AIを搭載したドローン活用例7選!現状と歴史、できることや活用事例を解説
最終更新日:2024年11月12日
写真や動画をとることなど、娯楽目的で使用されることも多いドローンですが、近年ではビジネスシーンでも多く活用されるようになってきました。ドローンだけで空中を飛べるよう、AI(人工知能)技術を効果的に利用する個々の事例も新しく作り出されています。
AIを搭載したドローンが、現在どのような機能を搭載して利用されているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ドローン技術の歴史やAI搭載までの流れ、実際に活用されている事例を説明していますので、ぜひご参考ください。
AI Marketでは
目次
ドローン技術の現状・歴史
実は、自律的に稼働する機体全般のことを「ドローン」といいます。2010年以前は無人飛行機などとも言われていましたが、それ以降は、現在の馴染みのある「ドローン」として呼ばれるようになっています。
2015年には、航空法第2条22項の改正で「無人航空機」が以下のように定義されました。
「この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。」
引用:航空法
下記では、ドローンの歴史や世界市場について簡単に解説していきます。
ドローンの歴史
1970年代から日本では多種多様なデベロッパーによって、産業用ドローンの実用化が進められてきました。
1987年には世界で初めて日本のヤマハ発動機が、産業用無人ヘリコプターを実用化・販売したという、現在まで進展・変化してきた過程があります。
さらなる小型化が進んだのは2010年以降で、リチウムイオン二次電池の普及・MEMSジャイロスコープや加速度センサーなどの技術革新が起こったのです。
世間一般にこの時期は「空の産業革命」と称され、それに相応するような形で、2022年時点で世界シェア2位を誇るドローンメーカーであるフランスのParrot社の「AR.Drone」が2010年に誕生しました。
また、現在世界シェア7割を占めるとされ、圧倒的トップである中国のDJI社はその少し前の2006年に創業されています。
世界のドローン市場の傾向
世界のドローン市場は急速に成長しており、株式会社グローバルインフォメーションは、複数年にわたる成長率をもとに市場予測を算出しました。2023年から2030年の間に市場は、1年あたりの成長率(CAGR)が商用部門では7.7%で推移して、2030年には546億米ドル規模に届くものと予想しています。
このようなドローンへの期待が上昇することには、先進国を中心とする地域において、少子化と高齢化が同時に進行することにより、長い間改善されずに持続している労働力不足・人件費高騰による省力化の促進が急務となってきた社会的背景があるのです。
出典:ドローンの世界市場 (2023-2030年):市場規模・予測・市場展開・法規制
AI搭載のドローンとは?
AI搭載のドローンとはその名の通りAIを利用して、自律飛行や画像認識・解析に必要な機能が装備されている新しいドローンです。
AIとドローンは相性が良く、AIの機械学習能力とドローンの探索能力を取り合わせてひとまとまりにすることで、AIが非搭載であるドローンでは不可能であったことを可能にしてきました。
一般的なドローンとAI搭載のドローンの違い
ドローンには防衛・農業・自然災害救援・セキュリティ・建設など、目的に応じて色々な種類があります。
効率性と安全性を向上させすことが可能なドローンは、消防士から農業従事者まですべての人にとって重要なツールとして活用されています。
AI非搭載のドローンではカメラで撮影した、画像ファイルとして扱われるデータを表示することのみが可能でしたが、例えばAI搭載のドローンでは、画像を即時解析し、取得した画像情報から取り巻く周囲の状態を知り、適切に情報を処理できるようになりました。
これによって地域の地図を作ること・対象となるものの後を追うこと・画像解析結果を参考にして最適な判断を行うことなど、入力とほぼ同時に処理が行えるようになったのです。
周囲のさまざまな情報を収集して判断するために、複数のセンサーを用いてデータを統合して判断するセンサーフュージョンの手法がよく用いられます。
こちらでセンサーフュージョンのデータ統合の仕組み、活用事例を詳しく説明しています。
AIを搭載したドローンでできること
AIを搭載したドローンは「自律飛行」「画像認識・解析」が可能です。
すでに身近なところで、このAI搭載ドローンによる取り組みが始まっています。
自律航行
AI搭載のドローンはカメラから伝えられる画像ファイルとして扱われるデータ内容に基づいて、周辺状況を理解し、自動で空中を飛ぶことが可能です。
自律飛行するために、前方の妨げになる物体を、即座に認識して自律的に衝突を回避したり、複雑な周囲の状態を認識して飛行経路を自ら新たにつくり出しています。
ここ数年、AIを搭載したドローンへの期待がいっそう広がってきており、ハードウェアやソフトウェアの性能もより好ましいものへ劇的に改められ、そのための創意工夫の取組みが進められているのです。
画像認識・解析
ドローンは高い場所や災害現場など、生命や身体の損害、事故・災害などが生じる可能性のある場所で空中から撮影することに役立ってきました。
AIが組み込まれたことにより、カメラやセンサーで入手して伝えられる内容を即座に解析できるようになりました。
例えば、鉄塔や災害現場などの場所でドローンによって撮影された画像データを元に、建造物の劣化状況を確認したり、災害時の破損状況を確認することなどが可能になります。
当然ながら三次元で表される空間の認識は、AIで処理が実行される速度にも大きく依存するために制約を受けてしまいますが、今後急激に進歩して、よりすぐれたものになることが期待されています。
画像認識・画像解析のAI開発に強い会社の記事では、より詳しく画像認識・解析について解説していますので、あわせてご覧ください。
AI Marketでは
AI搭載のドローンの活用事例7選
AI搭載のドローンは既に日本においても広く効果的に利用されています。
経済産業省が「小型無人機等に係る環境整備に向けた官民協議会」を企画立案して始動させています。どの年も同じように無人航空機と関連する政府の取組を表の形式でまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ」を互いの意見を述べて論じ合い、広く世間に発表しているのです。
ドローンの活用に関連して、目視内飛行から無人地帯での目視外飛行、加えて有人地帯での目視外飛行まで4つの飛行レベルによって分類されています。2022年実現を目処にしている、有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4)はAIを組み込むことが必要となっています。
ドローン水稲直播栽培
石川県農林総合研究センターと株式会社オプティム(以下、オプティム)が協力して開発された新技術による「ドローン水稲直播栽培」の3カ年プランが、2018年から2021年にかけて石川県で実施されました。
AI搭載のドローンに種子を積み込み、農作物を栽培するための場所へ直に接して種子を打ち込めるようになったのです。農作物を植えつけた列・条も形づくられて、農作物をとりいれる量を上げることも期待できます。
このAIアルゴリズムを効果的に利用して、どうしてもしなければならない箇所にだけピンポイントで農薬を散布することで、農作物の病害・虫害を防くことも可能となります。
農業でのAI活用事例についてはこちらの記事で解説しています。
災害時エリアモニタリング自動化ドローン
NTTデータは災害時エリアモニタリング自動化ドローンを展開しています。
防災ドローン自動航行システムにより、災害が発生した時に避難道路・構造物の被災状況を幅広い範囲にわたって素早く正確に解析することで、行政機関・インフラ事業者の災害対応業務の高速化や最適化を実現しています。
同時に数多くのドローンを自律飛行させ、わずかの間で映像を過不足なく寄せ集め、一元的に全体を統制することで関係先に情報などを送信します。
AIによって映像の構成要素を細かく解析することで、分析を効率的に行うことが可能になるだけでなく、ドローンによって必要な物品・資材を運ぶことも可能です。
橋梁・道路などインフラの点検・検査でAIドローンを活用したシステム開発を得意とする開発会社についてはこちらの記事で紹介しています。
スタジアム警備サービス
セコムは2019年8月に花園ラグビー場で5G(第五世代移動通信システム)を利用して、KDDI・KDDI総合研究所と共同で実際に行った、スタジアム警備サービスの実証実験を実施しました。
スタジアム上空における4K解像度の映像を5G通信回線で次々に送り伝え、AIで画像を解析することによって、「もみあい、ひったくり」「倒れている」などの異常行動を即時見つけ出すことを可能とします。また、これらの異常を検知し次第、現場の警備員へ伝達し、現場へ急行することを可能とします。
数万人規模のイベントにおける警備と組織をまとめて動かしていくかたちを、AI搭載のドローンが大きく変化させることになるかもしれません。警備業界の人材不足の解消や、さらなる警備クオリティ向上による施設の安全性の向上に繋がると期待されています。
医療MaaSプロジェクト
ドローンのAI管制プラットフォームを実用化しているトラジェクトリーと、ドローンの社会に組み込みを支援して産業を推進するスカイピークは、静岡県浜松市天竜区春野町で実際に行われた「春野医療MaaSプロジェクト」で実証実験を行っています。
MaaS(マース)とは「Mobility as a Service」(サービスとしての移動)を意味する新しい移動の考え方です。MaaSのメリット・デメリット、導入事例についてはこちらの記事で特集していますのでご覧ください。
浜松市でもとりわけ高齢化が進行している中山間地域の天竜区では、医師の数が、医療を必要としている人数に比べて不足していることに加え、高齢者の通院が非常に難しいという問題に直面しています。
その問題を解消しようと、浜松市・地域の医師会・民間企業が互いに連絡をとり協力して、オンライン医療サービスと連携した「ドローンによる医薬品配送サービス」の実証実験が行なわれました。
この実証実験では、先述の「空の産業革命に向けたロードマップ2020」における「Level4」に該当する「有人地帯での目視外かつ補助者なしの自律飛行(自動運転)」実現を目指しています。
3D都市モデリングデータ民間活用
株式会社A.L.I. Technologiesはドローン測量によって、3D都市モデリングデータを民間で効果的に利用するための実証実験を行いました。
構築対象となっている都市のひとつである加賀市とコラボレーションして、物流ドローンのフライトシミュレーションを実施。
本実証実験を通して、事前に現場確認に赴く工数の軽減や、飛行ルート設定における反復作業の削減などが実現でき、総合的なコストダウンを実現することができるとしています。
また、ドローン物流と並行して実施される測量データは、地図データの更新頻度向上において有効であることが確認されたとのことです。
AIとドローンによる太陽光パネル自動点検システム
社会インフラのDXを推進するAIカンパニーであるセンシンロボティクスは「SOLAR Check」をリリースしています。これは赤外線サーモグラフィカメラを搭載したドローンを使用してソーラーパネルを自動点検するシステムです。ドローンが自動で航行し、短時間でパネルの異常を検出します。
太陽光パネルの配置に合わせて自動で航行ルートを設定し、ドローンを飛行させることができます。これにより、点検しづらい傾斜地でも柔軟に対応が可能となっています。
自動航行のドローンを用いることで点検時間を大幅に短縮できます。特別な技術を持たないスタッフでも対応可能なため、高頻度での点検が実現します。
撮影したデータはクラウド上で一元管理され、異常箇所のAI解析や点検レポートの作成も自動で行われます。これにより、迅速な点検レポートの作成が可能となります。
関連記事:「太陽光発電におけるAI活用方法は?メリット・最新企業実例を徹底解説」
自律型ドローンを使って風力発電ブレードを点検
次世代エアモビリティに関する事業を手がけるSKYSCAPE株式会社は、Clobotics社と共同で商用風力発電機の点検に自律型ドローンを用いた実証実験を行いました。この実験により、従来の目視点検よりも6時間以上の時間短縮が実現されました。
また、Cloboticsの「IBIS」システムは、風力発電機のブレードを自動で検査し、欠陥箇所を撮影・分析・データ化します。これにより、早期の欠陥発見が可能となり、コスト削減や安全性向上を実現しています。
関連記事:「風力発電でのAI活用法は?企業導入事例・メリット・注意点を徹底解説!」
AIを搭載したドローンについてよくある質問まとめ
- AIを搭載したドローンの主な機能は何ですか?
AIを搭載したドローンの主な機能は以下の2つです。
- 自律航行
- 画像認識・解析
- AIを搭載したドローンの具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
AIを搭載したドローンの具体的な活用事例には以下のようなものがあります。
- 農業:ドローン水稲直播栽培、ピンポイント農薬散布
- 災害対応:エリアモニタリング、被災状況の迅速な解析
- 警備:スタジアム警備、異常行動の即時検知
- 医療:医薬品配送サービス(医療MaaS)
- 都市計画:3D都市モデリングデータの作成と活用
- エネルギー:太陽光パネルの自動点検システム
- インフラ点検:風力発電ブレードの自動点検
- AIを搭載したドローンを導入する際の注意点は何ですか?
AIを搭載したドローンを導入する際の主な注意点は以下の通りです。
- 導入目的と期待される効果を明確にする
- 使用分野と深層学習に任せる業務を具体的に定義する
- 克服すべき課題を明確にする
- 法規制(航空法等)を確認し、必要な許可を取得する
- データの収集・管理・セキュリティに関する対策を講じる
- 専門知識を持つ開発会社やコンサルタントと連携する
ドローンで活用するAI開発の依頼ならAI Marketにお任せ!
本記事では、AI搭載のドローンを導入する際の活用事例について解説しました。AI搭載のドローンを導入することによって、さまざまなビジネスシーンで応用可能です。
導入を検討する際には、どの分野でどのような仕事をディープラーニングに任せられるのか、指針を明確にしながら進めることが大切です。だからこそ克服すべき課題と、望ましい効果を明確にしておくことが必要です。
このような導入時の悩みを抱えている企業様は、最適なAI開発会社の紹介を行なっているAI Marketをぜひご利用ください。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp