東芝が少数の画像データで高精度な解析を実現する産業用画像解析AIを発表
最終更新日:2024年12月18日
東芝は2024年12月17日、産業分野における画像解析AIの新技術を発表した。
従来、数万枚以上の学習データが必要とされた画像解析において、最小40枚という少数の実画像データから学習データを自動生成し、高精度な解析を実現する技術の開発に成功。
本技術は12月8日から12日にベトナムで開催された国際会議ACCV2024で発表され、顕微鏡画像や赤外線画像、生体画像など、従来のAI導入が困難だった専門分野における自動化・省人化への貢献が期待されている。
目次
<本ニュースの10秒要約>
- 専用装置で撮影された産業用画像から学習データを自動生成し、従来の130万枚の学習データを上回る精度を実現する画像解析AIシステムの確立
- 最小40枚という少数の実画像データから数万枚規模の学習データを自動生成し、数時間程度で事前学習を完了する効率的な処理システムの実現
- 医療現場での生体画像診断や工場での品質検査など、データ収集が困難な産業分野における画像解析の自動化・効率化への道筋の確立
革新的な事前学習方式による画像解析AIの開発背景
産業現場における人手不足解消と作業効率化のニーズに応えるため、画像解析AIの適用が進んでいるが、特殊環境下や専用装置での撮影画像は、収集に時間とコストがかかることが課題だった。
従来の画像解析AIでは数万枚以上の学習データが必要とされ、特に半導体製品の開発工程や生体画像など、データ収集が困難な分野での導入に障壁があった。
また、新規検査の立ち上げや開発工程における一時的な検査では、短期間での解析と開発へのフィードバックが求められており、効率的な学習方式の開発が急務となっていた。
独自の事前学習技術による画像生成メカニズム
開発された技術は、対象画像の一部を切り出し、それらを複数組み合わせて回転・反転させることで新たな学習データを生成する。
この手法により、40~1,000枚の実画像から9,000~30,000枚の事前学習用画像を自動生成することが可能となった。生成された画像は解析対象と類似の特徴を持ち、従来の自然画像を用いた学習よりも高い精度での解析を実現している。
事前学習に要する時間も数時間程度と短く、産業現場での実用的な導入が可能となっている。
実証実験による技術の有効性確認
赤外線画像、顕微鏡画像、ウェハ画像、病理画像、眼底画像の5種類の非自然画像データセットを用いた評価実験により、本技術の有効性が確認された。
ImageNetの130万枚の学習データを用いた従来手法と比較しても、より高い精度での画像識別に成功している。この結果は、少数の実画像データからでも効果的な画像解析AIの構築が可能であることを実証している。
実用化に向けた展望と期待される効果
工場での自動検査ライン、医療現場での診断支援、医薬品・化粧品メーカーでの顕微鏡画像分析など、幅広い産業分野での活用が期待されている。
東芝は東芝デジタルソリューションズと連携し、さらなる精度向上と早期実用化を目指している。本技術の実用化により、これまでAI導入を断念していた分野での自動化・省人化が進み、産業全体の効率化に貢献することが期待される。
AI Market の見解
本技術は、従来のAI開発における「大量の学習データが必要」という常識を覆す画期的な成果だ。特に産業用途における画像解析の分野で、データ収集の困難さという根本的な課題を解決する可能性を持っている。
技術的には、画像の特徴を効率的に抽出し再構成する独自のアプローチが注目される。ビジネス面では、開発コストと時間の大幅な削減が可能となり、中小企業を含む幅広い産業でのAI導入を加速させる可能性がある。市場への影響としては、医療診断支援、製造業の品質管理、研究開発など、専門性の高い分野でのAI活用が進み、新たなビジネスモデルの創出も期待できる。
ただし、生成された学習データの品質保証や、特定ドメインでの精度検証など、実用化に向けては慎重な検証が必要となるだろう。
参照元:東芝
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