教育業界でのAI導入事例・おすすめサービス14選!メリットや注意すべき3つのデメリットも解説【2024年最新版】
最終更新日:2024年11月05日
学習塾、学校などの教育業界は、テクノロジーの進歩や社会情勢の変化によって大きく変化しており、同時にさまざまな問題や課題も発生しています。
慢性的な人手不足の中で、求められる仕事のレベルは年々上昇し、少子化の深刻化で競合プレイヤーとの競争はますます激化しているのではないでしょうか。
現場の先生たちを守るため、そして学ぶ側の生徒一人ひとりのニーズに向き合うために、AI(人工知能)を活用して問題解決している事例があります。
本記事では、教育業界におけるAI活用方法を5つ紹介します。さらに実際にAIをどのように教育業界で活用するのか、メリット・デメリットはどのようなものがあるのかも具体例を挙げながら解説します。
生成AIを教育分野・教育機関で用いている事例についてはこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは、
目次
- 1 教育業界で起きている問題・課題とは
- 2 AI×教育でできる4つのこと、メリット
- 3 AIを教育に活用することで生じる(かもしれない)3つのデメリット
- 4 教育現場でAIを活用している導入事例10選
- 4.1 入試合格ラインをデータから予想(英進館/グルーヴノーツ)
- 4.2 生徒の苦手分野をリアルタイム解析(野田塾/atama plus)
- 4.3 タブレット活用でアダプティブ・ラーニングを実現(戸田市教育委員会/COMPASS)
- 4.4 データ活用で生徒の学習度と到達度を解析(Z会)
- 4.5 苦手分野克服のために問題自動作成(市進学院)
- 4.6 生徒のニーズにこたえる授業動画をAIレコメンド(昴/ロカリア)
- 4.7 英会話スキルをAIで評価して指導(KDDI/イーオン)
- 4.8 記述式問題のAIを活用した自動採点(代々木ゼミナール/理化学研究所)
- 4.9 AIによる記述式問題の自動採点(日本英語検定協会/サインウェーブ)
- 4.10 個別化された学習の実現(AI個別学習るうと)
- 5 AIを活用した教育サービス4選
- 6 教育業界でのAI導入についてよくある質問まとめ
- 7 まとめ
教育業界で起きている問題・課題とは
教育分野で起こっている問題点や課題点をいくつか見ていきましょう。教育業界においては、特に少子高齢化、働き方改革、突然の災害への対応が迫られています。
少子化による生徒数の減少
日本は世界でも有数の速度で少子高齢化が急速に進んでおり、児童・生徒数は今後も減少を続けることが見込まれています。神聖な教育を行う公的な学校機関であろうと、需要と供給のバランスで成立するのは例外でありません。対象となる子どもたちが少なくなってしまえば、長期的には教育産業全体も縮小していくことは間違いありません。
業界内の競争で、まずは効率化が進んでいないプレイヤーは淘汰されていくでしょう。早いうちに次の手を打っておくことが重要です。
教師の長時間労働
教師の長時間労働や負担の増大は社会問題となっており、心身の支障をきたしてしまう教師が後を絶ちません。この問題は効率の教育機関であろうと、塾のような民間教育機関でも変わらず問題となっています。
長時間労働などの悪いイメージによって、残念ながら教育業界はブラック産業であるという認知が社会に広まっています。それで、教員への志望者が大幅に減少している状態です。
文部科学省が2022年1月末に発表した調査結果によると全国の公立学校1897校で、2,558人もの教員が不足しています。小学校の教員採用試験は、3年連続で最低倍率を更新し、2020年度実施の採用倍率は全国平均で2.6倍、前年比0.1ポイントの減少となりました。2011年は4.5倍でしたので、10年で教員の志望者が半分近くになってしまったわけです。
教師の志願人数が減ってしまうことで、先生の質が低下してしまう懸念も出てきています。教える側の人材を守りながら、それでも高い教育の質をキープしていくには教員の行う仕事内容を根本的に見直していくことが求められているのです。
不測の事態で授業の進捗が不透明
近年は突然の自然災害やコロナ禍のような感染症の流行が頻発するようになりました。不測の事態により相次いで休校となり、生徒の学習をどう進めていいのか混乱に陥ったところも数多くあります。この事態はここの教師の努力によってどうにかできるものではありません。
これから幾らでも起こりうる不測の事態によって、生徒たち(や教師)が登校できなかったり、既存の教育設備を活用できなくなったとしても、学習進行を止めることは許されません。すべての生徒に学びの機会を提供できる環境の整備を進めていくことが大切です。
AI×教育でできる4つのこと、メリット
教育現場ではすでにAIの導入や活用が進んでいます。Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語エドテック(EdTech)が生まれ、関連スタートアップの急成長は止まりません。人対人の教育の良さを残しながら、テクノロジーの力を借りることで教育観にイノベーションが起きています。
教師の仕事には、直接生徒たちに授業をする以外の調査や採点などさまざまな事務タスクが含まれます。AIで事務タスクの負担を減らすことで、その分生徒一人ひとりに合わせた教育プランの構築に時間を割いたり、一部の教師に集中していた負担を分散させられるのは大きなメリットでしょう。
また、先生にとっても得意不得意な分野は当然存在しますが、現在は人手不足によって不得意分野を教えなければならないケースもあります。AIを教育補助に活用することで、教える側の負担を軽減しながら教育の質を確保できるのも大きなメリットです。
教育業界に役立てられる代表的なAI技術を解説していきます。
ビッグデータ解析でアダプティブ・ラーニング
アダプティブラーニング(適応学習)とは、生徒の習熟度や理解度に合わせて個別に最適化した学習内容を提供することです。理解が進んでいる生徒にはより高度な問題、理解がまだ追いついていない生徒には苦手分野の問題をじっくりと練習させるという具合に一人ひとりに合わせて学んでもらえます。
ビッグデータを用いたAI技術の活用によって、より少ない労力で、より高度なアダプティブ・ラーニングを提供することが可能となっています。
政府のGIGAスクール構想によって、生徒にPCやタブレット端末を配布する、オンライン授業を勧めるといった施策も進められていますので、アダプティブ・ラーニングをより多くの生徒に提供できるようになるでしょう。
理解が進んでいる生徒にはより高度な問題、理解がまだ追いついていない生徒にはその分野の問題をじっくりと練習というような具合に一人ひとりに合わせることができます。
データ分析に基づくカリキュラムの構成
AIは過去の大量のデータを学習して分析することが得意です。分析データは、属人的な勘だけに頼らない客観的な事実に基づくカリキュラムを構成することが可能となるでしょう。
教師の質や指向性、都市部・地方の違いに依存することなく、平等なカリキュラムを実現することが可能になる点です。
音声分析を用いて語学教育を効率化
AIの音声技術を活用すれば、生徒への指導レベルの向上が期待できます。とくに語学教育において、「読む・書く」の指導は、比較的教える側の属人的要素が生徒の教育に与える影響は大きくありません。しかし、「話す・聞く」ための指導においては、教師のスキルによって左右されやすいのが課題でした。
ここでAIの音声技術を用いれば、発音の正確さや文章の正しさなどを公平に指導・評価できるでしょう。学校や地域による格差などさまざまな問題の解決が期待できます。
画像認識による採点作業の自動化
採点の自動化においては、AIの画像認識・解析(分類)の活用が適しています。記述式の採点では、答案が正解か判断しなければなりません。部分点として加点をするケースが多く、基準点を照らし合わせながらの採点するのは思った以上に時間を有するでしょう。
それらはAIの文字認識で採点を自動化することで、公平な採点かつコスト削減に役立ちます。教師に時間的余裕が出るため、生徒と寄り添う、または本質的な教育を実現するためのスキルアップの時間として費やすことができるようになるでしょう。
AI Marketでは、
AIを教育に活用することで生じる(かもしれない)3つのデメリット
AIを使うことによるメリットを先程の項目では見ていきましたが、もちろん万能ではないため、いいことばかりではありません。
どのようなデメリットがあるのかもきちんと押さえておく必要があります。それでは詳しく見ていきましょう。
関連記事:「AI導入失敗ケース5例の原因徹底解説!失敗するプロジェクトには理由」
雇用が減る
AIを活用することで、自動化が可能なものは人の力を借りなくても、どれだけでも作業をすることが可能です。特に単純作業に割いていた労力は大幅に減らせるでしょう。それだけ必要となる雇用は減る可能性があるということです。
ただし仕組みづくりの構築や最終的なチェックなど人の力を介さないとできないこともたくさんあるので一概に減らせるとも限りません。
先生/生徒共に考える力が減る
AIによる指導や採点は、基本的に過去のデータから学習した結果から、勉強のプランをAIから提示してくれることに利点はあります。一方で、先生生徒共に自分自身で考える機会を奪ってしまうことは問題点でもあります。
自ら興味を持って学びたい分野を見つける、理解できないのはなぜかを自分自身で深く考える力は、人の手による教育が今後も必要でしょう。
オンライン学習はモチベーションが上がらない
オンライン学習はモチベーションの低下が懸念されており、一般的に学習を完了させるのは5〜10%ほどと低く、途中でリタイアしてしまうという問題点が指摘されています。
またテクノロジーを使うことだけに満足してしまうこともあります。オンライン教育を始めた、一人一台ずつタブレット端末を配った、という手段だけを整備しても、学力向上につながるとは限りません。生徒が好きな動画を見ているだけで自習をせず、時間だけを無駄にするという状況も多く発生しています。
以上なようなデメリットが気になり、AI開発会社選びに迷っているなら、AI Marketにお任せください。
教育現場でAIを活用している導入事例10選
ここからは、実際にAIを取り入れたサービスと、そのサービスを活用している導入事例について紹介していきます。
入試合格ラインをデータから予想(英進館/グルーヴノーツ)
九州の大手学習塾である英進館では、高校入試の平均点や各校の合格ラインの予想の算出に、株式会社グルーヴノーツの「MAGELLAN BLOCKS」を活用しています。MAGELLAN BLOCKSは、数値回帰タイプのモデルを使って、予測の算出時間の大幅な短縮を実現したクラウドサービスです。
過去の生徒の成績、各校の倍率や受験者数などのデータからあらかじめ学習させて、当日の自己採点からおよそ10分で予測が可能となりました。
これまでは教師25人ほどが約2時間かかって算出していたため大幅な短縮です。検証では、ベテラン教師が算出した点数とほぼ同じ結果だということです。
導入後は、教師にしかできない他の業務により多くの時間を費やすことが可能となりました。
「MAGELLAN BLOCKS」では、量子コンピュータやAIのディープラーニング(深層学習)モデルなどの最新技術を用いて、複雑で高度な業務課題に対応した数理モデルを開発しています。
生徒の苦手分野をリアルタイム解析(野田塾/atama plus)
東海地方で大手学習塾を手掛ける野田塾は中学生向けの数学の授業にatama plus株式会社のatama+を導入しました。atama+はatama plus株式会社が開発したタブレット端末を用いる中高生向けのAI学習教材です。
生徒がタブレット端末で問題を解き、正解不正解の状況からAIが苦手分野を探し出すことができ、生徒一人ひとりに合わせた学びの個別最適化をしてくれます。
先生と生徒のコミュニケーションを支援するコーチング機能を備える点も特徴です。学習の状況をリアルタイムで確認でき、ほめるべきポイントや、眠くなっているかもしれない、といった状況をアラートで先生に通知できます。これによって生徒へ適切な声がけが可能です。
野田塾では、授業時間のうちで3〜4割をatama+を使った授業に使い、残りの時間で集団授業を行います。
生徒たちは集団授業の進捗に応じて、つまずいている点を特定、学習し十分に理解できてから次に進むサイクルを作り、効果的な学習を進めることが可能となりました。
先生が教室にいる学習塾や予備校での利用が基本的です。AIは個々の学習指導と、モチベーションの維持をコーチする役を担っています。
atama+は全国の学習塾や予備校に導入が広まっています。
タブレット活用でアダプティブ・ラーニングを実現(戸田市教育委員会/COMPASS)
埼玉県戸田市の公立学校では、授業中の演習問題をタブレット教材の「Qubena」に置き換えてたくさんの問題に取り組んでいます。
「Qubena」は、COMPASSが開発した数学や英語のAIを活用した学習支援アプリです。生徒一人ひとりの理解度に合わせて教える個別最適化のアダプティブ・ラーニングができ、苦手分野をAIが見つけ、克服のための問題を出し直して解説してくれます。
授業の副教材としての位置付けで、タブレット端末などを使って利用します。手書き入力などの多彩な解答形式ができることが特徴です。AIが生徒一人ひとりに合わせた問題を出題し、正解不正解だけでなく問題を解くまでにかかった時間や計算過程を分析します。分析結果によって、生徒の不得意分野を探し出すことが可能です。
教師が問題を選んで、テストにしたり宿題にしたりといった使い方で生徒に配信することもでき、教師は生徒一人ひとりの進捗状況を確認できます。
Qubenaは全国の小中高の学校で採用されています。COMPASSは、教育コンテンツやシステムの開発を手掛けており、家庭向けのオンライン家庭教師サービス「Qubena with」の運営も行っています。
データ活用で生徒の学習度と到達度を解析(Z会)
通信教育の「Z会」を展開している株式会社Z会は、「人の指導×AI技術」を取り入れたタブレット学習コース「AIスマート深化学習」を活用しています。
Z会が通信教育事業で蓄積した問題作成や添削指導のノウハウをAIに組み込んで、人による指導とを掛け合わせることで、最短ルートでの完全習得へと導く強みがあります。
タブレット上で、映像授業の視聴や問題演習による学びや答案のやりとりができ、プロの添削者の指導を受けられます。AIによって到達度を分析し、選出した最適な課題に取り組むことが可能です。
タブレット端末を通じて学習の取り組み状況が蓄積され、日々の学習や定期テスト対策に高い効果を発揮します。
定期テスト対策では、テスト範囲を設定すれば、日々の学習履歴と到達度をAIが解析して、テスト対策のプランを自動生成します。優先的に取り組むべき課題から取り組むことができるので、最短ルートでの習得が可能です。
苦手分野克服のために問題自動作成(市進学院)
株式会社市進が運営する学習塾大手の市進学院では、モノグサ株式会社が提供するアプリ「Monoxer(モノグサ)」をオンラインで受講する小中学生向けに導入しました。
オンライン授業は、各生徒の学習状況が把握しにくいという課題がありました。しかし、AIアプリを活用することで、オンライン学習が増えても適切なアドバイスができるようになるとしています。
生徒はスマートフォンやタブレットで問題に回答し、アプリが正答率の低いジャンルを自動で分析します。苦手な分野を効率的に出題し、利用状況を塾側からも確認できるので、各生徒の苦手分野を教員が把握することも可能です。
選択式や記述式など問題を複数組み合わせて出題し、AIが各生徒の正解率から記憶度を計測し、繰り返し出題します。
「Monoxer(モノグサ)」は、漢字や英単語を覚えるアプリとして、私立学校や塾など全国のおよそ4,000もの教室に導入されています。
生徒のニーズにこたえる授業動画をAIレコメンド(昴/ロカリア)
九州や沖縄で学習塾を運営する株式会社昴は、数千本ある動画コンテンツの中から各生徒が必要とするコンテンツをAIで推薦する実証実験を、株式会社ロカリアと共に行っています。
昴では小中学生向けに10分程度の動画コンテンツを数千本作成していました。保有している生徒の学習ログデータ、及び約10年分の模擬試験のビッグデータをAIによって解析し、生徒一人ひとりの特性に合わせた動画をAIが推薦します。
離島や山間地などの教室に通いにくい生徒向けへの提供を念頭に、少人数教室で動画を活用した授業などデジタルを活用したきめ細やかな授業や指導に生かすことを目指して開発されました。地理的要因による教育格差の是正と、地域活性化の基盤作りを行う狙いがあります。生徒にとって効果的かつ効率的な学習が期待されています。
英会話スキルをAIで評価して指導(KDDI/イーオン)
ともにKDDIグループに属する英会話学校大手の株式会社イーオンと株式会社KDDI総合研究所は、英会話のスキルを判定するAIシステムを共同開発しています。
スマートスピーカーのAmazon Alexa(アレクサ)を活用した対話形式での英単語トレーニング「イングリッシュタイム」では、マイクに向かって話した英文を、AIによって発音の正確さやリズム、イントネーションの良し悪しなどの採点が可能です。
イーオンがこれまで蓄積してきた英語の音声教材や生徒の音声データを活用することで、より高い精度の英会話スキルを向上できるサービスが可能となります。
英会話教室大手のイーオンは通信企業大手のKDDIの傘下に入っており、協業でシステム開発を行っています。
イーオンが培ってきた日本人のための英語教育ノウハウとKDDIの情報通信技術を融合したEdTech(エドテック)を推進し、より新しく高い品質のサービスを開発できるよう取り組みを進めています。
記述式問題のAIを活用した自動採点(代々木ゼミナール/理化学研究所)
学習塾大手の代々木ゼミナールは、記述式AI採点の技術を活用して現代文の記述式問題を自動採点するトレーニング教材を活用しています。
理化学研究所内の革新知能統合研究センター、自然言語理解チーム(理研AIP)との共同研究です。研究の基礎資料を代々木ゼミナールが提供し、自然言語処理技術を活用した教育や学習の支援として「記述式AI採点の技術」を開発しています。
記述式問題は、生徒の思考力や表現力の養成に欠かせないものの、採点にかかる時間や労力など負担が大きいという課題がありました。
現代文における記述式問題をAIが自動採点するトレーニング教材は、大学入試対策を目的とした問題が9回分収録されています。
AIがそれぞれの採点基準をもとに採点し、代々木ゼミナールの講師による解説動画を視聴して復習することによって、記述式答案作成のスキルアップを図れます。
記述式問題を効率的に自学自習が可能となるため、長期休暇中の学習課題や課外授業の補助教材などに柔軟に活用可能です。
AIによる記述式問題の自動採点(日本英語検定協会/サインウェーブ)
実用英語技能検定(英検)を運営する日本英語検定協会は、AIを活用した自動採点を行っています。
AI自動採点システムは、音声認識ソフトを手掛ける株式会社サインウェーブと共同で開発し、中国のAI開発企業アイフライテックの技術を採用しました。
このAI自動採点システムは、ライティングやスピーキングの技能といった従来の選択肢方式ではない採点でも自動でできる点が特徴です。
選択肢方式ではない問題は、模範解答はあるものの正解は一つでありません。そのため、採点者の負担が大きく、採点者の判断に左右され公平であるかという課題がありました。
しかし、記述式など自由に解答できる問題は、思考力や表現力などの評価がしやすいので、今後検定や入試などにより重視されることが予想されます。
個別化された学習の実現(AI個別学習るうと)
群馬県で3教室を運営している「AI個別学習るうと」は、atama plus株式会社のatama+を導入し、個人個人に合わせた個別化された学習を実現しています。
問題を繰り返し行っていく中で、atama+が、自分でも気づけていなかった苦手分野を分析してくれ、個々に最適化された専用のカリキュラムまで作成を行います。
また、atama+では理解度や勉強量などもデータで見える化されているため、「AI個別学習るうと」では学習の管理をatama+が行い、講師が生徒のモチベーション管理を行う、という役割分担を担っています。
AI Marketでは、
AIを活用した教育サービス4選
最近では、AIを活用した教育サービスの開発も盛んになってきました。代表的な教育サービスを詳しく見ていきましょう。
生徒・講師共に英語教材の学習満足度向上(ベネッセコーポレーション)
通信教育を手掛ける株式会社ベネッセコーポレーションは、英語教材でAI音声認識を活用した自動採点や評価をするパフォーマンステストを開発しました。
「スピーキング・クエスト」では、ゲーム仕立てのストーリーに従って、画面上のキャラクターが問題を出題します。児童一人ひとりの回答を即時に判定して、新学習指導要領が定めた評価項目ごとに採点および評価までを自動で行うことが可能です。
またオンライン英会話サービスの「オンラインスピーキング」では、外国人講師の表情やジェスチャーをAIで分析し、講師へのフィードバックやアドバイスができます。
例えば、ユーザーからの評価が高いレッスンは、講師の表情が豊かで、ジェスチャーが多用されているという傾向が見られました。
そこで、笑顔の頻度を重要指標の一つとして分析することとしました。講師側の表情にまで気を配ることで、ユーザーが楽しく学べる環境を作る狙いがあり、英語学習への満足度を高める効果が期待されています。
オンライン英会話での発音やスピーキングスキルの向上(スタディサプリ)
株式会社リクルートが運営する英語学習アプリの「スタディサプリENGLISH」は、AIを活用して利用者の英語の発音を評価するサービスを導入しました。スタディサプリでは、動画を視聴し、口のどの位置に舌を当てればいいか、どのような口の形にすればいいのかなどの発音の仕方を学びます。しかし、実際に正しく発音できているかわかりにくいという悩みが多く寄せられていました。
ユーザーの悩みに対応するため、「スタディサプリENGLISH」では視聴後にアプリに向かって実際に発音すると、音声認識AIが発音を分析して評価します。
ユーザーはどれくらい発音の仕方を身につけられたかを客観的に確認可能です。AIの評価を通じて、発音指導の満足度向上につなげることが期待されています。
またスピーキング力向上のためのトレーニングにも音声認識技術を活用し、発話した内容を文字起こし可能です。
文字起こしされた発話内容と解答例を評価する際に、独自に実装したAI評価ロジックを使用します。解答例との一致率を4段階で評価し、違いをテキストで確認することが可能です。
顔解析AIで卒業アルバム作成の負担軽減(エグゼック)
写真のネット販売システムを手掛ける株式会社エグゼックは、卒業アルバムの業務効率化システム「アルバムスクラム」を開発しました。卒業アルバム制作は、教員や保護者の負担が大きいと言われており、課題となっていました。
卒業アルバムの制作システムに顔認識AIを搭載し、多くの学校や写真館で採用されています。
候補写真やレイアウト写真をアップロードすると、児童や生徒が写っている写真の数を顔認識AIによって自動でカウントして可視化します。顔認識では、ランドマークアノテーションという手法を用いて、目・鼻・口といった顔のパーツを点で指定して個人を判別可能です。登場回数の偏りが一目でわかるので、差し替えの判断などの作業を簡単に行えるのがメリットです。
例えば、登場回数の少ない児童に写真を差し替える場合には、AIがその児童の写真候補をピックアップするので、簡単に差し替えができます。差し替えた後はリアルタイムで全体のカウント数も調整可能です。
オンライン上で作業を完結できる点も特徴です。行事ごとの写真選定は、教員や保護者が作業を分担することも少なくありません。「アルバムスクラム」はメッセンジャー機能を通じたファイル共有やチャットも可能なので、保護者の方の仕事や生活の隙間を利用してやり取りをしながら作業を進められます。
先生なしでも学習できるプログラミング教材(ライフイズテック)
プログラミングのオンライン教材を手掛けるライフイズテック株式会社は、AIを活用した高校でのプログラミング教育での教材を開発しました。
生徒の解答をもとにAIが苦手分野を探し、克服する問題を出すシステムです。教える先生がいなくてもプログラミングを学習できる教材として、ノウハウを活かした教員研修にも協力しています。
日本の教育制度は大きな変革期を迎え、学習指導要領の改訂で2022年度から高校でプログラミングを含んだ「情報I」が必修科目となりました。また、2025年の大学入学共通テストへの「情報」科目が入ります。しかし、プログラミングを教えられる教員は足りず、教育現場では指導の拡充への不安を抱える教員が少なくありません。
そこで、教育委員会と教員研修に関わる連携協定を締結をするなど、情報Iの指導案を共同で作成するということです。
プログラミングを教えられる教師不足の課題を解決するとの期待があります。
教育業界でのAI導入についてよくある質問まとめ
- AIを教育業界に導入するとできることは?
- ビッグデータ解析でアダプティブ・ラーニング
- データ分析に基づくカリキュラムの構成
- 音声分析を用いて語学教育を効率化
- 画像認識による採点作業の自動化
まとめ
教育分野で起こっている課題を見ていきながら、AIを活用することによって解決できそうなことについて紹介し、具体的な事例を挙げていきました。
AIにとって得意な分野である、単調作業の自動化や省力化、アダプティブ・ラーニングのような一人ひとりに合わせた学習プランの提案は積極的に利用したいものです。その他の教師の人の力でしかできないような学ぼうとする姿勢を育てる力や心の部分を支えることにより時間を割くことができれば、よりきめ細やかな教育を実施できるはずです。
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