHub Copilotに実装し再構築されています。GitHub Copilotの既存ユーザーは新たにGitHub Copilot Xに登録せずとも、随時アップデートされていくGitHub Copilot Xの新機能を使用できます。
Azure AIを利用する3つのメリット
Azure AIを活用することで、以下のようなメリットを受けられます。
- 高度なセキュリティ
- 料金は利用した分のみ
- 幅広いAIサービスが利用可能
それぞれについて解説します。
高度なセキュリティ
Azure AIを提供するMicrosoftは、全てのサービスに多層防御を施しており、高度なセキュリティ体制が取られています。「侵入・拡大・漏洩」の3つを防止する対策が取られており、セキュリティに関するISO 27001、HIPAA、FedRAMPなど多くのグローバル認証を受けています。
また、世界中に大規模なデータセンターを有しており、日本にも東日本と西日本に2ヵ所設置されています。これらは物理的にも厳重なセキュリティ体制が取られており、データには簡単にアクセスできないようになっています。
料金は利用した分のみ
Azure AIでは従量課金制で支払うことができます。そのため、少量しか利用しない方は、その分だけの支払いをするだけでサービスを利用できます。つまり、利用したリソース(計算、ストレージ、APIコールなど)の量に応じて課金されるため、少量の利用であれば、コストを最小限に抑えられます。
例えば、Azure Machine Learningの場合、ワークスペース、コンピューティング、ストレージ、APIコールなどに対して、秒単位または1,000件単位の料金が設定されています。1時間あたりわずか数円から利用できるため、機械学習の実験や検証を低コストで行えます。
また、Azure AIは無料で利用できるサービスが多くあります。制限はありますが、機械学習やデータベースの利用などは無料で利用できるため、デジタル技術にかかる費用を抑えて活用できるでしょう。
関連記事:「Azureのサブスクリプションとは?種類ごとの特徴・リソース管理方法・活用法をわかりやすく解説!」
幅広いAIサービスが利用可能
Azure AIでは、生成AIから識別系AIまで幅広い種類のAIを活用できます。あらゆるAIサービスを網羅しているため、他のAI開発のプラットフォームを使う必要がありません。これにより、データの一元化や進捗の確認などが容易にできるようになります。
複数のAIプラットフォームを組み合わせる必要がないため、シームレスなデータ連携が可能。また、統一された管理画面から、プロジェクト全体の進捗を把握できるのも大きなメリットです。
また、学習済みのサービスも提供しているため、特別な素材を扱わない限り、トレーニング不要でモデルを利用できます。例えば、Computer Vision APIを使えば、数行のコードを書くだけで、画像内のオブジェクトや文字を検出できます。データ収集やトレーニングには専門知識や労力が必要になるため、これらなしでも開発できる環境は大きなメリットです。
Azure AIを利用する注意点
Azure AIでは低コストで充実したサービスを利用できますが、注意点もあります。
- 利用するサービスによっては専門知識が必要
- 通信環境に依存
それぞれについて解説します。
利用するサービスによっては専門知識が必要
Azure AIには自動化が進んでいるツールが多くあるため、専門知識がなくても比較的開発しやすいプラットフォームではありますが、利用するサービスによっては専門知識が必要になります。
例えば、Azure Machine Learningは、ドラッグアンドドロップ操作で機械学習モデルを構築できる「デザイナー」機能を備えています。コーディング不要でモデル開発ができるため、敷居は低いと言えます。しかし、精度の高いモデルを構築するには、機械学習の基礎知識は不可欠です。
データの前処理方法や、モデルの評価指標の意味を理解していないと、デザイナーを使いこなすことはできません。
また、Azure Cognitive Servicesの一部のAPIではその分野の知識(ドメイン知識)が求められます。例えば、言語理解サービス(LUIS)では、自然言語処理の知識が必要不可欠です。
AIシステムを活用する際は、専門知識を持った人材がいないと有効なモデルを開発できず、効率をなかなか上げられないといった場合があります。社内にAI人材がいない場合は、AI専門業者への相談などを検討してみてください。
通信環境に依存
Azure AIはクラウド型のAIプラットフォームです。そのため、通信環境が安定していなければ、サービスの性能を活かすことができません。
例えば、工場の生産ラインでAIを用いた異常検知を行う際、センサーデータをクラウドに送信し、AI分析の結果を現場にフィードバックするまでに時間がかかると、リアルタイム性が損なわれます。こうしたケースでは、エッジコンピューティング技術を活用し、AIモデルをエッジデバイスに配置することで、レイテンシを最小限に抑える工夫が必要です。
また、Microsoftのサーバーがダウンしてしまうと、Azure AIの全てのサービスが利用できなくなり、開発や利用が止まってしまいます。Azureは99.99%の可用性を保証していますが、万が一の障害に備え、複数のリージョンにまたがるアーキテクチャを設計するなど、冗長化による対策が求められます。
Azure AIの導入手順
ここでは、Azure AIの導入手順を解説します。
Microsoftアカウントの発行
Microsoftのサービスを利用するには、Microsoftアカウントが必要です。まだ登録していない方は、MicrosoftのアカウントをMicrosoftアカウントページから登録しましょう。アカウントページの「サインイン」をクリックすると以下の案内が表示されるので「作成」からアカウントを作成しましょう。
Azureアカウントの発行
次に、Azureの公式HPにアクセスし、「無料で始める」からAzure アカウントを作成します。画面の指示に従い、アカウントを作成しましょう。
管理用ポータルサイトへサインイン
アカウントを発行できたら、Microsoft Azure portalの右上にある「サインイン」からサインインすることで、サービスが利用できるようになります。
Azure AIについてよくある質問まとめ
- Azure AIとは?
Azure AIとは、マイクロソフトが提供するクラウドベースのAI開発総合プラットフォームです。Azure AIでは、機械学習、深層学習、自然言語処理、画像認識、音声認識などAIに関するさまざまなサービスを利用できます。基本的にAIに関するサービスは一通り揃っているため、Azure AIのみでAI開発を完結することも可能です。
- Azure AIのメリットは?
Azure AIは、高度なセキュリティ、柔軟な料金体系、豊富なAIサービスという3つの大きなメリットを提供するプラットフォームです。
セキュリティ面では、多層防御の概念に基づいた包括的な対策が講じられており、グローバルな認証も取得しています。また、世界各地のデータセンターでは厳重な物理的セキュリティ対策が施されています。
料金体系は従量課金制であり、利用したリソースに応じた課金がなされるため、コストを最小限に抑えられます。また、多くのサービスで無料枠が用意されているため、低コストでAIの実験・検証が可能です。
AIサービスの充実度も Azure AI の大きな強みです。画像認識、音声認識、自然言語処理など、AI の主要分野を網羅しており、エンドツーエンドの AI システム構築をサポートします。また、事前学習済みのモデルを提供しているため、短期間でのAI実装も可能です。
まとめ
Azure AIは、Microsoftが提供する開発プラットフォームです。Azure AIだけであらゆるAIサービスが利用できるため、開発プラットフォームを一つにまとめられるようになるでしょう。さらに従量課金制を導入しているため、利用した分の料金のみしか支払わなくてよい点もメリットです。
このように、小規模な企業でもAIを活用できるようになったいま、データやAI技術を活用せずにいると、効率化や省力化で他社に劣り、事業継続が難しくなることも考えられます。これを機に、自社でAI技術の導入を考えてみてはいかがでしょうか。
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