LiDARとは?自動運転や監視カメラで注目の機能・メリット・デメリット・企業活用事例を徹底解説!
最終更新日:2024年10月15日
近年、自動運転やAIを活用した監視カメラ等のニーズが高まる中で注目を集めている技術が「LiDAR」です。
特に、AIを組み合わせることで、LiDARで取得したデータを元に、高度な画像解析を実現することが可能になります。
今回は、
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目次
LiDARとは?
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を用いて距離を測定するリモートセンシング技術です。レーザー光を対象物に照射し、反射が返ってくるまでの時間をセンサーで受信することで、対象物までの距離や形状を測定する仕組みです。
LiDARのレーザー光は高い光束密度が特徴で、誤差を最小限にでき、物体との距離が離れていても精度の高い測定を可能にしています。
LiDARの主な特徴は、以下のとおりです。
- ミリメートル単位の高精度な距離測定が可能
- 3Dマッピング
- リアルタイムデータ収集
- 数百メートル先の長距離対象物まで測定可能
高精度な測定能力やリアルタイムデータ収集機能は、自動運転車をはじめ、インフラ管理や環境モニタリングで活用されています。
LiDARの主な用途
LiDARの主な用途は、以下のとおりです。
- 自動運転のマッピング
- 移動ロボット:物流センターや製造工場での自動搬送ロボット
- 搬送台車:製造工場で使われる運搬ロボット
- 測量:地形の3Dマッピング
- 監視カメラ:人や動物の検知
移動ロボットやドローンなど移動する機械にも設置できるため、周囲の環境認識や障害物検知、測量の際にも利用されています。
関連記事:「自動運転にAIが欠かせない理由とは?仕組みとメリット・デメリット徹底解説!」
LiDARとミリ波レーダーの違い
現在、自動車の衝突防止システムや天候監視、航空機の着陸支援には主にミリ波レーダーが利用されます。LiDARとミリ波レーダーとの主な違いは以下のとおりです。
センサ名 | LiDAR | ミリ波レーダー |
---|---|---|
測定手段 | レーザー光 | 電磁波(波長1〜10mm、周波数30〜300GHz)) |
精度 | 高精度 ミリメートル単位での測定が可能 | 低精度 メートル単位での測定 |
解像度 | 高解像度 詳細な環境マッピングが可能 | 低解像度 大まかな位置情報の取得向け |
環境適応性 | 悪天候に弱い | 霧・雨・雪に強く夜間でも動作可能 |
コスト | 高コスト | 比較的低コスト |
特徴の違いから、LiDARは精密な環境認識が求められる自動運転の周囲環境マッピングやドローンによる地形マッピング、建設現場の測量などで使用されます。
自身が光や電磁波を発する能動型のLiDARとミリ波レーダーに対して、可視光線を受け取って3D情報を取得するステレオカメラの違いについては以下の記事で解説しています。
関連記事:「ステレオカメラとは?仕組み・メリット・デメリット・活用方法を徹底紹介!」
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LiDARのメリット
LiDARは高精度なデータを確保できることから、製造業や林業などさまざまな業界で活用されています。以下では、LiDAR活用のメリットを紹介します。
高精度な3Dデータが手に入る
LiDARを活用することで、ミリ単位の精度で対象物の形状や位置を3Dで捉えることができます。高精度な3Dデータを手に入れることが可能です。例えば、以下のようなデータも取得できます。
- 都市全体のインフラマップ
- 森林の樹木の密度と高さの詳細な3Dモデル
- 建設現場の進捗状況を正確に示す施工マップ
LiDARの3Dデータを活用すれば、測量やマッピング、インフラの管理などで正確なデータに基づいた意思決定が可能となります。
昼夜問わず使える
LiDARは外部の光源に影響されないことから、昼夜問わず安定して機能します。光源が不安定になる悪天候時でも、高精度なデータを収集可能です。
そのため24時間365日の運用が不可欠な自動運転や、光が届かない環境下での測量で役立ちます。
LiDARのデメリット
LiDARは高精度なデータを取得できる分、データの取り扱い方にノウハウが必要です。また、ほかのセンサと比べて、初期費用が高くなるデメリットもあります。以下では、LiDARを利用する場合のデメリットを紹介します。
データの取り扱い方が難しい
LiDARで収集された3Dデータは膨大かつ複雑であり、処理と解析には高性能なコンピュータと専門知識が必要です。LiDARのデータを正しく扱える適切なソリューション選定のために、膨大な時間とリソースがかかることも少なくありません。
特に、リアルタイムでのデータ処理が必要な場合には、AI(人工知能)分析ツールなど高度なソフトウェアが必要です。
悪天候に弱い
LiDARは高精度ですが、雨や霧などの悪天候下では性能が低下するという欠点があります。LiDARが使用する赤外線レーザーは、大気中の水分粒子(雨滴や霧)に当たると散乱されることが原因です。悪天候下では、レーザー光が目標物に到達する前に拡散してしまい、正確な距離測定が困難になります。
そのような環境に対して、以下のような対応策が開発されています。
- マルチエコー機能:複数の反射光から最適なものを選択する技術。雨粒などのノイズを除去し、実際の対象物からの反射光を識別することができます。
- 雨・霧除去アルゴリズム:反射光の特徴から雨や霧を判別し、それらの波形を除去することで、悪天候下でも対象物からの反射光を抽出できるようになります。
- データ処理の改善:AIを用いて、悪天候下でのデータをより効果的に処理し、ノイズを除去する技術。
- ハードウェアの改良:より強力なレーザー光源や高感度センサー
- 他のセンサーとの融合:レーダーやカメラなど、他のセンサー技術とLiDARを組み合わせる。
導入コストが高い
LiDARセンサー自体の価格が高いこと、データ処理に必要なハードウェアやソフトウェアの費用、さらに専門知識を持ったスタッフの訓練や採用にかかるコストが含まれるためです。
例えば、高性能なLiDARセンサーは1台のみで数百万円することがあり、加えて関連するインフラの整備も必要です。そのため特に中小企業にとっては、導入コストが障壁となる可能性があります。
自動運転需要でLiDARが再注目されている
自動運転需要の拡大とともに、LiDARが再注目されています。自動運転車は、センサやカメラからのデータをAIが解析し、車両の運行を制御する仕組みです。自動運転車は各種センサによるデータ収集とAIの高精度な解析技術を組み合わせることで、安全で効率的な運行を目指します。
LiDARの3Dデータは、AIの物体認識力を強化し、自動運転の安全性を高める重要な要素です。歩行者や道路標識の判別精度を向上させる重要な役割を果たします。
LiDARが今注目される理由を詳しく紹介します。
LiDARの3DデータでAIの物体認識力を高められる
LiDARは、レーザーによって対象までの距離や位置、形状などを正確に3次元で認識できます。例えば、検知したものが「歩行者なのか、それとも道路標識なのか」といった判別精度を向上させることが可能です。
ミリ波レーダーは解像度が低く、物体の詳細な形状や位置の判別が得意ではありません。そのため、ミリ波レーダーと比べ、LiDARの高精度な3DデータはAIの物体認識力を強化し、自動運転車がより安全に運行するうえで不可欠といえます。
LiDAR×カメラのセンサーフュージョンで自動運転レベル3以上を目指す
自動運転レベル3以上の実現には、LiDARとカメラのセンサーフュージョンが欠かせません。センサーフュージョンとは、複数のセンサーから得られるデータを統合し、より正確で信頼性の高い情報を得る技術です。
LiDARとカメラを組み合わせることで、物体の検知・認識精度が飛躍的に向上します。レベル3以上の基準である「自動運行装置が運転操作のすべてを代替する状態」の実現へ近づくことが期待され、自動車業界をはじめとするさまざまな業界の企業が開発を進めています。
LiDAR×AIの活用事例4選
LiDARはAIと組み合わされ、自動車開発や監視システムなど幅広いシステムで採用されています。以下では、LiDAR×AIの活用事例を4つ紹介します。
【日産自動車】交差点で緊急回避を行える運転技術を開発
日産は自動運転レベル4の技術開発を進めています。LiDARセンサーを搭載し、AIを活用して自然な運転や加速を実現し、潜在リスクの予測も行っています。
国土交通省も支援しており、無人タクシーの導入を目指しているため、今後さらに普及されることが期待されます。
【東芝】豪雨・濃霧下でも高精度な物体認識を実現
東芝は、自動車や人物の検知を精度99.9%で追跡するLiDAR技術の開発に成功しました。LiDARから得られる2・3Dデータの空間的なズレを排除できる「2D・3DフュージョンAI」は、豪雨・濃霧下の過酷な条件でも高精度な物体認識を実現しています。
東芝の技術は、自動運転車における周囲環境の高精度マッピングへの応用が期待されています。
【岡⾕エレクトロニクス】高精度な人流解析・交通量分析に成功
岡谷エレクトロニクスは、街のインフラに3D-LiDARセンサーを設置し、AIがデータを解析して人の動きをリアルタイムで観測できるシステムを開発しました。岡谷エレクトロニクスの人流観測ソリューションは、手動では難しい道路の交通量調査において活用が期待されています。
さらに、交差点へ設置することで、交通量の調査を行うことにも成功しています。実証実験では、実際の台数と差異なく計測できました。
【東京貿易テクノシステム】工場への侵入者を的確に検知するカメラ監視システムを開発
東京貿易テクノシステムは、昼夜問わず工場への侵入者を的確に検知できるシステム「Leica BLK247」を開発しました。
Leica BLK247は、LiDAR・ビデオ・サーマルイメージの3つのデバイスが一つに搭載される監視カメラで、レーザー判定により侵入の有無を判断します。Leica BLK247は3次元での検知が可能で、2Dでは把握できない異常にも対応できます。ソフトウェアにはAI機能が内蔵され、各種センサから得られる情報を高速処理も実現しています。
LiDARについてよくある質問まとめ
- LiDARとAIの活用例は?
LiDARとAIの主な活用例は、以下のとおりです。
- 自動運転:LiDARで周囲を3Dスキャンし、AIが解析して車のナビゲーションや障害物回避を行う
- スマートシティ:LiDARとAIで交通流量をモニタリングし、信号機の最適化や渋滞の軽減を図る
- 農業:LiDARで作物の状態をスキャンし、AIがデータを分析して病害虫の早期発見や収穫時期を予測する
- LiDARとは?
LiDARとは、レーザー光を使って対象物までの距離を測定し、3Dマッピングを行う技術です。これにより、周囲の環境や物体の詳細な3Dモデルを作成できます。
まとめ
LiDAR技術は、自動運転分野の他に、従来の移動式ロボットや測量・監視カメラ等での活用が期待されています。さまざまな企業が
ぜひ今回紹介した事例を参考に、LiDARとAIを導入するきっかけになれば幸いです。
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