【INTERVIEW】開発者ではなくてもAI開発に参加できるアノテーションプラットフォームを目指すFastLabel
最終更新日:2021年04月02日
AIを導入する上で、アノテーション(データのラベル付けを行い、教師データを作成すること)は、必要不可欠且つ重要な作業です。アノテーションの精度がAIの精度を左右する、といっても過言ではありません。
そんなAIの精度に重要な影響を与えるアノテーションを、
今回は、FastLabel株式会社の取締役である上田英介さんにお話をお伺いしました。
海外のAI企業で培った経験を活かす
■まず、創業したきっかけを教えて頂けますか?
—上田さん
「私は元々エンジニアで、以前は、日本の大手ERPパッケージシステム会社に所属していましたが、その際、アメリカ支社に行かせて頂く機会があり、アメリカでAI-OCRのシステム設計を行っていました。
その後転職し、イギリスのAIベンチャーに行き、銀行向けの住宅ローン審査を効率化するAI導入のプロジェクトを経験する中で、
このようにAIの実用化に対して漠然として課題を感じている中、鈴木(FastLabel株式会社 代表取締役)と出会い、AIの実用化に対して同じ課題感を感じていたため、意気投合し、起業することになりました。鈴木も大学院に行ってレコメンドエンジンなどのAIの研究をしていました。」
■なぜアノテーションプラットフォームに着目されたのでしょうか?
—上田さん
「AIの実用化を進める上での課題はいくつかあると思うのですが、その中でも、やはりデータが占める部分は大きいと考えています。ある調査では、
AIプロジェクトは通常ウォーターフォールで進めるのですが、通常のシステム開発と違い、データ傾向を事前に把握することが困難です。
例えば、3ヶ月のプロジェクト期間の内、2ヶ月をアノテーションに割き、その後AIを学習・評価すると、この段階で初めてデータ傾向が把握でき、アノテーション方法の間違いや、データの不備・不足が発覚し、再度アノテーションのやり直しやアルゴリズムの見直しなど、大幅な手戻りが発生するケースがよくあります。この問題を解決するためには、データ傾向を瞬時に把握し、素早く改善できる仕組みが必要で、これにより開発の手戻りを少なくし、また、AIの実用化を加速化させることが可能になると考えています。
こういった理由から、AIに欠かせないデータを一元管理できるアノテーションプラットフォームを作ろうと考えました。
このプラットフォームは、エンジニアの方だけでなく、ビジネス部門の方や顧客も利用でき、アノテーションデータを共有し、ダッシュボードでデータ傾向や偏りも簡単にチェックでき、チームで共通認識を持つことができます。
その結果、改善のためのアクションを素早く実行することができ、AIの実用化に向けてスムーズに進めることができるようになります。」
使いやすく、チームで管理しやすいUIを提供
■実際のツールではどのようなアノテーションが可能なのでしょうか?
—上田さん
「メインとしては画像に対応しており、多角形、キーポイント、セグメンテーションなどがプロジェクト単位で設定可能です。尚、半自動化によるアノテーション作業効率向上のための機能開発も進めています。また、車載カメラなどのような連続画像に対して、少しの修正で効率よくアノテーションが行いやすいようにもなっています。
現在動画アノテーションの機能も開発中で、動画を取り込むことで、1秒単位などのコマ毎にアノテーションができるようになります。この際、
出力データは、Json、CSV、PascalVOC、YOLO形式に対応しています。画像で必要な際は、別途マスク画像を作成することにも対応していますし、今後は、音声やテキストも強化していく予定です。」
■どのような特長や強みがあるのでしょうか?
—上田さん
「このプラットフォームでは、プロジェクトレベルやデータレベルで権限管理ができるようになっているのですが、作業者やレビュアーなどの他、ゲストで招待することなどもできます。アノテーションしながら、ラベルにタグを付けることもできるため、作業者に迷いがあった際に「不安」などのタグを付けることで、レビュー時にフィルタリングして重点的に確認する、といったことも可能です。レビュアーによるチェックによって、作業者毎のアノテーション精度などもわかるようになっています。
こういった機能により、
今後は、汎用的なAIモデルを活用して、事前にアノテーションを実施することを目指しています。実際に、OCR系のアノテーションであれば、作業を2割以上削減できています。
また、構築したAIの予測結果を取り込むことで、詳細なデータ分析ができるようになっており、正解データと作業データの比較がビジュアルベースで行えるようになっています。データ分析などは、開発者依存になってしまうこともあるのですが、ビジュアルベースで表示することで、どのデータに強くて、どのデータのアノテーションが不足している、などがプロジェクトマネージャーや顧客も視覚的にわかるようになっています。
他にもいろいろな機能があるのですが、お客様がすでに既存AIを持っている際に、AIの推論結果を連携することで、事前アノテーションとして登録し、間違っているアノテーションのみを修正する、といったことも可能です。これによりアノテーションのコストを下げることができるため、利用いただくお客様も増えてきています。
ラベルについては、建設図面など複雑なアノテーションにも対応できるように、
■どのような企業様に利用されていますか?
—上田さん
「現在は医療系、建設系などのスタートアップや大企業様が多くなっています。
今後は、自動車系や建設業系に注力していきたいと思っており、
■どのような価格で提供していますか?
—上田さん
「サブスクリプション型で提供しているのですが、スタータープラン月額3万円〜で、スタンダード、エンタープライズという形で提供を行っています。」
■アノテーション代行サービスはどのような強みがあるのでしょうか?
—上田さん
「アノテーションの代行サービスは、完全に従量課金型で、品質保証まで行っています。すでに数十社のお客様に向けて実施しています。アノテーション作業は弊社で抱えているアノテーターや、提携しているBPO企業と一緒に実施しています。」
AI革命のインフラになる
■今後、どのようなサービスを提供していきたいとお考えですか?
—上田さん
「今後AIの実用化を進める上で、教師データの管理はボトルネックになると考えています。そこを解決するために弊社は
通常のシステム開発はシステム知識を持っていなければシステムを構築することができませんが、AIの領域では、各領域の専門の方がその領域の専門知識があり、その教師データを作ることさえできれば、ハイパフォーマンスなAIを構築することができるようになる、と考えています。
このように、職種の壁がなくなることで、AI開発に参加できる人が増え、結果としてAI市場はより大きくなると考えており、そのときに、弊社は開発者以外の方でもAI開発に参加できるプラットフォームを提供していきたいと思っています。」
–ありがとうございました。
今回は、アノテーションプラットフォーム「FastLabel」を提供する、FastLabel株式会社のインタビューでした。
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