MLOpsとは?導入すべき理由・手順・特徴からDevOpsやLLMOpsとの違いを分かりやすく解説!
最終更新日:2024年09月23日
機械学習やAIの活用に注目が集まる中、モデルの開発・運用の効率化を図る「MLOps」というアプローチが脚光を浴びていますAI導入プロジェクトの成功を目指す企業にとって、MLOpsの理解と活用は欠かせません。
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MLOpsとは?
MLOps(Machine Learning Operations)は、AIモデルの開発、デプロイ、運用を効率的に管理するための手法やプロセスを指します。これは、ソフトウェア開発と運用の統合を目的とするDevOpsの概念を機械学習に適用したものであり、AIモデルのライフサイクル全体を通じて一貫性と効率を向上させることを目指しています。
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MLOpsは以下のような特徴をもちます。
- 自動化と効率化
AIモデルのトレーニング、テスト、デプロイを自動化するためのプロセスを提供します。手動作業の削減につながります。 - 継続的インテグレーションとデリバリー
MLOpsは、ソフトウェア開発で一般的なCI/CDパイプラインを機械学習に適用します。これにより、新しいモデルの変更や改善が迅速に行われ、本番環境へのデプロイが容易になります。 - スケーラビリティ
MLOpsは、複数のモデルや大規模なデータセットを扱う際に重要なスケーラビリティを提供します。これにより、企業は成長に伴うデータ量や計算リソースの増加にも柔軟に対応できます。
MLOpsの手順
MLOpsは、機械学習モデルの開発、デプロイ、運用を効率化するための一連のプラクティスと技術ですが、その手順は以下のようになります。これらの手順を繰り返し行うことで、機械学習モデルの開発・運用を継続的に改善していきます。
- データの収集と前処理
機械学習モデルの開発に必要なデータを収集し、クリーニングや変換などの前処理を行います。 - モデルの開発とトレーニング
- モデルの評価とテスト
テストデータを用いて精度や速度などの指標を測定します。 - モデルのパッケージング
Dockerなどのコンテナ技術を用いて、モデルの実行環境を整備します。 - モデルのデプロイ
- モデルの監視とメンテナンス
異常が検知された場合には、速やかに対応し、必要に応じてモデルの再トレーニングやアップデートを行います。 - フィードバックと改善
MLOpsとDevOpsの違い
よく比較されるMLOpsとDevOpsには以下のような違いがあります。
対象とするアプリケーションの種類
DevOpsは、ソフトウェア開発と運用の統合に焦点を当てています。これには、ウェブアプリケーション、モバイルアプリケーション、エンタープライズソフトウェアなど、あらゆる種類のソフトウェアが含まれます。
一方で、MLOpsは、AIモデルの開発と運用に焦点が当てられます。
ライフサイクルの管理
DevOpsのライフサイクルは、コードの書き始めから本番環境へのデプロイまでをカバーしています。DevOpsには、以下が含まれます。
- コードのバージョン管理
- ビルド
- テスト
- リリース
- デプロイ
- モニタリング
一方、MLOpsのライフサイクルは以下を含みます。
- データ収集
- データ前処理
- モデルのトレーニング
- 評価
- デプロイ
- 継続的なモニタリング
- 再トレーニング
MLOpsは、特にデータとモデルの管理に重点を置いています。
テストと検証のアプローチ
DevOpsでは、ユニットテスト、統合テスト、システムテスト、受け入れテストなどの様々なテストレベルが実施され、コードの品質を保証します。
MLOpsでは、これに加えて、モデルの性能評価やデータの検証が重要です。モデルの精度、リコール、F1スコアなどの指標を使用してモデルの性能を評価し、バイアスやフェアネスの検証も行います。
MLOpsとLLMOpsの違い
生成AIの登場以来、LLM(大規模言語モデル)の開発・運用に関するプラクティスと技術を指すLLMOps(Large Language Model Operations)という概念が使われることも多くなっています。
LLMOps(Large Language Model Operations)とMLOps(Machine Learning Operations)は、それぞれ大規模言語モデルと、(従来の)AIモデルの開発・運用に関するプラクティスと技術を指しますが、トレーニングの観点からいくつかの違いがあります。
データの規模と多様性
LLMOpsでは、大規模な言語データを扱うことが特徴です。数十億から数兆トークンにおよぶ大量のテキストデータを用いてモデルをトレーニングします。当然、モデルのトレーニングに膨大な計算リソースが必要となります。
一方、MLOpsでは、ドメイン固有のデータを用いることが多く、データの規模はLLMに比べ比較的小さいです。そのため、必要な計算リソースも少なくて済むことが多いです。
トレーニング時間
LLMOpsでは、大規模なデータと複雑なモデルアーキテクチャを用いるため、トレーニングに数日から数週間かかることがあります。MLOpsでは、トレーニング時間は比較的短く、数時間から数日で完了することが多いです。
ファインチューニングとアダプテーション
LLMOpsでは、事前学習済みの大規模言語モデル(基盤モデル)を特定のタスクに適応させるために、ファインチューニングやアダプテーションが行われます。これにより、少量のタスク固有のデータでも高い性能を発揮できます。
MLOpsでは、タスク固有のデータを用いて最初からモデルをトレーニングすることが一般的です。
モデルの汎用性
LLMOpsで用いられる大規模言語モデルは、多様なタスクに適用可能な汎用性を持っています。一方、MLOpsで開発されるモデルは、特定のドメインやタスクに特化していることが多いです。
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MLOpsがなぜ必要なのか?
注目を集めているMLOpsですが、ここではその必要性について解説します。
AIモデルの一貫性と再現性の確保
AIモデルの開発には、複雑なプロセスと多くのデータが関与します。そのため、異なる環境下でもモデルが一貫して動作することが重要ですが、それを手動で管理するのは非常に困難です。
MLOpsは、モデルのトレーニング、テスト、デプロイの各ステージにおけるプロセスを自動化し、環境間での一貫性と再現性を確保します。これにより、AIモデルの信頼性が向上し、ビジネスに安定して適用できるようになります。
モデルの迅速なデプロイと更新
ビジネス環境は常に変化しており、それに応じてAIモデルも迅速に更新する必要があります。MLOpsを導入することで、新しいモデルや改善されたモデルを素早くデプロイできるようになります。
これにより、企業はビジネス環境の変化に迅速に適応し、競争力を維持できます。
モデルのパフォーマンス監視
デプロイされたモデルのパフォーマンスを監視し、必要に応じて調整することは、ビジネスにとって非常に重要です。MLOpsは、モデルのモニタリングとメンテナンスを自動化し、モデルが一度デプロイされた後もその性能を継続的に評価し、維持することができます。
これにより、AIシステムの長期的な安定性と信頼性が確保されます。
リソースの最適化
企業が成長するにつれて、取り扱うデータ量や必要な計算リソースも増加します。MLOpsはスケーラビリティを考慮して設計されているため、企業が増大するデータとリソースの需要に柔軟に対応できます。
これにより、AIシステムの運用コストを最適化し、企業のリソースを効率的に活用できるようになります。
企業がMLOpsを利用する4つのメリット
MLOpsの利用には様々なメリットがあります。ここでは、システム開発者の観点から見たMLOpsの主要なメリットについて詳しく説明します。
AIモデルのライフサイクル管理の効率化
MLOpsを導入することで、AIモデルの開発からデプロイ、運用までのライフサイクル全体を効率的に管理できます。自動化されたワークフローとパイプラインにより、モデルの構築、テスト、バージョン管理、デプロイが円滑に行われます。これにより、開発チームは手動でのタスクを減らし、生産性を大幅に向上させることができます。
例えば、MLOpsを導入したチームでは、モデルの開発からデプロイまでの時間が大幅に短縮され、自動化されたテストとバージョン管理により、モデルの品質と再現性が向上し、エラーの発生率が減少するといった効果が期待できます。
インフラストラクチャの最適化とコスト削減
MLOpsは、AIモデルの運用に必要なインフラストラクチャを最適化し、コストを削減します。自動スケーリング機能により、トラフィックの変動に応じて必要なリソースを動的に調整できます。これにより、過剰なリソースの使用を避け、コストを抑えることができます。
MLOpsの自動スケーリング機能を活用することで、ピーク時のトラフィックにも柔軟に対応できるようになり、安定したサービス提供が可能になります。結果として、AIモデルの運用コストを大幅に削減できる可能性があります。
モデルパフォーマンスの継続的な監視と改善
MLOpsでは、デプロイされた機械学習モデルのパフォーマンスを継続的にモニタリングし、異常を検知した場合には速やかに対応できます。自動化されたモニタリングツールにより、モデルの精度や予測結果をリアルタイムで追跡し、パフォーマンスの低下や異常を即座に検知できます。
これにより、開発チームはモデルの問題をいち早く特定し、迅速に改善策を講じることができます。
例えば、MLOpsのモニタリング機能を活用することで、AIモデルの性能を常に監視し、新しいデータが追加されるたびにモデルを再トレーニングすることで、モデルの精度を継続的に向上させることが可能です。
チーム間のコラボレーションの促進
MLOpsは、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、運用チームなど、AIシステム開発に関わる様々なチーム間のコラボレーションを促進します。共通のワークフローとツールを使用することで、チーム間のコミュニケーションが円滑になり、より効率的に作業を進めることができます。
MLOpsの導入によって、データサイエンティストとエンジニアの間のコラボレーションが改善され、共通のツールとプロセスを使用することで、モデルの開発からデプロイまでの時間が短縮され、より高品質なAIシステムを迅速に提供できるようになります。
MLOpsに有用なツールやフレームワーク
MLOpsでは、これらの手順を自動化・効率化するために、様々なツールやフレームワークが活用されています。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
Kubeflow
Kubeflowは、Kubernetes上で機械学習ワークフローを管理するためのオープンソースプラットフォームです。機械学習モデルの開発、トレーニング、デプロイを簡略化し、スケーラビリティと再現性を提供します。
MLflow
MLflowは、機械学習モデルのライフサイクル全体を管理するためのオープンソースプラットフォームです。モデルのトラッキング、パッケージング、デプロイを容易にし、実験の管理と再現性の確保に役立ちます。
TensorFlow Extended (TFX)
TensorFlow Extended (TFX)は、TensorFlowベースの機械学習モデルのためのエンドツーエンドのプラットフォームです。データバリデーション、モデルトレーニング、モデル評価、モデルのデプロイなどの機能を提供し、機械学習ワークフローの効率化を図ります。
MLOpsについてよくある質問まとめ
- MLOpsを利用するメリットは?
- モデルの一貫性と品質の向上
- 効率的なリソース管理とコスト削減
- 迅速な問題解決
- MLOpsの活用シーンは?
- 予知保全と異常検知
- 金融リスク管理
- ヘルスケアと診断
- 需要予測と在庫管理
まとめ
MLOpsは、AIモデルの開発、デプロイ、運用を効率化し、一貫性と再現性を確保するための強力なフレームワークです。データの前処理からモデルの監視・改善まで、一連の手順を自動化することで、企業はAIプロジェクトのライフサイクル管理を最適化できます。
AIの活用を検討する企業は、MLOpsの導入を真剣に検討すべきでしょう。
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