医療業界でのAI活用方法が分かる!ヘルスケア・看護・病院の活用事例・メリット・注意点・サービス20選!【2024年最新版】
最終更新日:2024年11月12日
昨今、医療業界は先行きが見通せない状況になっており、特に医療機関の経営は苦しい状況が続いていると言われています。
そんな医療業界を取り巻く環境は厳しいのが現状ですが、近年、AIやIT技術の進歩が医療に恩恵をもたらしていることをご存知でしょうか。遠隔でオンライン診療ができるよう規制緩和が進み、それに伴うIT化も急速に進行しています。
また、今後はAI(人工知能)などの最新技術を用いた医療機器や診察支援の製品、サービスもさらに定着していくでしょう。本記事では、
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目次
- 1 医療業界でAI導入が切実に必要な理由
- 2 医療業界でAIを活用する4つのメリット
- 3 AIを活用した医療診断・医療支援サービス13選
- 3.1 肝細胞がんのMRI画像解析や診断支援AIの共同研究
- 3.2 眼底画像診断支援システム OPTiM Doctor Eye
- 3.3 医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest Nodule
- 3.4 富士フイルムのAI技術を用いたアルツハイマー病の進行予測
- 3.5 FRONTEOの認知症、うつ病診断のAIの補助活用
- 3.6 日立製作所の糖尿病患者の治療薬選択の支援AI
- 3.7 姿勢推定AIによるリハビリ支援とオンライン診療の革新(ソニー)
- 3.8 不妊治療の客観的治療法助言サービス
- 3.9 AIメディカルサービスによる内視鏡の画像診断支援AI
- 3.10 CureAppの高血圧治療アプリのAI活用
- 3.11 アステラス製薬のAIを用いた心電図解析サービス
- 3.12 対話型AIで患者の感情認識
- 3.13 クリエートの錠剤不良を99.9%の精度で判別できる装置
- 4 医療業界で事務効率を向上するAIサービス7選
- 5 医療業界でAIを活用する際の注意点・問題点
- 6 医療・看護・病院のAI活用事例についてよくある質問まとめ
- 7 まとめ
医療業界でAI導入が切実に必要な理由
入院、外来の患者数は共に減少を続けています。入院は医療が高度化し、診療報酬の減額などによって長期の入院が避けられているためで、外来は、受診を控える動きが広まったり、社会保障費の抑制の流れで、診療報酬が伸びないためです。
また、2025年に人口比率の高い団塊の世代が75歳以上となり、国民の5人に1人が75歳を迎える超高齢社会が到来し、2025年問題が起こると予測されています。特に大都市部で生活する高齢者が急増し、社会保障費がピークに達し、医療施設の供給不足が懸念されています。
ここでは、前述した現状をふまえ、医療業界での問題・課題を取り上げて紹介していきます。
医療従事者の人材不足
医療従事者のなり手の不足は深刻で、特に地方で人材不足が顕著になために地域間で格差が起こっています。産科や救急、外科などの診療科は労働環境も過酷なことから、働き方に不安を感じることから希望の診療科をあきらめる人が跡を絶たず、ますます医師が集まらない事態となっています。
慢性的な医師不足の地域では、一人の医師があらゆる疾患に対応しなければならない場所も珍しくありません。診療外の分野の担当を受け持つ場合もあり、医師にとっては厳しい状況です。
労働環境が過酷
働き方改革によって、残業時間の削減や、長時間労働の是正が進められています。長時間労働の代表格だった医療業界も例外ではありませんが、依然として労働環境は過酷を極めています。
特に地域医療の維持に不可欠な病院の勤務医、希望する研修医などに対しては超長時間労働を認めるという例外扱いも出されました。これは、例外対象となった医師たちの残業時間を認めないと、地域医療に大きな悪影響を与えてしまうという事情であり、すぐに残業時間を減らせるというわけではありません。
また、診断ミスに対しての医療事故も依然として多く、過酷な労働が原因で引き起こされたものも数多くあると言われています。
医療業界のAI活用を厚生労働省が推進
医療業界で起きている問題・課題を踏まえ、2019年3月29日に厚生労働省が「AI戦略2019」を発表しました。教育や研究開発など、あらゆる業界・分野においてAIの活用を推奨する内容でしたが、その一つとして「医療・健康・介護」も注目されています。具体的な目標は下記3つの通りです。
- 健康・医療・介護分野でAIを活用するためのデータ基盤の整備
- 日本が強い医療分野におけるAI技術開発の推進と、医療へのAI活用による医療従事者の負担軽減
- 予防、介護分野へのAI/IoT技術の導入推進、介護へのAI/IoT活用による介護従事者の負担軽減
これまで、医療業界においては政府の強い規制があり、AIを活用したサービスや開発できない状況にありました。2020年の新型コロナウイルス感染拡大の大きな被害を受けた影響もあり、政府はこのような規制を緩和し、AIを活用するためのデータ基盤を整えていく方向性に舵を切ったのです。
医療分野と同時にヘルスケア分野へのAI導入も加速化しています。医療機関・政府が保有するデータと連結しビッグデータとするために再構築を進めているようです。今後一気に医療・ヘルスケア業界でのAI活用が高まることが予想されます。
こちらで医療業界でのデータ分析の重要性を詳しく説明しています。
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医療業界でAIを活用する4つのメリット
医療業界でAIを活用することによって、どのようなメリットや長所があるのでしょうか?具体的に見ていくことにしましょう。
医療現場での業務効率化
医療の現場においては業務効率化が進められており、変化が起きていますが、人材不足の解消や長時間労働の抑制のためにはさらなる効率化が必要でしょう。
電子カルテの導入でデータ入力業務は改善されましたが、さらなるスピードや入力負荷の削減にむけて、AI技術を用いたカルテの入力補助などが進められています。
病名、標準的な処方、よく使う語句などを自動学習させることにより、カルテ記入や入力業務を減らし、削減した時間を患者との対話にあてることが可能になります。
画像診断ミスの低減
医療の現場はCTスキャン画像、眼底画像、レントゲン画像などさまざまな診断に必要な画像であふれています。
医師によって読影判定にバラツキが起こることもあって、正しい判断がされていない可能性も指摘されています。背景には、先述した医師の過重労働の削減や、検査数に対しての圧倒的な読影医の不足が考えられるでしょう。
AIは大量のデータで学習することで、予測や判断の精度を上げていくことができ、この技術の進歩には期待が寄せられています。
大量のデータを学習して精度を向上していくために、AIの画像認識技術を活用されています。また、認識だけでなく「解析」も可能とする開発が進められています。画像認識・画像解析のAI開発に強い!プロ厳選の開発会社の記事では、画像認識・解析におすすめの開発会社を厳選して紹介していますので、ぜひご覧ください。
ビッグデータからの類推による診察支援
多くのデータを扱うことで、医師の目や耳、脳の能力を拡張できるとして、ビッグデータを扱ったAI利用による診察支援の製品やサービスが開発されてきています。
診断支援システムに患者の症状を入力したり、検査で得られた画像や数値を入力することなどによって、疑われる病名や対処法などが表示されるものもあり、診断の一助となります。
医師が不足している地域で対応にあたるためには、専門外の診療にも対処しなくてはなりませんが、どうしてもできることが限られてしまうため、診断支援ツールは大きな助けとなるでしょう。
AIサービスは、検査の画像解析や大量のデータを自ら学習していくことで、診断精度を高めていくことも可能なため、こちらの発展も期待されています。
ゲノム解析の活用
最近話題のゲノム情報の臨床利用には、AIによるデータ解析技術が欠かせません。ゲノム解析とは、生物の遺伝情報(ゲノム)を総合的に解析することです。「ゲノム(genome)」は”gene(遺伝子)”と”-ome(オーム、ラテン語で全体)”を組み合わせた言葉で、生物のもつ遺伝情報全体を指す言葉です。
生物の細胞内にあるDNAには、遺伝子や遺伝子の発現を制御する情報などが記録されています。遺伝子の情報をもとに転写・翻訳されることでタンパク質がつくられ、さらにタンパク質が細胞をつくり生命活動に必要な仕事をしています。つまり、ゲノム解析はDNAの塩基配列を解読し、遺伝子の機能などの情報を総合的に解読していきます。
ゲノム解析の活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてごらんください。
AIを活用した医療診断・医療支援サービス13選
実際に医療業界でのAIの活用例や具体例をご紹介します。ChatGPTなどの生成AIを医療業界で活用する方法、注意点をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
肝細胞がんのMRI画像解析や診断支援AIの共同研究
医療分野のAI開発を手がける株式会社HACARUSは、神戸大学と肝細胞がんのMRI画像解析、診断支援AIの共同研究の契約締結をしました。
肝がんは死亡者数が多く、世界的に増加傾向にあります。肝がんの一種の肝細胞がんは、MRIの画像診断で早期発見が可能ですが、画像の読影には高い専門性が必要で、実際に行う放射線科医の負担が大きいことが問題でした。
神戸大学との共同研究は、「AIによって画像内のリスク領域の検出」、「リスク領域内での肝細胞がんの病型分類」、「精度の高い病型分類や診断支援」について可能となるよう進めています。
特徴としては、手法がAI開発の主流のディープラーニング(深層学習)ではなく、「スパースモデリング」を用いていることです。機械学習の一手法である「スパースモデリング」を用いて、比較的少ないデータ量でも、どこが本当に必要な情報であるかを見極めて抽出し、データ間の関係性を特定することによって全体像が把握できます。
関連記事:「画像診断AIの現状分析と今後の課題解説!導入メリット・最新事例・展望は?」
眼底画像診断支援システム OPTiM Doctor Eye
AIやIoTのプラットフォーム開発ベンチャーである株式会社OPTIMは、眼底画像解析システムの「眼底画像診断システム OPTiM Doctor Eye」を開発しており、これが医療機器プログラムとして 認証されました。
OPTIMは、大学発のベンチャー企業で、大学との共同でAIやIoTを使った次世代医療の開発を進めています。
AIが眼底の画像を基にして学習を重ねていき、診断の精度を向上させることができます。眼底は全身で唯一、血管を直接観察できる部位なので、目の病気の他にも動脈硬化や糖尿病の兆候を早期発見できると期待されています。
関連記事:「画像診断AIの現状分析を踏まえて、導入メリットについてわかりやすく解説」
医用画像解析ソフトウェア EIRL Chest Nodule
ライフサイエンス領域での画像解析プラットフォーム開発を手がけるエルピクセル株式会社は、AIを活用した医療画像診断の支援技術「EIRL」を開発しています。その中の「EIRL Chest Nodule」は、胸部X線画像から肺結核の疑いがある候補の領域を検出し、医師の診断支援をします。
健康診断などで膨大な数の検査が実施される胸部X線検査での見落としを防ぐことが目的です。
画像診断においては、検査数に対しての読影医が少ないことが課題で、集中力と高い技量や経験が求められており、膨大な検査数に追われてしまい、1つ1つの画像に対しての読影診断にかけることができる時間が限られていたり、読影に不慣れな医師も診断する機会が多いことから、課題となっていました。
健康診断や人間ドックの機会を最大限に活用してプライマリ・ケアへの寄与にも資することができると考えています。
関連記事:「画像診断AIの最新事例」
富士フイルムのAI技術を用いたアルツハイマー病の進行予測
複写機や医療機器などを手掛ける富士フイルム株式会社は、軽度認知障害の患者が今後アルツハイマー病に進行するかどうかを予測するAI技術を開発。アルツハイマー病の新薬開発で症状が進行していない患者が多く治験に参加すると、薬の有効性が証明しにくいという課題がありました。
そこで、画像認識技術を活用し、患者の脳の画像解析を行うAI技術を開発しました。写真や医療分野で培った画像認識技術を応用し、学習データが少ない中でも高性能で予測可能な技術を確立しています。国立精神・神経医療研究センターと共同で開発し、軽度認知障害患者のMRI(磁気共鳴画像装置)画像から、脳の海馬の大きさや形状などの情報を解析できます。
AIによる画像認識の精度は最大で88%を誇り、この技術を治験対象者の患者の絞り込みに用いて、新薬開発の臨床試験の活用へと目指すとしています。
FRONTEOの認知症、うつ病診断のAIの補助活用
株式会社FRONTEOは、自然言語処理を活用し、医師が認知症の進み具合を診断する補助として使うソフトウエアを開発しました。患者と医師の5〜10分ほどの会話データを分析し、認知症の重症度を判定可能とする簡便性の高さを強みとしています。自然言語を用いたAI医療機器としては世界初の開発です。
AIを用いて単語ごとに座標を設定し、コンピューターで解析すると、認知症患者であれば特有の傾向が発見できる仕組みです。医師の属人的な判断に頼りがちであった認知症診断が、AIの活用で客観性の担保が可能となり、医師の能力や経験に関わらず、一定の判断を下すことが可能となるよう期待されています。
認知症だけでなく、うつ病の重症度診断の補助にも活用できるよう慶応大と研究開発の提携をしました。
日立製作所の糖尿病患者の治療薬選択の支援AI
株式会社日立製作所は、米国の大学や研究所と提携して、複数の治療薬の併用など複雑な治療を必要とする2型糖尿病患者の治療薬選択の支援AIを開発しました。
重症化に伴う合併症を防ぐためには、一部の患者には複数の治療薬を併用し血糖値をコントロールする必要があります。従来は医師が患者に対して、過去の経験などの限られた知見から患者に適した治療を行う必要がありました。症例が少ないケースもあり判断が難しい場合もあります。
AIでの治療薬選択支援には患者のデータを増やして学習させる必要があるので、複数の医療機関での患者データを組み合わせる専門知識や、複雑な医療データを使用した機械学習のモデル開発に関する幅広い経験が必要でした。
株式会社日立製作所が開発した支援AIは、病状が類似する患者をグループごとにまとめる技術を用いています。複数の地域や医療施設の電子カルテのデータベースをまとめて分析、さらに学習データを増やせる特徴があります。症例が少ない治療法でも、効果予測を高めることで患者それぞれに合わせた医療方法の支援を可能としました。
姿勢推定AIによるリハビリ支援とオンライン診療の革新(ソニー)
ソニーグループが開発した在宅リハビリ支援サービス『リハカツ』は、姿勢推定技術を用いたアプリによるトレーニングとリハビリの専門家によるオンラインサポートを組み合わせています。
このサービスは、脳梗塞をはじめとした疾患の後遺症者や加齢に伴い身体機能が低下した方を対象に、自宅での日々のトレーニングをサポートします。
また、オンライン診療においても姿勢推定AIは重要な役割を果たしています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、遠隔医療と遠隔監視ソリューションの採用が加速し、遠隔理学療法と患者評価を可能にしています。
これにより、患者は自宅にいながら専門家の指導を受けることができ、医療アクセスの向上と感染リスクの低減に貢献しています。
このように、姿勢推定AIは医療分野において、患者の自宅でのリハビリテーションの質を向上させ、オンライン診療の可能性を広げています。より効果的で安全な医療サービスの提供を支援しています。
関連記事:「姿勢推定AIとは?仕組み・活用事例・使われるアルゴリズムを徹底解説!」
不妊治療の客観的治療法助言サービス
vivola株式会社は、女性特有の悩みをテクノロジーで解決する「フェムテック」として事業展開をしています。AIを活用し、膨大なビッグデータを分析することで、費用や治療方針に悩んでいる女性の指針になると考え、客観的な治療法の助言サービスを提供しています。
女性の健康課題をAIで見守るさまざまなサービス提供を手掛け、その中の一つに不妊治療に関わるスマートフォン用アプリがあります。
スマートフォン用アプリ「cocoromi」は、通院スケジュールや治療内容のログの管理が可能です。治療の成功率、平均時間、費用などのデータを、疾患の有無や年齢などの属性が自分と似たような人に絞って検索できます。
不妊治療に関わるサービス提供の背景には、日本では病気を抱えた人が最適な不妊治療を選択するための情報が乏しいことがありました。不妊治療は身体面や金銭面での負担が大きく、医療機関や治療を選ぶのに悩む患者が多い傾向にあります。
そこで、利用者が「cocoromi」で入力したデータをもとに類似条件で妊娠したカップルの通院費用や治療法などを紹介。利用者に合った治療法で、通院期間を短くする狙いもあります。アプリの土台となるのは妊娠に成功したおよそ1,000組のカップルの不妊治療のアンケートのデータベースです。
2022年4月から不妊治療への保険適用を開始したため、不妊治療を受ける人のための医療データ活用も期待されています。
AIメディカルサービスによる内視鏡の画像診断支援AI
株式会社AIメディカルサービスは、内視鏡の画像診断AIの開発を手掛けています。内視鏡で胃や大腸を観察する際に、リアルタイムでがんの可能性のある部分を自動的に発見したり、その確率を示したりするAIです。
内視鏡分野は日本が世界でリードしている先進の医療分野です。しかしながら、内視鏡検査でのがんの見落としは2割以上発生しています。内視鏡専門医とのダブルチェックが義務付けられていますが、通常業務後のダブルチェックは負担が大きく、現場は疲弊しているのが現状です。
胃がんは早期に発見すれば十分に治療可能であり、病期が進行すると死亡率が高まる特徴があります。内視鏡検査は消化管がのがんを早期で確定診断できる唯一の検査であり、患者の救済に直結することから、AI活用で内視鏡検査の精度向上を実現させ、早期のがん発見を促すとしています。
早期の胃がんや動画での利用を想定したAI開発のために、がんの専門医療機関など全国100以上と連携し、20万件を上回る膨大な内視鏡検査画像を収集し、AIに学習させました。研究開発の論文は世界初のものを含め数十本に登り、医学会からの注目を集めています。
CureAppの高血圧治療アプリのAI活用
治療用アプリを手掛ける株式会社CureAppは、高血圧症向けのアプリを発売しています。厚生労働省からの薬事承認を受けた高血圧治療アプリは世界初で、禁煙治療用のアプリに次いでの承認となりました。公的医療保険の対象にもなります。
誰でも使用可能な健康アプリとは異なり、治療用アプリは医師が処方し治験で効果が確認されているものです。データにより生活習慣病の悪化や投薬を減らすなどの目的があり、膨れ上がる医療費を抑制する狙いがあります。
患者はパスワードを入力して利用を開始し、治療用アプリが、日々の血圧計から無線で得たデータなどを分析。食事や運動などに関する患者個人に適した教育動画などを提供し生活習慣の改善を促します。医師の代わりとして、毎日高血圧症の患者へのアドバイスが治療用アプリから得られます。
病院外での生活習慣をデータ分析によって改善し、治療プログラムの進捗状況を「73%」と数値化するなど分かりやすくすることで達成感が得やすい仕様になっているのが特徴です。患者の血圧値や塩分摂取などのデータは医師側でもアプリで共有し確認ができます。
アステラス製薬のAIを用いた心電図解析サービス
アステラス製薬株式会社は、心電図解析サービスを手掛けるエムハートと共同で、心電図検査のデータから不整脈を見分けるAIプログラムを開発しました。
ホルター型と呼ばれる心電図検査のデータをAIを用いたアルゴリズムによる解析プログラムです。ホルター型心電図検査とは、心電図を継続して24時間記録する検査で、胸に電極を付け、携帯型の小型の記録機に心電図を連続して記録し、脈の乱れを検知するものです。
心電計で測った心電図から心房細動と呼ばれる不整脈を見分けるAIで、クラウド型の心電図解析サービスの医療機関向けの提供も行っています。
専門医だけでなく、かかりつけ医でも心臓病の兆候を早期発見できる仕組みづくりに乗り出しています。医師が患者の心電図をアップロードすると、AIが心電図の波形を自動で解析し、不整脈の検出箇所を提示します。およそ1日で結果が分かり短期間での解析が可能です。
さらに今後は心電計メーカーとも協力し、心電計とAIを組み合わせたサービス提供も考案中とのことです。医薬品開発で培った製薬メーカーのノウハウを生かすことができるでしょう。
対話型AIで患者の感情認識
AIによる自動応答システムを手掛けるクリスタルメソッド株式会社は、対話型AIシステムの「HAL3」を開発。雑談や問診などHAL3からの自然な会話から患者の感情認識や快不快の認識、精神状態などを捉え、医療や介護分野においての異変に気づくことに特化しています。
「HAL3」は人とコミュニケーションをとるために開発され、機械音のない自然な音声にするため、音声合成の技術を利用しています。福祉の面では目の見えない人や失語症の人のサポートとして読み上げサービス提供し、より自然なイントネーションを可能にしています。音声合成の仕組みや技術活用事例については、こちらの記事で解説しています。
クリエートの錠剤不良を99.9%の精度で判別できる装置
クリエートは、錠剤の欠けや異物混入などの不良を99.9%の精度で判別できる「フルカラー錠剤外観異物検査装置」を開発しました。
AIと画像処理技術を組み合わせたハイブリッド方式で、過去の不良品データなどをAIが学習します。AIにより、手間がかかる錠剤の良品・不良品の分別検査を自動化できる仕組みです。
糖衣錠や割れ線がある錠剤、フィルム錠など多種多様な錠剤検査に対応でき、毎時15万錠の高処理能力を持ちます。また、対応できる不良判別も幅広く、異物混入・欠け・擦り・凹凸の有無・糖衣不良・フィルム剥がれなどの検査が可能です。
分別された不良の種類から生産工程の不具合を分析することで、錠剤の生産設備などの予知保全につながることが期待されます。
関連記事:「錠剤検査とは?重要性・検査項目・AIを活用する最新検査装置を徹底解説」
医療業界で事務効率を向上するAIサービス7選
実際に医療業界でのAIの活用例や具体例をご紹介します。
福岡和白病院によるAI問診Ubieの導入
AIでの問診アプリ「AI問診 Ubie」は、スタートアップ企業のUbie株式会社が開発しました。AI問診Ubieは、初診での問診の支援ツールです。
患者にタブレットで問診票に入力してもらうことで、カルテに反映できます。AIが患者の入力した内容に対して、質問内容を自動生成し、より詳細な深い内容までを聴き取ることも可能です。
社会医療法人財団池友会 福岡和白病院ではAI問診Ubieを導入して、成果をあげています。患者の待ち時間が20分前後削減できたほか、薬の入力ミスが大幅に削減できました。
みなとクリニックでのクラウド型電子カルテCLIUSの導入
ITサービスの株式会社Donutsは、クリニック向けのクラウド型電子カルテシステムの「CLIUS」を開発し、医療法人みなとクリニックが導入しています。
CLIUSは、オーダーや病名などのクイック入力機能や、用法用量、検査、文言を含んだ自動学習を機能として備えています。医師の視線の流れに沿った入力ができるよう思考を妨げない画面設計を直接ヒアリングして実現させています。
また、他の医療機関や周辺システムとも連携しやすいように設計されています。みなとクリニックは導入によって、患者の病歴をすぐに一覧で確認できるようになり、自分が担当していない患者の緊急往診もあるので、そのとき困らないようカルテでしっかり情報共有できるようになったという成果が見られています。
東京ミッドタウンクリニックによる疾病リスク予測AIサービスの活用
東芝デジタルソリューションズ株式会社と株式会社東芝が共同開発した「疾病リスク予測AIサービス」は、1年分の健康診断データを基にして、6年先の6疾病(糖尿病、肥満症、高血圧症、肝機能障害、腎機能障害、脂質異常症)のリスクを予測できます。
人間ドックを主に行っている東京ミッドタウンクリニックは、人間ドックを受診した後の結果レポートへ、疾病リスク予測AIサービスを活用した疾病リスクの予測結果を掲載する取り組みをしています。
これにより、生活習慣病の個別化した予測データを健康診断のレポートに反映して、より具体的な健康指導が可能となりました。
凸版印刷×ZETA、AIによる病院内の施設見守りサービスを開発
凸版印刷株式会社とは、低消費電力広域ネットワーク「ZETA」を活用し、病院内の施設見守りAIサービスを開発。医療施設内でもとくにトイレやシャワー室などは見守りが行き届きにくい場所で、何かあったときの対処ができないことが課題でした。
施設見守りAIサービスでは、緊急時の検知パターンを蓄積・解析し、パターンから外れた行動が見られた場合、異常としてセンサーが発動するといった仕組みです。患者さんのプライバシー配慮のため、カメラなどを一切使用していないのもポイント。個人情報が取得できない複数のセンサーにて開発を行いました。
このAIサービスを開発することにより、看護師や医師の目が届かない個室での体調把握などが可能になり、より緊急時の早期発見に期待ができます。
Medical AILABのレセプトチェックのAIによる精度向上
レセプト(診療報酬の明細書)のチェックミスは許されず、医師や医事課の職員によるレセプトのチェックには多くの時間が割かれています。そこで、株式会社Medical AI LABは、適応病名候補の提示を高精度で行えるシステムの「AIレセチェッカー」を開発。
AIレセチェッカーによって、複雑な設定なしで、修正が必要なレセプトである要修正レセプトの判定を可能としています。チェック作業を大幅に削減できるため、本来注力すべき業務に集中できるようになったとのことです。
学習機能を備えたAIレセチェッカーは、登録したレセプトを読み込み、蓄積されたビッグデータと照らし合わせ、修正が必要かどうかを高精度で判定します。処理速度も速い点が特徴であり、より迅速な対応が可能です。
またレセプトの情報からAIが適切と思われる病名を当てる病名レコメンド機能も備えています。運用にあたっては、人手を極力かけることなく、大半のチェック作業をシステムに任せることが可能です。
プレシジョンのAIを組み込んだ電子カルテと診察データベース
株式会社プレシジョンは、AIを活用した医療サービスを手掛けています。電子カルテ大手の富士通Japanと共同で、患者の症状をもとにAIがカルテを下書きするシステムを開発しました。
患者が診察の前にスマートフォンやタブレットなどのデバイスで症状を入力しておくと、医師の電子カルテ上に、AIが導き出した疑われる疾患名が表示されます。
誤診や医療の属人化を削減するとして、担当する医師が不慣れな病気であってもAIによる適切な治療方針で現場を後押しする狙いがあります。特に人材が不足している地方の医師にとっては、専門外の領域でも診察しなくてはならないケースが少なくありません。
システム上の診療マニュアルには3,000もの疾患と700の症状、全処方薬の情報を掲載しており、感染症や糖尿病など各分野に精通した2,000人の医師が監修して随時更新しています。
AIがデータベースと患者の症状を照らし合わせて、専門医が選ぶと推定される診断内容や治療法を表示する仕組みになっています。
マルチモーダルAIによる医療ビッグデータの多角的活用(NEC・理化学研究所・日本医科大学)
日本電気株式会社(NEC)と理化学研究所、日本医科大学は、医療分野での電子カルテとAIの融合の研究を進めています。さまざまな医療ビッグデータを統合的に解析するマルチモーダルAIを構築しました。
このマルチモーダルAIでは、複数種類の検査データから病気の状態や経過を統合的かつ多角的に判断や予測ができます。電子カルテのデータや、がんの組織画像などを用いてマルチモーダルAIが解析したところ、手術後から再発までの年数によりAIが捉えた予測因子のパターンに違いが見られたということです。
こちらでマルチモーダルAIとは?詳しく説明しています。
日本人男性が罹患する最も多いがんの一つ前立腺がんを対象とした研究で、病気の早期発見や治療計画の最適化を可能とします。また、医療費の削減や医療従事者の負荷の軽減が期待されています。データの組み合わせにより、治療計画の最適化や早期発見が可能となり、効率的な医療提供の実現に向け一歩を踏み出しました。
医療業界でAIを活用する際の注意点・問題点
医療業界でAIを活用する際には、以下のような注意点や問題点があります。
AIによる誤診の可能性
AIは万能ではないため、適切な使用方法を理解せずに利用すると、誤診を生む可能性があります。フレーム問題を完全に解決できたとは言えないAIの判断に完全に依存するのではなく、最終的な判断は医師が行うべきです。
AIは医師の判断を補助するツールとして活用することが望ましいでしょう。
質の良い教師データの収集・アノテーション
医療AIの精度向上には、信頼性が高く質の良いデータの収集が不可欠です。特に医療分野では、人命に関わるため、高品質なデータを集めることが重要な課題となっています。
それらのデータをAIに学習させるためには、データに正解を付けるアノテーション作業が必要ですが、医師がこのアノテーション作業を行う場合、この作業が医師の負担を増やす可能性があります。医師の負担軽減のために導入されるAIが、逆に負担を増やすことにならないよう、役割分担を適切に行う必要があります。
患者データの流出リスク
AIを活用する際には、患者のデータを扱うことになるため、データ流出のリスクがあります。ビッグデータやセキュリティ対策に関する知見を持った人材が必要です。
データ流出は大きな問題に発展する可能性があるため、十分な対策が必要でしょう。
専門人材の確保
AIを開発・導入するためには、医療分野の知識だけでなく、AIやビッグデータに関する知見を持った人材が必要です。適切な人材を確保できなければ、AIの開発・導入は難しいでしょう。
医療・看護・病院のAI活用事例についてよくある質問まとめ
- 医療業界でAIを活用するメリットは?
- 医療現場での業務効率化
- 画像診断ミスの低減
- ビッグデータからの類推による診察支援
- ゲノム解析の活用
まとめ
この記事では医療分野におけるAI活用のメリットや活用事例をご紹介しました。厳しい病院・クリニックの経営にAIを中心としたIT技術を活用して、人材不足解消や働き方改革の成果をあげられています。
これまでご紹介した事例のようなことが全国に広まり、医療従事者とAIの相乗効果が発揮されれば、多くの人に届くことができる適切な治療がより可能となっていくかもしれません。
AI Marketでは医療業界に強いAI開発会社の無料選定・紹介を行っています。貴社に最適な会社に手間なく数日で出会えます。貴社の要望に応えることが可能な企業複数社の紹介が可能で、相見積もり・比較もすぐに実施可能。
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AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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